現代社会で注目されている、サプライチェーンマネジメントと呼ばれる施策をご存じだろうか。市場が変化するにつれて、この施策の重要性はますます高まっている。さまざまな経営課題の解決につながる施策なので、経営者はぜひ最後までチェックしていこう。

目次

  1. サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?
  2. サプライチェーンマネジメントの必要性と注目される背景
  3. サプライチェーンマネジメントを導入するメリット
    1. 1.在庫の最適化によるコストカット
    2. 2.人的資源の活用・人材不足の解消
    3. 3.低コストで海外進出を狙えるようになる
  4. サプライチェーンマネジメントを導入するデメリット
    1. 1.多くの導入コストが必要になる
    2. 2.社内全体で意識を統一する必要がある
  5. サプライチェーンマネジメントの導入事例
    1. 【事例1】ニーズを先読みし、スムーズに納品する仕組みの実現/花王株式会社
    2. 【事例2】かんばんの導入による、ムダの削減と品質の向上/トヨタ自動車株式会社
    3. 【事例3】法人向けのSCMシステムの提供/株式会社日立製作所
  6. 中小企業におけるサプライチェーンマネジメントの課題とは?
    1. 1.導入コストだけではなく、システムの保守・運用コストも必要になる
    2. 2.サプライヤーの幅を広げる必要がある
  7. 多くの事例に目を通し、自社に最適な導入方法を見極めよう

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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?導入するメリットを解説
(画像=PIXTA)

サプライチェーンマネジメントの「サプライチェーン」とは、企業が製品の原材料を調達するところから、完成した製品を消費者が購入するまでのプロセス全体のことだ。つまり、サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、この一連のプロセスを最適化させることを意味する。

簡単に挙げるだけでも、サプライチェーンには調達や生産、物流、販売などの工程が含まれる。これら全ての工程の無駄を省き、物流と資金の流れを最適化することは決して簡単ではない。

しかし、企業のサプライチェーンを最適化すると、業務効率やリードタイムが大幅に改善されることから、最近では多くの企業がサプライチェーンマネジメントに興味を示している。

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サプライチェーンマネジメントの必要性と注目される背景

では、なぜ現代になってサプライチェーンマネジメントが注目され始めたのだろうか。

主な要因としては、「ビジネスモデルの変化」と「グローバル化」が挙げられる。例えば、最近ではインターネットを活用したECサイトが世界中に台頭した影響で、ニーズのある製品のみを製造・配送するビジネスが主流になりつつある。特にアパレルや家電、家具などの業界では、このような変化が顕著に表れているだろう。 また、トラックドライバーをはじめ、物流業界全体の人材不足が深刻化している点も、サプライチェーンマネジメントに注目が集まる要因だ。現代では、物流ルートや仕入れ量の適正化などにより、徹底的にムダを省かないと存続できない企業が増えてきている。

つまり、モノを大量生産すれば売れる時代は終わりつつあり、「必要なものを必要な分だけ販売する」ビジネスが浸透してきている。このような時代の変化に取り残されると、企業はたちまち競争力を失ってしまうため、その打開策として最近ではサプライチェーンマネジメントに多くの注目が集まっているのだ。

サプライチェーンマネジメントを導入するメリット

企業がサプライチェーンマネジメントを導入すると、具体的にどのようなメリットが発生するのだろうか。以下のメリットに魅力を感じる経営者は、サプライチェーンの見直しを積極的に検討していきたい。

1.在庫の最適化によるコストカット

サプライチェーンマネジメントを導入すると、原材料の仕入れ量や販路を見直すことになるため、必然的に在庫が最適化される。つまり、在庫の運送料や場所代を削減できるので、大幅なコストカットが実現可能となる。

また、メーカーと小売業者が販売情報を共有するようなシステムを構築すれば、急激な需要変化に対応することも可能だ。メーカー側は過度な在庫を抱えず、小売業者側はムダな運送が不要となるため、サプライチェーンマネジメントは両者にとってメリットが生じる施策となる。

2.人的資源の活用・人材不足の解消

製造工程や物流システムを見直すことで、人材をより有効活用できる点もサプライチェーンマネジメントを導入するメリットだ。例えば、ニーズに合わせて製品の製造量を調整すると、工場内で稼働させる人員やトラックドライバーの必要数を減らせる。

そして、余った人員を必要なところに再配置すれば、人材不足の解消や業務の効率化、人材費の削減など、企業にはさまざまな人的メリットが発生するだろう。

3.低コストで海外進出を狙えるようになる

サプライチェーンマネジメントには、海外進出のハードルを下げる効果もある。ここまで解説したように、サプライチェーンを見直すとコスト削減やリードタイムの短縮を実現できるため、より低コストで海外進出を狙えるようになるのだ。

特に資金や人脈などが限られた中小企業にとって、海外進出のハードルが下がる意味合いは非常に大きい。

サプライチェーンマネジメントを導入するデメリット

サプライチェーンマネジメントの導入前には、デメリットも細かく把握しておきたい。特に以下で挙げる2点は致命的なデメリットになり得るため、ひとつずつ丁寧に確認していこう。

1.多くの導入コストが必要になる

サプライチェーン全体を見直すとなると、場合によっては高額な設備や機器、システムが必要になる。また、さまざまな分野にIoTやITが導入されている現代では、「IT技術の活用」も欠かせない要素だ。

これらのものを万全にそろえられる資金力がないと、サプライチェーンマネジメントを進めることは難しい。特に中小企業においては、優れたIT人材の確保・教育のハードルが非常に高いため、ITに関する問題は真っ先に考える必要がある。

