巷でICTやIoTなどを耳にするが、詳細についてよくわからない人も多いのではないか。ICTやIoTは、導入することで業務を効率化し、生産性を上げるための解決策になる。今回はICTやIoTを企業経営にうまく活用するためのポイントやメリット・デメリット、事例を紹介する。
目次
ICTとIoTとは?

日本では、IT(Information Technology)という言葉が浸透しているが、グローバルな流れでは、ICT(Information and Communication Technology)が使われている。
近年ITの急速な発達とともにICTの活用範囲は拡大し、日本においても、ICTやIoTの使用が見られるようになってきた。ここでは、ITとの関係を踏まえ、ICTとIoTについて概要を解説する。
ICTとは?ITとはどのような関係?
IT(Information Technology)とは、コンピュータやネットワークに関連することを技術的な視点でとらえた情報技術の総称といえる。
現在日本では、情報技術に関する情報システム・パソコン・インターネットなど、システムや情報関連のインフラを「IT」と呼んでいる。また、情報機器のハード・アプリケーション開発のほか、業務のデジタル化・効率化のための技術もその範疇に含まれる。
ICT(Information and Communication Technology)は、技術的な側面が強かったITに、人間とのコミュニケーションの側面を加えた情報伝達技術の総称だ。
近年、コンピュータやネットワークの活用は単なる技術ではなく、人間同士や人間とモノとの関係性を密接にするツールに発展し、その有効性は広く社会に広まっている。
グローバルではすでに、ICTという言葉が使われていたが、日本においても、コンピュータやネットワークの活用に合わせ、ICTを使う機会が増えている。
総務省では2004年にITからICTへ全面的に移行し、毎年情報通信分野において重点的に取り組むべき施策をまとめている「IT政策大綱」を「ICT政策大綱」に改称している。
IoTとは?
IoT(Internet of Things)とは、パソコンやスマートフォンに代表される通信機器を用い「モノ」を操作したり、「モノ」自体がインターネットにダイレクトにつながって活用できるようになる仕組みや技術のことを指す。IoTは、「モノのインターネット」とも呼ばれている。
IoTは日常生活でも見ることができる。たとえば、スマートフォンなどから遠隔操作が可能な家電製品がそうだ。また、自動車自体がインターネットとつながってドライバーと有用なコミュニケーションをとるコネクテッドカーや自動運転車も市場に登場している。
ICT IoTの導入で実現できることは?
ICT IoTの導入によって、今まで以上に多くの可能性が実現できるようになった。ここでは、ICT IoTの導入で実現できることをいくつか紹介する。
ICTの導入で実現できること
ICTによって、コンピュータやネットワークの活用は単なる技術ではなく、人間同士や人間とモノとの関係性を密接にするツールへと進化した。ICTの導入で今まで以上に人間とのコミュニケーションの側面を加えた情報伝達が実現できるのだ。
・人とのコミュニケーションを活性化
最もシンプルなICTは、スマートフォンやタブレットの活用だ。近年最も目を見張るのが、携帯が可能な通信機器の発展とそれらの通信機器で活用できるアプリケーションの開発だ。
また、1対1のコミュニケーションだけではなく、複数のメンバー間で、最適な情報をリアルタイムで連携することができるようになったことが挙げられる。
・業務の効率化、場所にとらわれない業務を可能にする
ICTによって、ビジネスマンは、企業のオフィスでしかできなかった作業や、手にすることができなかった情報をスマートフォンやタブレットによって簡単に実行できるようになった。その結果、業務の効率化や場所にとらわれない業務が可能となった。
さらに、リモートワークを活用することで、社員のニーズに合わせた働き方の実現や、BCP対策などにも役立てることができる。
また、ICTの導入で実現できることのひとつに、Webサイトなどを活用したサービスの向上がある。従来の顧客対応は、社員が行うため会社が開いている時間帯しか対応できなかった。しかし、Webサイトに問い合わせ窓口を設置することで、24時間土日祝日に関わらず問い合わせを受け付けることができる。
IoTの導入で実現できること
「モノのインターネット」と呼ばれるIoTの仕組みは、データを取得してインターネットに連携し、蓄積されたデータに基づいて分析や最適なアクションを実行する流れになる。
たとえば、モノに設計されたセンサーやカメラによって、状況や場所などの情報データをキャッチし、インターネットに送ってクラウド上に蓄積する。情報データはクラウドシステムに設計されたアプリケーションによって具体的な解決策を実行する。
・モノの状態を把握する
IoTの導入で製造業の現場でかかるコスト削減の実現も夢ではない。自動的に日々使われる電力などのデータを取得し、クラウド上に蓄積する。そして、製造ラインごとのコストを分析することで、コスト削減が可能となる。
・モノの状態を管理し、自動で操作
