多くの資産を保有する企業は、オフバランス化によって経営体制を改善できる可能性がある。ただし、オフバランス化にもさまざまな手法があるため、実施前には正しい知識をつけておくことが重要だ。そこで今回は、オフバランス化の概要を分かりやすくまとめた。

目次

  1. 企業価値が向上する?「オフバランス」とは
  2. 企業がオフバランス化に取り組むメリット
    1. 1.ROAの改善により、外部評価が高まる
    2. 2.資産の所有リスクを軽減できる
  3. 企業がオフバランス化に取り組むデメリット
    1. 1.現金化できるものが減る
    2. 2.場合によってはトータルコストが高くなる
  4. 企業がオフバランス化に取り組む6つの手法とは?
    1. 1.資産の売却
    2. 2.不動産の証券化
    3. 3.リースやレンタルの活用
    4. 4.アウトソーシングの活用
    5. 5.セールス・アンド・リースバック
    6. 6.クラウドサービスの利用
  5. オフバランス化を進める上での注意点
    1. 1.債務超過を隠ぺいするオフバランス化は、粉飾決算に該当する
    2. 2.オフバランスの要件は厳しくなってきている
  6. 専門家も活用しながら、健全な経営体制の構築を

企業価値が向上する?「オフバランス」とは

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オフバランス化とは?各手法の特徴やメリット・デメリット、注意点を分かりやすく解説
(画像=PIXTA)

オフバランスとは、バランスシート上(貸借対照表)に記載されない資産・負債のことだ。やや専門的な用語だが、「オフ(資産・負債の記載を減らすこと)」と「バランス(貸借対処表のこと)」に分けると覚えやすい。

貸借対照表に記載される資産・負債が減ると、その企業の自己資本比率が高まるため、オフバランスには企業価値を向上させる効果がある。ちなみに、企業の状況次第でオフバランスは自然に発生することもあるが、後述で紹介するメリットを狙って自ら貸借対照表の資産・負債を減らす行動は「オフバランス化」と呼ばれている。

企業がオフバランス化に取り組むメリット

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オフバランス化の具体的な手法の前に、まずはオフバランス化に取り組むメリットを紹介していこう。企業がオフバランス化に取り組むメリットは、大きく以下の2つに分けられる。

1.ROAの改善により、外部評価が高まる

ROAとは、所有する資産によって「どれくらいの収益を得られているのか?」を表す指標のこと。オフバランス化によって貸借対照表の資産が減少すると、以下の式で計算されるROAの数値が上昇する。

ROA(純資産利益率)=当期純利益÷(純資産×100)

このROAが上昇すると、金融機関をはじめとした外部からの評価が高まる。つまり、場合によっては資金調達のハードルがぐっと下がるため、特に資金繰りに問題を抱えている企業は積極的にオフバランス化を進めたい。

2.資産の所有リスクを軽減できる

資産の所有リスクが軽減される点も、経営者が理解しておきたいオフバランス化のメリットだ。資産は外部から評価される対象となるが、仮に所有する不動産の価値が暴落すると、負債を抱える要因になりかねない。

つまり、どのような資産にも所有リスクはあり、高額な資産ほどそのリスクは大きくなっていく。そのため、オフバランス化によって資産を処分できれば、経営の安定性を高められる可能性があるのだ。

また、オフバランス化をすると貸借対照表の見た目がスリムになり、保有する資産の管理・把握が容易になる。

企業がオフバランス化に取り組むデメリット

オフバランス化には魅力的なメリットがある一方で、実は注意しておきたいデメリットも潜んでいる。このデメリットを軽視すると、経営面に深刻なダメージを及ぼしてしまう恐れがある。

そのため、オフバランス化に取り組む前には、以下のデメリットについてもきちんと理解しておこう。

1.現金化できるものが減る

手持ちの資産を処理すると、必然的に現金化できるものが減ってしまう。つまり、キャッシュが必要なときにすぐに現金を調達することが難しくなるため、オフバランス化したいからと言って安易にすべての資産を処分するべきではない。

例えば、税金や借入金の返済をはじめ、会社経営ではさまざまなシーンでキャッシュが必要になる。これらのタイミングでキャッシュが不足すると、さまざまな企業活動に弊害が生じてしまうため注意が必要だ。

また、タイミングによっては資産を希望通りの価格で売却できない恐れもあるため、オフバランス化を進める時期についても慎重に見極める必要があるだろう。

2.場合によってはトータルコストが高くなる

後述でも詳しく解説するが、よく用いられるオフバランス化の方法としては「リースの活用」が挙げられる。手持ちの資産を売却し、設備や機械をリースによって調達すれば、高額な資産の所有リスクを抑えられる。

しかし、リース契約では一定の手数料が発生するため、場合によっては保有資産で事業を営むよりトータルコストが高くなることも。さらに、リース期間が長引くほどコストは積み重なるため、長期的に取り組む事業に関しては、無理にリースを活用する必要はないだろう。

資金調達のハードルは下がるが、コスト増大によって利益が減ると借入金の返済も難しくなるので、オフバランス化によって生じるコストは事前に細かく見積もる必要がある。

企業がオフバランス化に取り組む6つの手法とは?

