クレジットカードでの商品購入の際に、分割払いが可能な「リボ払い」は、事業用備品の同時購入などの際に役立つ。しかし、リボ払いは事業を圧迫する要因にもなり得る。意外と知らないリボ払いの仕組みやメリットやデメリットを、具体例を交えながら解説。
目次
リボ払いとはどういった仕組みなのか

リボ払いとは「リボルビング払い」の略であり、クレジットカードの支払い方法の一つだ。リボ払いの他にも、クレジットカードの支払い方法には、一括払いや分割払いなどもある。
リボ払いは、クレジットカードの利用金額や利用件数を、あらかじめ設定した一定の金額にして月々支払う方式だ。一見類似した支払い方法である分割払いは、カード利用時に利用金額の支払い回数を選んで、回数分だけ分割して毎月支払う方式である。つまり軸となるものが以下のように違う。
リボ払い:支払額を軸に支払う 分割払い:支払い回数を軸に支払う
リボ払いは毎月の支払額を自身で確定させることができるので、月々の出費が把握しやすい。一方で分割払いは支払回数を確定させるので支払いの終了月がいつかを決めることができる。リボ払いと分割払いのメリットとデメリットを理解して、どちらを選択するのがよいかを考えたい。
リボ払いの支払い方式
リボ払いには「定額方式」「定率方式」「残高スライド方式」の3種類の支払い方式があり、その違いは下記の通り。
(1)定額方式
金利によって支払い残高が増加しても、毎月支払う金額を一定に保つ方式だ。大きな買い物をして支払い残高が増えても、自分で設定した支払い金額を支払い続けられる。ただし、設定した支払い金額が低ければ、返済期間が長期化して手数料が大きくなる傾向が高い。
(2)定率方式
定額方式は金額を固定して支払い続けるが、定率方式は支払い残高に対する支払い割合を固定して返済する方式だ。
(3)残高スライド方式
あらかじめ決められている支払い残高によって、毎月支払う金額が自動的に決まる方式だ。例えば、支払い残高20万円までは2万円支払うといったように定められる。
残高スライド方式の場合、自分で毎月の支払い金額を設定しなくとも、支払い残高によって毎月の返済金額が自動的に決まるので、支払い金額を増やしたい場合などは都度確認が必須だ。
リボ払いのメリットとデメリット
リボ払いに対してネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれないが、リボ払いという支払い方法が存在している以上は、メリットとデメリットの両方がある。
リボ払いのメリット
リボ払いのメリットは、一度に支払う金額を抑えられることである。
事業活動をしている中で、外部要因の影響でクレジットカードによる出費が重なってしまうこともあるだろう。特にこれから事業を開始しようと考えているかたにとっては初期費用の金額は大きな支出だ。その際に、一気に返済額を引き落とされてしまうと、経営を圧迫してしまうことになりかねない。
リボ払いであれば、出費がやむを得ず重なってしまう場合でも、毎月の支払い金額を自分の思うようにコントロールできる。あくまでも返済を先伸ばしていることを忘れてはいけないが、短期的に支払いをコントロールできる点は、リボ払いの最大のメリットだ。
また、極論だが、手元にお金がなくても商品を購入することが可能だ。どうしてもこの瞬間に購入したいものがある人にとって、リボ払いがそんな場面を救ってくれることがあるのは事実だ。また、経営者の場合は、リボ払いを活用することで資金繰りが安定し、事業計画が立てやすくなる場合もある。
リボ払いのデメリット
リボ払いの最大のデメリットは、高額な利息がかかることである。
当たり前だが、リボ払いには金利がかかる。リボ払いの金利は共通ではなく、クレジットカードによって異なる。リボ払い時の返済金額を低く設定してしまうと、支払い期間が長期化して利息が膨らむため、いつまでたっても返済が終わらない現象が起きる。
あくまでも今目の前にお金がないにも関わらず支出を増やしその時は備品なども購入できているが身の丈に合っていない支出を増やすことで返済がずっと続いてしまう可能性が高い。
リボ払いを検討する前に知っておきたい注意点
リボ払いに関しては、デメリットの面が大きい。リボ払いのメリットとして挙げた点は、あくまでも最終手段であり、根本的な問題はリボ払いを利用しないような家計管理だ。
ただし、どうしてもリボ払いを利用しないといけない時もあるかもしれない。そんな時に絶対に知っておきたい注意点を解説する。
リボ払いの注意点1:支払い期限が伸びる可能性が高い
そもそもリボ払いを利用するということは、手元に資金がないにも関わらず事業用備品などを購入し、収入よりも支出が多い可能性が高い。そのため、リボ払いの返済額を低く設定してしまう事態に陥りやすい。
リボ払いには金利が掛かるが、毎月の返済金額を低く設定していると、支払い金額のほとんどを手数料が占めてしまい、元金の割合が支払い金額の半分もないという現象も起こり得る。そうなってしまえば、リボ払いの返済期限が数年にもなってしまうので、注意が必要だ。
返済金額の設定によってリボ払いは有効活用できるケースもあるので決して返済金額を低く設定しすぎないことがポイントだ。返済金額の変更は各クレジットカード会社によって異なるが難しい操作は必要無い。返済できるお金が準備できたら返済金額を増額したり、繰り上げ返済を活用することが重要だ。