モノの状態を管理し、自動で操作することもIoTの導入で実現できることだ。
IoTによって、近年農業などの第一次産業の作業が大きく変貌を遂げている。IoTの導入により、センサーやカメラが温度・湿度をキャッチして、ビニールハウスなどの設備の室内環境を自動的に農作物にとって最適な状態に保ち、自動で水やりを行うことが実現している。
・モノの動きを検知し通知
モノの動きを検知し通知することも、IoTの導入で実現できることである。たとえば、ビルなどの建物の中にもIoTが活用されている。たとえばエレベーターなどに異常な動きが発生した時にはIoTが感知し早急に通知を行うシステムが導入されている。
・モノ同士の通信
IoTを導入することにより、モノ同士の通信の可能性も広がりを見せている。たとえば、次のバスが停留所に到着する時間が電光掲示板に表示されているのを目にするが、バスの位置情報をIoTが把握し電光掲示板に通信して表示している例である。
ICT IoTを導入するメリット
ICT IoTの進化は目覚ましく、導入することでいくつかのメリットを得ることができる。
遠隔地で機械の稼働状況などをWEB上で把握できる
ICT IoTを導入した時の実務的なメリットは、遠隔地で情報を把握することが可能になることだ。現地に行かなければ確認できなかったことが、離れた場所でも把握できることは大きなメリットとなる。
処理の自動化で生産効率が向上する
ICT IoTを導入した時の効果としてのメリットは、従来、人が行ってきた処理が自動化されることで実現する、効率化とコスト削減による生産性の向上である。
自動化によって、ヒューマンエラーを防げる
ICT IoTを導入することで実現する自動化により、発生をゼロに抑えることが難しいヒューマンエラーを防止することができる。
ICT IoTを導入するデメリット
ICT IoTの導入はメリットだけではない。デメリットもしっかり掴んでおく必要がある。
ハッキングなどによりシステムの運用や情報保護に関する危険性が高まる
ICT IoTのデメリットとして注意したいのが、セキュリティ対策だ。近年ハッキングなどの手口が巧妙化し、システムの運用や情報保護に関する危険性が高まっている。ICT IoTは運用のベースにインターネットを使っているため、サーバー攻撃に対し厳重に注意しなければならない。
ネットワークがダウンした場合に受ける損害が大きい
ICT IoTのデメリットに、ネットワークがダウンした場合に受ける損害が大きいという点がある。何らかのトラブルでネットワークがダウンした場合、ICT IoTは機能しない。近年は自然災害が多いため、電力供給が途絶えてしまった時の対策も考えておく必要がある。
ICT IoT活用に関するノウハウが適切に継承されないと事業継続は難しい
ICT IoTの運用には、スキルと経験をもった人材が必要だ。ICT IoT活用に関するノウハウが適切に継承されないと事業の継続は難しい。そのため、人材不足が深刻化する中でも人材確保のための対策を考えなければならない。
ICT IoTはどのようなところで活用されている?
ICT IoTは、それぞれ具体的にどのようなところで活用されているのだろうか。ここでは活用事例をいくつか紹介する。
ICTの活用事例
ICT活用の過去に起きた身近な例としては、テレビのデジタル化によって実現したさまざまなサービスの提供がある。また、スマートフォンの高速通信(5G)で実現する通信の高速化もコミュニケーションをさらに最適化するICTといえる。
近年増加しているテレワークなど、在宅ワークや地方活性化につながる地方での在宅任務もICTの活用事例である。
IoTの活用事例
IoTは、パソコンやスマートフォンで「モノ」を操作したり、「モノ」自体がインターネットにダイレクトにつながって活用できるようになる仕組みや技術のことだ。
IoTの活用で目覚ましいのが、第一次産業である。農作物を育てるときに最も重要なのは、雨や気候の変化による適時の対応だ。また、漁業(養殖産業)の場合、海の状況やいけすの中の魚の状態に応じたえさやりなどは、現地に出向いて状況に合わせた対応が必要だった。
近年、農業や漁業において人の感覚をもとに行われてきた作業を、センサーやカメラを用いて行うことが増えてきている。収集したデータはインターネットに送ってクラウド上に蓄積され、自宅のパソコンやスマートフォンで情報を確認して機械に指示する。
その結果、人が指示を行わなくても、データに基づいた作業を自動的に実行することが可能となっている。
ICT IoTによって企業の効率化と生産性の向上が続く
現在もICT IoTで実現できることは、スピード感を増して進化している。技術的な側面が強かったITに、人間とのコミュニケーションの側面を加えた情報伝達技術であるICTの取り組みは、日本の課題であるデジタルトランスフォーメーション(DX)にもつながり、重要な取り組みとして最優先で進行している。
IoTは、スマートフォンなどから遠隔操作が可能な家電製品や、コネクテッドカー、自動運転車など日常的に目に見える形で実現している。ICT IoTはさまざまな業界で導入されており、今後も企業の効率化と生産性の向上に役立っていくであろう。
文・小塚信夫(ビジネスライター)