新型コロナウイルスが世界中に広まったことにより、それまでの社会常識は大きく変化してしまった。だが変化の中でも新たなチャンスを見出し、ユーザーから高い支持を獲得しているビジネスも存在している。今回は世界中で注目されている、海外ビジネスの最新事例を紹介しよう。

事例1.コロナ禍で脚光を浴びている、進化系ドライブスルー

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日本でもヒット間違いナシ!?コロナ禍でも成功する海外ビジネスの事例4選
(画像=Kzenon/stock.adobe.com)

世界中に新型コロナの感染が広がって以来、米国内で盛んに用いられるようになったのがcurbside pickup(カーブサイド・ピックアップ)という言葉だ。直訳すると、「curbside(道路の縁石側)でのpickup(受け取り)」となる。

いわゆるドライブスルー方式による販売手法を意味し、従来はファストフードなどの飲食店でよく用いられていたものだが、コロナ禍では他の業態にも拡大している。

「不特定多数の人々が集う店舗内に入りたくない」というコロナ禍特有のニーズがその背景にあるものの、ITの発展も大きく後押ししているようだ。スマートフォンやタブレット端末などを用いたオンライン取引で事前に購入手続きを済ませておき、自動車で店舗の駐車場まで向かうと、スタッフがピックアップした注文品をトランクに積み込んでくれるというサービスである。

従来方式のドライブスルーでは、到着後に注文するのが一般的だった。これに対し、急増中のcurbside pickupでは注文・決済とも到着時には完了しており、受け取るだけで済むから手っ取り早い。

実は、このcurbside pickupという手法は新型コロナのパンデミック以前から存在していた。世界的な流通大手のウォルマートは、2015年頃からWalmart Grocery Pickup(ウォルマートグロサリーピックアップ )というサービスを一部の店舗で導入している。

現在は米国内の2000店舗以上に対象を拡大しており、さらにコロナ禍でオンライン経由の注文が急増していることを踏まえて、2020年末までに3000店舗に拡充する方針だという。店舗のスタッフには「顧客に代わって希望の商品を選ぶ」という新たな負荷がかかるため、合計で35ドル以上の注文からという最低基準を定めた。

これは来店時の顧客単価よりも高い設定で、通常よりも多売することで採算が合うようにしている。最低基準も設ける代わりに、curbside pickup自体のサービス料は徴収していない。

米国では、他のスーパーマーケットチェーンやコンビニエンスストアなどといった小売業を中心にcurbside pickupの導入が広がっている。日本においても、自動車が生活に欠かせない地方ではこうしたサービスに対する潜在需要がありそうだ。

事例2.仲間同士で助け合うP2P保険で保険料が半額に

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大病や大ケガといった「もしもの事態」に備えるのが生命保険だが、その保険料負担が重すぎると感じている人は少なくない。保障は欲しいものの、コスト負担をできるだけ抑えたいというニーズに応えて登場したのがオンライン上だけで販売する保険商品だが、その究極系とも言えるP2P(ピア・トゥ・ピア)保険も登場している。

そもそもP2P(Peer to Peer)とは、多数のコンピューターがサーバーを介さずに直接データのやり取りをする方式のこと。ビジネスの世界では、互いに対等な関係でコミュニケーションを交わしたり、契約を結んだりすることを意味している。

P2P保険のプラットフォーム上では、同じ保障内容を求めている人たちによって比較的小規模なコミュニティ(集団)が結成されている。そこに参加している人たちはそれぞれ保険料を積み立て、集められた資金は運用に回される。

参加者のいずれかが病気やケガに見舞われると、運用されている資金から所定の保険料が支払われる。いわゆる互助会のスキームであり、生命保険の原点に回帰した仕組みになっているとも言えよう。

生命保険のルーツは、中世ヨーロッパの都市で結成された同業者組合「ギルド」にあるという。事業の資金繰りに困ったり、病気やケガで働けなくなったりした場合に援助し合っていたのだ。また、17世紀には英国のセントポール寺院において、仲間が死去した際の香典に充てるために、毎月一定額ずつ払い込む制度が生まれている。

これらの相互扶助制度と比べて、現在の生命保険はあまりにも規模が大きくなりすぎており、人件費や宣伝販売費といったコストも膨らんでいる。言い換えれば、おのずと保険料も高くなってしまうのだ。

こうしたことは生命保険だけに限らず、損害保険にも共通している。P2P保険の場合は純粋な相互扶助に近い形式になっているので保険料負担は軽減され、完全な“掛け捨て”ではなく、年間の収支次第では還付金が生じる場合もある。

P2P保険のプラットフォームを運営している企業の収益源は、各コミュニティから集金される保険料の一定率に相当する手数料だ。世界で初めてP2P保険のプラットフォームを構築したのは、ドイツのFriendsuranceで、損害保険会社と直接契約するケースと比べて年間の保険料負担を最大で約半分に抑えられるという。

米国では、2015年に創業したLemonadeがP2P保険で先駆している。住宅の所有者や賃貸人向けの損害保険を従来の半額に近い保険料で提供し、同社にはソフトバンクグループも出資している。

