中小企業に融資を実行する金融機関は、銀行だけではない。金利や融資の受けやすさなど、それぞれの金融機関の融資の特徴を知って検討したい。そして、できれば返済方法や据置期間が金利に与える影響も知っておいたほうがよい。同じ金利で受けた融資でも、これらの違いで返済する金利の総額が変わるからだ。

さらに今から融資を受けるのであれば、新型コロナウイルス感染症対策として実質無利子で受けられる、銀行や日本政策金融公庫、商工中金が実行する融資も検討するとよいだろう。

この記事では、銀行融資を検討中の経営者に向けて、中小企業で利用しやすい融資先、融資を受ける前に知っておきたい金利の計算方法、コロナ対策で実質無利子化が行われている融資について解説する。

目次

  1. 銀行だけではない!中小企業で利用しやすい融資先5選
    1. 1. 日本政策金融公庫
    2. 2. 商工中金
    3. 3. 信用金庫
    4. 4. 信用組合
    5. 5. 信用保証付き融資・制度融資
  2. 銀行融資で知っておきたい金利の計算方法
    1. 融資の返済方法・据置期間とは
    2. 元利均等・元金均等返済よる返済金利のシミュレーション
  3. 銀行融資がコロナ対策で実質無利子に
    1. セーフティネット保証と危機関連保証
    2. 銀行融資も金利ゼロに
    3. 借り換えで既往債務の金利もゼロに
  4. 銀行だけではない!実質無利子化の対象となる融資一覧
    1. 特別利子補給制度による3年間の実質無利子化
    2. 借り換えで既往債務の金利もゼロに
  5. 金利や借りやすさを考えて融資を受ける機関を検討しよう
中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

銀行だけではない!中小企業で利用しやすい融資先5選

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

銀行融資の金利負担は返済方法でも変わる!今ならコロナで無利子化も
(画像=Pefkos/stock.adobe.com)

融資というと真っ先に思い浮かぶのが銀行だと思うが、融資を行う金融機関は他にもある。ここでは中小企業で利用しやすい融資先を6つ紹介する。

1. 日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主の事業拡大や経営の立て直しなど、幅広いシーンで利用できる政策金融機関である。

融資は主に創業融資や小規模事業者への融資、教育ローンなど生活に関する融資などを対象とする「国民生活事業」、中小企業向けの「中小企業事業」、農林漁業や食品産業向けの「農林水産事業」に分かれている。

金利は常時公開されており、年1%~2%台のものが多い。ただし、必ず最新の金利を確認する必要がある。

2. 商工中金

商工中金とは、株式会社商工組合中央金庫の略称である。日本政策金公庫と同じく政策金融機関の1つであり、こちらも中小企業向けの融資として検討されやすい。

融資対象は商工中金株主団体(中小企業等協同組合など)の構成員であるが、融資相談についてはこれらの資格がない者でも可能である。

3. 信用金庫

地元の企業や個人事業主、住民などが会員や利用者となって取引を行う非営利法人である。会員の条件に、常時使用する従業員300人未満か資本金9億円以下であることなどがある。

4. 信用組合

中小規模の事業者や勤労者が組合員となって相互扶助を行うための非営利法人である。管轄区域内の中小企業、個人事業主である組合員を取引の対象とする。

5. 信用保証付き融資・制度融資

銀行融資は、大きくプロパー融資、信用保証付き融資、制度融資に分かれる。

プロパー融資は、銀行のみで実施される融資のことで、銀行は回収不能リスクを負う。そのため審査は厳しく、実績の浅い企業や規模の小さい企業は一般的に融資を受けにくい。

信用保証付き融資は、信用保証協会が銀行融資の保証を行う融資である。融資先は金融機関との取引が浅い中小企業・小規模事業者の方などだ。仮に倒産などで企業が返済できなくなったときは、信用保証協会が銀行に代位弁済を行う。(その後、信用保証協会から企業に弁済額を求償する)

銀行が負うリスクが少ないため、銀行の審査はプロパー融資よりも通りやすい。ただし銀行に支払う金利のほか、信用保証協会に支払う保証料が別途生じる。

制度融資は、金融機関・自治体・信用保証協会が協力して行う融資である。企業が負担する銀行の金利や信用保証協会の保証料を、自治体が一部補助することに特徴がある。銀行の審査はプロパー融資よりも通りやすく、自治体の補助によって返済の負担も軽減できる。

銀行融資で知っておきたい金利の計算方法

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

銀行など金融機関による融資の金利は、返済方法や据置期間の設定でトータルの支払い額が変わる。後で慌てることのないよう、金利の計算方法を把握しておこう。

融資の返済方法・据置期間とは

返済方法については、元利均等返済・元金均等返済の違いがポイントとなる。

・元利均等返済 毎月の返済額が一定となるように設計された返済方法である。融資の元金が徐々に減るため、返済額に占める金利の割合が減少していく。毎月同額であるため、返済プランが立てやすい。

・元金均等返済 毎月の返済額のうち元金が一定となるよう設計された返済方法。元金が減るほど金利も減るため、総返済額は元利均等返済より少なくなる。ただし、融資直後の返済額がもっとも高額となるため返済プランを立てにくい。

・据置期間 元金を返済しなくてよい期間のことである。据置期間が長いほど融資直後の返済額を抑えられるが、元金の残高に応じて金利が発生し続けるため、トータルの返済額は上がる。

