経費は事業の売上を作る土台である。その一方、膨らみすぎれば会社経営の圧迫要因となるため、経費削減はどんな会社にも必要。ではどのように進めればよいのか。今回は、経費削減の際に目を向けるべき4つの経費を中心に、経費削減の方法と注意点を解説。

目次

  1. 経費削減を定期的に行うべき4つの理由
    1. (1)生産性向上のため
    2. (2)手持ち現金が増える
    3. (3)資金調達を行うのため
    4. (4)事業継続と拡大のため
  2. 経費削減を優先すべき4つのコスト
    1. 検討するべき経費1:地代家賃
    2. 検討するべき経費2:人件費
    3. 検討するべき経費3:旅費交通費・通信費
    4. 検討するべき経費4:水道光熱費・消耗品費など
  3. 経費削減に活用できる具体的な4つの方法
    1. 経費削減策1:テレワークの活用
    2. 経費削減策2:事務所移転の検討
    3. 経費削減策3:アウトソーシング・ITツールの活用
    4. 経費削減策4:契約交渉・変更
  4. 経費削減するときの注意点
  5. 経費削減は経営に必要不可欠な視点
鈴木まゆ子
鈴木 まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

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経費削減を定期的に行うべき4つの理由

会社の経費削減はまずこの4つから。方法と注意点を解説
(画像=Dilok/adobe.stock.com)

経費削減は、外部要因によって売上が落ちた時など、経営に何らかの問題が発生した際にスポット的に行うのではなく定期的に行うこと。ここでは、経費削減を定期的に行う必要がある4つの理由を解説する。

(1)生産性向上のため

生産性とは「会社が投入した経営資源に対し、どれだけ成果を生み出せたか」のこと。その、投入する資源の1つが経費である。

例えば、これまで100万円の売上を立てるのに10万円の経費で済んでいたのに、30万円にコストが増加したならば、生産性が下がっていると見てよい。

利益が多ければ資金繰りの不安も少なく、社員に還元してモチベーションアップにつなげられる。しかし、生産性が下がれば、利益を圧迫するだけでなく会社全体が疲弊することになりかねない。自社のコスト推移を確認した上で経費削減に取り組むことが、生産性向上には重要である。

(2)手持ち現金が増える

経費はすべてキャッシュアウトを伴うため、経費が膨らめばその分だけ手元の現金は減る。事業を拡大すれば経費は膨らみやすいので、定期的に見直しておかないと、いざというときの資金繰りが苦しくなる。定期的に経費削減を行えば、より多くの現金を手元に確保しやすくなる。

減価償却は現金支出を伴わないと考える経営者もいるかもしれないが、それは誤解。減価償却を計上する前に固定資産を購入しているため、この時点でキャッシュアウトしているのだ。そのため、「経費を計上する=現金が減っている」と考えてよい。

(3)資金調達を行うのため

コロナ渦の昨今ではさまざまなカタチで融資が行われている。しかし本来であれば、融資とは自己資金がないと受けられないものであり、普段から利益を生み出せる企業体質でないと審査には通りにくい。融資は本来、日頃の経費削減を意識して少しでも利益を確保会社ほど有利なものなのである。

なお、融資以外にも補助金や助成金、エンジェル投資家からの資金調達方法があるが、企業が利益を生み出せるかどうかを問われる。定期的な経費削減を行いなっており、利益を確保する力があることを示す必要があるのだ。

(4)事業継続と拡大のため

コロナ禍では、現金不足で休廃業や倒産が急増した。言い換えれば「手持ち資金が多いほど事業を継続できる可能性が増す」ということ。経費削減を怠ればそのリスクを負うこととなる。

また、手持ち現金が増えれば、事業への再投資や新たな販路拡大も行いやすくなる。現金がなければ、新たな事業展開ができずに事業縮小や赤字に陥る恐れがある。現金はどのような場面でも欠かせず、現金を生むのは定期的な経費削減なのである。

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経費削減を優先すべき4つのコスト

経費削減を行う際に、優先的に着目すべき4つのコストを紹介。会社の事業や業態によって削減すべき経費は異なるが、いずれもどのような会社でも一般的なものばかり。

検討するべき経費1:地代家賃

地代家賃とは、土地や建物の使用に伴う経費のこと。具体的には、会社の事務所・工場・店舗・倉庫の家賃や共益費、更新料、月極の駐車場代や土地の使用料などが該当する。会社の売上や利益に関係なく、必ず一定額の現金支出となるので、収益低下に伴って資金繰り悪化の原因となりやすい。

コロナ禍以降はテレワークの導入も推進されており、経費削減の際にまず着目すべきコストだろう。

検討するべき経費2:人件費

人件費とは、雇用した人にかかる費用全般を言う。給与や賞与だけではなく、社会保険や労働保険といった法定福利費、慶弔金や社員旅行代といった福利厚生費、研修費、社宅費用や退職金なども含まれる。

また、毎日の役員・従業員の通勤費は名目上「旅費交通費」に含まれるが、実質的には人件費となり、こういったものをまとめると膨大な金額になる。 人材は会社にとって不可欠なものではあるが、費用分の生産性があるかなど、経営者として検討すべき項目。

検討するべき経費3:旅費交通費・通信費

旅費交通費は、役員・従業員の毎日の通勤交通費の他、出張費や転勤の際の交通費を含む。通信費は、郵便・電話・インターネットの回線費が該当するが、金額が10万円未満ならスマートフォンやタブレットといったモバイルツールも含まれる。

