近年、ユーグレナが食品や化粧品として注目を集めている。ユーグレナ(和名 ミドリムシ)を商品化し、さらなる研究を続けている株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充氏にお話を伺った。

ユーグレナを商品化するまでには、数々の失敗があったという。それがどのように現在の成功に結び付いたのか。起業するまでのいきさつや諦めないで繰り返すことの重要さ、量が質に転嫁するということを実体験からお話しいただいた。またそれとともに、現在日本が置かれている状況や、将来を生き抜くためのヒントについても今後の参考にしていただきたい。

(※本記事は2020年9⽉15⽇(火)18時から行われたウェビナー「『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました』~1%の成功確率でも459回やると99%になる、繰り返すことの重要性〜」をもとに執筆されています。)

目次

  1. 栄養豊富なユーグレナの屋外大量培養に成功するまで
    1. 「ユーグレナ」の最大の弱点
    2. 世界で初めてユーグレナの屋外大量培養に成功
  2. 実績ゼロからのスタート、信用もゼロだった
    1. 500社に断られ続けて見つけた一筋の光
    2. 伊藤忠商事が見初めた「ユーグレナ」、東証一部に上場

栄養豊富なユーグレナの屋外大量培養に成功するまで

【特集#02】育たない・売れない「ユーグレナ」が数億円の事業になるまで ユーグレナ・代表出雲氏が語る苦労とは
(画像=株式会社ユーグレナ代表取締役社長 出雲充氏)
【特集#02】育たない・売れない「ユーグレナ」が数億円の事業になるまで ユーグレナ・代表出雲氏が語る苦労とは
(画像=株式会社ユーグレナ)

日本に帰った後、何が一番体にいいのか栄養満点なのか調べてみますと、すぐに答えを見つけることができました。それがユーグレナでした。

「ユーグレナ」の最大の弱点

ユーグレナは、緑色をしていて、植物と同じように光合成をするワカメ、コンブ、ヒジキといった海藻の仲間です。しかし植物でありながら動きます。光合成をするのに、動物性の栄養素も入っています。人間が生活するために必要な59種類もの栄養素が全部このユーグレナの中に入っているのです。

これは、とてもいいことを聞いたと思いました。ぜひこのユーグレナをバングラデシュに持っていこうと思いました。しかし当時、それはできなかったのです。なぜなら、ユーグレナは栄養豊富ですが、食物連鎖のピラミッドの底辺なのです。光合成で増えますが、ありとあらゆる生き物に最初に食べられてしまうため簡単には増やすことができないのです。

世界で初めてユーグレナの屋外大量培養に成功

2005年の12月16日に世界でも初めて、沖縄県石垣島で食用ユーグレナの屋外大量培養に成功しました。 当時、1年間かけて収穫できるユーグレナはたったの100グラムでした。しかし、私どもは今では工場で1年間に100トン以上を生産しています。

現在ユーグレナ社では飲料や、化粧水、バイオ燃料の開発などを行っています。商品などの開発をするとき、100グラムではあっという間に使い切ってしまい、何もできませんが、100トンあれば、いろんな商品などの開発と社会実装ができるのです。

実績ゼロからのスタート、信用もゼロだった

いろんな会社にユーグレナの説明に行きました。どの会社も、みんな同じことを言いました。

「ミドリムシなんて聞いたことがない」 「これ本当に、そんなに栄養が入っているの?」 「そもそも、そんなにすばらしいものだったら、何かほかの会社で使われているとか、そういう実績があるはずだ。それなのに、なんで実績がないのか?」 「本当はたいして栄養素が入ってないのではないか。」 と、だいたいこのように言われてしまうのです。

「じゃあ、どうしたらいいですか?」と聞くと、「世界で初めてとか、そういうのはいいから、他社で成功して、他社がうまくいっていたらうちもやりたい」と。そして「誰も手掛けていないビジネスをうちの会社が最初にスタートして、大失敗して恥をかいたらどうするのですか?」と同じことを言われ続けました。

500社に断られ続けて見つけた一筋の光

【特集#02】育たない・売れない「ユーグレナ」が数億円の事業になるまで ユーグレナ・代表出雲氏が語る苦労とは
(画像=株式会社ユーグレナ)

屋外大量培養に成功したのが、2005年の12月で、商品としてお届けできるようになったのは、2006年です。これがユーグレナ元年です。私は2006年の1月から2007年の12月までの24ヵ月、丸2年間、毎日毎日営業で、たくさんの企業を訪問しました。場合によっては飛び込み営業も行い、毎日毎日説明と宣伝をしました。2年間で500社に説明に行きました。

しかし500社訪問しても1社も買ってくれませんでした。実績がないからです。日本では実績がないものや、まったく新しいものがどんなにいいものでも、なかなか採用してもらえません。こんなに採用してもらうのが難しいのかと愕然としました。売上ゼロですから、自分の給料をどんなに節約しても、もうすぐ倒産するしかないな、と2007年の年末に覚悟を決めていました。

そのときに1社だけ「これはなかなか栄養素が多いし、商品になるかもしれませんね。うちは審査が厳しいけれども、出雲さんちょっとトライしてみませんか?」という方がいらっしゃったのです。本当に2年やって500社営業して商品化できずにいたので、これが最後のチャンスだと思いました。

伊藤忠商事が見初めた「ユーグレナ」、東証一部に上場

ユーグレナ_2
(画像=show999/stock.adobe.com)

最後のチャンスがものにならなかったら、会社倒産するしかない、破産するしかない。本当にそう覚悟を決めて、毎日説明書も提案書も言われたとおりに作り直して、説明に説明を重ねました。そして2008年の5月に初めて合格となりました。「一緒にこれからどんどん一緒に売りましょうね」というパートナーの企業と出会うことができたのです。それが今までで一番うれしかったことであり、その企業が伊藤忠商事であります。

伊藤忠商事がユーグレナを全面的に販売してくださるようになって、本当に変わりました。社会的信用のある伊藤忠商事が説明すると飛ぶように売れるのです。次々とビジネスがまとまり、共同研究、事業開発と、広がるなか、多くの方に支えていただいて事業は急成長を遂げました。

私どもは2005年に東京大学の農学部からスタートしました。そして東京大学が作ったベンチャー企業として、日本で初めて東証一部に上場を果たしました。2014年12月3日のことです。

2015年に第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」をいただいてからは、名もない、実績のないものでも新しい産業、新しいビジネスにすることができる。これをもっと広げていくためにどうしたらいいのか、ということが新しいテーマとなりました。