役員賞与は、税法に定められた支給方法などに従っていない場合、損金に算入することはできない。そして損金にならなかったとしても、役員個人の所得税・住民税の課税は行われてしまう。

この記事では、役員賞与を損金に算入するための支給方法・支給額について、税法上の要件を解説する。

目次

  1. 役員賞与とは?
    1. 役員賞与の支給には株主総会の決議が必要
    2. 役員賞与を損金に算入できるかどうかは「法人税法」のルールで決まる
  2. 役員賞与を損金に算入するための支給方法
    1. 役員賞与を損金に算入するには「事前確定届出給与」
    2. 要件を満たさなくても損金に算入できる役員賞与がある
  3. 役員賞与を損金に算入するための支給額
    1. 過大な役員賞与は損金に算入されない
  4. 役員賞与が損金不算入になった場合
  5. 役員賞与を損金に算入するには早めの計画を

役員賞与とは?

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役員賞与を損金に算入するための支給方法は?支給額についても解説
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

役員賞与とは、会社の役員に対するボーナスのことで、月給とは別に支給される金銭などをいう。

役員賞与の支給には株主総会の決議が必要

役員賞与を支給するかどうかを会社の定款に定めている会社は少数だろう。この場合、役員賞与を支給するには、通常の役員報酬と同様に株主総会での決議が必要である。(会社法第361条)

決議の内容は、役員の誰にいくら支給するというように具体的な金額を決める場合が多い。他にも、支給額の算定方法のみを定めることもできるし、金銭以外を支給することを決議しても構わない。

決議は普通決議であればよいので、議決権の過半数を持つ株主が出席する総会で過半数の賛成があれば足りる。

役員賞与を損金に算入できるかどうかは「法人税法」のルールで決まる

会社法上は正しい手続きで支給したとしても、それが法人の損金に算入できるかは別問題となる。法人の損金に算入できるものは、法人税法の役員給与の損金算入の要件を満たす役員賞与に限られるからだ。

役員賞与を損金に算入するには、「支給方法」と「支給額」の2つがポイントになる。

役員賞与を損金に算入するための支給方法

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役員賞与を損金に算入するためには、法人税法の役員給与の損金算入要件を満たす支給方法をとる必要がある。(法人税法第34条)給与というと一般的には月給をイメージするかもしれないが、法人税法上の役員給与とは、役員報酬・役員賞与のどちらも指すものである。

なぜ役員給与に損金算入要件があるのかというと、会社の経営を行う役員が自身に支給する給与を自由に決めることができてしまうと、租税回避につながるからだ。

そのため、金額を好きなタイミングで増減させることができない一定の方法で支給したものしか損金に算入できないルールになっている。損金算入が認められる支給方法は、次の3つである。

・定期同額給与 ・事前確定届出給与 ・業績連動給与

「定期同額給与」は、1ヵ月以下の期間で定額を支給するものなので、賞与には合わない。「業績連動給与」は、同族会社(※)には使えないため多くの中小企業は対象外となる。従って、中小企業が役員賞与を損金に算入するには実質、「事前確定届出給与」一択となる。

(※)同族会社とは 株主の上位3グループが保有する株式や出資が、発行済株式や出資の50%を超える会社(法人税法第2条第10号)。一人社長や家族経営の会社などは、この要件によって同族会社となる。ただし、大企業から100%の株式を保有されている会社など、同族会社でない会社との間に完全支配関係にある会社は例外である。

役員賞与を損金に算入するには「事前確定届出給与」

「事前確定届出給与」とは、あらかじめ税務署に「いつ・誰に・いくら」の役員賞与を支払うかを届け出て、その内容どおりに役員賞与を支給する方法である。事前に届け出た内容どおりに支給すれば、利益操作の余地は少ないため、そのとおりに支給すれば全額を損金に算入できる。

逆に実際の支給額が届け出た内容と異なれば、原則として賞与の全額が損金に算入できなくなる。税務署への届け出は、「事前確定届出給与に関する届出書」に所定の「付表」を添付して行う。

注意すべき点は、この届出書の提出期限である。株主総会によって役員賞与の支給を決定したときは、「その決議をした日」か「その役員の職務執行を開始する日」のいずれか早い日から1ヵ月以内に届出書を提出しなければならない。

【例:3月決算法人】 A:定時株主総会による決議した日 5月25日 B:役員の職務執行を開始する日 6月20日 →Aが早いので、提出期限は6月25日となる。

「役員の職務執行を開始する日」とは、その役員が就任する日などの個々の事情によるとされている。例えば定時株主総会で役員に選任された者が、その日に就任あるいは再任するというケースであれば、株主総会の開催日が「役員の職務執行を開始する日」となる。(法人税法基本通達9-2-16)

なお、この期限には例外が3つある。(法人税法施行令第69条第4項)

1つ目は、この期限が会計期間の開始から4ヵ月を経過する日よりも遅ければ、この「4ヵ月経過日」が期限となる。

仮に臨時株主総会でいつでも役員賞与の支給を決めることができるのであれば、損金不算入とした目的が達成できなくなってしまう。この4ヵ月ルールは、それを防止するためのものと考えられる。

