経営体制を見直す際には、さまざまなデータを用いる必要がある。「需要の価格弾力性」もそのひとつであり、この指標は価格設定の際に役立つものだ。やや専門的な用語だが、具体例を用いながら分かりやすく解説しているため、ぜひ最後まで読み進めていこう。

目次

  1. 需要の価格弾力性とは?
  2. 需要の価格弾力性の計算方法
    1. 需要の価格弾力性が高いとどうなる?
    2. 需要の価格弾力性が低いとどうなる?
  3. 需要の価格弾力性を経営に活かす3つの方法
    1. 1.価格設定の判断材料にする
    2. 2.商品分析を行い、今後の方向性を考える
    3. 3.セールやキャンペーンの対象にする商品を選ぶ
    4. 4.小売やメーカーと協議をする
  4. ほかの「弾力性」も合わせてチェックしよう
    1. 1.供給の価格弾力性
    2. 2.労働の賃金弾力性
    3. 3.投資の利子弾力性
    4. 4.価格の交差弾力性
  5. まずは必要なデータを収集し、さまざまな弾力性を計算してみよう

需要の価格弾力性とは?

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需要の価格弾力性とは?計算方法や経営に活かす4つの方法を、具体例を用いて分かりやすく解説
(画像=PIXTA)

需要の価格弾力性とは、ある商品の価格が変動した場合に、需要がどれくらい変化するのかを数値化したものだ。例えば、どのような商品も価格が高騰すれば需要は減るが、「価格がいくら上がれば、どれくらい需要が減るのか?」は商品の種類によって異なる。

この需要の価格弾力性を把握できれば、ひとつひとつの商品に対して適正価格を設定しやすくなる。つまり、消費者の需要をコントロールしやすくなるので、会社の成長や安定を目指す経営者にとって、需要の価格弾力性は欠かせない知識と言えるだろう。

需要の価格弾力性の計算方法

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需要の価格弾力性は、以下の式によって計算できる。

○需要の価格弾力性の計算式 需要の価格弾力性=需要の変化率(%)÷価格の変化率(%)
需要の変化率=(価格改定後の売上数-価格改定前の売上数)÷価格改定前の売上数
価格の変化率=(改定後の価格-改定前の価格)÷改定前の価格

つまり、需要の価格弾力性を計算するには、「価格改定前後の売上数」と「改定前後の価格」のデータが必要になる。では、以下のモデルケースを例に、実際に需要の価格弾力性を計算してみよう。

価格改定前の売上数(個) 500
価格改定後の売上数(個) 600
改定前の価格(円) 800
改定後の価格(円) 700

需要の変化率=(600-500)÷500       =0.2%

価格の変化率=(700-800)÷800       =-0.125%

需要の価格弾力性=0.2%÷0.125%         =1.6

計算の過程で注意しておきたいポイントは、需要の変化率と価格の変化率は「絶対値」として扱う点だ。仮に計算結果がマイナスの値であっても、需要の価格弾力性を算出する際にはプラスの値に変換して計算を行う。

需要の価格弾力性が高いとどうなる?

需要の価格弾力性の基準は1であり、最終的な計算結果が1を上回る場合は「価格弾力性が高い状態」を、1を下回る場合は「価格弾力性が低い状態」を表す。したがって、計算結果が1.6となった前述のモデルケースでは、該当する商品の弾力性が高いと判断できる。

では、需要の価格弾力性が高い商品には、具体的にどのような特徴があるのだろうか。簡単に言えば、需要の価格弾力性が高い商品は、価格設定によって消費者の需要が大きく変化する。

つまり、極端に値上げをすると商品が売れなくなってしまうため、特に現行価格からの値上げを検討する際には、より慎重に金額を設定することが必要だ。

需要の価格弾力性が低いとどうなる?

一方で、需要の価格弾力性が低い商品は、価格改定をしてもそれほど需要が変わらない。つまり、値下げをしても売上につながらない可能性があるので、売上個数を増やすための値下げは慎重に行う必要がある。

ちなみに、需要の価格弾力性が高い商品としては「贅沢品」や「娯楽品」、低い商品としては「生活必需品」をイメージすると分かりやすいだろう。例えば、食料品やガソリンなどの生活必需品は、価格が多少変動しても購入されるケースが多いため、総じて需要の価格弾力性が低い傾向にある。

需要の価格弾力性を経営に活かす3つの方法

需要の価格弾力性を計算したら、次はそのデータを実際の経営に反映させる必要がある。そこで次からは、需要の価格弾力性を経営に活かす方法をまとめた。

1.価格設定の判断材料にする

需要の価格弾力性は、商品・サービスの適正価格を見極める際に活用できる。

例えば、弾力性の低い商品は価格の影響を受けにくいため、市場価格よりも強気の価格設定をすることが可能だ。一方で、弾力性の高い商品を販売する際には、相場よりも低めの価格設定にしなければ、売上が思った以上に伸びなくなる恐れがある。

このように、需要の価格弾力性は価格設定の判断材料になるが、もちろんほかの要素も意識しなければならない。競合の有無やブランド力など、消費者のニーズに影響を及ぼす要素は数多くあるので、需要の価格弾力性はあくまで「判断材料のひとつ」として認識しておこう。