リボ払いの注意点2:手数料を事前に把握する
リボ払いを軽く見てはいけない。毎月の返済金額を少額にすることで、さまざまな商品を同時購入できてしまうが、返済で痛い目を見ることになる。
ここでは、リボ払いを利用した時に、実際にどのぐらいの手数料や返済期間になるのか、以下の条件で2つのシミュレーションケースを解説する。
利用予定金額 | 1,000,000円 |
手数料率(実質年率) | 15.00% |
利用日 | 2020年12月20日 |
支払い日 | 27日 |
支払い方法 | リボ |
支払いコース | 定額方式 |
・ケース1:定額方式の返済額が2万円の場合
100万円の商品を購入したのにも関わらず、返済金額が2万円と低額の場合、返済の期間や支払い総額がどのぐらいになるか想像がつくだろうか。
回数 | 支払い月 | 支払い額 | 手数料 | 元金 | 元金残 |
1 | 2021年1月 | 20,000円 | 12,734円 | 7,266円 | 992,734円 |
2 | 2021年2月 | 20,000円 | 12,647円 | 7,353円 | 985,381円 |
3 | 2021年3月 | 20,000円 | 11,338円 | 8,662円 | 976,719円 |
4 | 2021年4月 | 20,000円 | 12,443円 | 7,557円 | 969,162円 |
5 | 2021年5月 | 20,000円 | 11,948円 | 8,052円 | 961,110円 |
6 | 2021年6月 | 20,000円 | 12,244円 | 7,756円 | 953,354円 |
7 | 2021年7月 | 20,000円 | 11,753円 | 8,247円 | 945,107円 |
8 | 2021年8月 | 20,000円 | 12,040円 | 7,960円 | 937,147円 |
9 | 2021年9月 | 20,000円 | 11,938円 | 8,062円 | 929,085円 |
10 | 2021年10月 | 20,000円 | 11,454円 | 8,546円 | 920,539円 |
11 | 2021年11月 | 20,000円 | 11,727円 | 8,273円 | 912,266円 |
12 | 2021年12月 | 20,000円 | 11,247円 | 8,753円 | 903,513円 |
13 | 2022年1月 | 20,000円 | 11,510円 | 8,490円 | 895,023円 |
14 | 2022年2月 | 20,000円 | 11,402円 | 8,598円 | 886,425円 |
15 | 2022年3月 | 20,000円 | 10,199円 | 9,801円 | 876,624円 |
16 | 2022年4月 | 20,000円 | 11,167円 | 8,833円 | 867,791円 |
17 | 2022年5月 | 20,000円 | 10,698円 | 9,302円 | 858,489円 |
18 | 2022年6月 | 20,000円 | 10,936円 | 9,064円 | 849,425円 |
19 | 2022年7月 | 20,000円 | 10,472円 | 9,528円 | 839,897円 |
20 | 2022年8月 | 20,000円 | 10,700円 | 9,300円 | 830,597円 |
60 | 2025年12月 | 20,000円 | 4,329円 | 15,671円 | 335,519円 |
61 | 2026年1月 | 20,000円 | 4,274円 | 15,726円 | 319,793円 |
62 | 2026年2月 | 20,000円 | 4,074円 | 15,926円 | 303,867円 |
63 | 2026年3月 | 20,000円 | 3,496円 | 16,504円 | 287,363円 |
64 | 2026年4月 | 20,000円 | 3,660円 | 16,340円 | 271,023円 |
65 | 2026年5月 | 20,000円 | 3,341円 | 16,659円 | 254,364円 |
66 | 2026年6月 | 20,000円 | 3,240円 | 16,760円 | 237,604円 |
67 | 2026年7月 | 20,000円 | 2,929円 | 17,071円 | 220,533円 |
68 | 2026年8月 | 20,000円 | 2,809円 | 17,191円 | 203,342円 |
69 | 2026年9月 | 20,000円 | 2,590円 | 17,410円 | 185,932円 |
70 | 2026年10月 | 20,000円 | 2,292円 | 17,708円 | 168,224円 |
71 | 2026年11月 | 20,000円 | 2,143円 | 17,857円 | 150,367円 |
72 | 2026年12月 | 20,000円 | 1,853円 | 18,147円 | 132,220円 |