2つ目は、新しく設立したばかりの法人が、法人設立から開始する役員の職務に対し、役員賞与を事前確定届出給与によって支払うことを決めた場合である。

設立してすぐに役員賞与の支払いを確定できるケースがどのくらいあるのかわからないが、この場合の期限は、設立後2ヵ月を経過する日となる。

3つ目は、臨時改定事由が生じたときの期限である。臨時改定事由とは、年の途中で役員の職制上の地位や職務の内容に重大な変更があった場合などをいう。

例えば代表取締役が亡くなるなどし、年の途中から新しく代表の職に就く役員については、その役員報酬を見直す必要が出てくるだろう。 このとき「定期同額給与」による役員報酬の変更のみであれば、事前確定届出給与のルールとは関係なく変更することができる。届け出が必要なのは、あくまで「事前確定届出給与」によって金銭などを別途交付する場合だ。

臨時改定事由による届け出の期限は、次のいずれか「遅い日」である。

・「株主総会の決議をした日」か「その役員の職務執行を開始する日」のいずれか早い日 ・臨時改定事由が生じた日から1ヵ月を経過する日

要件を満たさなくても損金に算入できる役員賞与がある

役員に対する賞与であっても、損金不算入のルールの適用がない支給方法がある。それは「使用人兼務役員」に対して支給される賞与だ。

使用人兼務役員とは、わかりやすくいうと登記上は役員の地位にあるが社内では使用人として働く人である。取締役のうち部長、課長、支店長などの職にある人がこれにあたる。使用人兼務役員に支給する給与や賞与が使用人としての職務の対価であれば、それはもともと役員給与にあたらない。

支給額が使用人の賞与として適正であれば、すべて損金に算入できる。使用人の賞与の適正額については、おおむね類似する職務に従事する使用人の支給額などと比較して判断する。支給時期を他の使用人と同じにすることも必要だ。

ただし、社長や副社長、専務、常務などの地位にある者や、「同族会社の使用人のうちみなし役員にあたる者」などは使用人兼務役員の扱いを受けることができない。

・同族会社の使用人のうちみなし役員にあたる者とは 税法上の役員の範囲は、「会社法の役員(取締役、監事、会計参与など)」+「税法上のみなし役員」となる。

「同族会社の使用人のうちみなし役員にあたる者」とは、同族会社の使用人のうち、株式などの所有要件を満たし、かつ法人の経営に従事している者をいう。

みなし役員に該当すると、支給される賞与や報酬は役員給与として扱われる。みなし役員の具体的な判定方法については省略するが、気をつけたいケースとしては、実際は経営の意思決定に関わっているのに役職は使用人としている親族に対し、高めの給与を支払っているケースである。

こうした人物への給与や賞与の支払いは、税理士などに相談していただきたい。

役員賞与を損金に算入するための支給額

役員賞与の支給方法が適切であっても、その支給額が不相当に高額であれば、高額とされた部分は損金に算入できない。

過大な役員賞与は損金に算入されない

役員賞与の額が役員の職務に対して過大とされた場合、過大とされた部分は損金に算入できない。過大かどうかは、以下の点に照らして判断する。

・役員の職務の内容 ・その法人の収益及びその使用人に対する給与の支給状況 ・その法人と同種・類似規模のものの役員給与の支給状況  など

これを超える額(A)が過大な役員賞与となる。

なお、定款や株主総会などで役員賞与の支給限度額を決めた場合、それを超えて支給した額(B)のほうがAよりも多いときは、Bが過大な部分となる。(法人税法施行令第70条第1号)

また、使用人兼務役員に対し、使用人としての職務に支給される賞与のうち、他の使用人と異なる時期に支給したものがあれば過大な役員給与として扱われる。(法人税法施行令第70条第3号)

役員賞与が損金不算入になった場合

役員賞与が損金不算入となった場合は、法人税などの修正申告を行う。

法人税の申告では別表四「所得の金額の計算に関する明細書」の「役員給与の損金不算入額」で所得を加算する。追加で納税しなければならない税額には、加算税や延滞税がかかることがある。

もとの法人税の申告が期限内申告であり、かつ修正申告のタイミングが税務調査の通知前までであれば、加算税はかからない。

なお、役員個人が負担する個人所得税や住民税の負担は、賞与が損金不算入になっても変わらない。

また、損金不算入となった役員賞与について、会社が負担した社会保険料(法定福利費)は、損金に算入したままでよい。

役員賞与を損金に算入するには早めの計画を

役員賞与は「事前確定届出給与」による支給方法で、かつ過大な役員賞与とならない金額で支給することで損金に算入できる。

「事前確定届出給与」の届け出の期限を考えると、これから役員賞与を毎年支給したい場合は、決算後の定時株主総会で賞与の支給を決議することになるだろう。この場合、役員賞与をいくらまで支給できそうかを、株主総会に間に合うよう早めに計画することが大切だ。

なお、臨時改定事由や業績悪化改定事由があれば、提出済みの事前確定届出給与の内容を変更する「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出することも可能である。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)