法人としての節税対策を施し、できるだけ多くの資金を会社に残せれば、経営の維持・発展や投資において有利になるだろう。節税にはさまざまな方法があり、少しでも多くのノウハウを知っておくことで、いざという場合に行動を起こしやすくなる。

効果的な節税対策を考えるにあたっては、代表的な方法を押さえておくことと、年間の節税スケジュールを立てることが重要だ。法人における節税対策の重要性や、具体的な方法・スケジューリングについて解説する。

目次

  1. 法人の節税対策が必要な理由
  2. 法人の代表的な節税対策
    1. 益金を減らす
    2. 損金を増やす
    3. 特別控除の利用
  3. 時期によって取り組むべき節税対策は異なる
    1. 決算3ヵ月前
    2. 決算直前
    3. 株主総会前
    4. 決算後
  4. 自社に合った節税対策を選ぶことが大切
  5. 有効な節税対策でより多くのお金を残そう
    1. プロフィール

法人の節税対策が必要な理由

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法人の節税対策にはコレ!代表的な方法を紹介
(画像=PIXTA)

法人に課される税金の中には、一定の条件を満たすことで、減額や免除の措置を受けられるものがある。個人に比べ納税額が大きくなりやすい法人の場合、支払う税金を減らせることは、会社により多くの資金を残せることに直結する。また、法人の方が節税対策の幅も広い。したがって、有効利用できる制度は、条件を満たしているなら使わない手はないといえるだろう。

しかし、そもそも減税や免税につながる制度を知らなければ、対策を講じる初期段階にすら至れない。国や地方自治体が制度の積極利用を推奨することはあっても、個別に制度を案内してくれるわけではないのである。

したがって、会社に資金を多く残すためには、どのような節税対策があるのかを知ることから始めなければならない。具体的な方法を最初から理解していなくても、「そういえばこんな制度があったような」とアバウトに思い出せるようになるだけでも、自社で活用できる対策はより多くなるはずである。

法人の代表的な節税対策

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法人税を減らすために有効な対策を以下に紹介する。法人税の優遇措置を受けられる代表的な国の制度も押さえておこう。

益金を減らす

益金とは、法人税を算出するのに用いられる収益のことである。法人税は会社の所得を課税標準として課せられる税金であり、法人の所得は「益金-損金」の計算式により導き出される。したがって、益金を減らせれば所得が減り、結果として法人税の減税につなげられることになる。

売り上げを伸ばすことが最重要課題ともいえる法人にとって、益金を減らすことは簡単ではないが、一つの方法として、「売上計上基準」を変更する手法は有効である。

税法上は、会社ごとに定められた売上計上基準に則り、売り上げを計上しなければならないとされている。例えば、物品を販売することで売り上げを獲得する会社なら、全ての物品が相手に引き渡された日付に、売り上げが確定する。

ここで、相手先による物品検収の完了をもって売り上げを確定させる基準を、ある物品に限り採用すれば、他の物品より売り上げの計上を繰り延べることが可能になるのだ。売上計上基準の変更は、然るべき理由がある場合にのみ認められるとされているため、税務調査対策として、変更の根拠とする資料は用意しておく必要がある。

損金を増やす

法人税の根拠となる所得は、損金を増やすことでも減額できる。税金における損金と会計上の費用は一致することがほとんどだが、費用を損金として扱えないケースもあるため注意が必要だ。

損金を増やす方法の一つとしては、固定資産の見直しが挙げられる。高額になりやすい固定資産を最適化すれば、大きな節税効果を期待できるだろう。例えば、固定資産の減価償却方法を定率法にすることで、より早い段階で損金化できるようになる。また、固定資産における一部の不要な付随費用をすぐに損金化したり、使用しない固定資産を廃棄し損金にしたりすることでも、高い節税効果が生まれるだろう。

貸倒引当金と貸倒損失を計上することで損金を増やせることも確認しておきたい。売掛金や未収金など、回収の見込みが低いものを貸倒引当金として計上したり、見込みが全くない債権を貸倒損失として計上したりすれば、いずれも損金となり節税につなげられる。損金算入においては、限度額があることに注意しよう。

特別控除の利用

法人税の優遇措置を受けられる国の制度を利用すれば、税額控除や特別償却などが適用できる。例えば、以下に挙げるような制度が用意されている。

・雇用促進税制

一定の地域において、無期雇用かつフルタイムの雇用者を増やすごとに、法人税の控除を受けられる制度は、2017年をもって終了している。ただし、地方拠点強化税制における雇用促進税制は存続しており、現在は適用要件も緩和されている。詳細は以下のURLから確認しよう。

※参考:【セット版】雇用促進計画の提出手続き

・所得拡大促進税制

青色申告書により確定申告している中小企業などが、一定の条件を満たした上で、前年度に比べ給与などの支給額を増やした場合に、増加分の一部を法人税から控除できる制度である。通常の制度に加え、要件を満たせば控除額が上乗せされる制度も用意されている。前述した雇用促進税制との重複適用も可能である。

※参考:中小企業向け所得拡大促進税制

・中小企業投資促進税制

中小企業などが、事業に利用する目的で新品機械の導入など一定の設備投資を行った場合に、特別償却または税額控除の適用を受けられる制度である。対象となる設備は、機械および装置・測定工具および検査工具・ソフトウェア・貨物自動車・内航船舶などであり、それぞれに細かい基準が設定されている。

