人工知能(AI)技術はビジネスの成長分野としても期待が高まっている。AIビジネスをリードするのは巨額の技術開発資金を誇る大企業に限らず、台頭著しいベンチャー企業もAIの分野では存在感をみせつけている。AIのビジネス市場の特徴や、注目のベンチャー企業を紹介する。

目次

  1. AIのビジネス市場は10年で4倍に拡大
  2. AIが活躍する分野
    1. 画像解析
    2. ディープランニングと自然言語処理
  3. AIで成功しているベンチャー企業3選
    1. 1.画像認識技術を幅広い業種に展開する「アラヤ」
    2. 2.内視鏡検査にAI技術を導入する「AIメディカルサービス」
    3. 3.腸内細菌をAIで分析し、セルフケアにつなげる「サイキンソー」
  4. ベンチャーがAI産業で活躍できる理由
    1. 理由1:意思決定のスピードが早く、新しい技術に適応しやすい
    2. 理由2:大規模な施設がなくても始めやすく、資金調達もしやすい

AIのビジネス市場は10年で4倍に拡大

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注目のAIベンチャー企業3選!AIビジネス市場の特徴とは?
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

AIはいまやビジネスでは欠かせない存在であり、経済成長のけん引役としても大きな期待が寄せられている。

富士キメラ総研の「2019年人工知能ビジネス総調査」によると、日本国内のAIビジネスの市場規模は2018年度に5,301億円と見込まれていたが、2022年度には1兆円を超え、2030年度には2兆1,286億円と10年ほどの期間で市場が約4倍に拡大すると予想されている。

業種別にみると、2018年から2030年に向けて下記のようにそれぞれの市場が伸びるとみられ、AIの恩恵を受ける分野や多岐に渡る。

・金融業は市場規模1,446億円から4,529億円 ・組み立て製造業は757億円から2,616億円 ・医療介護分野は174億円から1,093億円

政府もAIの重要性に目を付けて人工知能技術戦略会議を設置し、「健康、医療・介護」「空間の移動」「情報セキュリティ」を重点分野としてAIの研究開発に向けて官民の連携を推奨している。

AIが活躍する分野

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国も掲げて取り組むともなると、大きなビジョンのイメージが先行して、遠い存在のように感じられるかもしれない。しかし、実際にAIがどのような分野で導入されているか具体例をみていくと、その存在を身近に感じられるだろう。

AIには「画像解析」「ディープラーニング」「自然言語処理」などの機能を発揮して革新的なサービスの開発に貢献している。

画像解析

画像解析では、セキュリティ分野への適用が挙げられる。特に防犯カメラにAI機能が搭載されることで、犯罪行動のパターンをAIが学習することで、万引きが発生する予兆を検出し、従業員に通知することまで可能になっている。

これにより、店舗は万引きによる損害を抑えられるほか、防犯のために警備員の配置や従業員の増員などが不要となり、人件費の削減もできる。

ディープランニングと自然言語処理

膨大なデータの中に埋もれた規則性や特徴を発見するディープラーニングでは、AIの躍進が著しい。マーケティングの分野では、これまでの経験則やトレンドなど職業的な勘に頼る部分も大きかったが、AIはパソコンの検索履歴や商品の購入履歴から好みを分析して、適格な商品を広告として提示するようになっている。

マーケティングに係る手間が省ける上に、人間では気づかなかった消費者の行動パターンの法則をAIが発見することで、より効果的なマーケティングを展開できるようになっている。

マーケティング分野に関わらず、ディープラーニングで人間の発する会話やチャットを学習し、自然言語処理にAIが導入されている。この機能により、顧客からの問い合わせを自動化することも可能になっている。

従来であれば、社内に顧客サポートの部署を設置するか、アウトソーシングが必要だった顧客からの問い合わせも、AIの躍進によって新たな局面を迎えている。

このようなAIの機能は知らず知らずのうちに、すでに利用していたかもしれないだろう。一方、AIのアイコンとも言えるにはロボットであろう。ソフトバングが提供するpepperをはじめとして、各社が次々とAIを搭載したロボットを導入している。

その仕事は、注文の受付や観光案内といった内容にとどまらず、人間のような感情を持って振舞うこともできるまでになっている。

AIで成功しているベンチャー企業3選

AIが活躍する分野を網羅したところで、実際にどのような企業がAIによって頭角を現しているのかみてみよう。

1.画像認識技術を幅広い業種に展開する「アラヤ」

株式会社アラヤでは高い画像認識技術を兼ね備えたディープラーニング技術を開発し、製造業、通信、農林水産分野など幅広く事業を展開している。

画像認識技術の精度を保ちながらも、演算量を削減する記述を確立した上、状況判断を自ら行い自律的に作動する技術や製品の開発で実績を上げている。この技術は自動車やスマホ、ドローンなどへ適用が期待されている。

具体的なAIのプロジェクトとして挙げられるのが、自律的に飛行したドローンによる送電線点検である。このプロジェクトでは、まずドローンに掲載されたカメラからの画像情報を基にして、ドローン自体が自律的に飛行できる技術の開発に取り組んでいる。