73 | 2027年1月 | 20,000円 | 1,684円 | 18,316円 | 113,904円 |
74 | 2027年2月 | 20,000円 | 1,451円 | 18,549円 | 95,355円 |
75 | 2027年3月 | 20,000円 | 1,097円 | 18,903円 | 76,452円 |
76 | 2027年4月 | 20,000円 | 973円 | 19,027円 | 57,425円 |
77 | 2027年5月 | 20,000円 | 707円 | 19,293円 | 38,132円 |
78 | 2027年6月 | 20,000円 | 485円 | 19,515円 | 18,617円 |
79 | 2027年7月 | 18,846円 | 229円 | 18,617円 | 0円 |
※あくまでもシミュレーションなので実際の返済額と異なる部分もある
支払い完了には約7年間が必要で、総額で約160万円かかる計算になる。100万円の商品を購入して、160万円を支払っているのだ。リボ払いは気づいた時には莫大な支払い金額になってしまうことがあり、定期的に繰り上げ返済や毎月の返済金額の見直しをおすすめする。
・ケース2:定額方式の返済金額が8万円の場合
ケース1のシミュレーション条件の返済金額を、2万円から8万円に増額した場合は、下記の返済プランになる。
回数 | 支払い月 | 支払い額 | 手数料 | 元金 | 元金残 |
1 | 2021年1月 | 80,000円 | 12,734円 | 67,266円 | 932,734円 |
2 | 2021年2月 | 80,000円 | 11,882円 | 68,118円 | 864,616円 |
3 | 2021年3月 | 80,000円 | 9,949円 | 70,051円 | 794,565円 |
4 | 2021年4月 | 80,000円 | 10,122円 | 69,878円 | 724,687円 |
5 | 2021年5月 | 80,000円 | 8,934円 | 71,066円 | 653,621円 |
6 | 2021年6月 | 80,000円 | 8,326円 | 71,674円 | 581,947円 |
7 | 2021年7月 | 80,000円 | 7,174円 | 72,826円 | 509,121円 |
8 | 2021年8月 | 80,000円 | 6,486円 | 73,514円 | 435,607円 |
9 | 2021年9月 | 80,000円 | 5,549円 | 74,451円 | 361,156円 |
10 | 2021年10月 | 80,000円 | 4,452円 | 75,548円 | 285,608円 |
11 | 2021年11月 | 80,000円 | 3,638円 | 76,362円 | 209,246円 |
12 | 2021年12月 | 80,000円 | 2,579円 | 77,421円 | 131,825円 |
13 | 2022年1月 | 80,000円 | 1,679円 | 78,321円 | 53,504円 |
14 | 2022年2月 | 54,185円 | 681円 | 53,504円 | 0円 |
※あくまでもシミュレーションなので実際の返済額と異なる部分もある
支払い回数は79回から14回に減り、支払い総額も約110万円と50万円ほど低くなる。この比較で、いかに毎月の支払い金額を低く設定したリボ払いの最終的な金額の負荷が高いかわかるだろう。リボ払いの怖いところは、毎月の返済金額を低く設定していると返済金額が統一されることで返済に対する意識が低くなることだ。
あくまでもリボ払いは高い金利でお金を借りている事に過ぎない。ケース1とケース2で比較した通り毎月の返済金額を増やすことで数年の返済期間を短縮できる。
リボ払いの注意点3:返済は先延ばしにしない
リボ払いは気づいた時には手数料が膨らんでいるケースが多い。そんな状態になってから返済資金を工面するよりも普段から繰り上げ返済を心がけるべきだ。クレジットカードによっては、わざわざATMに出向いて返済しなくても、インターネットから気軽に繰り上げ返済をすることが可能だ。
返済金額を毎月設定し直すこともできるので、少しでも生活や経営をする中で余裕が生まれたら、リボ払いの返済を第一優先させるべき。絶対に期日を伸ばさないようにしたい。繰り返しになるが、リボ払いの返済を先延ばしにすることで得られるメリットは何もない。
使用法に注意!最適なシーンでリボ払いを活用する
リボ払いには、金利面などでのデメリットが多く存在しており、活用方法を間違えると大きな損失を受ける可能性が高い。リボ払いで一番怖いのは毎月の返済金額を低く設定していると「返済している気」になっていることだ。
返済金額によっては毎月の返済している金額は利息分がほとんどで元金は全く減っていないケースも多々ある。
事業用に大きな買い物をしなければならず、どうしても支出を一時的にコントロールしたいケースもあるだろう。そんな時に、リボ払いは便利であることも確かだ。
リボ払いという便利な支払い方法を有効活用するには、メリットよりもデメリットについて理解し、リボ払いはあくまで最終手段だと考えておこう。
文・鴨志田大輔(ファイナンシャルプランナー)