2.商品分析を行い、今後の方向性を考える

需要の価格弾力性は、以下のように商品の現状を分析する際にも役立つ。

需要の価格弾力性 売上 商品・サービスの現状
高い 多い 相場に比べて価格が低い可能性がある。
少ない 相場に比べて価格が高い可能性がある。
低い 多い 消費者が商品・サービスの質に満足しているため、売上につながっている。
少ない 商品・サービスの質に問題がある影響で、売上につながっていない可能性がある。

つまり、需要の価格弾力性が高い商品は、「価格」が消費の判断材料になりやすい。したがって、弾力性が高く売上が少ない商品については、真っ先に価格設定の見直しを検討したいところだ。

一方で、需要の価格弾力性が低い商品は、「質」が売上に大きな影響を及ぼす。そのため、弾力性が低く売上が少ない商品があれば、研究開発によって商品の質を改善する必要があるだろう。

このように、需要の価格弾力性をもとに商品分析を行うと、今後取り組むべき施策が分かりやすくなる。

3.セールやキャンペーンの対象にする商品を選ぶ

需要の価格弾力性が高い商品は、価格を下げるほど需要が大きく伸びる。そのため、セールやキャンペーンの対象商品は、弾力性の高いものから選ぶと効果的だ。

そのほか、弾力性が高い商品の割引率を上げたり、弾力性が低い商品の割引率を下げたりなど、需要の価格弾力性を意識すれば柔軟な形でセールやキャンペーンを実施できる。

4.小売やメーカーと協議をする

商品の販売方針について小売やメーカーと協議をする際にも、需要の価格弾力性は重要な判断材料になる。

一般的に、小売業はセールやキャンペーンへの依存度が高く、弾力性が低い商品を割引してしまうケースは珍しくない。しかし、これでは小売・メーカーともに損をするため、このような形での客寄せは望ましい販売方針とは言えないだろう。

小売・メーカーの双方が納得できる価格設定をするには、両者がきちんと協議をすることが必要だ。このときに需要の価格弾力性をもとに売値を提案すれば、相手を納得させた上で適正価格に近付けることができる。

ほかの「弾力性」も合わせてチェックしよう

実は「弾力性」と表現される指標は、今回解説している需要の価格弾力性だけではない。ほかにもさまざまな指標があり、それぞれの意味を理解しておけばより質の高い経営計画を立てられる可能性がある。

そこで次からは、経営者が特に押さえておきたい4つの弾力性を紹介していこう。

1.供給の価格弾力性

需要の価格弾力性とセットで覚えておきたい指標が、「供給の価格弾力性」と呼ばれるものだ。これは商品の価格が変動した場合に、「供給がどれくらい変化するのか?」を数値化したものであり、以下の式によって計算される。

供給の価格弾力性=供給量の変化率÷価格の変化率

供給の価格弾力性が高い(1を上回る)商品は、値上げをすると供給量も大きく増えてしまう。供給量が増えると在庫を抱えるリスクが高まるので、特に供給の価格弾力性が高い商品の価格はより慎重に設定する必要がある。

2.労働の賃金弾力性

労働の賃金弾力性は、賃金の変化によって「どれくらい労働時間が変わるのか?」を数値化した指標だ。以下の式によって計算される指標であり、計算結果が1を超える場合は弾力性が高い状態を表す。

労働の賃金弾力性=労働時間の変化率÷賃金の変化率

労働の賃金弾力性が高い企業は、賃金を上げるほど労働時間が延びやすくなる(=人が集まりやすくなる)。一方で、弾力性が低い企業は賃金を上げても労働時間に変化が生じにくいため、人材を増やしたいのであれば労働環境の見直しなどが必要になるだろう。

3.投資の利子弾力性

投資の利子弾力性とは、利子が変化したときに「投資にどれくらい影響が生じるか?」を数値化した指標だ。これまでの指標と同じく、以下の計算結果が1を超えた場合に弾力性が高い状態となる。

投資の利子弾力性=投資の変化率÷利子の変化率

投資の利子弾力性が高い場合、利子の変動によって投資効率が大きく変わるため、その投資はリスクがやや高いと判断できる。弾力性が高く、かつ利子の変動も大きい投資をする場合には、「どのようなリスクがあるのか?」や「どれくらいリスクが大きいのか?」を慎重に判断しなければならない。

4.価格の交差弾力性

価格の交差弾力性は、ある財の価格が変動したときに「別の財の需要がどれくらい変化するか?」を表す指標である。以下の計算結果の数値が高いほど、別の財への影響が大きくなることを意味する。

価格の交差弾力性=財Aの需要変化率÷財Bの価格変化率

価格の交差弾力性は、競合の価格変動による影響を判断する際に便利な指標だ。例えば、上記式の財Aを自社商品に、財Bを競合の商品に置き換えると、「競合商品の価格変動によって、自社商品の需要がどう変化したか?」を分析できる。

このケースで仮に弾力性が高くなった場合は、競合の値下げによって需要が大きく減る恐れがあるため、自社も価格改定の必要性に迫られる可能性が高い。

まずは必要なデータを収集し、さまざまな弾力性を計算してみよう

需要の価格弾力性をはじめ、いずれの弾力性もデータがなければ算出できない。そのため、弾力性の結果を経営に活かしたいのであれば、まずは計算に必要な「変化量のデータ」を収集することが必要だ。

特に需要の変化量や供給量の変化量は、きちんとしたデータを収集するまでに多くの時間がかかるので、日頃から売上データなどはこまめに記録しておきたい。必要なデータを収集できたら、さっそく今回紹介した弾力性を計算し、今後の経営方針を考えてみよう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部