送電線の点検には、従来は高所で作業員が点検に従事しており、作業の危険性も極めて高かった。ドローンの登場によって、点検作業がヒトからドローンに置き換わるようになってきているものの、たわんだ送電線に沿ってドローンを操縦して点検させるには操縦技術を有するヒトがまだ求められている。

アラヤが開発に取り組む自律飛行技術が実現できれば、危険を伴う点検から作業員を解放するだけでなく、熟練した操縦技術を習得するための訓練も不要となる。

2.内視鏡検査にAI技術を導入する「AIメディカルサービス」

3大死因の1つであるがんは、早期の発見がその後の治療結果を大きく左右する。食道・胃、小腸、大腸の消化器に発生するがんを内視鏡検査でAI技術を導入して、専門医の診断の支援に取り組んでいるのが株式会社AIメディカルサービスである。

がんは早期に発見することの重要性もさることながら、見逃しを撲滅できるかも鍵となる。器官に潜む小さな病変を見落とさずに発見するのは、ベテランの医師でも完璧に遂行できるわけではない。

医師によっては見落としが2割以上にも上るともいわれる上、ダブルチェックをする医師も毎日何千枚もの読影作業が求められ、現場には疲労感も漂っているのが現状である。

AIメディカルサービスは膨大な数の画像を継続的にAIに学習させることで、画像認識のレベルを高めてきた。同社のAIはピロリ菌胃炎の診断で、内視鏡医を上回る正解率を記録するなど、精度を挙げている。

この技術を搭載したクラウド型内視鏡画像二次読影支援サービスの開発に取り組み、がんの診断見落としを防ぎながら、医療現場での医師の負担軽減にも貢献している。

3.腸内細菌をAIで分析し、セルフケアにつなげる「サイキンソー」

医療分野で存在感を増すAIは、セルフケアの分野でも技術の応用が広がっている。株式会社サイキンソーは、腸内に棲みつく微生物の集団である腸内細菌叢(そう)の分析に着目。腸内細菌叢は身体機能や免疫機能の活性化など、健康に多大な影響力を及ぼすとされる。

サイキンソーは、腸内細菌叢の検体を1万5,000以上保有し、AIに解析させた。これによって腸内環境の検査を実施した利用者は、腸内細菌の変化によって、生活習慣病や消化器疾患などの発症リスクや予防に向けた生活改善に取り組めるようになるという。

個人差の大きいデータから、健康状態や将来の病気のリスクを判断することは困難であるが、AIの解析技術を駆使することで未病の検知や予防・改善に貢献できるようになった。病気が発症する前の段階から、AIによってその兆候を把握できれば、健康な状態で長生きを楽しむことに繋がる期待が高まる。

ベンチャーがAI産業で活躍できる理由

先に紹介したベンチャー企業の名前を知らなかったという経営者も多いに違いない。成長段階にあるベンチャー企業だが、その事業内容は我々の生活に変化と豊かさをもたらす可能性を大いに秘めている。

ベンチャーといえども、それほどインパクトのある事業が展開できるのはAIのポテンシャルも去ることながら、ベンチャーならではの強みも隠れている。

理由1:意思決定のスピードが早く、新しい技術に適応しやすい

世界中で研究や技術開発が進められているAIは、その進化のスピードは目まぐるしい。大企業のような組織であれば、経営陣の決済までプロセスに時間を要する。そうしている間にも、次なる技術が開発され、提供するサービスが時代遅れともなる可能性がある。

ベンチャー企業のケースでは組織が大所帯ではない反面、機動力に優れている。意思決定スピードも速い。ポテンシャルのあるAIの技術や事業であれば、決済に時間を割くよりも、まずは試行錯誤を始められるという点でベンチャーには分がある。

ベンチャーに限らず、政府が戦略で掲げるくらいAIの重要性は広く認識されている。しかし、大企業や老舗企業の場合、すでに提供しているサービスがAIの活用によって脅かされる恐れもあり、事業展開しづらいこともある。ベンチャーではそのような柵に囚われることなく、新しいAIの技術を積極的に導入し、新しいサービスの開発に繋げていける強みがある。

理由2:大規模な施設がなくても始めやすく、資金調達もしやすい

さらに、AIの活用には大規模な工場などの施設がなくてもスタートすることが可能であり、ベンチャーにもチャンスが溢れている。さらに、AIそのものへの投資家からの関心も高く、先駆的な技術には投資家からの資金提供も受けやすい環境が醸成されつつある。

資金力が十分でないベンチャーにも、投資家を引き付けて事業を展開できることが、AIの分野におけるベンチャーの台頭を支えている一面でもあろう。

経営者としては、AIの台頭を横目に眺めるだけでなく、自社サービスへの導入が可能かどうか。それによってコスト削減、業務の効率化が図れるか検討に値するだろう。また、自社にノウハウが兼ね備わっている場合、AIビジネスに参入することも経営戦略の1つとしては有望であろう。

成長著しいAI分野は、同じく企業として成長の可能性を秘めるベンチャーの台頭が目覚ましい。AIはすでに幅広い分野に応用され、政府の戦略にも取り入れられているように、今後も目が離せない。そのような環境の中で、ベンチャー企業がAIを軸にして成長する時代が続いていきそうである。

文・志方拓雄(ビジネスライター)