マーケティングの手法として「プロダクトアウト」というメソッドがある。それと逆の「マーケットイン」の考え方と比べると劣っていると考えられる傾向にあるようです。今回は、プロダクトアウトのメリット、デメリットをマーケットインと対比しながら解説する。

目次

  1. 会社の強みを活かすプロダクトアウトのメソッド
    1. プロダクトアウトの意味
    2. マーケットインとの違い
    3. グーグル やアップルを成功に導いたビジネスメソッド
  2. プロダクトアウトで圧倒的な収益を生み出す可能性も
    1. 独自のノウハウや技術力、アイデアを最大限発揮できる
    2. 革新的な商品・サービスを作り出し、多大な収益を得られる可能性がある
  3. プロダクトアウトにはデメリットもある
    1. マーケットインと比べると成功可能性が低い
    2. 失敗した場合に多額の損失を抱えるリスクがある
  4. 相反する二つの考え方を融合させる
    1. プロダクトアウトとマーケットインはどちらも一長一短
  5. マーケットインとプロダクトアウトを組み合わせてビジネスを成功へ導く
鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

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会社の強みを活かすプロダクトアウトのメソッド

プロダクトアウトとは?グーグル、アップルが実践するビジネスメソッドを解説
(画像=WavebreakMediaMicro/stock.adobe.com)

はじめにプロダクトアウトの基本事項をマーケットインと対比しながら解説する。

プロダクトアウトの意味

プロダクトアウト(product out)とは、「自分たちの会社で作れるものや作ったほうが良いと思うものを供給者目線で作る」という考え方である。あくまでも自社の経営戦略や計画、保有する強みなどを基準に商品やサービスの開発を進める点がプロダクトアウトの特徴だ。また製品を作った後に具体的な販売方法や戦略を考えていく点も特徴の一つと言える。

マーケットインとの違い

マーケットインとは「顧客の視点に立って顧客が欲しいと思うもの(ニーズに合うもの)を作る」という考え方である。そのためプロダクトアウトとは対極的な考え方だ。言い方を変えると「顧客に買ってもらえるものだけを作る」というのがマーケットインの趣旨である。自社の戦略や強みなどではなく顧客の意見を積極的に汲み取りながら商品開発を行うのがマーケットインの特徴だ。

日本では、高度経済成長期(戦後~1970年ごろ)において「大量生産・大量消費」の時代を迎えていた。景気が良く「品質が良い商品を作れば売れる」という時代だったため、多くの企業は同種の製品を大量に生産しそれを販売する「プロダクトアウト」の考え方に注力していたのだ。しかし1970年代以降は、景気の一時的な悪化や供給過多、製品のコモディティ化などの要因により、良いものを作っても売れにくくなっていった。

そうした時代の変化を受けてバブル崩壊以降多くの企業は、「顧客が欲しいものを売る」という「マーケットイン」の考え方に転換を図っていったのである。

グーグル やアップルを成功に導いたビジネスメソッド

プロダクトアウトに基づいた商品・サービスは、知られていないだけでたくさんある。

・Google 例えば1997年にサービスの提供を開始したGoogleは、当時はマイナーだった検索エンジンシステムを世界で使用されるサービスとして普及させることに成功した。従来の多様な情報をトップページに掲載していた検索エンジンとは異なり「検索ボックスのみ」というシンプルなデザインで構成されていた点でプロダクトアウトの考え方に基づいた革新的なサービスだったと言える。

・iPhone iPhoneもプロダクトアウトの考え方で作られた製品である。2007年に発売されたiPhoneは、タッチパネルで直感的に操作できたり、洗練されたデザインなどの点で当時使われていた携帯電話とは革新的に異なるデバイスであった。iPhoneが世界中で人気を集めたことで多くの国や地域で従来の携帯(フィーチャーフォン)からスマートフォンへの移行が進んだと言われている。

世界中の人の生活を大きく変化させた点でGoogleと並んでプロダクトアウトの成功事例と言えるだろう。

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プロダクトアウトで圧倒的な収益を生み出す可能性も

「時代に則していない」と考えられがちなプロダクトアウトだが実は以下に挙げたようなメリットもある。

独自のノウハウや技術力、アイデアを最大限発揮できる

前述した通りプロダクトアウトでは、自社の強みや戦略をもとに商品を開発するため、自社が持っている独自のノウハウや技術力、アイデアなどを最大限発揮して商品を開発できる。それによって既存製品とは異なる差別化された商品・サービスを作り出すことが可能だ。商品の差別化により以下のようなメリットを得られる可能性がある。

・自社ブランドの知名度向上 ・価格競争の回避 ・固定客(根強いファン)の獲得

また他社が容易に真似できない技術やノウハウを使うことで長期的に安定した利益を獲得できるケースも少なくない。つまりプロダクトアウトの考え方を実践すればブランディングや固定客の獲得により競争優位性の確立につながる可能性がある。

