起業して事業が順調に伸び、利益を計上できるようになると、考え始めなければいけないのは税金関係である。法人税など会社が負担しなければいけない税金に加え、経営者自身の所得税も気になり始める時期だ。法人税と所得税は、税率などいろいろな違いがある。この記事では、法人税と所得税について基本的な事項について解説する。

目次

  1. 法人税の基本
    1. 法人の税金の種類
  2. 法人税の課税対象と税率は?
    1. 1.法人税が課される法人
    2. 2.法人税が課税されない法人
    3. 3.税率
  3. 法人税の計算方法は?
    1. 1.所得金額とは?
    2. 2.税額控除
  4. 所得税の基本
  5. 所得税とは?
    1. 1.所得区分
    2. 2.所得控除
    3. 3.総合課税と分離課税
    4. 4.損益通算
  6. 所得税の計算・税率
    1. 1.所得税の計算式
    2. 2.所得税の税率
  7. 法人税と所得税の3つの違い
    1. 1.所得税は累進課税、法人税は比例課税
    2. 2.申告時期が違う
    3. 3.課税所得の計算が違う
  8. 法人税、所得税の仕組みを知って適切に納税を

法人税の基本

法人税は会社の種類と規模で決まる!累進課税の所得税との違いは?
(画像=naka/stock.adobe.com)

法人税とは、株式会社や協同組合などの法人が事業を行うことで獲得した利益(課税所得)にかかる税金である。法人税は、納税者と税を負担する担税者が同じである「直接税」だ。消費税など納税者(法人)と担税者(消費者)が異なる「間接税」ではない。また、法人(納税者)自身が、課税所得や税額を計算した上で、税務署に申告・納税する「申告納税方式」となっている。

法人の税金の種類

法人が負担する税金の種類は複数ある。法人税の課税所得をベースに税額が決まる税金には、次のものがある。

・法人税
法人税とは、一事業年度において、法人が事業を行うことにより獲得した利益(課税所得)に対して課される税金である。連結納税など特殊な法人税もあるが、一般的に「法人税」といえば、この「各事業年度の所得に対する法人税」を指す。日本の税収の約20%を占める税金である。

・法人住民税
法人住民税とは、各自治体が住民や法人にサービスを行うことを目的として課税される税で、市区町村税、道府県民税がある。法人住民税は、所得があるなしに関わらず資本金と従業員数に応じて課税される「均等割」と法人税の額に応じて課税される「法人税割」がある。

・法人事業税
法人事業税は、課税所得に対してかかる道府県民税である。法人事業税は法人税の所得金額×税率で計算される。法人事業税の一部を地方財源として、国から都道府県に配分するための税金として法人地方税がある。

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法人税の課税対象と税率は?

法人税法上、目的や特性が異なるさまざまな種類の法人がある。全ての法人で法人税が課されるわけではなく、法人税が課されない法人もある。

1.法人税が課される法人

法人税が課されるのは、普通法人と協同組合等である。

・普通法人
普通法人とは、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、などを指す。基本的に、課税所得に対して法人税が課されるが、中小法人等(期末資本金が1億円以下など)対しては、低い税率が適用され、法人税の負担が軽減されている。

・協同組合等
協同組合等は、農業協同組合、漁業協同組合、信用金庫などを指す。個人や中小企業などが共通する目的のために共同で設立・運営する組織である。普通法人と同じように課税所得に対して法人税が課されるが、軽減税率により税負担が軽減されている。

2.法人税が課税されない法人

法人税の課税対象外となるのは、公共法人、公益法人、人格のない社団等である。

・公共法人
公共法人とは、地方公共団体、金融公庫、地方独立行政法人、日本年金機構、日本放送協会などを指す。公共法人は特別な法律により設立され、公共の事業を行うことを目的とする。そのため、税制優遇を受けており、法人税が課されない。

・公益法人
公益法人とは、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などを指す。宗教、慈善、学術などの事業を行う営利を目的としない法人だが、収益事業を行う場合もある。原則として、非収益事業に対しては公共性が大きいため法人税は課されないが、収益事業(法人税法で規定)から生じた課税所得は、法人税の課税対象となる。

・人格のない社団等
人格のない社団等は、PTA、労働組合、マンション管理組合などである。個人や法人ではないけれど法人と同様の活動をしている団体は、法人税法上は法人としてみなされる。原則として非課税だが、公益法人と同様、収益事業から生じた課税所得は、法人税の課税対象となる。

3.税率

法人の種類別の税率は以下のとおりである。

区分 税率
普通法人 中小法人等 年800万以下 15%又は19%
年800万円超 23.2%
中小法人等以外の普通法人 23.2%
協同組合等 年800万以下 15%
年800万円超 19%
公益法人等(収益事業) 年800万以下 15%
年800万円超 23.2%又は19%
人格のない社団等(収益事業) 年800万以下 15%
年800万円超 23.2%

法人税の計算方法は?

法人税の算出は、次の計算式を使用する。

法人税=所得金額(課税標準)×(法人税率ー税額控除)

1.所得金額とは?

法人税は、法人の1事業年度(原則として会計期間)の課税所得に対して課税される。企業会計では「収益」から「費用」を引いた額を「利益」としている。法人税法上では、企業会計上の収益に相当する「益金」から、費用に相当する「損金」を差し引いた額を「課税所得」としている。

実は、企業会計上の「利益」と税法上の「所得金額」は、金額が一致しない。税法上は、課税の公平を図る目的や租税政策、産業政策上の目的で、適正な税負担のための調整を行うことになっている。これが、確定申告時に行われる「益金や損金の算入・不算入」になる。

2.税額控除

法人税の課税所得金額に税率を掛けた法人税額から直接控除するものを税額控除という。税額控除には、国際課税の調整、雇用促進や設備投資等特定の政策目的を実現するために設けられている。具体的には、外国税額控除、所得拡大促進税制・中小企業投資促進税制などがある。

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所得税の基本

個人が1月1日から12月31日までの1年間に得た収入から、必要経費や所得控除を差し引いた金額のことを課税所得という。この所得に税率を乗じて計算した額が、所得税である。所得税は、日本の税収の約30%を占めている重要な税金である。

所得税とは?

