経営が軌道に乗るにつれて規模が拡大し、社内における従業員の役職も増加していく。それに伴い、会社の方針を決定する幹部の存在感が増し、今後の社運を掌握することになる。

社内の幹部といえば、取締役や執行役員といった役職が思い浮かぶ。社内で中堅的なポジションから管理職への移行期にあたる社員は、出世コースとしてどの幹部ポストを目指すのか戦略を立てることがあるのではないだろうか。

中でも今回は、取締役と執行役員のポストの違いを解説する。

目次

  1. 格上は取締役
    1. 執行役員とは決まった方針へ舵を取る
    2. 取締役とは会社の方針の決定権を持つ
  2. 取締役になるために必要なことは?
  3. 執行役員になるために必要なことは?
  4. 役職の違いを理解して正しく出世の道を歩む

格上は取締役

執行役員と取締役はどちらが偉い?業務やランクの違いをご紹介!
(画像=fizkes/Adobe Stock)

ワンマン経営で社長が自ら全てを決定する会社を除いて、複数の幹部が事業の方向性などのプロセスに関与する。しばしば登場する役職名の一例として「取締役」や「執行役員」といったポストが挙げられる。この2つの役職がどのように異なり、それぞれどのような業務に関与するのか。

まず2つの役職の見る上で、法的観点から相違を捉えることができる。

会社法(第326条)には、「株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない」と定められている。従って、取締役は法的な裏付けによって設置されるポストとなる。

一方の執行役員は会社法では特に定めはなく、あくまで社内や社外に示す役職の敬称に過ぎない。法的に配置が定められているという点でみれば、取締役が執行役員よりも格上といえるだろう。

執行役員とは決まった方針へ舵を取る

執行役員は、取締役などの役員が決定した方針へ舵を取る役割だ。経営に関係する重要事項や方針に対して、決定する権限を持たない。

取締役が決定した業務を執行役員に任せることで、会社の経営を効率化するために設置されたのだ。

執行役員は会社法で正式に定められておらず、社内での役職として扱われる。そのため、会社では従業員となるのだ。ゆえに「役員」という名称はついているが、法人の使用人として扱われるため、役員報酬の対象とはならないことが多い。

取締役によって決定された方針に基づき、従業員はそれぞれの担当を通じて役割を果たしていくことになる。それぞれの従業員の仕事が、取締役によって決定された方針に沿うように調整し、実践する責任者ともいえるのが執行役員である。

チームスポーツに例えるなら、監督である取締役からの指示(決定)をチームのキャプテンである執行役員からチームメイト(従業員)に伝えられて監督の采配に沿うようにプレーするようなイメージである。

取締役とは会社の方針の決定権を持つ

取締役は、会社の方針の決定権を持っている。会社における意思決定や監督、業務の方針を決める役割だ。取締役会を開き、方針や重要事項を決定する際には重要なポジションとなる。

ゆえに、実際に決定通りに事業や業務が遂行されているかを監督する責任は、取締役にある。従って、取締役は会社の方針を決定した後、執行役員に一任して事業を放置することはできない。

事業が方針通りに進んでいるかを監督し、またその過程で不正が行われていないかなどを監査する役割も担うことになる。

こうした点からみても、法的な裏付けがあるだけに限らず、取締役の責務はまさに会社の存続を握るといっても過言ではないことが分かるだろう。

重く圧し掛かる責任の対価として、取締役には役員報酬が支払われる。この役員報酬は法人税法上の役員に支払われるもので、同法において役員は取締役のほか、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人と定められている。

「執行役員」と「取締役」には、会社の方針を定める決裁権のほか、報酬の面においても違いが存在する。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

取締役になるために必要なことは?

取締役は会社の方向性を定めることになるため、企業内での細かな事業内容をテクニカルに把握するというよりも、全体としての進むべき道がどこにあるのかを見分ける判断力が欠かせない。

会社として新規事業を検討している場合、どのような事業が最適なのか創造力を掻き立てる必要がある。新規事業の立ち上げと裏腹に既存事業にもメスを入れることも企業として必要な局面もあり、取締役には決断力も不可欠である。

また法的に定めのある取締役には、会社法(331条)においてそのポジションに就任できない人を欠格事由として定めている。

その事由にまず挙げられているのが、成年被後見人もしくは被保佐人である。成年被後見人と被保佐人は、ともに精神上の障がいによって判断能力に問題があると家庭裁判所が審判をしたケースが該当する。   さらに会社更生法や破産法などに定められた法律を破り、刑を課せられた場合、執行を終える、もしくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者は取締役にはなれないのだ。

加えて、企業活動に関連しない法律を違反した罪で禁固以上の刑に処せられた場合は、その執行を終わるまであるいは受けることがなくなるまでは取締役にはなれないが、執行猶予中は取締役になることは可能である。

従って、取締役になるためには、欠格事由が定められていて、それに該当していないことが最低条件となる。 取締役は会社法で定められているように、企業によってはその椅子は1つしか設けられていないため、すべての従業員がその椅子に座れるというわけではない。

だが、取締役は文字通り会社を代表するポストとなるため、その肩に乗りかかる責任は計り知れない。自らの裁量が自分自身の企業人としての評価のみならず、従業員さらには従業員の家族も含めた生活を賭けることになる。

よって取締役にはプレッシャーに耐える強心臓が求められ、さらには判断力、創造力、リーダーシップ、コミュニケーション力、チェック能力など多岐に渡る資質が兼ね備えられなければならない。

執行役員になるために必要なことは?

執行役員は法的な位置づけはなく、社内あるいは社外的な役職である。企業によっては事業ごとに複数の執行役員を配置するケースもみられるのだ。

取締役と比較すれば、就任できる可能性は高いといえるだろう。しかし、取締役と執行役員の役割は異なるため、求められる能力も違うのだ。 格付け的には取締役の方が上ではあるが、取締役の決定を会社として実現するためには、執行役員の存在も欠かせない。会社の方針を決定するのは取締役の任務であるため、まずは取締役と信頼関係を築けるような執行役員でなければならない。

完全なイエスマンになる必要はないが、取締役の決定事項を遂行できるように、忠実な姿勢が望ましい。その上で、担当する事業や部署に決定事項を伝え、従業員が同じ方向を向いて業務に取り組めるように、組織をまとめる力も不可欠である。

会社の規模が大きくなるほど、幹部と従業員の距離は遠のいていく。しかし執行役員は、取締役より従業員に近い距離で接するため、適切なコミュニケーションを図りながら、組織をまとめていかなければならない。

現場の実情を理解していなければ、従業員からの不満も噴き出すため、各事業、部署の仕事内容にも精通しておく必要がある。また、取締役のビジョン通りに事業やプロジェクトが進行しているか観察しつつ、場合によっては軌道修正する必要もあるため、状況判断能力も求められるのだ。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

役職の違いを理解して正しく出世の道を歩む

取締役と執行役員は、法的な位置づけを含めその立場や任務は大きく異なる。取締役は会社の命運を握る決定をする役割もあるため、ある意味ではカリスマ性も求められる。

執行役員は、取締役のビジョンをサポートするために手先となって事業やプロジェクトを管理していく。従って、実務のプロとしての能力が不可欠である。

自分の能力や適性から取締役か、あるいは執行役員のどちらが適任かを見極めてほしい。どのポジションを出世のターゲットとして絞り込むのかを念頭に置きつつ、日々の業務に従事する必要があるだろう。

文・Business Owner Lounge編集部