事業を展開する上で備品を購入する機会は多い。備品の会計処理は、金額等によって選択できる処理方法が決まっていることや、償却する場合でもさまざまな方法があり、複雑となっている。今回は、そんな備品の会計処理について解説する。

目次

  1. 会計処理の区別は買ったときの値段で決まる
  2. 備品の会計処理:費用処理の場合(7万円の物品の場合)
    1. 税務処理(法人税・所得税 10万円以上30万円未満の場合)
    2. 税務処理(償却資産税)
  3. 備品の会計処理:減価償却資産の場合(40万円の資産の場合)
    1. 取得時の処理
    2. 期末の処理
    3. 定額法における期末の会計処理
    4. 定率法における期末の会計処理
    5. 処分時の会計処理
    6. 税務処理(法人税・所得税と償却資産税)
  4. 備品の会計処理:一括償却資産の会計処理(11万と13万の資産の場合)
    1. 取得時、期末の会計処理(一般的な処理)
    2. 取得時、期末の会計処理(まとめて処理を行う場合)
    3. 処分時の会計処理
    4. 税務処理(所得税・法人税・償却資産税)
  5. 備品における会計処理・税務処理の知識を身に着けよう
中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

会計処理の区別は買ったときの値段で決まる

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

備品の購入・破棄に必要な会計処理とは?償却のポイントも解説
(画像= tamayura39/stock.adobe.com)

備品の会計処理には大きく分けて以下の3つがある。

・費用処理する ・一括償却する ・減価償却する

会計処理はこの3つの中から選択できるが、備品の価格によって選択できるものが異なる。

10万円未満の場合 備品の価格が10万円未満の場合は以下の3つから選ぶことができる。

・費用処理 ・一括償却 ・減価償却

ほとんどの場合費用処理を選択する。また、個人の場合は必ず費用処理される点に注意しよう。

10万円以上20万円未満の場合 備品の価格が20万円未満の場合は、以下の2つから選ぶことになる。

・一括償却 ・減価償却

ただし、青色申告をしている中小企業や個人の場合は一定の条件のもと費用処理を選択することが可能だ。

20万円以上30万円未満の場合 備品の価格が30万円未満の場合は通常、減価償却のみとなる。ただし、青色申告をしている中小企業や個人の場合は一定の条件のもと費用処理を選択することができる。

30万円以上の場合 備品の価格が30万円以上の場合は減価償却のみとなり、これ以外を選択することはできない。

備品の会計処理:費用処理の場合(7万円の物品の場合)

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

備品を購入・使用開始したときに費用処理とする場合の会計処理は以下のようになる。

借方 貸方
消耗品費 70,000 現金預金 70,000

会計処理はこのときのみで、その後期末時・廃棄時については何も行わない。また、備品の価格が10万円未満の場合、税務上においては何もする必要がない。

税務処理(法人税・所得税 10万円以上30万円未満の場合)

その一方で、備品の価格が10万円以上の場合においては費用処理をすることができない。ただし、備品の価格が10万円以上かつ30万円未満の場合は条件付きで費用処理をすることができる。その条件とは以下のとおりだ。

・青色申告を行っている中小企業(資本金が1億円以下である企業)等や個人であること ・従業員が500人以下であること(令和2年3月31日以前の取得は1,000人以下) ・1年間で備品等の代金の合計が300万円以下であること ・申告時に取得した備品の明細を提出すること

税務処理(償却資産税)

備品などの固定資産を持っている場合は年に1回、1月頃に償却資産の固定資産税(一般に償却資産税といわれているため今後もそう記載する)の申告をし、後に納付することとなっている。

費用処理した場合は、原則として申告する必要はなく、税金を納める必要もない。

しかし、備品の価格が10万円以上30万円未満の場合は、申告する必要がある。償却資産税の制度のもとで計算された備品(やその他の資産)の価格が150万円以上となった場合は償却資産税を支払う。

備品の会計処理:減価償却資産の場合(40万円の資産の場合)

まず、備品の価格が30万円以上の場合は必ず減価償却を行うことになる。また、10万円以上30万円未満の場合であっても減価償却を選択することが可能だ。

ここでは、会計処理・税金処理について解説する。

取得時の処理

例えば、備品を400,000円で購入した場合の会計処理は以下のとおりだ。

借方 貸方
工具器具備品 400,000 現金預金 400,000

工具器具備品として固定資産を計上する。

期末の処理

先程の400,000円の備品については1年間で費用処理はせずに何年かに分けて費用化していく。

費用化の方法は2通りあり、毎年同じ金額だけ費用化する「定額法」と費用化されていない部分について毎年一定の率をかけた結果を費用化する「定率法」がある。

個人の場合は定額法を、法人の場合は定率法が原則となっているが、個人が定率法、法人が定額法を選ぶことは可能である。ただし、その場合は「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出する必要があるため注意が必要だ。