※参考:中小企業投資促進税制

時期によって取り組むべき節税対策は異なる

法人の節税対策においては、年間を通した節税対策を立て、それをきちんと実行することが大切である。時期ごとに行うべき節税の方法を以下に解説する。

決算3ヵ月前

決算を約3ヵ月後に控えた時期には、決算のシミュレーションを実施しよう。まず、事業年度におけるそれまでの月次決算を並べ、最終決算の予測利益を出しておく。

この時点で、未回収の利益や売掛金がないか、未納品のサービスや前受け金になっているものがないかなどを確認することが重要である。例えば、納品済みであるにもかかわらず前払いで入金されているものは、今期の売り上げとしてきちんと計上しておかなければならないだろう。

決算3ヵ月前だけでなく、2ヵ月前や1ヵ月前にも、同様に細かいシミュレーションを行えればなおよい。利益に関する部分を徹底的にチェックし、節税につなげられる部分があればしっかりと対策を施しておこう。

決算直前

節税対策には、時間がなくてもすぐに取り掛かれるものも数多く存在する。決算の直前にしておけるものはないか、以下に挙げる対策をチェックし、できそうなものがあれば自分で詳しく調べてみよう。

・社用車の購入、または自家用車を社用車へ変更 ・法人向け生命保険への加入 ・オフィス賃貸料の前払い ・交通費、宿泊費、出張費を経費にするための、出張旅費規程の作成 ・社員旅行を実施し、福利厚生費として計上 ・全社員に対し健康診断を実施し、福利厚生費として計上 ・団体的保険への加入 ・決算賞与を実施し、損金計上 ・雇用者を増やし、雇用促進制度を適用 ・飲食費や交際費を経費計上し、損金計上 ・既に所有している社用車へカーナビを設置し、経費計上 ・子会社やグループ会社を設立し、税制上の各種優遇措置を適用 ・小規模企業共済に加入し、掛け金を経費計上 ・広告を打ち、宣伝費用を経費計上 ・レンタルサーバー代やドメイン代を年払いに変更し、当期費用として計上 ・ホームページ作成を外部に依頼し、費用を経費計上 ・自社の経営に役立つ書籍代やセミナー代を経費計上 ・モール出店費用、リース費用、通信費用、保険料を未払い金として計上

これらの対策は、決算前1ヵ月間もあれば、条件さえ合えば実施できるだろう。ただし、自社にとって無駄なものであれば資産の浪費に過ぎず、たとえ節税できても効果的とはいえない。決して節税に振り回されないよう、あくまでも自社に有益な施策を講じる意識を持つことも重要である。

株主総会前

決算後に実施される株主総会の前に、役員報酬の見直しを行おう。役員報酬を増やしたり、役員の数を追加したりすることで、法人税を抑えることが可能である。ただし、増やしすぎると所得税や住民税の負担も増加するため、適切なラインをしっかりと見極めることが重要だ。バランスが適切であればあるほど、節税効果は高くなる。

なお、役員報酬や役員数の見直しは、決算前に実施するのも有効的な方法である。株主総会前という時期にこだわらず、決算前でも実行できそうなら積極的に検討してみよう。

決算後

決算が終了した後は、できるだけ早めに次回決算までの節税スケジュールを立てよう。節税を強く意識した決算を1度経験しておけば、次のスケジュールはより立てやすくなるはずである。前年度の決算で見えた課題などを反映しながら、今後どのように節税を進めていけばよいのかを考慮し、しっかりと計画を立てておこう。

自社に合った節税対策を選ぶことが大切

中小企業の中には、これまで節税対策を実施したことがないという企業も多く、黒字になりそうなときだけ対策を講じるケースも見受けられる。しかし、対策を実施するかしないかで、納税額が大きく変わる可能性があることを考えれば、常に節税を意識した経営を心掛けることが大事だといえるだろう。

節税対策を考慮するにあたっては、自社に合った方法を選ぶことが重要である。数ある対策に関し、できるだけ多くの知識を得て、自社の事情に合いそうなものがあれば、積極的に実行する姿勢を持つべきだろう。

有効な節税対策でより多くのお金を残そう

法人向けの節税対策にはさまざまな方法があり、全てが自社に適用できるわけではない。しかし、より多くの方法を概要だけでも知っておけば、会社経営を進めていく上で思い出せる場面も多くなるだろう。

税理士などへ相談し、一緒に対策を練る方法もあるが、会社の内情を細かく知らせなければならないというデメリットも生まれてしまう。自社に合った節税対策を的確に選ぶためには、やはり経営者自身が節税に対する強い意識を持ち、より多くの知識を蓄えておくことが重要である。

文・野口 和義(中小企業診断士・野口コンサルタント事務所代表)

プロフィール

法人の節税対策にはコレ!代表的な方法を紹介
(画像=野口和義 氏)

野口 和義 (のぐち かずよし)

野口コンサルタント事務所代表。1983年生まれ。茨城大学情報工学科卒業。中小企業診断士、行政書士、経営革新等支援機関。 最大手ファーストフードチェーンでのマネジメント経験を活かし、組織改革・人事制度・事業計画策定を中心に中小企業の支援に奔走している。 持ち前のホスピタリティの高さから、顧客対応などの面でもお客様から高い評価を得ている。