企業が勝ち残る人材管理には、手法があるだろうか。今回は、企業経営において重要な人材管理をテーマに、人材管理を取り巻く環境の変化を分析し、人材管理の手法を採用や人材配置、等級制度、報酬制度、人事評価制度、人材育成、組織のモチベーション管理、人事機能などの項目ごとに解説する。

目次

  1. 日本の人材管理を取り巻く3つの環境変化
    1. 1.グローバル化
    2. 2.デジタル化
    3. 3.少子高齢化
  2. 従来の日本型人材管理では勝ち残ることが難しくなってきた
    1. 成功していた日本型人材管理
    2. 機能しなくなった日本型人材管理
  3. 日本の現状に対応するための人材管理のソリューション
    1. グローバル化
    2. デジタル化
    3. 少子高齢化
  4. 経営者が人材管理を考える際に重要な3つのポイント
    1. 1.経営戦略として人材管理を考える
    2. 2.社員と企業の成長を目指す
    3. 3.経営者自身がコミットする
  5. 勝ち残る企業の人材管理とは?
  6. 改善すべき人材管理の手法
    1. 採用
    2. 人員配置
    3. 等級制度
    4. 報酬制度
    5. 人事評価制度
    6. 人材育成
    7. 組織のモチベーション管理
    8. 人事機能
  7. 社会環境の変化に合わせ人材管理も変えていこう

日本の人材管理を取り巻く3つの環境変化

人材管理、企業が勝ち残る秘訣とは?現状と改善すべき仕事手法を項目ごとに解説
(画像=Flamingo Images/Adobe Stock)

産業経済省が2019年にまとめた「人材マネジメントの在り方に関する課題意識」では、日本企業の人材管理を取り巻く社会環境において、3つの大きな変化が起こっていることを指摘している。社会環境における3つの変化とは「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」であり、これらは企業の人材管理の在り方に大きな影響を及ぼす。

1.グローバル化

グローバル化は世界全体の大きな流れであり、日本企業だけが蚊帳の外にいることはできない。大企業だけでなく、中小企業にもグローバル化の波が押し寄せている。グローバル化は、世界の企業との競争を生むだけでなく、巨大なグローバル市場に進出するチャンスを日本企業に与えている。

つまり、日本国内の限られた市場だけではなく、世界の巨大市場が出現したのである。世界には、先進国だけでなく途上国も多く、それぞれの国に多様なニーズが存在する。日本企業の持つスキルや技術は、アイデア次第で大きなビジネスチャンスをつかめるのだ。実際、日本企業の幅広い業種において、海外売上高比率が上昇している。

2.デジタル化

デジタル化は、世界企業の力関係を大きく変えた。それがよくわかるのが、世界企業の時価総額ランキングである。以下の表は、2009年と2018年の時価総額上位10企業だ。

順位 2009年時価総額上位10位 2018年時価総額上位10位
1 Exxon Mobil Apple
2 Petro China Alphabet
3 Walmart Microsoft
4 ICBC Amazon.com
5 China Mobile Tencent
6 Microsoft Berkshire Hathaway
7 AT&T Alibaba
8 Johnson & Johnson Facebook
9 Royal Dutch Shell JPMorgan Chase
10 Procter & Gamble Johnson & Johnson

引用元:産業経済省「人材マネジメントの在り方に関する課題意識」(出所)pwc(2018)”Global Top 100 Companies by market capitalization”より作成。

2009年時点ではテクノロジー産業は6位のMicrosoftだけだったが、2018年では、テクノロジー産業のApple、Alphabet、Microsoft、Tencent、Facebookをはじめ、Amazon.com、Alibabaといった消費者サービス産業がトップ10入りしている。いずれの企業も、コンピュータやインターネットを介したデジタル化をベースに、急速に事業を拡大してきた企業である。

3.少子高齢化

日本の少子高齢化は、企業の人材確保を困難にしている。日本の人口は減り続け、2050年には約1億人にまで減少する見込みだ。今後はさらに高齢化が進み、人口構成における生産年齢人口比率は急激に低下していく。今後企業は、今以上に人材確保が難しくなるのだ。

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従来の日本型人材管理では勝ち残ることが難しくなってきた

「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」をはじめとする社会環境の変化によって、従来の日本型人材管理では事業の継続が難しくなってきている。

成功していた日本型人材管理

日本型人材管理とは、終身雇用や年功序列制度をベースにした人材管理である。日本型人材管理は、かつて成功していた。その成功を支えていたのは、日本の「人口増加」「高度経済成長」「価値観や目標の共有が容易である単一文化」の3つだ。

機能しなくなった日本型人材管理

かつて成功していた日本型人材管理を支えていた3つの要素は、前述の「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」によって崩壊しつつある。少子高齢化によって企業は人材確保が困難になり、デジタル化とグローバル化の波の中で、高度経済成長は望めなくなっている。日本型人材管理は、役に立たなくなったのである。

日本の現状に対応するための人材管理のソリューション

今後企業が勝ち残るためには、3つの大きな社会環境の変化に対するソリューションが必要だ。

グローバル化

グローバル化を制するには、企業の人材管理をグローバル仕様にする必要がある。そのためには、以下の4つの人材管理が必要になるだろう。

・自社内で最適なスキルと経験のある人材を見つける
・グローバル戦略に対応できる人材を育成する
・社外から最適な人材を採用する
・人材管理と同時にグローバル戦略に対応する組織を構築する

