中小企業の経営では、ゼロから何かを生み出す「0→1ビジネス」と土台があるところから、さらに事業を拡大していく「1→10ビジネス」の両方の観点で見ていくことが必要だ。それぞれがどのような苦労があり、今後どのような展開をしていくべきかを、「0→1ビジネス」として拡大してきた株式会社うるる 代表取締役社長 星氏と「1→10ビジネス」として事業を引き継いだ後、幅広く展開中のサツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長兼CEO 富山氏に伺った。

目次

  1. サツドラホールディングス「EZOCA」の成功の要因
  2. ポイントビジネスで集めたデータをマーケティングに生かす
  3. うるるが赤字を黒字にした最もシンプルな施策
  4. ビジネスには「0→1」も「1→10」も必要

サツドラホールディングス「EZOCA」の成功の要因

【特集#03】「0→1ビジネス」と「1→10ビジネス」の成功要因の違いとは?
(画像=うるる×サツドラ)
【特集#02】北海道で200万人が使う「EZOCA」を生み出したサツドラ代表の生き残り戦略
(画像=富山浩樹 氏)

司会 「EZOCA」のご成功は、北海道という場所柄も大きな要因としてあったのでしょうか。

富山 それはあると思いますね。北海道という要因があったっていうのもあるし、逆に北海道という要素を考えて生かそうとしたという感じです。地域というひとつの生活圏でくくって、考えました。やっぱり北海道は地域愛が強いので、単なるポイントカードにすると、全国カードと差別化できず意味がなくなってしまう。だから、スポーツチームと提携して、使えば使うほど、チームに還元しますよというモデルにしました。

北海道愛をくすぐると言ったら失礼ですけど、そのように感情が入ったようなポイントカードとして設計していったんです。加盟する企業も地元の人にはわかる有名な企業というところをわざとお誘いをしました。そこで地元応援をしているという、感情をのせたようなカードにしようというのは、最初から設計のなかに入れていました。それには、北海道というのはすごくやりやすかったなと思います。

司会 星さんも横目でご覧になっていたとおっしゃっていましたが、「EZOCA」の成功はどんなところに要因があったとお考えでしょうか。

星 私が思う「EZOCA」の成功要因ですか?すごくちゃんと始めていましたよ。デザイナーさんにキャラクターもちゃんと作ってもらっていたし、カードアイデンティティという設計として、色は何色を使うかとか、カードのデザインはこのように展開していく、というのも全部ホームページ上に出ていた気がするし。

僕らは今の会員数まで、当時は想像できていませんでした。でも富山さんは、そこをちゃんと想像して、スタートを切っていたと思います。確かに190万人が会員登録するものであれば、あのような形でスタートを切ってしかるべきだし、だからこそ、ここまで拡大したと思います。僕らは「EZOCA」が立ち上がったときには、今の形というのは全然想像できていませんでした。だから、すごいですよね。年数的、スピード感的にはどう感じていますか?「EZOCA」始めて15年くらいですか?

富山 そんなにたってないですね。「EZOCA」は始めてからは5年くらいですね。

星 そんなもんですか。5年で190万人というのは、速いのか遅いのかで言うとどうですか?

富山 最初の予想で言うと、だいたい計画どおりに結果がでています。最初の伸びが鈍かったので、ちょっと焦ったというのはありますが、今は帳尻が合ってきたという感じですね。

ポイントビジネスで集めたデータをマーケティングに生かす

星 なるほど。ポイントビジネスとは、どのようなビジネスですか?お買いものをしてポイントを還元して、そのポイントを使ってもらうのも、たぶん大事なKPIだと思いますが、これはまだまだ伸びしろがあるものですか?

富山 どちらかというと、会員数は今あんまり重要視していないKPIになっています。ここからは、徐々に伸びていけばいいかなという感じです。いかにデータの中身を幅広くするかということと、より使われて回っていくのか、ということがすごく重要になってきています。

さらに、決済もさまざま出てきているので、おそらくポイントの位置づけというのは、次のフェーズに行かなきゃいけないという流れになっています。今後は、デジタルマネーなどの部分を、どのように構築していくのかが、課題です。

星 マーケティングに活用できるところに、一番の収益価値があるということ?

富山 今はそうですね。データをいかにマーケティングに活用するか、ということです。

星 では、どのような属性の人が、どのような消費行動をとるか、ということですね。どら焼き買うときには、これを一緒に買っているよね、というように。

富山 僕らの場合は幅広いので、一例でいうと、コンサドーレの試合に来るときにも来店ポイントをつけているので、試合にも来ているこの人は、サツドラにも来て、近くの飲食店にもそのあと来る、という行動を把握します。そのような、ドラッグストアだけじゃわからない、その人の生活生態を把握できることが、強みですね。

星 そこのデータを押さえているというのは、やっぱり強いですね。

富山 そうなんです。けっこう今アライアンスができたり、増えたりしているというのも、ナショナルブランドの決済データのビッグプレーヤーも持てていない、生活生態という部分のデータを持っているからだと思います。

うるるが赤字を黒字にした最もシンプルな施策

【特集#01】データ入力代行から始まった「うるる」 社内起業からMBO、東京進出までの軌跡
(画像=星知也 氏)

司会 星さんにも伺います。赤字を黒字化する過程は、難しいという印象を持っています。当時赤字だった事業をMBOし、データ入力受託事業を日本一にすると決めたとき、収益を増加するために、最初にどのようなことを意識したのでしょうか?黒字化の要因はどのようなことですか?