所得税を計算するためには、さまざまな仕組みがある。

1.所得区分

所得はその性質によって、事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得、譲渡所得、一時所得、退職所得、山林所得の10種類の所得区分に分類される。それぞれの所得区分によって、所得の計算方法が異なっている。

2.所得控除

所得控除とは、所得区分に応じて計算された所得から、差し引くことができる一定の金額のことをいう。税金は、課税の公平性が重視され、負担する能力に応じて課税するという考えを基本としている。そのため、所得以外にも家族構成などの個人的な事情や社会的政策が配慮されている。

【14種類の所得控除】

所得控除 対象
基礎控除 誰でも
配偶者控除 配偶者がいる場合
配偶者特別控除
扶養控除 扶養親族がいる場合
障害者控除 障害者本人または扶養している場合
寡婦控除 離婚または配偶者が死亡した場合
勤労学生控除 働いている学生
社会保険料控除 社会保険料を払っている場合
小規模企業共済等掛金控除 共済掛け金などの掛金を払っている場合
生命保険料控除 生命保険料を払っている場合
地震保険料控除 地震保険料を払っている場合
医療費控除 医療費を払った場合
雑損控除 火災や盗難にあった場合
寄付金控除 寄付行為などをした場合

3.総合課税と分離課税

所得税には、総合課税と分離課税という2つの課税方式がある。総合課税とは、1年間に得た所得を合計して課税の対象とする計算方式だ。一方、分離課税とは、他の所得と合計しないで独自の税率を掛けて税金を計算方式である。

例えば、退職金をもらった場合など総合課税とすると、税金の負担がとても大きくなってしまう。税負担を軽くするために特別に分離課税が設けられている。

総合課税 分離課税
対象となるすべての所得を合計し、その合計金額が課税対象となる。 所得の種類ごとに個別に課税される
事業所得
配当所得
不動産所得
給与所得
ゴルフ会員権等の譲渡による譲渡所得
一時所得
雑所得
山林所得
退職所得
土地・建物等の譲渡による譲渡所得
株式等の譲渡所得
一定の利子所得
一定の取引による一時所得
一定の取引による雑所得

4.損益通算

所得税では所得を10種類に区分してそれぞれ所得金額を計算するが、所得によって黒字や赤字が発生する。そのため、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得で発生した赤字については、他の黒字の所得の金額と通算(相殺)する損益通算の制度が設けられている。

所得税の計算・税率

所得税は、各所得の金額をもとに課税所得を計算し、この課税所得金額に対応した税率をかけて税額控除額を差し引いた額が所得税額になる。

1.所得税の計算式

所得税の計算式は次の通り。

・所得の金額(収入 − 必要経費) – 所得控除 = 課税所得金額
・課税所得金額 × 税率 − 税額控除額 = 所得税額

2.所得税の税率

所得税は,「超過累進課税制度」の仕組みである。「超過累進課税制度」とは、所得金額が大きくなればなるほど、税率も上がる仕組みだ。所得税の税率は、下表のとおり、5%から45%の7段階に区分されている。下記速算表から、課税総所得金額×税率-速算控除額の計算式により所得税を算出する。

【計算例:課税総生得金額 5,000,000円の場合】
5,000,000円×20%-427,500円=572,500円(所得税)

【所得税の速算表】

課税総所得額 税率 速算控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下(例:500万円) 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
18,000,000 円以上 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

法人税と所得税の3つの違い

法人税と所得税について解説したが、まとめると以下の3点の大きな違いがある。

1.所得税は累進課税、法人税は比例課税

所得税は超過累進税率で5%から45%の税率になっている。超過累進税率とは、所得が多い方ほど税率が高くなる仕組みである。法人税は比例税率で、課税所得金額の大きさには関係なく、会社の規模によって定められた一定の税率となっている。また、中小法人など一定の法人については軽減税率が適用される。

2.申告時期が違う

所得税の場合、確定申告(所得税の申告)の時期は、全ての申告者で同じになっている(基本的には、2月16日~3月15日)。法人税の申告は、原則、事業年度終了から2ヵ月後までに行う。事業年度は基本的に1年間であるが、法人によって事業年度の期間は異なっているため、当然申告時期も異なっている。

3.課税所得の計算が違う

所得税は、10種類の所得に分かれていて、その所得に応じて計算方法が異なる。また、損益通算や総合課税・分離課税など所得税固有の仕組みがある。そのため個々の事情によって、所得税の計算方法が大きく違ってくる。法人税は、会計上の利益を基礎として必要な税務調整を行って、益金から損金を差し引いた課税所得を計算している。そのため、全ての法人で、同じ計算式で法人税を計算することになっている。

法人税、所得税の仕組みを知って適切に納税を

経営者にとって税金は悩みの種の一つで、ついつい税理士任せにしがちである。税金は、個人の財産形成や会社の資金繰りなどに影響を及ぼすファクターであることを理解することが重要である。

特にスタートアップは、法人成りや株式譲渡など税務の検討が必要な局面がある。個人事業主で利益が上げられるようになった場合は、法人にした方が節税になる場合もあるため、所得税や法人税の基本的な仕組みや違いを理解することから取り組むことが大切である。

文・Business Owner Lounge編集部