・(参考)ステップ返済 段階的に返済額が変わる返済方法である。返済開始後の数年間は返済額を大きく押さえ、数年後に上げるというもの。利用には十分注意が必要である。

元利均等・元金均等返済よる返済金利のシミュレーション

元利均等返済と元金均等返済によってどのくらい金利が変わるかシミュレーションしてみよう。

【例】 ・融資額:1,000万円 ・金利:年2% ・返済期間:10年

・元利均等返済の場合 元利均等返済における返済額は、「資本回収係数」を使用することで計算できる。返済期間10年、金利2%の資本回収係数は0.011133…である。よって総返済額は約1,113万円、返済する金利の総額は約113万円となる。

・元金均等返済 元金の返済額が一定となるため、毎年100万円ずつ元金を返済する。金利は、元金の残高から計算される。

1年目の金利は、1,000万円に対し20万円となる。2年目の金利は、900万円に対し18万円、3年目は16万円と徐々に減少する。その結果、総返済額は1,110万円、返済する金利の総額は110万円となる。

銀行融資がコロナ対策で実質無利子に

新型コロナウイルス感染症の対策として、実質無利子となる融資がある。日本政策金融公庫や商工中金の「新型コロナ感染症特別貸付」はよく知られていると思うが、銀行など民間の金融機関から受けられる制度融資についても実質無利子化が行われている。

セーフティネット保証と危機関連保証

セーフティネット保証とは、自治体・金融機関・信用保証協会による制度融資である。自治体の認定を受けた中小企業が、銀行などの金融機関で信用保証付き融資を受けるという流れだ。

新型コロナウイルスの影響で、現在は、一般保証(限度額2.8億円)に加えて、以下の2つを一般保証の別枠として利用できる。

・セーフティネット保証枠(4号・5号合わせて限度額2.8億円) ・危機関連保証による保証枠(限度額2.8億円) 別枠の融資を受けるには、以下の売上減少要件を満たす必要がある。

・4号(突発的災害) 前年同月比▲20% ・5号(業況の悪化している業種) 前年同月比▲5% ・危機関連保証 前年同月比▲15%

銀行融資も金利ゼロに

上記の融資についても、新型コロナ感染症特別貸付のように実質無利子化の対応がある。一定の売上減少要件を満たす企業は、自治体の補助により、金利(最大3年間)、保証料(全融資期間)が減免される。(金利は銀行などに一旦支払ったあと補給されるので注意)

金利と保証料の減免対象となるのは、融資額4,000万円までの部分となる。減免の割合と売上減少要件は次のとおりである。

<実質無利子化となる売上減少要件>  

売上高▲5% 売上高▲15%
個人事業主 金利ゼロ・保証料ゼロ
小・中規模事業者 保証料2分の1 金利ゼロ・保証料ゼロ

なお、据置期間も最大5年であるため、これが金利ゼロ・保証料ゼロの期間と重なれば、当面の負担を大きく減らせる。

借り換えで既往債務の金利もゼロに

他の信用保証付き融資を既に受けている場合でも、要件を満たせば、実質無利子となる制度融資に借り換えられる。

銀行だけではない!実質無利子化の対象となる融資一覧

実質無利子化の対象となる融資は、銀行の融資以外にもいくつかある。

※以下、( )内は融資限度額

<日本政策金融公庫> ・新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業事業6億円、国民生活事業8,000万円) ・新型コロナウイルス対策マル経融資(別枠1,000万円) ・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付(別枠8,000万円) ・新型コロナウイルス対策衛経(別枠1,000万円)

<商工中金> ・危機対応融資(6億円)

特別利子補給制度による3年間の実質無利子化

日本政策金融公庫や商工中金の融資でも実質無利子化(最大3年間)の対象となるものがある。

まず金融機関において融資の金利を0.9%引き下げる措置が、当初3年間行われる。さらに引き下げ後の金利を中小企業基盤整備機構が事後的に補給する。

4年目からは本来適用される金利に戻り、補給もなくなる。ただし、金利の引き下げと実質無利子化の対象となる融資の額には、限度額がある。

<金利の引き下げ・実質無利子の対象となる融資の限度額>

融資名 限度額
・新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業事業)
・危機対応融資
2億円
・新型コロナウイルス感染症特別貸付(国民生活事業)
・新型コロナウイルス対策マル経融資
・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
・新型コロナウイルス対策衛経
合計で4,000万円

<実質無利子化の対象となる売上減少要件>

個人事業主 要件なし
小規模事業者(法人) 売上高▲15%減少
中小企業者(上記を除く) 売上高▲20%減少

借り換えで既往債務の金利もゼロに

銀行などと同じく、日本政策金融公庫や商工中金の融資についても、借り換えによって既往債務を実質無利子化の対象とすることができる。

金利や借りやすさを考えて融資を受ける機関を検討しよう

新型コロナウイルス感染症の感染者数は、ピーク時に比べて減少傾向にあるが、企業に与えた悪影響は今も続いている。これまで融資なしで乗り切ってきた体力のある企業でも、長引くコロナ禍の影響により、最近になって融資を受け始めるというケースも見受けられる。 まずは借りやすい金融機関を選ぶことが重要だ。

現在、各金融期間や地方公共団体には、コロナ関連の融資や給付金などの相談窓口がある。 経営が悪化する前に、なるべく早く各機関の支援を活用していただきたい。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)