革新的な商品・サービスを作り出し、多大な収益を得られる可能性がある

革新的な商品・サービスの創出により多大な収益を得られる可能性がある点もメリットの一つだ。マーケットインの考え方では、顧客のニーズをもとに商品を作るため、どの会社も似たり寄ったりの商品を作ることになりやすい。そのためある程度安定した収益は得られても他の会社も同種の商品を販売し始めると圧倒的に多くの収益を得ることは困難である。

一方でプロダクトアウトでは、自社の強みをベースに商品開発を行うため、既存のものとは根本的に異なる製品やサービスを作り出せる可能性が高い。革新的な商品やサービスは前例がないため、「どのくらい売れるか」「顧客からの支持を得られるか」など、予測しにくいことも多々あるだろう。しかし裏を返すと社会に対して大きな衝撃を与えるほど商品・サービスが大ヒットする事態もあり得る。

圧倒的に商品やサービスが売れれば莫大な収益を長期にわたって得られる可能性も十分考えられる。先述した成功事例として紹介したGoogleやiPhoneも当時革新的な商品・サービスとして社会に大きなインパクトを与えただけではなくいまだに世界中で大ヒットしている。このことからもプロダクトアウトが圧倒的な収益を生み出せるポテンシャルを秘めていることが理解できる。

プロダクトアウトにはデメリットもある

プロダクトアウトにはデメリットもある。プロダクトアウトの考え方で商品・サービス開発を検討している人は注意が必要だ。

マーケットインと比べると成功可能性が低い

プロダクトアウトでは、顧客のニーズを考慮せず自社が作りたいものを製造・販売する。そのため顧客のニーズに基づいて商品を開発するマーケットインと比べると顧客のニーズに適した商品とはなりにくい。商品やサービスがヒットするには、顧客が欲しいと思う(ニーズに合っている)商品やサービスであることが必須条件である。

これを踏まえると顧客のニーズを満たしにくいプロダクトアウトは、必然的に商品がヒットする(成功する)可能性が下がってしまう可能性がある。

失敗した場合に多額の損失を抱えるリスクがある

新しい商品・サービスを一つ開発するには、研究費やマーケティング調査費、人件費などに膨大なコストがかかる。またプロダクトアウトでは既存製品とは異なるものを販売するため、消費者に商品・サービスを知ってもらうための宣伝広告費にも多大なコストがかかりがちだ。そのためプロダクトアウトの考え方で作った商品・サービスが失敗した場合には、多額の損失が手元に残ってしまいかねない。

場合によっては、資金繰りが回らなくなり倒産に追い込まれる可能性もあるだろう。GoogleやiPhoneのようにプロダクトアウトの思考に基づいて作られた商品は、莫大な利益を生み出せる可能性がある。一方で成功可能性は低いうえに商品が思うように売れずに失敗した場合には、多額の損失を抱えるリスクがあることは認知しておきたい。

以上を踏まえるとプロダクトアウトはハイリスク・ハイリターンの考え方であると言えるだろう。

相反する二つの考え方を融合させる

プロダクトアウトとマーケットインは、正反対の考え方のため「どちらを目指して商品やサービスを開発すべきか」について悩む人も多いだろう。しかし実は「どちらかが絶対的に優れている」という概念ではなくプロダクトアウトとマーケットインをうまく融合させることが重要である。

プロダクトアウトとマーケットインはどちらも一長一短

そもそもプロダクトアウトのみならずマーケットインにもデメリットはある。マーケットインの考え方は主に以下のような点がメリットだ。

・安定的な利益を得やすい ・売上高の予測を立てやすい

しかしマーケットインの考え方には、以下のようなデメリットもある。

・顧客自身が真のニーズを自覚していないため、顧客の声を聞いても本当に欲しい商品を作れない ・他社商品・サービスとの差別化が難しい ・社会に影響を与えるほどの大ヒットを実現するのは困難

このようにマーケットインを実践しても思ったような成果を挙げられない企業も少なくない。つまり「プロダクトアウト」と「マーケットイン」のいずれかが圧倒的に優れているわけではないのだ。

どちらも一長一短である以上、商品開発の場面ではプロダクトアウトとマーケットインをうまく融合させることが大切だ。一見すると2つを同時に実現するのは困難と思うかもしれない。しかし実は、プロダクトアウトとマーケットインは両立できる概念である。具体的には「自社の強みやアイデアを駆使して顧客自身が気づいていない潜在的なニーズを満たす商品・サービスを開発する戦略」が効果的だろう。

そのためには、自社の技術やアイデアを使って、顧客の生活を良くしたり抱えている課題を解決できたりする商品を作ることを心がける必要がある。そうすれば自社の技術やアイデアなどの強みを最大限発揮できると同時に多くの顧客から受け入れてもらえるヒット商品の創出につながるだろう。

マーケットインとプロダクトアウトを組み合わせてビジネスを成功へ導く

今回は、マーケティングの手法において「マーケットイン」と対極的な考え方である「プロダクトアウト」について解説した。しばしば批判されがちなプロダクトアウトだがiPhoneやGoogleの成功事例から分かるように得られるメリットも決して小さくない。マーケットインとプロダクトアウトのいずれかに傾倒するのではなく2つの考え方をうまく組み合わせながら商品・サービスの開発を進めるべきだろう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)