個人事業主にとって車は、取引先との商談や商品の搬送などで不可欠な事業用資産である。事業で不可欠な資産ではあるものの車の費用を経費にできるかはケースバイケースなので注意が必要だ。今回は、個人事業主が車の費用を経費にできるケースや具体的な経費の計上方法などを分かりやすく解説する。

目次

  1. 車に関する費用は経費にできる?
    1. 経費にできるのは仕事で使っている車の経費だけ
    2. 車に関する経費の勘定科目
  2. 車の購入経費は原則「減価償却」により計上
    1. 減価償却とは
    2. 減価償却による経費の算定方法
    3. 耐用年数は新車と中古車で異なる
    4. リース契約の車は経費の仕訳方法が異なる
  3. 事業とプライベート兼用の車の経費はどう計上すべき?
    1. 仕事で使っている金額のみを計上する
    2. 家事按分の割合はどうすべき?
  4. 個人事業主が車の経費をめぐって知っておくべきポイント
    1. 節税の観点では中古車の方が良い
    2. 30万円未満の車ならば一度にすべて経費計上できる
    3. 経費として認められるための証拠を持っておく
  5. 経費計上はもれのないようにしよう

車に関する費用は経費にできる?

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個人事業主は車の費用を経費にできる?経費の計算方法も解説
(画像=Oleksandr/stock.adobe.com)

まずは、どのようなケースで車に関係する費用を経費として計上できるかを説明していく。

経費にできるのは仕事で使っている車の経費だけ

結論を言うと仕事で使用している車の経費のみを経費にできる。例えば運送業を営む個人事業主であれば商品の運送に使っている車の購入費用や維持に要する費用をすべて経費として計上できる。

車に関する経費の勘定科目

車に関する経費には、購入代金だけでなくガソリン代や保険代、駐車料などあらゆる費用が含まれる。個人事業主が押さえておきたいのは、経費の種類によって仕訳で用いる勘定科目が異なる点だ。車に関する主要な経費に関して用いるべき勘定科目は以下の通りである。

・車の購入代金:減価償却費 ・ガソリン代:車両費 ・整備費:車両費 ・車検費:車両費 ・駐車場代:賃借料 ・各種保険代:保険料 ・各種税金:租税公課 ・備品(タイヤや消臭剤など):消耗品費

例えば個人事業主が3,000円のガソリン代を現金で支払った場合、以下のように仕訳を行う。

借方 貸方
車両費 3,000円 現金 3,000円

車の購入経費は原則「減価償却」により計上

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車の購入経費は、使用したタイミングですべて全額計上することは基本的に不可能である。車の経費を計上する場合は、原則「減価償却」という会計処理が必要だ。

減価償却とは

減価償却とは、長期間使用する固定資産について獲得に要した費用を一定の期間で分割して計上する会計処理である。時間の経過とともに価値が低下する固定資産について低下した分だけを経費として計上していくのが減価償却の基本的な考え方だ。個人事業主が事業で使用する車は、長い間にわたって利用する「固定資産」である。

そのため購入した時点で経費を全額計上するのではなく毎期固定資産価値の減少分だけを「減価償却費」として計上しなくてはならない。

減価償却による経費の算定方法

車の購入費用を経費として計上するには、以下の流れで毎期の減価償却費を算定することが必要だ。

・手順1:耐用年数を調べる 車の減価償却費を算定するには「耐用年数」の情報が不可欠である。耐用年数とは、算定対象となる固定資産を問題なく使用できると予想される年数だ。減価償却費を求める際には、個別の資産ごとに定められた耐用年数を確認することになる。車の耐用年数は、普通自動車が6年、軽自動車(総排気量が0.66リットル以下)は4年だ。

※1:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数表

・手順2:定額法または定率法により毎期の減価償却費を算定する 次に定額法または定率法を使って毎期の減価償却費を算定していく。定額法とは、毎年同じ金額を経費として計上する手法である。一方で定率法とは、未償却残高(帳簿価額)に一定の割合(定率法償却率)をかけて減価償却費を求める手法のことだ。初年度ほど減価償却費が多くなり年とともに計上する金額が減っていく点が大きな特徴である。

なお個人事業主の車については、定額法で減価償却費を算定することが原則だ。そのため今回は、定額法による減価償却費の求め方を説明していく。定額法では、購入時の金額(取得原価)に定額法の償却率をかけることで経費として計上する減価償却費を求める。定額法の償却率は、耐用年数ごとに数値が設定されているため確認が必要だ。

例えば400万円の軽自動車を個人事業主が購入した場合、耐用年数が4年となり定額法償却率(0.250)を用いる。毎年の減価償却費の計算は以下の通りだ。

・減価償却費=軽自動車の価格400万円×定額法償却率0.250=100万円

このケースでは毎年100万円の経費を計上することになる。簡単に言うと購入金額を耐用年数で割った金額と基本的に同じになるわけだ。ただし最終年度は残存価格を1円残す必要があるため、その点のみ注意しておこう。