デジタル化

デジタル化への対応は、今後企業が勝ち残っていくための戦略に不可欠だ。そのためには、デジタル化による仕事内容の変化に対応できる人材管理体制を構築しなければならない。

少子高齢化

少子高齢化による人材不足に対応するためには、限られた人材を最大限に活用するような人材管理をしなければならない。また、社員のモチベーションを保ち、生産性を上げ、人材を自社に留めておくために、社員のエンゲージメントを高める取り組みも必要になるだろう。さらに、ミレニアル世代と呼ばれるキャリア意識の高い若手社員を育成し、転職を防ぐためには、キャリア構築の支援が必要になる。

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経営者が人材管理を考える際に重要な3つのポイント

社会環境の変化の中で経営者が人材管理を考える際は、以下の3つのポイントを押さえておく必要がある。

1.経営戦略として人材管理を考える

人材管理は、経営戦略として考える必要がある。具体的には以下の3点に注意したい。

・経営戦略と人材管理に一貫性を持たせる
・求職者や既存社員に向けて、他社に負けない人事制度を構築する
・人事部と現場の役割と権限を再構築する

2.社員と企業の成長を目指す

「企業が社員を管理する」という一方的な考え方では、これからの人材管理は成功しない。社員の価値観や働き方が多様化する中、経営者には「企業の成長とともに社員の成長も目指す」という考え方が必要になるだろう。

3.経営者自身がコミットする

人材管理を人事や各部門のマネージャーに任せるだけでなく、経営者自身が現状を把握し、自社の課題を見つけ、解決に向けた取り組みにコミットする必要がある。

勝ち残る企業の人材管理とは?

勝ち残る企業の人材管理とは、どのようなものだろうか。それは、かつて成功していた日本型人材管理から、中途採用、再入社などによってメンバーが変化するような環境における人材管理への方向転換である。

今後企業が勝ち残るためには、経営戦略を実現することを念頭に置き、戦略に合わせて新卒、中途採用、再入社などによって機動的に人材を獲得し、そのような人材を適切に管理する体制を構築していかなければならないのである。

改善すべき人材管理の手法

人材管理を取り巻く社会環境の変化を分析し、今後勝ち残る企業の人材管理を解説してきた。ここからは、採用や人材配置、人事制度、報酬制度、人事評価制度、人材育成、組織のモチベーション管理、人事機能など、人材管理の項目ごとに手法を解説する。

採用

従来の人材管理における採用では、新卒採用を中心に人材確保が行われ、中途採用は専門的なスキルや経験が必要な場合のみ募集していた。これからの人材管理では、業務に必要な人材を必要な時に採用するような人材管理が必要であり、新卒採用、中途採用にとらわれない柔軟性が求められる。

人員配置

従来の人材管理における人員配置では、1人の社員が多くの職種や部署をローテーションするジェネラルローテーション制を採用し、会社都合の転勤を伴う人事異動がメインだった。

これからの人材管理では、スペシャリストを育成する職種内でのローテーションをメインとしながら、人材が必要なポジションが発生した場合に、社内で社員に向けジョブポスティングを実施する体制を整え、会社都合による転勤は原則実施しないことが望ましい。

等級制度

従来の人材管理における等級制度は、年功序列をベースとして、年齢による社内での公平性を重視していた。これからの人材管理では、年齢は関係なく社内に納得感があり、人材確保に資するよう求職者も魅力を感じるような等級制度を構築する必要があるだろう。

報酬制度

従来の人材管理における報酬制度は、勤続年数や社員のスキル、実績、家族構成などを総合的に勘案して決められていた。これからの人材管理では、従来の報酬制度をベースとしながらも、インセンティブの報酬については人材確保を考慮して、他社に負けない競争力のある制度を構築すべきだろう。

人事評価制度

従来の人材管理における人事評価制度は、どちらかというと昇格や昇給、賞与を決めるために実施されていた感がある。これからの人材管理では、個人のスキルアップ、キャリアアップにフォーカスし、その先に昇格や昇給、賞与があるという考え方で人事評価制度を考える必要がある。

人材育成

従来の人材管理における人材育成は、社員を階層や年次に分け、均質的な教育研修を実施するケースが多かった。これからの人材管理で優先的に進めるべき人材育成は、今後企業を先導していく幹部候補のグループを選抜し、選抜グループに対して集中的に投資し、同時にリテンションを実行していくことである。

組織のモチベーション管理

従来の人材管理のベースにあった終身雇用や年功序列制度の良いところは、企業が特に施策を実行しなくても、社員の愛社精神や帰属意識が高くなり、組織のモチベーションを維持できたことだ。

終身雇用や年功序列制度が過去のものになりつつある中、これからの人材管理では、企業は組織のモチベーションの維持・向上に資する施策を積極的かつ継続的に実施し、社員のエンゲージメントを高める必要があるだろう。

人事機能

人事部門の在り方、も変わらなければならない。人事部門は、従来の人材管理の中心だった。人材管理の仕事はすべて人事部門が権限を持ち、主導していたのだ。今後の企業経営にフィットする人材管理を実行するためには、人事部門に権限を集中するのではなく、部門長にも権限を持たせることが望ましい。

社会環境の変化に合わせ人材管理も変えていこう

3つの社会環境の変化「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」は、企業の人材管理の在り方に大きな影響を及ぼす。従来の日本型人材管理では、今後の事業継続は難しくなってきている中、勝ち残る企業の人材管理とは、かつて成功していた日本型人材管理ではなく、中途採用、再入社などによってメンバーが変化するような環境における人材管理なのだ。