「法人税の申告は大変だから税理士に任せている」という経営者がほとんどだろう。しかし法人税の計算は実はそれほど難しくない。今回はシミュレーションを交えて、法人税の計算を解説する。

目次

  1. 法人税の計算は難しくない
  2. 法人税の計算の流れをざっくり押さえよう
    1. 法人税の計算の流れ
    2. なぜ「会計上の損益=税務上の損益」ではないのか
  3. 1.法人税の所得計算をする
    1. 「益金(えききん)」「損金(そんきん)」とは?
    2. 益金になるもの
    3. 収益であるが益金にならないもの
    4. 損金になるもの
    5. 費用であるが損金にならないもの
    6. 前事業年度以前から繰り越した損失があるなら所得と相殺
  4. 2.法人税の税額を計算しよう
  5. 3.納付する法人税額を計算しよう
    1. 税額控除を検討する
    2. 中間納付額を差し引く
  6. 法人税をシミュレーションしてみよう
    1. 1.法人税の所得額を計算
    2. 2.法人税額を計算する
  7. 法人税の計算方法は知っておいて損はない

法人税の計算は難しくない

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法人税の計算は難しくない!実際にシミュレーションしてみよう
(画像=makibestphoto/stock.adobe.com)

ほとんどの人は法人税になじみがない。そのせいか、ほとんどの経営者は「法人税の申告は税理士に任せるもの」と考えている。法人税の申告書の中身を確認したことがある人はあまりいないのではないだろうか。

確かに、法人税の所得(損益)計算は一般的な企業会計と少しルールが異なる。しかし計算方法はそう難しくない。自分でも計算できるようにしておけば、法人税がどれくらいの負担となるのかある程度見当をつけられるので、経営者としては身につけておきたいところだ。

法人税の計算の流れをざっくり押さえよう

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では最初に、法人税の計算の流れを詳しく見ていこう。

法人税の計算の流れ

計算式は「所得額×法人税率=法人税額」だ。具体的には次のようになる。

【1】当期利益または当期欠損金の額を確認する 【2】【1】に「益金算入」または「損金不算入」の項目を加算する 【3】【1】+【2】に「益金不算入」と「損金算入」の項目を減算する 【4】所得金額(法人税法上「儲け」)を算出する 【5】【4】に税率を乗じる

なぜ「会計上の損益=税務上の損益」ではないのか

「なぜ会計上の損益に直接税率をかけないのか」と、ここで疑問に思う人もいるだろう。会計上の損益に直接税率をかけない背景には、会計の目的と税務の目的の違いがある。

会計は、会社のお金の出入りを正確に記録し、当期の事業の成績と財務状況を適正に示さなくてはならない。会社には株主や銀行、取引先といった利害関係者がいる。「彼らに正しく会社の状況を数字で伝えること」が会計の目的となる。

一方、税務は「適正かつ公正な課税」が第一目的だ。

例えば、同じ1億円の利益の会社が2つあったとしよう。片方はマジメに事業を行い、役員も質素倹約を心がけ、必要な投資を行った結果の1億円だ。もう片方は利益操作と役員の贅沢のために役員賞与を支払った結果の1億円だとする。

この2社にまったく同じように税率を乗じたとしたら、ずるい会社が得をしてまじめな会社が損をする不公平な課税になりかねない。

こうした課税の不公平を避けるために、法人税法では会計と異なった収益・費用の認識をし、会計上の数字に手を加えているのである。

1.法人税の所得計算をする

ここから法人税の計算の流れを個々に見ていく。最初は法人税の所得計算だ。所得は税務上の利益に当たり、この所得は「益金-損金」で計算する。「利益=収益-費用」という会計での計算と似ているが、「収益・費用」と「益金・損金」は少し異なる。

「益金(えききん)」「損金(そんきん)」とは?