日本国内においても、スタートアップのjustInCase(ジャストインケース)が2020年1月からP2P型の「わりかん保険」の販売を開始している。20〜74歳が加入できるがん保険で同社のサイト上で申し込める他、アドバンスクリエイトやSBI日本少額短期保険、クラウドワークス、新生銀行、チューリッヒ少額短期保険、ディー・エヌ・エー、日本生命保険、LINE Financialでも取り扱っている。

事例3.AIで将来の年収を試算する「将来のエリート」向けローン

融資というビジネス自体は太古から存在しているが、ターゲットとするセグメントの特定と、その特性に応じたサービス設計、AI(人工知能)という最新テックの融合によって、まったく新たなビジネスモデルを確立させたのが米国のEarnestというスタートアップだ。

同社が取り扱っているのが学生ローンで、在学中の大学名や取得予定の学位、銀行口座の取引履歴や残高などに関する情報提供に同意した申込者に対し、競合よりも低利の融資を行っている。

一般的に難関大学を卒業した高学歴の人材は、社会に出てから高所得を得る可能性が高い。そこで、Earnestは申込者が通う大学のランクや取得予定の学位の種別などを判断材料としてAIで将来の年収を試算し、その結果に応じて融資条件を定めているのだ。

こうした発想は、大衆向けの融資とは真逆であるとも言えよう。いわゆる消費者金融と呼ばれる事業者のビジネスモデルは、収益機会の拡大を求めてセグメントを特定せずに幅広い層をターゲットとし、与信も迅速かつシンプルにしている。

しかしながら、ターゲットを広げればおのずと信用ランキングにもばらつきが生じる。それだけ貸し倒れリスクも高くなるので、金利も高く設定せざるをえないわけだ。

その点、Earnestは現時点の信用ランキングこそ高くないものの、社会に出てからの将来の信用ランキングを見越して好条件の融資を提供することで、競合に対して優位性を得ている。しかも、現実に利用者が高所得を得るようになれば、貸し倒れになるリスクも抑えられる。

事例4.ミュージシャンの自宅ライブを収益化

最後に取り上げる事例は、海外だけに限らず、すでに日本国内においても実績が上がっているものだ。新型コロナが深刻な打撃を与えた分野と言えば、旅行・宿泊や航空、飲食などとともに、ライブイベントが挙げられるだろう。

依然として感染が収束する気配がうかがえず、通常通りの開催は不可能となっているが、実はこうした逆境がむしろ収益性の拡大に結びついている側面もある。

たとえばサザンオールスターズは2020年6月25日に横浜アリーナで無観客ライブをオンラインで配信し、これに18万人がアクセスして6億5000万円の売上を獲得した。コンサートの場合、横浜アリーナのキャパシティは1万7000人程度と目されており、たった1度の開催でその10倍超の売上を達成したのだ。

このように、無観客ライブはキャパシティという縛りから解放される。韓国でもBTS(防弾少年団)が2020年10月10・11日にオンラインライブを開催し、191カ国・地域の計99万3,000人が視聴したという。

もちろん、こうしたバーチャルライブはリアルライブよりも臨場感が劣ってしまう。このため、チケット代(アクセス権)もリアルライブの料金よりも割安に設定せざるをえないが、それでも前述したようなビッグネームなら驚異的な集客が可能なので、むしろ収益性が拡大するケースも出てくる。

会場や機材のレンタル費用、運営スタッフの人件費も一度の負担で済み、無観客なのでリアルライブには不可欠な会場内の警備が不要となる。併せて、eコマースでのグッズ販売も容易だ。

さらにもっとコストを抑えたライブ演奏をオンライン上で配信する“バーチャルライブハウス”を展開している米国企業も存在する。2009年に創業し、ハリウッドに本拠を構えるStageitだ。

同社が運営しているのは、所属ミュージシャンがスタジオや自宅などで行うライブ演奏を有料で配信するプラットフォームである。チケット代や販売数量の設定は、ミュージシャン側の判断に委ねられている。

また、収益の取り分がリアルライブなどと比べて多くなることもミュージシャン側にとって大きなメリットだと言えよう。リアルライブのように何カ月も前から日程を組んで会場を確保するような手間もかからず、告知についてもSNSで手っ取り早く拡散できる。

海外で成功するビジネスの共通点

ここまで4つの事例について紹介してきたが、いずれのビジネスにおいても共通しているのは、インターネット上のプラットフォームを通じて展開されていることだ。端末操作で来店前に手配や決済が完了しているからこそ、curbside pickupは非常に便利だと高い評判を獲得している。

P2P保険にしても、小規模なコミュニティを無数に運営していくうえで、インターネット上のプラットフォームは不可欠だ。「将来のエリート」向けローンではさらにAIも活用して個別の信用ランキングを行っているし、バーチャルライブも典型的なプラットフォームのビジネスモデルである。

グーグルやフェイスブックなどが代表するように、より便利で画期的なサービスを生み出すプラットフォームは、グローバルに受け入れられて飛躍的な成長を遂げる。プラットフォームの覇者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の牽引者であり、次代の主役を務める企業であると言っても過言ではなさそうだ。

文・大西洋平(ジャーナリスト)