2.社内全体で意識を統一する必要がある

サプライチェーンマネジメントを進めるには、社内全体の意識を統一する必要がある。それぞれの部署や各工程で情報共有ができなければ、仕入れや物流などの調整が難しくなるためだ。

つまり、サプライチェーンマネジメントは、巨大な組織ほどハードルが高くなる。また、実際の施策による負担の増加や、社内に浸透している企業文化によっては、一部の従業員が拒絶反応を示す恐れもあるだろう。

しかし、そのような従業員も含めて意識統一ができないと、かえって業務プロセスが悪化してしまう可能性もある。

サプライチェーンマネジメントの導入事例

サプライチェーンマネジメントを進める方法としては、各プロセス間の情報共有や物流システムの見直し、ニーズをつかむための市場調査などが挙げられる。では、すでに導入している世の中の企業は、実際にどのような方法でサプライチェーンを改善しているのだろうか。

よりイメージをつかむために、以下ではサプライチェーンマネジメントの導入事例をチェックしていこう。

【事例1】ニーズを先読みし、スムーズに納品する仕組みの実現/花王株式会社

まずは、サプライチェーンマネジメントの分かりやすい導入事例から見ていこう。

大手化学メーカーの花王はサプライチェーンマネジメントの一環として、1,500以上の製品を受注から24時間以内に納品するシステムを導入した。さらに、消費者のニーズを先読みするために、IT技術を駆使した需要予測技術も導入している。

このように、同社は製造・販売の2つの工程を紐づけることで、在庫状況の改善に成功した。また、卸店を介さずに製品を提供できる仕組みが整えられているので、余計な人件費・運送コストなどの削減にもつながっているだろう。

【事例2】かんばんの導入による、ムダの削減と品質の向上/トヨタ自動車株式会社

世界的な企業であるトヨタ自動車は、補給部品の仕入れ先に対して「かんばん」を発行することで、仕入れの低コスト化やリードタイムの短縮を実現している。

トヨタ自動車が導入しているかんばんとは、生産・運搬の指示情報が記載された電子データ(※紙の場合もある)のことだ。かんばんには「いつ・どこに・どれだけ・何が・どんな順序で必要か」といった情報が記載されているため、かんばんを受け取った仕入れ先は迷うことなく作業を進められる。

また、製造プロセスを統一することで、補給部品の品質アップを図れる点もこの施策の優れているポイントだろう。

【事例3】法人向けのSCMシステムの提供/株式会社日立製作所

最後に、導入ではなく「SCMシステムの提供事例」についても紹介しよう。国内大手電機メーカーである日立は、「SynapseSUITE」と呼ばれるSCMシステムを法人に対して提供している。

具体的には、生産計画や販売計画の策定、需要予測などに関する商品を取り扱っており、これらの商品によってさまざまな企業のサプライチェーンマネジメントをサポートしている。なかでも、計画ソリューションに含まれる「サプライチェーンプランニング」は、同社が特に力を入れているSCMシステムだ。

ほかにも、キヤノンやNTTデータなど、商品としてSCMシステムを提供している事例は多く見受けられる。自社の力だけで進めることが難しいと感じた場合には、このような他社のSCMシステムを活用する方法もひとつの手になる。

中小企業におけるサプライチェーンマネジメントの課題とは?

中小経営者がサプライチェーンマネジメントを導入する際には、「中小企業における課題」も事前に把握しておくべきだ。実はサプライチェーンマネジメントにはいくつか課題があり、その影響で施策を進められない企業も多く存在している。

では、前述で紹介したデメリット以外にどのような課題があるのか、以下で詳しく解説していこう。

1.導入コストだけではなく、システムの保守・運用コストも必要になる

システムの保守・運用コストが常に発生する点は、中小企業にとって軽視できないポイントだろう。サプライチェーンマネジメントは複数の企業間で取り組むことが基本とはなるが、それでも導入する設備や機器、システムの内容によっては、継続的に多くのランニングコストが発生することになる。

また、それぞれの企業が異なる管理システムを利用していると、連携作業に多くの手間を費やすことになるので、人的なコストも深刻な問題点になる。このようなコストの問題を解決するには、IoTやクラウドなどの技術を積極的に活用し、運用コストや連携コストを抑えやすい体制を構築することが必要だ。

2.サプライヤーの幅を広げる必要がある

大企業に比べると、中小企業のサプライヤーの幅は限られている。例えば、地方の中小企業は仕入先の選択肢が少ないため、なかには仕方なくコストの高いサプライヤーから原材料を調達している企業もいるだろう。

しかし、サプライチェーンを理想的な形に持っていくためには、サプライヤーも含めた全体の工程を見直す必要がある。つまり、地方企業だからと言って特定のサプライヤーにこだわっていると、スムーズにサプライチェーンマネジメントを導入することは難しい。

IoTなどの発達により、最近では地方でもサプライヤーの選択肢が増えてきているので、中小経営者は広い視野で今後の施策を考えていこう。

多くの事例に目を通し、自社に最適な導入方法を見極めよう

現代ではサプライチェーンマネジメントの必要性が高まっているものの、中小企業に関しては導入を阻む課題がいくつか存在する。ただし、IoTやクラウド、他社のSCMシステムを利用するなど、工夫をすれば導入できる中小企業も多いはずだ。

サプライチェーンマネジメントにはさまざまな導入方法があるため、関心のある経営者はより多くの導入事例に目を通し、自社により適した導入方法を見極めていこう。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)