新設される会社を形態別にみると、件数が最も多いのは株式会社であるが、近年増加しているのが合同会社(LLC)である。設立コストの低さや小規模でも運営しやすいことなどが設立件数の増加理由と考えられる。

しかしたとえ設立しやすいとしても、実際に設立・運営するとなると、気になるのは役員の責任や税務上の注意点ではないだろうか。

この記事では、合同会社の特徴、役員の範囲や責任、役員報酬の支給・変更方法、持分の払い戻しに関する税務について解説する。

目次

  1. 合同会社とは?
    1. 合同会社の特徴
    2. 合同会社の設立に向いているケース
  2. 合同会社の役員とは?役員の範囲や責任など
    1. 合同会社は「役員=社員」
    2. 合同会社の業務執行社員・代表社員とは?
    3. 合同会社の役員の任期・役員登記が必要となる社員
    4. 合同会社の役員の責任
  3. 合同会社の役員報酬の税務
    1. 合同会社の税法上の役員の範囲
    2. 合同会社の役員報酬の支給方法
    3. 役員報酬の変更方法
  4. 合同会社の役員の持分の払い戻しの税務について
    1. 退社時の払い戻しで生じる「みなし配当」
    2. 死亡時の持分の払い戻しの評価方法
  5. 専門家に相談しながら定款作成を行うのも手

合同会社とは?

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近年増加している合同会社とは?役員の業務上の責任や報酬の税務を解説
(画像=oka/stock.adobe.com)

合同会社は、2006年から導入された会社形態である。モデルとなったのは、米国のLLC(Limited Liability Company)だ。比較的新しい会社形態ではあるが、その設立登記件数は、ここ数年増加の一途をたどっている。

【合同会社及び株式会社の設立登記件数】

合同会社 株式会社
平成26年 19,972件 91,757件
平成27年 22,387件 93,635件
平成28年 23,944件 95,019件
平成29年 27,442件 95,781件
平成30年 29,243件 91,073件
令和元年 30,733件 91,836件

  (出典)法務省:登記統計(2019年(度)年報より) http://www.moj.go.jp/housei/toukei/housei05_00001.html

株式会社に対し、合同会社は「持分会社」に区分される。持分会社には他に合名会社、合資会社がある。

合同会社の特徴

合同会社の設立件数が増えているとはいえ、日本で最もポピュラーな会社形態は、やはり株式会社である。合同会社にどのような特徴があるかは、株式会社と比較するとわかりやすい。

・合同会社は「出資者=経営者」

株式会社では、株主が株式の対価として会社に出資し、その後は株主総会で会社の意思決定を行う。つまり「出資者≠経営者」だ。

これに対し合同会社は、出資者が会社を経営する。つまり「出資者=経営者」である。

・合同会社は1人1票

株式会社では株式の保有数で議決権の割合が変わるが、合同会社では、出資者に平等に決定権がある。つまり1人1票だ。

「出資者=経営者」となることもそうだが、株式会社よりも会社の運営体制がシンプルでわかりやすい。

・設立・運営コストが低い

合同会社は、株式会社より設立・運営コストを抑えやすい。

まず、合同会社は定款認証が不要であるため、公証人の手数料約5万円がかからない。

登記時に必要となる登録免許税の額は、両社ともに資本金の額の0.7%であるが、それに満たないときの最低金額の設定が株式会社は15万円であるのに対し、合同会社は6万円である。

運営コストについても、合同会社では決算書類の公告が不要であるため、官報公告にかかる約7万円を毎期カットできる。さらに、合同会社の役員には任期がないため、役員の登記費用もかからない。

合同会社の設立に向いているケース

合同会社の成立は、一般的に下記のようなケースに向いている。

・コストをなるべく抑えて設立・運営したい ・個人事業を法人化したい ・少人数で経営したい ・子会社を作りたい  など

合同会社の役員とは?役員の範囲や責任など

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ここからは合同会社の役員について、役員の範囲、登記が必要な範囲、責任などについて解説する。

合同会社は「役員=社員」

合同会社の出資者のことを、会社法では「社員」という。従業員と混同してしまいそうになるが、「社員」は持分会社や一般社団・財団法人などでも用いられる名称である。

前述のとおり「出資者=経営者」であるため、合同会社では会社のオーナーも役員も全員「社員」ということになる。出資は法人も可能であるため、法人が社員になることもある。

なお、株主の代わりに社員という名称が用いられることから、たとえば会社法の計算書類の1つ「株主資本等変動計算書」は「社員資本等変動計算書」となる。(会社計算規則第71条) 「社員総会」については、合同会社には規定がない。

合同会社の業務執行社員・代表社員とは?