前述で紹介したリース以外にも、企業がオフバランスに取り組む手法はいくつか存在する。そこで次からは、オフバランス化の主な手法とそれぞれのメリットなどをまとめた。

選ぶ手法によって企業の経営状態は変わってくるので、オフバランス化に興味のある経営者は以下の手法にも目を通した上で、今後の計画を慎重に立てていこう。

1.資産の売却

数ある手法のなかでも、「資産の売却」は最もシンプルな選択肢だ。例えば、現在使用していない不動産や設備などを売却すれば、オフバランスを実現できる上に売却益も手に入る。

ただし、余剰資産をすべて売却すると、前述でも解説したように現金化できるものがなくなるため、売却する資産は慎重に選ぶことが重要だ。

2.不動産の証券化

特に規模が大きい不動産を処理する場合は、「不動産の証券化」と呼ばれる手法がとられることもある。これは、設立した特別目的会社(SPC)に不動産を譲渡し、そのSPCが投資家に向けて証券を発行することで、不動産を流動的な資産として運用していく手法だ。

この手法はオフバランス化の手法としてよく用いられるため、特に不動産をもつ経営者はしっかりと覚えておこう。

3.リースやレンタルの活用

車両や機械設備など、大がかりな事業用資産をリースもしくはレンタルによって調達する方法も、よく見られるオフバランス化の手法だ。ほかにもOA機器やコピー機など、現代ではさまざまな設備・機器をリースもしくはレンタルによって調達できる。

ただし、リース契約やレンタル契約が増えすぎると、高額な手数料が負担になる恐れがあるため、リース・レンタルを活用する資産は慎重に判断しておきたい。

4.アウトソーシングの活用

業務のアウトソーシングも、オフバランス化の手法として覚えておきたいもの。例えば、特別な設備・機器が必要になる業務をアウトソーシングすれば、その設備・機器を自社で調達する必要がなくなるため、貸借対照表上の資産を減らすことができる。

ただし、アウトソーシングを活用しすぎると、リースやレンタルと同じようにコストがかさんでしまうので注意が必要だ。ちなみに、アウトソーシングでは依頼する業務の専門性が高くなるほど、コスト負担も増える傾向がある。

5.セールス・アンド・リースバック

セールス・アンド・リースバックとは、「売却後に借りること」を前提としてリース会社に資産を売却することだ。該当する資産としては不動産のほか、車両や大がかりな機械などが挙げられる。

セールス・アンド・リースバックを活用すると、必要な資産を手元に残した状態で売却益を得られるため、事業用資産を処分したいときにはぜひ検討しておこう。

6.クラウドサービスの利用

自社でサーバーを保有している企業は、クラウドサービスを利用することでオフバランス化を進められる。毎月の利用料はかかるものの、サーバーを保管するスペースが不要になる点や、メンテナンスにかかるコストを削減できる点は、経営者にとって大きなメリットになるはずだ。

最近では、あらゆる分野でクラウド化が進んでいるため、クラウドサービスを利用する方法は今後も積極的に検討しておきたい。

オフバランス化を進める上での注意点

オフバランス化は正しいルールを理解しておかないと、違法行為とみなされる恐れがある。そこで次からは、企業がオフバランス化を進める上で注意しておきたいポイントをまとめた。

オフバランス化に興味を持っている経営者は、以下のポイントも理解した上で計画を立てていこう。

1.債務超過を隠ぺいするオフバランス化は、粉飾決算に該当する

結果的に債務超過の隠ぺいにつながるオフバランス化は、粉飾決済とみなされる恐れがある。

例えば、ある企業は「銀行別借入残高表」を改ざんすることで、取引銀行の数を少なく見せていた。書類上の取引銀行の数が少なくなると、必然的に貸借対照表の負債(借入金)を減らせるため、どのような企業でも財務状況を良く見せることができる。

言うまでもないが、このように故意に債務超過を隠ぺいするオフバランス化は違法行為だ。オフバランス化は、あくまでも経営体質を健全化・改善するための手法なので、「何かを隠ぺいする手法ではない」点はしっかりと理解しておこう。

2.オフバランスの要件は厳しくなってきている

実はオフバランスにはいくつか要件があり、要件全体としては厳格化傾向にある。これは書類の改ざんや架空の取引関係を作り出すなど、好業績を故意に演出するケースが増えてきたためだ。

では、以前の要件と比べてどのような点が変わったのか、以下で一例を紹介しよう。

・ファイナンスリースの例外処理規定が認められなくなり、資産計上が必要になった ・SPCの会計処理において、より実態に合わせた処理が求められるようになった

今後に関しても、オフバランスの要件は厳格化される可能性がある。そのため、オフバランス化に取り組む企業は現行のルールをその都度チェックし、違法行為にあたらない安全な計画を立てるようにしよう。

専門家も活用しながら、健全な経営体制の構築を

オフバランス化は保有する資産・負債を整理することで、企業価値を高められる手法だ。細かく見ると、オフバランス化にはさまざまな手段があり、現代では多くの企業がオフバランス化によって経営体制を改善している。

ただし、一部の企業がオフバランス化を悪用した影響で、その要件は少しずつ厳格化されている。違法行為にあたるかどうかが不安な経営者は、弁護士などの専門家に相談することも考えておきたい。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部