益金とは法人税法上の収益、損金は法人税法上の費用のことだ。

会計の世界では「どれが福利厚生費でどれが交際費に当たるのか」といった勘定科目への振り分けを丁寧に行わなくてはならない。しかし法人税の所得計算では、そういった科目の区別はいらない。「何が益金になり、何が損金になるか」それだけである。

ただ、実務では会計上の当期の損益を起点にして調整を加えていく。一から科目を益金・損金に振り分けていくことはしない。益金・損金になるかならないかで吟味していく。

益金になるもの

益金になるのは次のようなものだ。

商品・製品を売ったときの売上収入額 土地や建物などの固定資産の売却収入額 サービスを提供したときの売上収入額 無償で資産を譲ったときの時価相当額 無償でサービスを提供したときの本来収入として計上すべき金額 無償で資産を譲り受けたときの時価相当額または利益相当額 借金などの免除による経済的な利益の額

対価のある取引だけでなく、無料で何かをあげたりもらったりしたときも課税対象になるという点に注意しよう。

なお、非営利事業を行うNPO法人や公益法人などはすべての収入が課税対象になるわけではない。法律が定める収益事業から生じた収益を益金としてカウントする。

収益であるが益金にならないもの

会計上の収益であっても、法人税法上では益金として扱わないものがある。主に次のようなものだ。

受取配当 不動産などの資産の評価益 法人税の還付金

こういったものが会計上で収益として計上されているなら、法人税の所得計算では「益金不算入」として当期の損益からマイナスしなくてはならない。

損金になるもの

損金になるのは次のようなものだ。

売上原価・完成工事原価・その他これらに準ずる原価(材料や商品の仕入相当額など) 販売費・一般管理費その他の費用(営業活動に必要な人件費や光熱費、家賃など) 損失額(貸倒損失や災害損失など)

上記の内容で支出する金額は損金になりうる。ただし、期末時までに債務が確定していないと当期の損金に計上できない。債務確定の条件は次の3つである。

債務が成立していること 「発注した商品が届いた」などで支払い義務が生じている。 給付すべき原因となる事実が発生していること 「サービスを受けた」「商品を受け取った」といったモノ・サービスの給付を受けた確かな事実がある。 金額を合理的に算出できること 支払うべき額がはっきりしている。

備品の修理を依頼したとしても、依頼しただけでは債務は確定しない。修理が完了し、支払うべき金額が確定して初めて修理に関する債務は確定し、損金として計上できるのである。

費用であるが損金にならないもの

会計上で費用として扱っても、以下に挙げるようなものは法人税の損金にならない。

過大な役員報酬、役員賞与、過大な役員退職金 法人税・住民税 加算税や延滞税 寄附金の損金不算入額 減価償却費の償却超過額 不動産などの資産の評価損 貸倒引当金の繰入超過額 交際費

こういったものが会計上で費用として計上されているなら、法人税の所得計算では「損金不算入」として当期の損益にプラスしなくてはならない。

前事業年度以前から繰り越した損失があるなら所得と相殺

青色申告の適用を受けている法人が大半ではないだろうか。青色申告を行っていると、個人の所得税と同様、発生した損失を翌年以後に繰り越し、将来の利益と相殺して節税することができる。

しかも法人は繰越金が10年間と個人よりも長い。前年以前から繰り越した損失があるなら、忘れずに当期の所得と相殺しておこう。

2.法人税の税額を計算しよう

1で法人税の所得を計算したら、次に行うべきは法人税額の算出だ。法人税率は所得税や贈与税、相続税の税率と違って累進課税制度を採用していない。原則一律の税率だ。ただ、現在は法人の形態や資本金、所得額によって税率が異なる。

株式会社や合同会社である普通法人の法人税率は次のようになっている。

資本金が1億円以下:年800万円以下の所得額は15%か19%、800万円超の所得額は23.2% それ以外の普通法人:一律23.2%

上記の年800万円以下の所得額で19%の税率が適用されるのは、前期終了日までの3年間の各事業年度における年平均所得額が15億円を超える法人である。多くの中小企業は15%を用いることが多いのではないかと思われる。