合同会社の社員には、全員に業務執行権がある。社員が2人以上いる合同会社では、業務執行は社員の過半数の決定を必要とする。(会社法第590条第1項、第2項)

ただし、「業務執行社員」を定款によって決めることによって、業務執行ができる社員を限定することもできる。(会社法591条)

<業務執行社員とは> 合同会社の業務執行を行う社員のことで、定款によって定めることができる。つまり、定款に定めなければ「全社員=業務執行社員」にもできるし、定款によって業務執行社員とそれ以外の社員を分けることもできるということだ。

<代表社員とは> 業務執行をする合同会社の社員は、それぞれが会社の代表である。

ただし、定款にルールを定め、代表社員を社員の互選で業務執行社員の中から選んだ場合は、その者が代表社員になる。(会社法第599条)つまり、全員が「業務執行社員=代表社員」でもよいし、代表である業務執行社員と代表でない業務執行社員を分けることも可能である。

合同会社の役員の任期・役員登記が必要となる社員

前述のとおり、合同会社の役員には任期がない。合同会社の役員を辞めるには、6ヵ月前までに退社の予告をする必要があるが、やむを得ない事由があればいつでも辞めることができる。(会社法第606条)

なお、総社員の同意や除名などによって退社する場合もある。(会社法第607条)

合同会社の役員登記の対象は、「業務執行社員」と「代表社員」である。代表社員が法人のときは、その職務執行を行う職務執行者についても登記する。

合同会社の役員の責任

合同会社の役員は、有限責任社員となる。会社の債務を弁済する責任があるのは、出資額の範囲内ということだ。(会社法第576条第4項、第580条第2項)

ただし、業務執行社員が任務を怠り会社に損害を与えたときは、連帯して賠償する責任がある。(会社法第596条)また、第三者に対しても、業務執行社員の職務に悪意または重大な過失があるときは、連帯して賠償する責任がある。(会社法第597条)

合同会社の役員報酬の税務

合同会社の役員に対する報酬の税務はどうなっているのだろうか。詳しく見ていこう。

合同会社の税法上の役員の範囲

合同会社の役員のうち、法人税法上の役員として扱われるのは ・業務執行社員 ・社員である法人 ・みなし役員 である。

<みなし役員とは> みなし役員とは、会社法上では役員にあたらないが、税法上は役員として扱われる使用人のことである。合同会社でいえば、業務執行をしない社員や従業員の立場でありながら、会社に対する支配度が高く、かつ実際に会社の経営に従事している者のことだ。

みなし役員の判定方法は、その合同会社がまず同族会社であるかどうかから始める。合同会社の同族会社の判定方法は、株式会社とは異なる部分があるため注意が必要だ。

合同会社の役員報酬の支給方法

合同会社の役員報酬の法人税の損金算入要件について、他の法人と異なるところはない。支給した役員報酬を損金に算入するには、支給方法が定期同額給与や事前確定届出給与の要件を満たしている必要がある。

過大な役員給与が損金に算入できない点も、他の法人と同じである。

役員報酬の変更方法

定期同額で支給している役員報酬の金額を変更する場合、株式会社は株主総会において支給額の変更を決議する。このとき、変更するタイミングについては、税法上の損金算入要件を考えなければならない。

税法上では、会計期間開始の日から3ヵ月を経過する日までに金額の改定を行う必要がある。(臨時改定や経営悪化改定にあたる事由がある場合を除く)このルールから、株式会社では一般的に定時株主総会を開催するタイミングで役員報酬の変更を決議している。

では合同会社はどうかというと、合同会社には、株主総会にあたる社員総会を組織することがそもそも規定されていない。合同会社の運営は社員の過半数の決定をもって行えばよく、社員総会による決議である必要がないのだ。(会社法第590条第2項)

しかし税務調査において、役員報酬の改定が3ヵ月以内に行われたかどうかが争点になることは、可能性としてあるだろう。そのため、役員報酬を変更するときは、できれば役員報酬を改定した日付がわかる議事録や社員の同意書のような書類を作成・保存しておくことが望ましい。

なお、定款で社員総会を組織し、たとえば事業年度終了後3ヵ月以内に毎期開催するというような運営を行うことも可能である。その場合は、社員総会議事録を作成し、そこに役員報酬の改定内容も記録すればよい。

合同会社の役員の持分の払い戻しの税務について

合同会社の持分の払い戻しの税務はわかりにくいため、税理士などに相談することが望ましい。ここでは、持分の払い戻しの税務で特にわかりにくい「みなし配当」と「死亡時の評価」について概要を解説する。

退社時の払い戻しで生じる「みなし配当」

合同会社の役員は、退社時に自身の持分の払い戻しを請求できる。(会社法第611条)払い戻される金額は出資額そのものではなく、出資額に応じて純資産から計算される。会社の業績が右肩上がりであれば、それまでの利益の積み重ねで、払い戻される額も膨らむというわけだ。

注意点としては、持分の払い戻しは会社法でいう一般的な配当ではないが、税法上は実質的に配当と同じと考えることが挙げられる。この考えにより、払い戻し額のうち持分に応じた資本金などの額を超える部分は「みなし配当」の扱いを受ける。

「みなし配当」は、受け取ったのが役員個人であれば「配当所得」として所得税等(所得税法第25条)、法人であれば法人税の益金不算入(法人税法第23条)の対象となる。

死亡時の持分の払い戻しの評価方法

役員は死亡すると退社扱いになる。(会社法第607条)このときの持分の払い戻しは、「持分の払い戻し請求権」として相続財産の評価を行う。評価方法は、原則として相続税評価額による純資産価額から、その持分割合に応じる額で計算する。

また、あらかじめ定款によって役員の相続人がその持分を承継する旨を定めることができる。(会社法第608条)この場合の評価は、取引相場のない株式に準じて行う。(財産評価通達194)

専門家に相談しながら定款作成を行うのも手

合同会社の組織運営については、定款で自由に決められる部分が多い。例えば1人1票という合同会社のルールは単純明快でわかりやすいが、社員が増えると使いにくいこともある。

会社の形態は4つしかなくても、どのような会社を作りたいかは千差万別だ。理想とする運営方針がある場合は、まずは専門家に構想から相談し、定款作成を行うとよいだろう。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)