事業での収益が即座に入ることは、一般消費者に対しての販売以外はほとんどなく、たいていの場合は売掛金を立てることで後日精算される。今回は、売掛金の回収がどのように行われるのか、その会計処理や税務処理について解説する。

目次

  1. 売掛金の回収のパターンを知る
    1. 期日通りに回収される
    2. 手形で支払われる
    3. 買掛金など仕入債務と相殺する
    4. 回収されない場合
    5. 回収が一部でも失敗に終わり貸倒れが生じた場合
  2. 基本的な処理方法
    1. 売上計上時
    2. 決済時
    3. 手数料を負担することになった場合
  3. 手形で支払う場合
    1. 手形の受取
    2. 資金回収(手形の期日が来た場合)
    3. 資金回収(手形を割り引いた場合)
  4. 相手方の仕入債務と相殺する場合
  5. 回収がままならず法的手段となった場合
    1. 内容証明
    2. 民事調停
    3. 支払督促
    4. 訴訟・少額訴訟
  6. 貸倒れた場合
    1. 貸倒れのケースと会計処理
    2. 税務上の留意点
  7. 売掛金の回収には適切な対応を
中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

売掛金の回収のパターンを知る

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売掛金の回収とは?基礎知識とその会計処理について解説!
(画像=CJ Nattanai/stock.adobe.com)

売掛金の回収には、どのようなパターンがあるのだろうか。そのパターンをいくつか挙げる。

期日通りに回収される

たいてい、売り手が指定した日までに買い手が銀行へ振り込むなどして代金を入金する。ほとんどの売掛金はこのケースで回収が終わることが多い。

手形で支払われる

売掛金は現金や預金によって精算することが多いが、中にはそうではないケースもある。その一つが、売掛金を一旦手形で精算するケースである。これは、売掛金を(割引など)換金性の高い手形に変えて、後日手形の決済をもって支払うこととするものだ。

買掛金など仕入債務と相殺する

現金や預金以外で精算する方法としてもう一つ挙げられるのが、仕入債務との相殺である。通常商取引は売り手と買い手が固定されている場合がほとんどであるが、中にはお互いが買い手と売り手の両方の立場になることがある。

その場合、ともに相手方に対する売掛金と買掛金の両方を持っていることになり、それぞれを現金や預金で精算するよりもそれぞれを相殺したほうが、手続き上負担が少ないこともある。そのときは、お互いの同意の上で処理を行うこともある。

回収されない場合

これまで説明したケースはいずれも売掛金が予定通り回収されるケースである。しかし、中には回収自体が失敗に終わる、または失敗ではないものの難航する場合がある。

代表的なものとしては、相手が支払いに応じないか何らかの事情があって支払われないケースが挙げられる。

回収が一部でも失敗に終わり貸倒れが生じた場合

回収が難しくなった場合、はじめは何らかの法的な手段を起こして回収に努めるが、それでも最終的に一部でも回収ができなくなることがある。裁判や民事調停の結果、こちらの訴えが認められなかった場合などがそれに該当する。また、訴えが認められても相手が自己破産を申し立てるなどして回収がほぼ不可能になる場合がある。

基本的な処理方法

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ここでは基本的な取引として、売り手から買い手への100,000円の売上を売掛金で計上して、それを回収するまでの取引内容と仕訳について説明する。

売上計上時

まず、売上が立ったとき、借方に将来金銭が入る権利を得たという意味で売掛金100,000円を計上し、貸方にその原因である売上高を同額計上する。

借方 貸方
売掛金 100,000 売上 100,000

決済時

期日になり、売り手のもとに売掛金が入金された場合は、貸方に売掛金を100,000円計上して売掛金を消し、それと入れ替わりに借方に現金預金として100,000円を計上する。

借方 貸方
現金預金 100,000 売掛金 100,000

手数料を負担することになった場合

取引によっては振込手数料を売り手が負担する場合もある。この場合、売り手の手元にはその手数料分を差し引いた金銭が手に入ることとなる。

例えば、手数料が440円であった場合は、以下のような仕訳になる。

借方 貸方
現金預金 99,560 売掛金 100,000
支払手数料 440

これは支払手数料の支払いがあったために、現金預金がそれだけ減ったことを示している。

手形で支払う場合

支払手形で売掛金が支払われた場合、資金回収までどのような手順を踏まえることになるのだろうか。ここでは、売掛金100,000円を手形で精算する場合について説明する。

手形の受取

売掛金をどのように支払うかは、当事者同士の契約内容によって決められる。私の経験上では、支払金額が大きい場合によく使われている印象だ。

まず、売掛金を手形で生産した場合、売掛金が受取手形に置き換わるため、以下のような仕訳を切る。

借方 貸方
受取手形 100,000 売掛金 100,000

ただ、実務上は手形に貼る印紙代(10万円以上は印紙を貼る必要がある)や、それを送付するための郵送料を売り手が負担することが多い。

例えば、200円の印紙と500円の送料を負担することとなった場合、以下の仕訳を切ることになる。

借方 貸方
受取手形 100,000 売掛金 100,000
租税公課 200 現金預金 700
通信費 500

資金回収(手形の期日が来た場合)

手形の資金回収が行われる場合、手形の期日が来て手形を換金する場合がある。仕訳は以下のとおりだ。

借方 貸方
現金預金 100,000 受取手形 100,000

資金回収(手形を割り引いた場合)

手形の資金回収が行われる場合としてほかに考えられるのが、期日前に手形を銀行などに持っていき、手数料を支払った上で引き取ってもらい換金する方法がある。これを「手形の割引」という。