なお、よく聞く「実効税率」は、法人税だけでなく法人住民税や法人事業税も加味した税率のことだ。ざっくりとした税負担を見積もるときに使うが、法人税単体の金額とは異なるので区別しておこう。

3.納付する法人税額を計算しよう

税額を計算すればさあ終わり、ではない。当期分の法人税額から納付する税額を計算していく。

税額控除を検討する

法人によっては税額控除を適用できる。従業員の給料を前年度よりも増加させた中小法人に適用される「所得拡大促進税制」がその一つだ。適用要件を確認して計画的に実行する必要があるが、こういった制度を活用すると法人税を節税できる。

【参考】特別償却・特別控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/houji313.htm

ここで適用できる税額控除を適用し、最終的に算出された税額が納付税額となる。

中間納付額を差し引く

前事業年度の法人税額が20万円を超えると、前期に納めた法人税額の半分を当事業年度半ばに納めることとなる。これを「中間納付」という。

中間納付した税額は当期の法人税の前払いの性格を持つ。そのため、当期の法人税額から中間納付額を差し引き、今回納付すべき税額を算出する。

法人税をシミュレーションしてみよう

ではここからは簡単な事例で法人税の計算を実際にやってみよう。

【事例】 資本金5,000万円の青色申告法人 当期利益は1,000万円 前事業年度分として当期に支払った税金は法人税75万円、法人住民税(所得割+均等割)42万円、法人事業税18万円で、これは「法人税等」で費用計上した 役員賞与を当期中にうっかり63万円支払い、費用計上した 前期からの繰越欠損金80万円がある(発生時期は前々々期) 前期終了日までの3年間の各事業年度における年平均所得額は200万円 37万円を当事業年度の半ばに中間納付した

ここから上記の計算のプロセスに従うと次のようになる。

1.法人税の所得額を計算

所得額の計算は次の流れで行う。

(1)「益金になるか否か」「損金になるか否か」を確認、加算・減算する

益金不算入、損金不算入になるものを確認する。この事例では益金不算入になるものはないが、法人税75万円、法人住民税42万円、役員賞与63万円は損金不算入になる。である。これを当期利益に加算する。

1,000万円+75万円+42万円+63万円=1,180万円

なお、法人事業税は法人税法上、損金になる。会計上ですでに費用として処理しているため、事業税については処理しない。

(2)繰り越した欠損金と所得額を相殺する

前期から繰り越した欠損金80万円と(1)の所得額とを相殺し、課税所得額を算出する。

1,180万円-80万円=1,100万円(課税所得額)

2.法人税額を計算する

事例の法人は資本金が1億円以下だ。かつ、前期終了日までの3年間における各事業年度の平均所得額は200万円で15億円以下である。したがって、年800万円以下の所得額には15%、年800万円超の所得額には23.2%の税率を適用して計算する。

(1) 800万円×15%=120万円 (2) (1,180万円-800万円)×23.2%=88万1,600円 (3) (1)+(2)=208万1,600円

法人税37万円を中間納付したので(3)からこの額を差し引く。

208万1,600円-37万円=171万1,600円

以上から、今回納めるべき法人税額は171万1,600円となる。この税額は当事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内に納付しなくてはならない。

法人税の計算方法は知っておいて損はない

法人税の計算の流れ自体はそれほど難しくない。ただ、「益金の額」「損金の額」になるものの判別が難しい。特に税制改正で所々変わるため、実際の判定は慎重になる必要がある。

実際の申告書は複数の別表から構成されており、交際費や減価償却など費目ごとに必要となる別表が異なる。上記の計算は別表四と別表一で行うが、実務では「法人税の貸借対照表」と言われる別表五(一)・(二)も作成・提出しなくてはならない。

まとめると「計算自体は難しくないが、申告書の作成は煩雑だ」といえる。ただ、法人税の計算そのものは知っておいて損はない。多くの経営者は法人税の申告を税理士に一任していると思う。今回伝えた内容を踏まえつつ、作ってもらった申告書を眺めてみてほしい。

文・鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)