10月1日に東京証券取引所でシステムトラブルが発生し、取引が終日全面停止となった問題は、宮原幸一郎社長が責任を取って辞任する事態に発展した。辞任せずに再発防止に尽力する道があったにもかかわらず社長辞任となったのは、首相官邸の意向が強く働いたためと見られている。

目次

  1. 東証のシステム障害の顛末
  2. 金融庁が東証とJPXに業務改善命令
  3. 宮原社長の辞任には菅総理の意向が影響?
  4. 菅政権が実現を目指す国際金融都市構想とは?
  5. 国際金融センター指数ランキングで東京は4位

東証のシステム障害の顛末

東証社長が辞任せざるを得なかった理由 アジア金融都市構想への影響は?
(画像=show999/stock.adobe.com)

東京証券取引所のシステムトラブルの顛末について、改めておさらいしておこう。

今回、システムトラブルを起こしたのは株式売買システム「アローヘッド」だ。通常の株取引が開始される前の午前7時すぎに同システムに問題があることが発覚し、その後、午前8時すぎに東証が証券会社のシステム管理者に対してトラブルが発生していることを連絡した。

株式取引の参加者向けに売買停止の方針を通知したのは午後8時半過ぎで、取引開始時刻の午前9時の少し前に、アローヘッドにおける売買停止処理が行われた。

最終的に終日停止を余儀なくされた理由は、アローヘッドを再起動できなかったこととされている。再起動を前提にした訓練に取り組んでいれば終日取引停止は避けられた可能性が高く、またシステムを納入した富士通側の設定不備などの問題も指摘された。

これが東証の10月1日のシステムトラブルの顛末だ。

金融庁が東証とJPXに業務改善命令

金融庁はその後の11月30日、東証と東証の親会社である日本取引所グループ(JPX)に対し、業務改善命令を出した。

その業務改善命令の中で金融庁は「平成30年(2018年)10月のシステム障害の発生を契機に各種の対応策を講じてきたにもかかわらず、再びシステム障害が発生した」と指摘。2018年10月のシステム障害とは、証券取引所などによる売買が一時執行できなくなった問題だ。

そして金融庁は「取引開始から取引時間が終了するまでの間、全ての取引が停止に至ったことは、金融商品取引所に対する投資者等の信頼を著しく損なうもの」とし、強く再発防止の取り組みを求めた上で、「市場開設者としての責任の所在の明確化を図ること」とした。

その同日、宮原社長の辞任をJPXが発表し、留任したJPXの清田瞭CEO(最高経営責任者)は「終日停止で多大な迷惑を掛け、改めておわびする」などと陳謝している。

宮原社長の辞任には菅総理の意向が影響?

そして最終的に宮原社長が辞任する事態となったわけだが、冒頭で触れたように、この辞任の決定には首相官邸、つまり菅義偉総理の意向が影響したと見られている。

その理由は、システム障害が起きたこと自体というより、システムトラブルに関する東証と金融庁からの官邸への連絡に迅速さを欠いたことにあるようだ。連絡の遅れは政府としての対応の遅れに直結する。官邸側はこうした点を重くみたと見られている。

菅総理はこれまでに、国際金融拠点を日本国内で形成することを強く目指していくことを表明している。そうした目標を実現させることを考えると、今回の東証のシステムトラブルは国際的に見ても大きな失点だ。

仮にシステムトラブルの発生は仕方なかったとしても、その後の対応のまずさは許せなかったということなのだろう。

菅政権が実現を目指す国際金融都市構想とは?

菅政権が実現を目指している「国際金融都市構想」について触れておこう。この構想は日本国内に国際的な金融ハブを創設しようというものだ。金融に関する人材や情報、そして資金が集まるようになれば、相対的に金融業界における日本の地位は向上する。

菅首相はこの構想の実現に向け、「スピード感をもって取り組む」と明言しており、行政の英語対応や税制上の対応、在留資格に関する規制緩和などにも積極的に取り組む方針を示している。ちなみに金融ハブとする候補地は、東京や大阪、福岡などの都市から絞っていく流れとなっている。

ただ日本国内に国際的な金融ハブを創設するためには、まず日本の金融インフラが脆弱ではないことを示さなければならない。そのため、菅政権は東証などに対する監視体制をさらに今後強めていくことが考えられる。

もし再び東証でシステムトラブルが起き、また政権側がその把握を遅れるような事態になれば、この構想は水泡に帰す可能性もある。

国際金融センター指数ランキングで東京は4位

英シンクタンク「Z/Yenグループ」が9月末に発表した「国際金融センター指数(GFCI)ランキング」では、東京は首位の米ニューヨーク、2位の英ロンドン、3位の中国・上海に続いて第4位となっている。半年前、東京の順位は3位だったが、上海に逆転を許す結果となっている。

東京だけではなく、上海も国際金融センターとなることを目指しており、菅政権が国際金融都市構想を実現させたいのであれば日本側にこれ以上のミスは許されない。次の国際金融センター指数ランキングで東京の順位がどうなっているのかについても、注目したいところだ。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部