手形の発行から資金化するまでに時間がかかる場合は、手形の割引を利用して多少の費用はかかるものの早期に資金化することが可能だ。

仮に5,000円の手数料がかかったとしよう。この場合、以下の仕訳を切ることになる。

借方 貸方
現金預金 95,000 受取手形 100,000
手形売却損 5,000

手数料は手形売却損の科目で計上することとなる。損益計算書上、手形売却損は支払利息と同じ営業外費用の項目に区分される。

相手方の仕入債務と相殺する場合

取引の相手方に売掛金と、仕入の対価を支払う義務である買掛金の両方がある場合、それらを相殺することによって売掛金を精算することも可能だ。

例えば、売掛金と買掛金の両方がある相手方について考えてみよう。100,000円の相殺を行う場合は、相殺する意思表示が到達した後、以下のような仕訳を切ることになる。

借方 貸方
買掛金 100,000 売掛金 100,000

回収がままならず法的手段となった場合

ここまでは、売掛金が無事に回収された場合について説明してきた。しかしながら、中には回収ができない場合もある。このような場合はどうすればよいのか、処理の方法とそれに関連する会計処理について説明する。

内容証明

相手方に内容証明と呼ばれる郵便を送り、支払いを促す方法だ。

通常の郵便と違うのは、相手方に支払うように促した文書が送られたことを郵便局に証明してもらえる点が挙げられる。内容証明に書かれたことには強制力がないため、相手は支払う必要はないが、心理的プレッシャーを与えることができる。

民事調停

民事調停は、裁判所で行う解決方法の一つであり、お互いが話し合いで紛争(この場合は売掛金のみ回収)を解決する手法である。裁判ではないが、その決定に関しては強制力があり、決定に従わない場合は強制執行を求めることもできる。

支払督促

支払督促は、簡易裁判所に申し立てを行い、簡易裁判所が相当と認めたときに相手方に督促状を送り売掛金を回収するものである。ただし、相手が異議を申し立てれば裁判に移行する。裁判や民事調停に比べて、裁判所などに出向く必要がないため簡便な手続きで済ませることができる。

訴訟・少額訴訟

通常、訴訟を起こす先は地方裁判所となるが、請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所に起こすことができる。また、通常、裁判は数日かかるものであるが、請求金額が60万円以下の場合は弁論を1回で終わらせる少額訴訟で済ませることも可能だ。

貸倒れた場合

内容証明や訴訟などの甲斐なく、売掛金が回収できずに貸倒れる場合もある。この場合はどのようなケースがあるのだろうか。会計処理とあわせて説明する。

貸倒れのケースと会計処理

売掛金が貸倒れとなるケースには、以下のようなケースが挙げられる。

・相手が破産などの法的措置をとった場合 ・相手方が法的な措置をとっていないものの回収できないと判断した場合 ・相手が夜逃げなどをして、連絡が取れない場合

こういった場合にはどのような会計処理を行えばよいのだろうか。

ここでは、100,000円の売掛金が回収不能となり、貸倒れた場合の会計処理について解説する。

貸倒れの可能性が高くなった場合(全く貸倒引当金を立てていなかった場合) 相手の業績が急激に悪化したことにより、貸倒れの可能性が高まった場合は貸倒引当金を計上する。例えば、全額貸倒れの可能性が出てきた場合は以下の仕訳を切る。

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 100,000 貸倒引当金 100,000

実際に全額貸倒れた場合(貸倒引当金を計上している場合) ケースとしては貸倒引当金が設定されている場合と設定されていない場合があるが、まずは貸倒引当金が計上されている場合について説明する。

貸倒引当金が計上されている場合は、貸倒れた売掛金と貸倒引当金を相殺する処理をする。

借方 貸方
貸倒引当金 100,000 売掛金 100,000

なお、消費税課税業者である場合は、消費税の控除があるため消費税10%を含めた仕訳を切る。

借方 貸方
貸倒引当金 90,910 売掛金 100,000
仮受消費税 9,090

実際に全額貸倒れた場合(貸倒引当金を計上していない場合) 同じく、貸倒引当金が設定されていない場合は損失を計上する。

借方 貸方
貸倒損失 100,000 売掛金 100,000

貸倒損失は貸借対照表の上では通常、特別損失の項目に区分される。また、消費税を考慮すれば、以下のような仕訳となる。

借方 貸方
貸倒損失 90,910 売掛金 100,000
仮受消費税 9,090

税務上の留意点

税務上、貸倒損失を計上できる場合は限られている。

以下の事情によって金銭債権が切り捨てられたとき ・法律の規定によって切り捨てられたとき ・行政機関や金融機関のあっせんにより合理的に切り捨てられたとき ・債務者の債務超過の状態が長期化し、弁済が難しくなった場合にその債務者に書面で免除した場合の債務免除額

債務者の資金状態によって売掛金全額が回収不能になることが明らかになったとき

少なくとも1年以上取引がなかった場合、取り立て費用が売掛金より多く、支払いを催促しても弁済がないとき

それ以外の場合は、会計の際に計上したとしても申告書上で調整することになる。

売掛金の回収には適切な対応を

売掛金について、その発生から回収・貸倒れに至るまで、その一部始終について解説してきた。

売掛金はいわゆる「ツケ」のようなものであり、取引先の経営状況によっては回収できない場合もある。そのため、取引先の経営状況はもちろん売掛金の回収が滞らないよう、相手方へすぐに連絡ができるようにしておくことが大切だ。

それでも、売掛金を回収できない場合は法的手段を考える必要もあるだろう。また、未回収金額や入金の状況を適切に把握するためにも、正しい仕訳を切ることが重要だ。

売掛金の回収は資金繰りにも影響を及ぼすため、本記事が読者各位の参考になれば幸いである。

文・中川崇(公認会計士・税理士)