・手順3:減価償却費を仕訳する 最後に算定した減価償却費を仕訳し経費の計上を完了させる。例えば100万円の減価償却費に関しては、以下のように仕訳を行う。

借方 貸方
減価償却費 1,000,000円 車両運搬具 1,000,000円

経費の発生分として借方に減価償却費を計上し貸方に車両運搬具の価値減少分を計上するわけだ。

※2:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合) 国税庁

※3:減価償却資産の償却率表 国税庁

耐用年数は新車と中古車で異なる

上記で解説した耐用年数は新車のケースだ。中古車の場合は、自分で耐用年数を算定することが必要になる。中古車の耐用年数を算定する方法は、国税庁のホームページ(下記リンク先)で解説されているため、詳しく知りたい人は参考にしておこう。

※4:No.5404 中古資産の耐用年数 国税庁

リース契約の車は経費の仕訳方法が異なる

個人事業主がリース契約で車を保有する場合、上記で説明した仕訳方法とは異なる仕訳が必要である。具体的には、毎月支払うリース料を全額経費として計上する仕訳を行う(オペレーティングリース取引の場合)。あくまで資産をレンタルしているに過ぎないため、固定資産として車両運搬具を計上する必要はない。

事業とプライベート兼用の車の経費はどう計上すべき?

事業とプライベートで兼用している車に関しては、通常の方法で経費を計上することはできない。この章では、事業とプライベート兼用の車について経費を計上する方法について紹介する。

仕事で使っている金額のみを計上する

プライベートとの兼用の車を持つ個人事業主の場合、仕事で使っている金額のみを計上しなくてはならない。そのためまずはプライベートと事業で利用している金額をしっかりと切り分けることが必要である。なお車などの資産を事業とプライベートでそれぞれどのくらいの割合で使っているか割り出すことを「家事按分」という。

例えば事業7割、プライベート3割の比率で自動車を使用している個人事業主は、車にかかった費用のうち7割を経費として計上できる。月10万円の費用が車にかかった場合は、7万円の費用を経費として計上可能だ。

家事按分の割合はどうすべき?

家事按分の割合は、どのように設定した方がよいのだろうか?結論から言うと誰が見ても納得できる割合であれば問題視されることはないと言われている。例えば自動車に関しては、事業で使用している日数で割合を決めるのが一般的だ。週5日間事業を行っている個人事業主であれば7分の5に相当する金額を経費として計上できるだろう。

家事按分の割合を決めるうえでは、客観的に見て理にかなっていることが重要である。主観で決めてしまうと後から税務署に指摘されるリスクが高い。自分で客観的な割合を判断するのが難しい場合は、税務のプロである税理士に相談するのが確実だろう。

個人事業主が車の経費をめぐって知っておくべきポイント

最後に個人事業主が車の経費を計上するうえで最低限知っておくと良いポイントを3つ説明する。

節税の観点では中古車の方が良い

すべてのケースに該当するわけではないものの、新車よりも中古車の方が短期的な節税効果は高い。なぜなら中古車は耐用年数が短い(≒減価償却の期間が短い)からだ。例えば法律で定められた耐用年数を4年過ぎている中古車を購入した場合、簡便法と呼ばれるやり方で算定した耐用年数は2年となる。本来6年で計上すべき費用を2年で計上できるため、1年あたりに計上できる経費が多くなるのだ。

経費が増えるほど税金の算出のもとになる所得は減るため、結果的に節税効果も大きくなる。ただし格安の自動車を購入するとかえって経費として計上できる金額が減る場合もあるため注意が必要だ。

30万円未満の車ならば一度にすべて経費計上できる

車を購入した場合、基本的に購入した代金を数年に分けて減価償却費として経費計上することが必要だ。しかし「少額減価償却資産の特例」を使えば30万円未満であれば購入した車の代金を一度にすべて経費計上できる。数年で計上する経費を一度に計上できるため、短期間で大きな節税効果を得られるわけだ。

ただし特例を利用するには「青色申告書の提出」「常時使用する従業員数が1,000人以下」といった条件があるため注意しておきたい。

※5 少額減価償却資産の特例 - 中小企業庁 - 経済産業省

経費として認められるための証拠を持っておく

個人事業主が持つ車の経費が認められるためには、事業で利用したことが明らかな費用でなくてはならない。ただし単に口頭で伝えるだけでは認められない可能性があるため、明確な客観的証拠を持っておくことが重要だ。例えばレシートや領収書を残しておいたり車を使用するたびに行き先や仕事の内容などを日誌に記録したりしておくのが賢明である。

経費計上はもれのないようにしよう

個人事業主にとってもれなく経費を計上することは不可欠である。車についても例外ではなく購入代金はもちろんガソリン代や備品などももれなく計上することが必要だ。ただし経費を計上するに際しては、細かい会計や税務のルールを遵守することを心がけなくてはならない。

なお日々のガソリン代や備品などは、ビジネスカードで支払うようにすると便利だ。いつ・どこで使ったか履歴として残るため、個人事業主の経理業務にかかる負担の軽減にもつながる。数あるビジネスカードの中でもおすすめなのは決算書や登記簿謄本不要で作れるクレディセゾンのカード。車に関する経費計上にかかる負担を軽減したい人は、ぜひ検討してみよう。

※記事中の法律・税制に関する記載は、2020年10月時点のものである。現時点では法改正により内容が異なる可能性があるのでご注意願いたい。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)