製造業や小売業に携わる人であれば「プライベートブランド」(PB)という用語を一度は耳にした経験があるのではないだろうか。プライベートブランドを取り扱う製造業者・小売業者に、それを購入する消費者がそれぞれ得られるメリットと注意すべきデメリットを紹介する。

目次

  1. 1.今、消費者に人気のプライベートブランド(PB)とはどんなもの?
    1. プライベートブランド(PB)の意味
    2. プライベートブランド(PB)とナショナルブランド(NB)の違い
    3. プライベートブランド(PB)の成功事例
  2. 2.「製造業者」「小売業者」「消費者」が享受できるプライベートブランド(PB)のメリット
    1. プライベートブランド(PB)を扱う製造業者
    2. プライベートブランド(PB)を販売する小売業者
    3. プライベートブランド(PB)を購入する消費者
  3. 3.「製造業者」「小売業者」「消費者」が考慮すべきプライベートブランド(PB)のデメリット
    1. プライベートブランド(PB)を扱う製造業者
    2. プライベートブランド(PB)を販売する小売業者
    3. PB商品を購入する消費者
  4. メリットとデメリットの双方を理解して取り扱いたい
鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

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1.今、消費者に人気のプライベートブランド(PB)とはどんなもの?

プライベートブランド(PB)とは?理解する3つのポイントと活用方法
(画像=Michail Petrov/stock.adobe.com)

はじめにプライベートブランドについて最低限知っておくべきポイント(意味、ナショナルブランドとの違い、成功事例)を紹介する。

プライベートブランド(PB)の意味

プライベートブランド(Private Brand)とは、スーパーマーケットなどの小売業者や卸売業者などが主体的に商品企画・開発に携わり自社ブランドとして販売している商品の総称である。英語の頭文字をとって「PB商品」と呼ばれることも多い。また各店舗が自らブランド名をつけて販売している商品は「ストアブランド」とも呼ばれている。

小売業者や卸売業者は、製造業者が作った商品を販売するビジネスモデルを採用しているため、本来は主体的に商品企画・開発に携わったり自社のブランドを商品につけたりすることはない。プライベートブランドは、小売業者や卸売業者にとって例外的な商品と言える。あくまで小売業・卸売業が企画・開発に携わっている商品を「プライベートブランド」と呼ぶ。

そのため商品を実際に製造するのは委託先の製造会社である場合が多い。

プライベートブランド(PB)とナショナルブランド(NB)の違い

「プライベートブランド」と対比する概念に「ナショナルブランド」というものがある。ナショナルブランド(National Brand)とは、製造会社自らが商品企画や開発を行い自社で考えたブランド名をつけて販売している商品の総称のことだ。英語の頭文字から「NB商品」とも呼ばれている。例えばコーラであれば「コカコーラ」、パソコンであれば「MacBook」などがナショナルブランドの最たる例だ。

一例から分かる通りプライベートブランドと比べると知名度が圧倒的に高い点がナショナルブランドの特徴である。また、幅広い卸売業者・小売業者が販売できる点もナショナルブランドが持つ特徴の一つだ。基本的にプライベートブランドは企画・開発に携わった会社しか取り扱えない。しかしナショナルブランドの商品は幅広い会社によって販売されている。

プライベートブランド(PB)の成功事例

ナショナルブランドと比べると知名度が低いプライベートブランドだが全国的に大成功している商品がある。イオングループのプライベートブランドの「トップバリュ」は、品質の高さや安さが人気を集めており2020年度2月期時点での売上高は約8,098億円にのぼる。またセブンイレブンが展開する「セブンプレミアム」も2020年2月期時点で年間約1兆4,500億円もの売上高を誇る。

これらはプライベートブランドの代表的な成功例と言えるだろう。

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2.「製造業者」「小売業者」「消費者」が享受できるプライベートブランド(PB)のメリット

冒頭でも紹介したようにプライベートブランドの商品には、製造・販売する業者側と購入する消費者の双方にメリットがある。この章では「製造業者」「小売業者」「消費者」という3つの視点からそのメリットを解説する。

プライベートブランド(PB)を扱う製造業者

プライベートブランドの商品を製造する会社には、主に以下の2つのメリットがある。

・売れ残りや生産が追いつかない事態を回避しやすい ナショナルブランドの場合は製造業者自らが一定期間の需要量を推測したうえで生産しなくてはならない。そのため予想よりも需要量が少なく売れ残りが生じたり反対に需要量が予想を上回って生産が追いつかなくなったりするリスクがある。一方でプライベートブランドの場合、卸売業者や小売業者から依頼された数量だけを生産すればよい。

そのため売れ残りや生産が追いつかない事態に陥るリスクを軽減できる点はメリットだ。

・マーケティング活動のコストを軽減できる ナショナルブランドを販売する場合、CMやインターネット広告などを駆使して商品の知名度を高める必要があるため、膨大な宣伝広告費がかかる。一方でプライベートブランドのマーケティング活動は委託元が行うため、宣伝広告費をかけずに済む。これらのメリットがあるためにプライベートブランドの生産は、コスト削減や売上高の安定化につながると言える。