星 すごくシンプルな話ですが、コストをとにかく抑えることで、黒字化を目指そうと思いました。一番のコストは、僕たちの人件費です。家賃なんてマンションの1室だったので、大きな負担ではありませんでした。いまだに覚えていますけど、家賃は32万4,000円でした。

MBOしたときに、とにかく止血をしなければいけないと思いました。キャッシュが銀行口座に700万くらいあったのですが、毎月200万くらいの赤字だったので、とにかく止血をしなければいけない。MBOをした瞬間に、4名の給料を1人20万ずつにしました。今日から俺たちの給料は、20万ね、という感じで。

それまではサラリーマンでしたし、しかも私は役職についていたので、それなりに給料をいただいていましたが、とにかくコストダウンしなくてはいけないということで、給料を下げました。アルバイトさんとかを雇い始めても、ほかの会社よりも安い時給しかお渡しできなかったので、売上があがって、コストをかけられるようになったときに、最初にアルバイトさんの時給を、まともな時給にしました。

そのうち、社員も採用しましたけれど、社員にはまともな給料を払いたいと思ったので、僕ら4人の20万円を、上げたのは最後でしたね。上げるといっても、25万、30万と、徐々に上げました。創業メンバーに関しては、サラリーマンではなくて役員だったので、やっぱり会社の売上が伸びなければ、自分たちの報酬ももらえないという覚悟をして当然、という意識でやっていました。会社を黒字化するために、自分たちの報酬をカットする。すごくわかりやすい。そんな感じで黒字化しました。コストをとにかく下げる。

富山 ほんと、泥臭いかんじですよね。

星 泥臭い。マンションの1室から始めたのも、若かったからできたのだと思います。当時私が27歳か28歳くらいでした。まだ20代で結婚もしていませんでしたし、別に給料が100万もらっていたのが20万になろうが、独り身だったので、どうにでもなりました。4人で生活する中、マンションで、毎日100円ずつ出しあいながら生活していた感じです。マンションにキッチンがついているので、当番制で、米とか食材を買って、キッチンでカップラーメンを作ったり、毎日昼はみんなで食べたりしましたね。合宿のような状況でしたね、最初は。かなり楽しかったですよ。

ビジネスには「0→1」も「1→10」も必要

司会 最後に「0→1ビジネス」と「1→10ビジネス」の違いと成功させるための定石とはどのようなことでしょうか。

富山 今は、ホールディングスでいろいろな新規事業を始めていますが、全然関係ないことをやっているよね、とよく言われます。でも、僕らのなかではつながっています。「EZOCA」で言うと、資産を生かしていくことだと思っています。「EZOCA」では、サツドラというお店の資産について、ものを売る場所という意味だけではなく、顧客のデータという資産があると解釈を変えたときに、その資産を生かして違う事業を展開できるのではないだろうかと考えます。そのようにして、新しいビジネスが生まれていきます。

今もサツドラとか、「EZOCA」にデータが集まっているということから、次の展開を予想して新しいビジネスが始まったりしています。全く違うことをはじめているというより、違う核があることに今の時流を組み合わせると、新しい成長の種を見つけられるのではないかという思いでやっています。

星 今日お話を聞いていて思ったのは、「うるる」が0→1だけでもないし、サツドラが1→10だけでもないということです。やっぱり、それぞれサツドラのなかでも0→1というのを、たぶんやっているし、「うるる」も今この規模、フェーズになってきていますから、0→1だけではありません。作った1を10とか100とかにしていくというフェーズもあるので、両方たぶん必要なのだと思っています。

ただ、やっぱり二代目というのは、すごく難しいだろうと思いますよ。引き継いで、それを踏襲したうえで事業を展開することほど難しいものはないだろうなと、私個人はすごく感じます。私はすごく自由にやらせてもらえる立場で、誰かが作った土台みたいなものがあるわけでもないので、ない難しさもあるけど、僕はないほうが自由なので楽です。

だから、誰かが作ったもののうえに、何かを作ることほど難しいものはないと感じます。向き、不向きみたいなものはあると思いますが、僕にとっては1→10のほうが難しいし、いろんな制約があって自由があんまりなく、感じるリスクほどリターンもない、と感じます。

0→1というのが、ハイリスクでハイリターンみたいなイメージを僕は勝手に思っているので、1→10にリスクがないわけではないのに、ただ単に難しい、大変、というふうなイメージだったと思います。