経営とマネジメントは、一見同じ意味に思えるが厳密には異なる概念である。経営者であれば、それぞれの違いを踏まえたうえでビジネスを行っていくのがベストだ。そこで今回は、経営とマネジメントの違いやマネジメントの業務内容や役割を詳しく解説していく。

目次

  1. 経営とマネジメントの違い
    1. 経営とは?
    2. マネジメントとは?
    3. マネジメントは経営の一部
  2. マネジメントの階層(種類)とそれぞれの役割
    1. トップマネジメント
    2. ミドルマネジメント
    3. ロワーマネジメント
  3. マネジメントの具体的な業務
    1. 目標設定
    2. 部下の動機付け・指導
    3. 成果の評価・フィードバック
  4. 経営やマネジメントを成功させる3つのポイント
    1. 1.的確かつ迅速な意思決定を行う
    2. 2.目標設定や評価の能力を高める
    3. 3.KPIや多面評価などのフレームワークを有効活用する
  5. マネジメントはビジネス成功の鍵

経営とマネジメントの違い

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経営とマネジメントの違いとは?具体的な業務内容や役割も解説!
(画像=polkadot/stock.adobe.com)

まずは「経営」と「マネジメント」という単語の定義について違いを踏まえつつ確認しておこう。

経営とは?

経営とは「事業目的の達成に向けて、継続的・計画的に意思決定を行い、事業を管理・遂行すること」を意味する。事業の目的は企業によってさまざまであるが、最終的な部分は「収益を得て会社を持続・成長させること」に他ならない。つまり経営者の役割は、収益を獲得するために意思決定や事業の管理・遂行を行うことである。

特に意思決定は、最終的なゴール(≒収益の獲得)に向けた方向性や戦略を明確にするうえで特に重要な役割だ。

※1:経営(けいえい) の意味 goo辞書

マネジメントとは?

一方でマネジメント(management)とは、直訳すると「管理」「経営」「運営」といった意味を持つ用語である。少なくとも用語の意味だけでは、経営とマネジメントの違いは明確に区別できない。そこで違いを区別するためにアメリカの著名な経営学者であるピーター・ドラッカーによるマネジメントの定義を確認してみよう。

ドラッカーは、マネジメントとマネージャーを以下のように定義した。

・マネジメント:組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関 ・マネージャー(マネジメントを実行する人):組織の成果に責任を持つ者

簡単に言うと会社経営で成果をあげるための仕組みやツールを実行していくのが「マネジメント」というわけだ。

マネジメントは経営の一部

以上を踏まえると経営は「最終的なゴールの設定」「ゴールに向けた方向性および戦略の策定」、マネジメントは「成果を生み出すための仕組みやツールの実行」を役割としている点に違いがある。ただし経営陣は、方向性や戦略策定に関する意思決定以外にも部下の管理や業績評価といったマネジメント業務も行う。そのためマネジメントは経営の一部に含まれる概念だと言える。

マネジメントの階層(種類)とそれぞれの役割

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マネジメントは、業務を担う階層によって「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3種類に大別される。この章では、それぞれの役割を詳しく説明する。

トップマネジメント

トップマネジメントとは、経営陣が担うマネジメントを意味する。具体的には、社長や副社長、常務、専務といった取締役や執行役員などがトップマネジメントを担う。そんなトップマネジメントの役割は、企業の最終的な到達点である経営目的やそれを達成するための戦略や方針、計画を策定することである。またそうした戦略や方針を実現する組織運営に関する意思決定も担う。

こうした役割を担うトップマネジメントには、物事を大局的に見る力や将来を見通したうえで意思決定を行う力、そして組織を正しい方向性に導くリーダーシップが求められる。

ミドルマネジメント

ミドルマネジメントとは、経営陣と現場の中間で部門管理を担当する中間管理職が担うマネジメントである。具体的には、本部長や支店長、部長や課長といった役職がミドルマネジメントを担う。ミドルマネジメントの役割は、トップマネジメントの決定を受けて自身が管轄する視点や部門、課における計画策定や組織編成、仕事の配分などを行うことである。

また随時部下のパフォーマンスをチェックし業務の効率化を達成するのも重要な役割だ。ミドルマネジメントには、上層部の描いたプランを忠実に実現しつつ現場における課題や意見を吸い上げて的確にそれを解決する能力が求められる。そのためには、実現力や計画力といった能力のみならず高いコミュニケーション力も不可欠である。

ロワーマネジメント

ロワーマネジメントとは、現場の作業員に対して直接指示・監督する現場管理者が担うマネジメントだ。具体的には、係長や主任、チームリーダーなどがロワーマネジメントを担う。ロワーマネジメントの役割は、トップやミドルが策定した計画や目標を実現するために現場での活動で着実に結果を出していくことである。

この役割を踏まえるとロワーマネジメントには実務に関する知識やスキルが不可欠と言えるだろう。また実務で結果を生み出すには、現場のスタッフとの関係を良好に保ち心地よい環境で働いてもらうことも重要だ。良好な関係性を保つためには、高いコミュニケーション力や共感力が欠かせない。

