相手と取引をしたり、事務所を借りたりした場合に、先方に預ける資金として「保証金」がある。預けた場合と預けられた場合には、どのような勘定科目を使うのだろうか。また、いかにして会計処理を行うのか、例を挙げて説明する。

目次

  1. 保証金とは?
    1. 不動産物件を賃貸するときの保証金
    2. 営業保証金
    3. ゴルフ会員権の預託金
    4. そのほかの保証金
  2. 保証金を預ける側の勘定科目・会計処理
    1. 不動産物件を賃借するときの保証金
    2. 返金されない部分の処理には要注意
    3. 営業保証金
    4. ゴルフ会員権の預託金
  3. 保証金を預かる側の勘定科目・会計処理
    1. 不動産物件の保証金
    2. 営業保証金
  4. 保証金の勘定科目・会計処理はそれぞれ異なる
中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

保証金とは?

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保証金の勘定科目とは?預けたとき預けられたときの会計処理
(画像=wutzkoh/stock.adobe.com)

一般的に保証金は商取引や賃貸などを行う際に、取引先に対して支払いなどの履行を約束するために預ける金銭のことを指す。

保証金には、主に以下のようなものがある。

・不動産物件を賃貸するときの保証金 ・営業保証金 ・ゴルフ会員権の預託金 など

それぞれについて見ていこう。

不動産物件を賃貸するときの保証金

事務所や倉庫などを借り入れる際に、大家に預ける資金のことを指す。具体的には家賃の何ヵ月分とあらかじめ決めた上で金銭を大家に預け、退去する際にそれを返してもらう。家賃の支払いが滞った場合に保証金から補填することもある。

営業保証金

営業保証金の意味には、2通りある。

一般的には、取引先との取引を開始する際に、相手側に預け入れる金銭のことである。預け入れる金銭や返還の時期などについては相手方との契約で決定する。取引を行う双方が任意で預け入れと受け入れを行う。

もう一つの意味としては、宅地建物取引業者等が事業を開始する際に供託所に対して預け入れなければならない金銭のことである。宅地建物取引業者等が破産した場合などに備えるために預け入れるもので、こちらは法律で保証金の預け入れが求められている。

宅地建物取引業者の場合、主たる事務所、従たる事務所それぞれに1,000万円、1箇所につき500万円の営業保証金を預ける必要がある。

なお、実際には宅地建物取引業者がこれだけの金銭を預け入れるのは負担が大きい。そのため、宅地建物取引業保証協会の社員となり、同協会に対して主たる事務所、従たる事務所それぞれ60万円、1箇所につき30万円の弁済業務保証金分担金を預けることによって代用できる。営業保証金とは名称は異なるものの性質は同じである。

ゴルフ会員権の預託金

ゴルフ会員権の中には、ゴルフ場運営会社に対して一定の金銭を預けて、その見返りにゴルフ場の優先的な利用を行っている場合もある。このときに預けている金銭が保証金である。一般的には預託金と呼ばれるケースが多い。

また、この預託金は「通常の預託金」と「入会時に預ける入会預託金」の2つに分けられる。

通常の預託金は退会時であっても返金されないが、入会預託金は退会時には返金される点で異なる。なお、ゴルフ場運営会社の中には株式の形でゴルフ会員権を発行しているところもある。この場合、保証金は発生しない

そのほかの保証金

そのほかに保証金として捉えられているものとして、「建設協力金」がある。これは賃貸物件を建築するために賃借人が賃貸人に資金を差し入れ、後日、契約書で定められた方法によって返済されるものである。

保証金を預ける側の勘定科目・会計処理

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保証金を預ける側はどのような会計処理を行うのだろうか。さまざまな例を挙げて説明する。

不動産物件を賃借するときの保証金

不動産物件を賃借する際の保証金(敷金といわれることも多い)はどのような会計処理をされるのであろうか。買い入れ開始時から返還に至るまでの一連の動きについて、利用する勘定科目名や会計処理を示す。

ここでは、入居時に150,000円預け、退去時に修繕費名目で30,000円引かれて120,000円返金された場合を例に上げて説明する。

借入時(通常の賃借開始時) 賃貸開始時において保証金を預け入れる際は、通常の場合、以下のような仕訳を切ることになる。

借方 貸方
敷金 150,000 現金預金 150,000

この場合は現金預金の支出を行い、その見返りに保証金である敷金を計上する。敷金は固定資産のうち、「投資そのほかの資産」として分類される。

退去時 退去する際には保証金が戻ってくることになるが、場合によっては原状回復費用を差し引かれる場合もある。この場合の勘定科目は、保証金が敷金、原状回復費用が修繕費となる。

借方 貸方
現金預金 120,000 敷金 150,000
修繕費 30,000

敷金を貸方に計上することによって消去する。一方で、修繕費が発生して、差額が現金預金で返ってくるためこの2つを借方に計上する。

返金されない部分の処理には要注意

保証金を差し入れる際の契約内容によって、敷引きなどと称して退去時に保証金が一部返還されないことが、あらかじめわかっていることもある。

この場合、敷金を差し入れる際に返還されない部分については、長期前払金などの勘定に計上して、原則5年で償却する。ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときは、その賃借期間で償却する。

なお、返還されない部分の金額が20万円未満の場合は一括して費用化することも可能である。

ここで会計処理の例を示す。

例えば、期首に敷金として2,000,000円支払うとしよう。そのうち、契約期間の5年経過後には500,000円が返還されないことがわかっている場合は以下のようになる。