勤務時間に使うモバイルツールや出張費などの経費削減は難しいと思うかもしれない。ただ、コロナ禍以降はオンライン会議が主流となってきており、出張の機会が減っている。また、在宅勤務が増えたことから事務所や店舗での通信費が激減した。

守秘義務の観点から、会社用モバイルツールなどの経費削減は難しいかもしれないが、携帯電話の通信プランを見直すなど、経費削減のための工夫をする余地があるかもしれない。

検討するべき経費4:水道光熱費・消耗品費など

飲食店や小売店では、営業時間に比例して水道光熱費が高くなる。また事務や営業であれば、コピー代や紙代、文房具代などといった消耗品費にコストがかかる。こういった経費は、日常的に使用するだけでなく、使用と同時に料金を支払うわけではない。さらに、地代家賃や人件費ほど支出する金額は大きくないので、経費削減の対象として意識されにくい。

しかし、コロナ禍で営業自粛を余儀なくされて以降、意識し始めた経営者も多いはずだ。事業の根幹に関わるため、経費削減に慎重にならざるを得ないが、細かく見直せば資金繰りの改善と生産性の向上につながるはずだ。

経費削減に活用できる具体的な4つの方法

ここからは、具体的な経費削減策を見ていこう。会社の経費削減方法として、以下の4つを紹介する。

経費削減策1:テレワークの活用

コロナ禍によって会社への出勤や対面での営業や打合せが難しくなり、テレワークに切り替えざるを得なくなった経営者もいるだろう。テレワークに移行したことで、利益と手持ち現金が増えたことを実感した経営者もいるかもしれない。

テレワークを活用すれば、会社本体でかかる交通費や通信費などの経費削減ができる上に、社員それぞれのプライベートの時間も尊重できる。テレワークに切り替えたことで仕事へのメリハリがつき、より効率的に仕事ができるようになった従業員もいるだろう。

経費削減策2:事務所移転の検討

コロナ禍によって、「都内に本社がある」ことはブランド価値とは言い難くなり、「緊急事態でも平常時と変わらなり価値を提供できる」ことが、会社のブランド価値を示す一つの指標となった。

テレワークの導入によって、経費削減のために都内オフィスの規模縮小を図る経営者もいるが、中には事務所そのものを郊外や地方に移転しようと考えるところもある。パソナによる淡路島への本社機能移転はその一例だ。

郊外や地方は、都内に比べて圧倒的にマンションなどの家賃が安いため、経費削減効果が高い。また、特定の郊外エリアに在住している従業員が多いなら、朝夕の通勤負担も軽減され、家族と過ごす時間を増やせるといったメリットもある。

仮に本社機能の移転に抵抗があるならば、ミーティングをするためのサテライトオフィスを借りるという手もある。

経費削減策3:アウトソーシング・ITツールの活用

テレワークの普及に伴って、これまで対面が当たり前だった打合せや営業がオンラインに切り替わり、ITツールの活用度合いが増えた会社もあるだろう。前述の通り、テレワークの導入は通勤費などの経費削減効果が期待できる。

また、アウトソーシングサービスの活用による経費削減も考えられる。経費精算や会計処理を画像撮影で自動的に処理するサービスを活用して簡略化したり、デザインや文書作成を外部に発注したりすることもできる。

ITツールやアウトソーシングを活用すると、単に経費を圧縮できるだけでなく、固定費化した経費を変動費として扱えるようになるため、状況に応じてコストコントロールしやすくなるのだ。また、新しくできた余裕時間を別の業務に充てられるメリットもあるため、経費削減策の一つとしておすすめだ。

経費削減策4:契約交渉・変更

コロナ禍で、不動産業界を中心に買い手市場に切り替わっているため、減額交渉も行いやすくなっているだろう。高い家賃や地代に悩んでいるのなら、経費削減のために交渉をしてみよう。

また、その他の経費でも交渉が可能なら検討してみるとよい。仕入先が減額交渉に応じないのであれば、発注先そのものを変えるという選択肢もある。経費削減のための視野を広げて、いろいろな可能性を探るとよい。

経費削減するときの注意点

経費削減は、生産性を上げるだけでなく会社の維持や成長にも欠かせない。ただし、経費削減の際には、次の3つの点に注意しよう。

(1)自社商品・サービスの質の低下

経費削減の対象として材料費や商品代を検討することもあるだろうが、「安ければいい」になってしまうと自社製品やサービスの質が下がり、顧客が離れることになりかねない。

(2)従業員のモチベーションの低下

労働時間の短縮によって、給与や賞与の減額を図る経営者もいるかもしれないが、安易な社員報酬の減額は従業員の士気低下につながる。人事評価制度を見直すなどして、「経費は下げても生産性は下げない」といった工夫が必要だ。

(3)会社の信用の低下

人件費や仕入価格を安易に減額すると、従業員や取引先が悪評を流して会社の信用が下がることがある。経費削減を考えるなら、代わりに会社の信頼向上の対策も考えよう。

経費削減は経営に必要不可欠な視点

経費削減は、事業を安定的に持続化するためには必要不可欠である。ただ、人件費などの経費削減は、社員のモチベーション維持にも関わることなので、経費削減の取り組みについて、その妥当性を社員に説明する必要だ。

コロナ禍という外部要因によって、経営危機に瀕した経営者もいるかもしれないが、テレワークの普及などにより、これまでできなかった経費削減策を考えるきっかけにもなっている。

経費削減の効果をしっかりと検証しながら、定期的なコストの見直しに努めてもらいたい。

文・鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)