プライベートブランド(PB)を販売する小売業者

一方で小売業者は、プライベートブランドの商品を販売することで主に以下の2つのメリットを得られる。

・顧客のニーズに合う商品を企画・販売できる 小売店は、エンドユーザー(最終的に商品を利用する顧客)と日ごろから接しているため、卸売・小売が顧客である製造会社と比べて顧客の潜在的なニーズや課題を把握しやすい。そのためナショナルブランドよりも顧客のニーズを汲み取った商品を企画・販売できる可能性が高いと言える。

・高利益率の商品を販売できる ナショナルブランドの値段には、宣伝広告費や運搬コスト、卸売会社などに対する手数料などが上乗せされる。一方でプライベートブランドの場合は、こうした費用を削減できるため、必然的に高利益率の商品を販売することが可能だ。また値段設定も自由であるため、ナショナルブランドや他社製品との差別化を図り付加価値の高い商品を高い値段で販売し、より高い利益率を設定できるだろう。

プライベートブランド(PB)を購入する消費者

前述した通りプライベートブランドは製造・販売する会社のみならず、商品を購入する消費者にも以下のような2つのメリットをもたらす。

・的確にニーズを満たしている商品が多い プライベートブランドの商品は、日ごろからエンドユーザーと接している小売業者または比較的消費者に近い卸売業者が主体的に企画・販売している。そのため、より消費者のニーズを満たす商品である可能性が高い。

・ナショナルブランドの商品と比べて価格が安い傾向がある プライベートブランドはコストを抑えて販売できるため、ナショナルブランドと比較すると価格が安い傾向がある。同程度の品質の商品をより安く購入できるのは、消費者にとって大きなメリットと言えるだろう。

3.「製造業者」「小売業者」「消費者」が考慮すべきプライベートブランド(PB)のデメリット

プライベートブランドは、メリットばかりではなくいくつかデメリットも存在する。プライベートブランドを製造・販売、または購入する際には、以下に挙げたデメリットに注意したい。

プライベートブランド(PB)を扱う製造業者

プライベートブランドの商品を扱う製造業者は、以下に挙げる2つのデメリットに注意が必要だ。

・プライベートブランドの企画・販売を行う会社により自社の売上高が左右されやすくなる 自社で企画したナショナルブランドを販売する場合、特定の地域や店舗で売れなくなっても他の地域・店舗で販売してもらえれば業績悪化を防ぐことが可能だ。一方でプライベートブランドを生産する場合、販売先(卸売や小売)でプライベートブランドの売れ行きが悪くなると生産量の減少や生産中止により自社の業績が大幅に悪化するリスクがある。

・自社が企画したナショナルブランドの売上高が低下するリスクがある ナショナルブランドを取り扱う小売店や卸売業者がプライベートブランドの企画や販売に注力すると相対的に自社のナショナルブランドの取扱量を減らされてしまい結果的に売り上げが減少する恐れがある。

プライベートブランド(PB)を販売する小売業者

プライベートブランドを企画・販売する小売業者は、以下2つのデメリットに注意が必要だを要する。

・販売する商品に対して全責任を負う必要がある プライベートブランドの商品に何かしらの欠陥があった場合、返金などの対応はすべて自社の責任となる。また細かいクレームに対してもすべて自社で対応することが必要だ。返金対応やクレーム処理などにより余分なコストや労力が生じる事態もありえる。

・商品を製造元に返品できない プライベートブランドの商品は、あくまで小売や卸売側からメーカーに対して製造を委託しているに過ぎないため、ナショナルブランドとは異なり基本的に受け取った商品を返品することは認められない。返品できないということは、売れ残ったときに多大な損失を抱えることを意味するため、小売業にとっては大きなリスクである。

PB商品を購入する消費者

製造業者や小売業者と異なりプライベートブランドの商品を購入する消費者にとっては、特筆すべきデメリットはない。強いて挙げるならばプライベートブランド商品ばかりを取り扱っている店舗を利用した場合に、欲しいナショナルブランドの商品を購入できない場合がある点がデメリットと言えるだろう。また店舗によっては、不具合が商品に生じても返品や返金などの対応を断られてしまい、トラブルに発展する恐れもあるので注意しなくてはならない。

メリットとデメリットの双方を理解して取り扱いたい

プライベートブランドには、製造業者や卸・小売業者、消費者それぞれにとってメリットが多い。しかし売上高の変動リスクや返品不可能となる点など、いくつか注意すべきデメリットも存在する。そのため製造業者や卸・小売業者は、メリットのみならずデメリットも十分検討したうえでプライベートブランドの製造や販売をはじめるべきだろう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)