マネジメントの具体的な業務

マネジメントの具体的な業務は「目標設定」「部下の動機付け・指導」「成果の評価・フィードバック」の3つである。階層に関係なくマネジメントでは必要となる業務のため、経営者も押さえておきたい。

目標設定

会社経営では、目標が不可欠である。なぜなら売上や顧客の獲得数といった目標がなければ基準がなく「何をどのくらい行うべきか」計画を立てることが困難となってしまうからだ。そのためマネジメントでは、はじめに達成したい目標を明確に打ち立てる必要がある。なおミドルマネジメントはトップマネジメントの意思決定、ロワーマネジメントはミドルマネジメントの意思決定といった形で上位層の決定事項を基準に目標を策定するのが好ましい。

上層部の決定を基準に目標を設定すればトップマネジメントが策定した最終的なゴールの達成可能性を高められるだろう。なお策定した目標は、部下に対してはっきりと伝え理解してもらう必要がある。そのためにも目標は明確かつ現実的に達成できるものでなくてはならない。

部下の動機付け・指導

たとえ質の高い目標を設定しても実現するには実際に働く従業員の貢献が不可欠だ。従業員の貢献を最大限引き出すには、常にモチベーションを高く保ってもらう必要がある。モチベーションを高く保ってもらううえで必要なのが「動機付け」だ。例えばボーナスや昇進といったインセンティブを設定したり部下の能力を存分に発揮したりできる仕事を用意する施策が効果的である。

また必要に応じて部下への指導を行い一人ひとりの能力面での成長を実現するのも重要な業務の一つだ。部下一人ひとりの特性や強み・弱みを理解しその人の成長にとって最短ルートとなる形で指導するのが賢明である。

成果の評価・フィードバック

業務の成果を評価し成長や改善につながるフィードバックを行うこともマネジメントの重要な業務だ。例えば短期的なノルマを達成できなかった場合には、改善点を洗い出し分かりやすく伝えることが求められる。部下の成長につながるだけでなくより優れた成果にもつながっていくだろう。なお成果を評価するにあたっては、公平で明確な基準を設けることが好ましい。

基準があいまい(好き嫌いで評価するなど)だと部下のモチベーションが低下し業績の悪化につながる恐れがあるため注意が必要だ。

経営やマネジメントを成功させる3つのポイント

最後に経営やマネジメントを成功させるうえで最低限押さえておくべきポイントを3つ紹介する。会社を大きく成長させるうえでも重要な部分のため、確認しておこう。

1.的確かつ迅速な意思決定を行う

経済のグローバル化や技術革新などの影響により会社経営を取り巻く環境は激しく変容している。変化への対応に少しでも遅れると業績が良い企業でも急激に衰退する恐れがある。会社経営を長く続けるには、市場の変化を常にキャッチし対応の必要性や方向性を的確かつ迅速に判断することが必要だ。すべての利害関係者が同じ意見を持つとは限らない。

そのため時にはトップマネジメントを担う経営陣が独断で意思決定を下すことも必要である。

2.目標設定や評価の能力を高める

目標があいまいであったり非現実的であったりするものだと従業員のやる気や生産性の低下につながりかねない。また結果に対する評価が「合理的でない」「明確でない」といった場合もやる気の低下や成長を妨げる恐れがある。そのため会社経営やマネジメントを行ううえでは、目標設定と評価に関する能力を常に高めていかなくてはならない。

能力を高めるには、常に目標設定や評価を行ったあとに振り返り成果(収益の増加など)につながっているかを確認するのが重要だ。成果につながっていない場合は、何が問題であったかを明確にし、問題点を目標設定や評価で改善する必要がある。「実行→振り返り→改善」の繰り返しを行うことでより質の高い目標設定や人事評価が可能となるだろう。

3.KPIや多面評価などのフレームワークを有効活用する

前項では、試行錯誤によりマネジメントの能力を高める重要性を述べた。しかし短期間でマネジメントの能力を効率良く高められるとは限らない。そこでおすすめなのがKPIや多面評価といったフレームワークの活用だ。KPI(Key Performance Indicator)とは、最終的な目標の達成に向けて重要となる評価指標のことだ。

例えば「売上〇〇億円」といったゴールを定めた場合には、新規顧客の獲得件数や成約率、WebサイトのPV数などがKPIとなる。KPIの設定は、明確な基準による人事評価や各部門に達成すべき目標を明確化するうえで役に立つ。一方で多面評価とは、他部門の社員や同僚など複数の評価者により人事評価を行う方法だ。多面評価を用いれば客観的な視点による評価が可能となる。

以上の通りKPIなどのフレームワーク活用は、マネジメントの質を高めるうえで有効な手段となり得る。どんな場面でも万能というわけではないものの積極的に活用する価値はあるだろう。

マネジメントはビジネス成功の鍵

マネジメントは、会社経営にとって不可欠な分野の一つだ。そのためマネジメントの質がビジネスの成功の鍵を握ると言っても過言ではない。マネジメントを行ううえで特に重要なのは「役割」である。マネジメントを行う際は、自身の役職で求められている役割を知っておくことが大切だ。また日々マネジメント能力の向上に努めてより明確かつ合理的な目標設定や人事評価を行えるようになることも重要である。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)