ヒット商品やサービスを生み出し経営が軌道に乗った企業といえども、ビジネスが順風満帆に進むか不安は絶えない。経営の安定化には一歩先に進んで、ストック型のビジネスが鍵となるだろう。本記事ではフロー型ビジネスと比較しながら、ストック型ビジネスの特徴や注意点を紹介しよう。

ストック型のビジネスとは?

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ストック型ビジネスとフロー型ビジネスを徹底比較!メリット・デメリットと3つの注意点
(画像=amnaj/stock.adobe.com)

ストック型ビジネスとは継続的な収益をもたらしてくれる商品やサービスのことだ。継続的にある程度のまとまった需要を確保し、ビジネスの先行きの確実性を高めてくれる。

典型的なストック型ビジネスの例として挙げられるのは、不動産賃貸である。所有する不動産に空きが生じない限り、賃貸収入が継続的に入ってくる。またインフラの電力や通信もストック型ビジネスに挙げられ、継続的に利用者から使用料を受け取り、安定したサービスの提供という使命を負うことになる。 ストック型ビジネスを提供できるのは、十分な事業資金を有する大企業だけには限らない。中小企業によっても、さまざまなストック型ビジネスが展開されている。

例えばメルマガの有料会員制度や、ウォーターサーバーの水タンクの定期配送などが挙げられる。こうしたサービスは、莫大な投資資金がなくても、ストック型ビジネスを構築できることを示している。

ストック型とフロー型ビジネスの比較

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自社で展開できるストック型ビジネスのポテンシャルが見出せないという場合には、ストック型ビジネスと対比されるフロー型ビジネスと比較しながら見るとよりイメージが膨らむだろう。

ストック型ビジネスのメリット・デメリット

例えばカフェで健康にいいドリンクを提供したところ、SNSや口コミで評判が広がり、行列ができるまでになったとしよう。売り上げは伸び、経営者としては店舗の拡大や新規出店も視野に入るかもしれない。

しかしその成長がいつまでも右肩上がりで続くことは保証されていない。短期間で荒稼ぎをするという経営方針も1つではあるが、事業の急拡大にはリスクも潜む。リスクを管理する上では、中長期的に経営を安定化させるストック型ビジネスを構築できるかがポイントとなる。

このヒットしたドリンクを、店舗だけでなく消費者の自宅にも毎月定期的に届けられるようなサービスが提供できるようになると、会員数と商品代金から会社の売り上げがはじきだされ、正確な数字を把握することで、事業計画や投資にも事業資金を回しやすくなるだろう。

経営の安定にはストック型ビジネスの構築が推奨されるが、フロー型ビジネスにメリットがないというわけではない。ストック型ビジネスは商品やサービスを開発し、さらには安定的な収益を上げるための定期購入などの仕組みを構築するなど、ビジネスモデルを確立するまでに時間を要する。

フロー型ビジネスのメリット・デメリット

一方フロー型ビジネスでは、商品やサービスが素早く浸透してヒットに繋がり、短期間で収益を上げることもできる。さらには流行やSNSの拡散力にうまく乗じることができれば、一気に爆発的な収益を記録することも不可能ではない。

特に事業資金が限られている企業であれば、早期に経営を安定化させるためにも、フロー型ビジネスでできるだけ早く、収益を上げていくことが戦略の1つとして有効であろう。

こうした短期間で予想を超える収益を上げる潜在性が秘められるフロー型ビジネスだが、一方で収益の不安定さはデメリットとしてみなされる。まずは、商品やサービスそのものが収益をもたらす程にヒットしない可能性がある。

仮に流行に乗って爆発的なヒットを遂げても、その売上が未来永劫に保証されるわけではなく、むしろ一過性のブームとして短命に終わることがビジネス界では常である。想定外の売り上げを達成し、事業を急拡大したところでブームが去れば、投資資金が十分に回収できないまま、負債だけが残るという事態も想定される。

経営者に求められるのは経営の安定化

経営者はいかにしてヒット商品やサービスを世に送りだし、利益を上げて会社をより大きく成長できるかということに重点が置かれる傾向がある。しかしながら、右肩上がりで成長を追い求めること以上に、経営を安定化させることは至難の業である。

経営を安定化させる戦略の1つとして、ストック型ビジネスをどのように構築できるかが、会社の行方を左右すると言っても過言ではない。ただし、フロー型ビジネスとは異なり、ストック型ビジネスの仕組みを作り上げるには、腰を据えて取り組まなければならない。