定額法における期末の会計処理

具体的にはどのように行うのか、ここでは400,000円で取得した備品を8年で償却していく場合について説明する。

費用化する金額は備品の取得価額に償却率をかけて求める。8年の場合は0.125である。

400,000×0.125 = 50,000 上記の分だけ費用化する。

借方 貸方
減価償却費 50,000 工具器具備品 50,000

これを備品の減価償却していない金額の残りが1円になるまで続けることとなる。

なお、初年度と最終年度に限り、減価償却の計算は、取得から期末までまたは期初から減価償却が終わるか処分する期間まで月数按分で計算する。

定率法における期末の会計処理

先ほどと同じ備品を例にとり、定率法ではどのような会計処理を行うか示す。

・1年目 費用化する金額は原則、備品の減価償却されていない金額(残存価格という)に償却率をかけて求める。

8年間の場合の償却率は0.250であるため、計算すると以下のようになる。

400,000×0.250 = 100,000

借方 貸方
減価償却費 100,000 工具器具備品 100,000

また、この場合、残存価格は以下のとおりである。 400,000-100,000 = 300,000

なお、月の途中で取得した場合に月数按分するのは定額法と同じである。

・2年目 償却率は同じであるが、かけるもととなる金額は備品の価格である400,000ではなく、残存価格である300,000である。計算式は以下のとおりだ。

300,000×0.250 = 75,000

借方 貸方
減価償却費 75,000 工具器具備品 75,000

1年目と比較して金額が低くなる。

・3年目以降 基本的に残存価格に償却率をかけて計算することとなるが、ある時期以降では定額法と同じ方法での費用化に切り替わり、減価償却されていない金額が1円になるまで減価償却することとなる。

処分時の会計処理

備品を処分した場合は以下のような会計処理を行う。

・廃棄時 備品を処分する場合としてまず挙げられるのが廃棄である。

例えば、残存価格が50,000円の備品を廃却した場合の会計処理は以下のとおりだ。

借方 貸方
固定資産除却損 50,000 工具器具備品 50,000

備品の廃棄によって一気に減価償却されていない部分を費用化する。

・売却時 残存価格が50,000円の備品を100,000円で売った場合(利益が出た場合)と10,000円で売った場合(損失が出た場合)、会計処理は以下のとおりだ。

①利益が出た場合

借方 貸方
現金預金 100,000 工具器具備品 50,000
固定資産売却益 50,000

備品の残存価格と売れた金額との差額を利益である固定資産売却益として計上する。

②損失が出た場合

借方 貸方
現金預金 10,000 工具器具備品 50,000
固定資産売却損 40,000

備品の残存価格と売れた金額との差額を損失である固定資産売却損として計上する。

税務処理(法人税・所得税と償却資産税)

法人税の申告上、法人税法上で求められた範囲内で行っている限り、内訳を申告書(別表16(1)、別表16(2)など)に記載して提出する。

また、所得税では申告書に減価償却している資産についてすべて記載することとなる。

減価償却する資産を持っている場合は、償却資産税の申告の対象となる。そのため、年に1回申告を行い、納付を行うこととなる。

備品の会計処理:一括償却資産の会計処理(11万と13万の資産の場合)

20万円未満の資産を取得したときは、3年間で償却する一括償却を選択することができる。

どのような会計処理を行うのか解説する。

取得時、期末の会計処理(一般的な処理)

一般的な一括償却資産の処理について、ここでは110,000円の机と130,000円の椅子を買った場合の処理について述べる。

・取得時

借方 貸方
工具器具備品 110,000 現金預金 240,000
工具器具備品 130,000

資産を計上する方法は減価償却を行う資産と一緒である。

・期末時 借方 貸方 減価償却費 79,999 工具器具備品 36,666

工具器具備品 43,333

この仕訳を3年分行う。端数が出る場合は4年目にも償却することもある。

減価償却を行う資産と違い、期中で取得したとしても月割計算は行わない。

取得時、期末の会計処理(まとめて処理を行う場合)

一括償却資産は個別に処理することが多いが、まとめて処理することもできる。

その場合の会計処理は以下のとおりだ。

・取得時

借方 貸方
工具器具備品 240,000 現金預金 240,000

勘定科目名は「一括償却資産」とする場合もある。

・期末時

借方 貸方
減価償却費 80,000 工具器具備品 80,000

複数の資産をまとめて処理することができる。

処分時の会計処理

当該資産を処分したり売却したりしたとしても、当該資産の減価償却を中止して全額費用化することはできず、3年間償却することとなる。

すなわち、処分した場合の会計処理は行わず、例えば、50,000円で売却した場合の会計処理は以下のようになる。

借方 貸方
現金預金 50,000 雑収入 50,000

単純に資金が入ってきたことのみを認識することとなる。

税務処理(所得税・法人税・償却資産税)

所得税上では確定申告書にまとめて一括償却資産として記載することとなる。

一括償却資産を処理した場合、法人税上では別表16(8)に会計期間ごとの取得額、償却費を記載することとなる。

一括償却資産については償却資産税の申告を行う必要はない。

備品における会計処理・税務処理の知識を身に着けよう

今回は、備品を取得したときの会計処理や税務処理について説明してきた。

具体的には、備品を購入してから処分・売却するまでの会計処理や所得税・法人税・償却資産の固定資産税(償却資産税)の処理を中心に述べた。

備品は購入する機会も多く、適切な会計処理を行えば節税にもつながる。ぜひ正しい会計処理の知識を身に着けて活用していただきたい。

文・中川崇(公認会計士・税理士)