賃貸開始時

借方 貸方
敷金 1,500,000 現金預金 2,000,000
長期前払費用 500,000

長期前払費用は固定資産のうち、「投資そのほかの資産」として分類される。

期末時

借方 貸方
長期前払費用償却 100,000 長期前払費用 100,000

※500,000÷5=100,000円償却する。

勘定科目名は「長期前払費用償却」としたが、この場合「支払手数料」「地代家賃」「減価償却費」とすることも考えられる。

退去時 仮に原状回復費用として150,000円請求されたときは、以下のような処理がなされる。

借方 貸方
現金預金 1,350,000 敷金 1,500,000
修繕費 150,000

営業保証金

会計処理は、法律で求められているかどうかに関係なく同一である。

ここでは100,000円を差し入れる場合について説明する。

差し入れ時

借方 貸方
保証金 100,000 現金預金 100,000

勘定科目はほとんどの場合「保証金」を用いる。

返還時

借方 貸方
現金預金 100,000 保証金 100,000

通常、営業保証金は返還されるときは全額に対して行われるため、差し入れ時とは逆の仕訳が切られる。

ゴルフ会員権の預託金

ゴルフ会員権に係る預託金を預けた場合の会計処理は以下のとおりである。

ここではゴルフ場運営会社の入会のために、1,000,000円のゴルフ会員権と100,000円の入会預託金を支払い、売却して退会するまでの処理について解説する。

ゴルフ会員権取得時 ゴルフ会員権を取得したときの会計処理は以下のとおりとなる。

借方 貸方
ゴルフ会員権 1,000,000 現金預金 1,000,000

勘定科目は「保証金」「預託金」も考えられるが、「ゴルフ会員権」が一般的であると考えられる。

入会時 入会時に入会預託金を支払ったときの会計処理は以下のとおりだ。

借方 貸方
ゴルフ会員権 100,000 現金預金 100,000

ゴルフ会員権本体と同様に処理するため、勘定科目は「ゴルフ会員権」が考えられる。ただし、本体と性質が違うことにより、区別するために「保証金」を用いて別勘定とすることも考えられる。

ゴルフ会員権売却時 ここでは、取得時と同額で売却したものとする。

借方 貸方
現金預金 1,000,000 ゴルフ会員権 1,000,000

購入時と同額で売却したため、売却損益が出ていない。売却益・売却損が出た場合の勘定科目は「ゴルフ会員権売却益(特別利益)」、「ゴルフ会員権売却損(特別損失)」になる場合が多い。

退会時

借方 貸方
現金預金 100,000 ゴルフ会員権 100,000

退会した場合は、ゴルフ場運営会社から入会預託金が返金されるため、返金がなされた後(大抵は会員権を譲り受けた人が入会預託金を払った後)にその処理を行う。

保証金を預かる側の勘定科目・会計処理

ここからは、保証金を預かる側の勘定科目・会計処理について解説する。

不動産物件の保証金

不動産物件を賃貸する側が保証金を受け取った場合、退去までにどのような処理がなされるのだろうか。

ここでは、入居時に150,000円預かり、退去時に修繕費名目で30,000円引いて120,000円返金する場合を例に挙げて説明する。

入居時 物件に入居があり、保証金を預かった場合の処理は以下のとおりだ。

借方 貸方
現金預金 150,000 預かり保証金 150,000

保証金の勘定科目は賃借人の場合と区別をつきやすくするために、「預かり保証金」を使う場合が多い。

入居時(返還されない部分がわかっている部分が場合) 入居時において、契約上、返還されない部分があることがわかっている場合には、その分の金額に関わらず収益となる。

仮に、修繕費30,000円分を契約時点で返金しない場合が確定している場合は以下の通りとなる。

借方 貸方
現金預金 150,000 預かり保証金 120,000
売上高 30,000

返還されない部分については「売上高」としたが、不動産賃貸業が本業ではない場合は「雑収入」勘定で処理することも考えられる。

退去時 預かり保証金の返金を行う際に修繕が必要となり、一部を返金しない場合の処理は以下のとおりである。

借方 貸方
預かり保証金 150,000 現金預金 120,000
売上高 30,000

返金をしない場合は「売上高」としたが、不動産賃貸業が本業ではない場合は「雑収入」勘定で処理することもある。また、修繕時に支払った金銭を費用とせず、「立替金」勘定で処理した場合、「立替金」で処理することも考えられる。

営業保証金

ここでは100,000円を受け入れる場合について説明する。

預かり時

借方 貸方
現金預金 100,000 預かり保証金 100,000

勘定科目はほとんどの場合「預かり保証金」を用いる。

返還時

借方 貸方
預かり保証金 100,000 現金預金 100,000
売上高 30,000

通常、営業保証金は返還されるときは全額に対して行われるため、差し入れ時とは逆の仕訳が切られる。

保証金の勘定科目・会計処理はそれぞれ異なる

ここまで、保証金の種類や差し入れた側の勘定科目・会計処理、預かる側の勘定科目・会計処理について説明した。

不動産物件の保証金や営業保証金、ゴルフ会員権の預託金など世の中にはさまざまな保証金が存在する。事業を展開していく上で、預かったり預けたりする機会もあるだろう。保証金については、その内容によって会計処理が異なるため、適切な処理方法を頭に入れておく必要がある。

本稿を参考に、保証金の勘定科目や会計処理について理解を深めていただければ幸いである。

文・中川崇(公認会計士・税理士)