ストック型ビジネスの3つの注意点

この章ではストック型ビジネスを展開する前に知っておきたい、3つの注意点について紹介する。

注意点1:長期的な需要があるものでなければならない

ストック型ビジネスで展開される商品やサービスは長期的な需要が期待できるものでなければならない。フロー型ビジネスにおいては、そのご時世のトレンドを読み、流行っている物を商品として提供できれば、ヒットする可能性が高い。

フロー型ビジネスではスピードが求められるため、商品やサービスの質は二の次でも消費者を引き付けることは可能である。そもそも、ブームに乗じた商品であれば、顧客とも一見だけの付き合いで終わることが多い。

しかしストック型ビジネスとなると、様相が異なる。足下だけでなく、長期的なトレンドを読んで、5年、10年先も重要が見込める商品やサービスを開発しなければならない。さらには顧客との関係が長期に及ぶため、商品やサービスの提供にあたってはその品質も高いレベルで求められる。顧客からの満足が得られなければ、顧客はリピーターにはなってくれないシビアな世界である。

注意点2:ビジネスの構築に時間がかかる

ストック型ビジネスはスピードよりも、長期的に商品やサービスを高いクオリティで提供する必要性があるため、ビジネスの構築には相応の時間を要する。さらには、顧客を獲得するまでの期間を考慮すると、ビジネスモデル全体が完成するまでに、十分な資金繰りが確保されているか、経営者としては注意しなければならない。

ビジネスモデルそのものは市場価値が認められたとしても、事業を十分に繋ぎとめる資金がなければストック型ビジネスの確立は困難である。

注意点3:ビジネスモデルを変更しづらい

一旦確立したビジネスモデルにおいては、一定数の顧客がいるため、大幅な変更を実施しづらい。企業としては、提供する商品やサービスの改善に繋がるという視点に立っていたとしても、顧客としては現状の商品やサービスに満足しており、変化を求めていないケースもある。

ドラスチックに商品やサービスを変更する場合には、顧客離れが発生する可能性がある。商品やサービスを企画する際は、長期的な視点で慎重に進めていくことが重要だ。

ストック型ビジネスの売却も選択肢

ストック型ビジネスを展開することに成功した経営者には、さらなる戦略としてストック型ビジネスの規模拡大あるいは、ストック型ビジネスそのものを他社に事業売却する選択肢もある。

これまで述べたように、ストック型ビジネスの構築には相応の期間を要するため、企業としては喉から手が出るほど欲しい事業であろう。資金に余裕はあるものの、ストック型ビジネスを構築するための人的リソースやノウハウが不足している企業であれば、他社から事業を買収するのが効率的である。

ストック型ビジネスを軌道に乗せることができた経営者は、事業の売却も選択肢の1つに入ってくる。仮に、ストック型ビジネスを事業売却しても、別のストック型ビジネスが自社で確保できているなど、経営の安定に支障が出ないか経営者に判断が委ねられる。自社の経営の安定に支障がなければ、ストック型ビジネスの売却が視野に入ってくる。

事業売却によって資金を獲得できれば、新規事業の展開や既存事業への投資に回せる。これによって、会社としての更なる成長に繋げることが可能である。同時に、経営の安定性を確保するべく、これまでのノウハウを活用して、新たなストック型ビジネスを展開することもできる。資金が潤沢になれば、それだけ経営の選択肢が増し、経営者の手腕がより発揮される環境が整備されていく。

ストック型ビジネスは顧客確保と経営安定化の一石二鳥

経営方針がフロー型ビジネスに依存し続ける限り、流行やライバル社の動向など外的な要因に左右されることも多く、自社の企業努力だけでは経営の安定化のコントロールが及ばないことが多い。経営の安定化に向けてはストック型ビジネスを構築できるかどうかが経営の1つの鍵となるだろう。

フロー型ビジネスとは異なり、ストック型ビジネスは長期のトレンドに沿った商品やサービスを提供する必要がある。さらには、顧客との付き合いも長期に及ぶため、商品やサービスの品質の確保、顧客のサポート体制を充実させ、顧客満足度を高めていくことにも注意を払う必要がある。

こうしたプロセスを経るには、ある程度の事業期間が求められるため、その間の事業資金が十分に確保できているか、ストック型ビジネスを展開する前に経営者は分析しなければならない。ストック型ビジネスが軌道に乗れば、経営に安定化をもたらしてくれ、さらなる企業の発展に向けて、そのストック型ビジネスの売却も含めて、経営の選択肢が増える。

自社で開発したストック型ビジネスが高値で売却できれば、その資金で新たなストック型ビジネスの展開を進めるなど、経営者の手腕が発揮され、企業経営の安定化に向けた舵取りがしやすくなることが期待できる。

文・志方拓雄(ビジネスライター)