教育へのアプローチは、世界各国さまざまだ。日本の教育は総体的に、「学力は高いが子どもの幸福度が低い」と評価されることが多い。

そこで今回は、教育制度の充実性と子どもの幸福度を評価した2つのランキングに基づき、「教育制度が充実しており、かつ子どもの幸福度が高い国」の共通点や、日本の教育制度との違いを比較してみよう。

目次

  1. 教育制度が充実している国ランキングトップ10
  2. 子どもの幸福度の高い国ランキング トップ10
  3. 教育制度と幸福度のバランスがとれているトップ5ヵ国
    1. オランダ:教育制度4位、幸福度1位
    2. デンマーク:教育制度7位、幸福度2位
    3. スイス:義務教育10位、幸福度4位
    4. スウェーデン:義務教育5位、幸福度10位
    5. フランス:義務教育6位、幸福度7位
  4. 日本の子どもの「精神的な幸福度」はワースト2
  5. 「独立心や充実感の育成」がカギ?

教育制度が充実している国ランキングトップ10

教育制度が充実している国ランキングトップ10!日本と海外の教育の違いとは!
(画像= pololia/stock.adobe.com)

米CEO World誌の「世界最高の教育制度ランキング」は、Quality IndexとOpportunity Indexに基づき、93ヵ国の教育制度を総合的に評価したものだ。

教育制度の質を評価するQuality Indexには、公共教育制度・(子どもの)大学進学の意思・研究機関の数・大学の資金と寄付金・専門知識などの9項目、将来性を評価するOpportunity Indexには、成人の識字率や卒業率、小~高校までの修了率、教育機関への公的支出など7項目が含まれる。上位10ヵ国は以下の通りだ。

10位 スイス 9位 ドイツ 8位 カナダ 7位 デンマーク 6位 フランス 5位 スウェーデン 4位 オランダ 3位 オーストラリア 2位 アメリカ 1位 イギリス

子どもの幸福度の高い国ランキング トップ10

一方、ユニセフの「Report Card 16」は、先進国41ヵ国の子どもの幸福度をランキングにしたものである。

精神的幸福度(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率など)・身体的健康(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合など)、学問的および社会的スキル(読解力・数学分野の学力、社会的スキルなど)の3つの主要な評価カテゴリーが設けられている。上位10ヵ国は以下の通りだ。

10位 スウェーデン 9位 スロバキア 8位 ベルギー 7位 フランス 6位 スペイン 5位 フィンランド 4位 スイス 3位 ノルウェー 2位 デンマーク 1位 オランダ

教育制度と幸福度のバランスがとれているトップ5ヵ国

両方のランキングでトップ10入りしたのは、オランダ、デンマーク、スイス、スウェーデン、フランスの欧州5ヵ国である。

この5ヵ国は、日本のように高校や大学に入学してから将来の進路を決めるのではなく、子どもの学力や個性、得意・不得意、興味のある分野などを考慮し、比較的早い段階から大学進学組と職業訓練組に分かれる点が共通する。

その結果、「独立心が強く、自分の進むべき道に満足感をもった子ども」が多く見られるのではないだろうか。

オランダ:教育制度4位、幸福度1位

義務教育は5ヵ国中で最も長く、5~18歳までの13年間。大きく分けて、公立(Openbaar)と独立系特殊学校(Bijzondere)があり、イエナプランやモンテッソーリ、シュタイナー、インターナショナルスクールなど、特定の教育哲学あるいは言語や宗教に基づいた教育方針を掲げる学校は、独立系特殊学校にカテゴライズされる。

公立学校も特色や方針がそれぞれ異なるため、学区制度はなく、子どもの個性に合わせた学校を選べるのが特徴だ。「子どもの個性を尊重する」という理由で、ブリティッシュ・インターナショナルスクールなど一部の学校以外は私服である。

デンマーク:教育制度7位、幸福度2位

義務教育は就学前教育(幼稚園)を含む10年間。ただし通学義務はなく、ホームスクーリングを許可するなど、各家庭や子どものペースに合った教育スタイルが選べる点が特徴だ。義務教育終了後、任意で一年間教育を継続できるシステムがある。

スイス:義務教育10位、幸福度4位

義務教育は10~12年間。初等義務教育から連邦及び26の各州が管轄するため、州によって期間は異なる。多言語国家であることから、フランス語圏ではドイツ語と英語、ドイツ語圏ではフランスと英語の学習をカリキュラムに組み入れている。

スウェーデン:義務教育5位、幸福度10位

義務教育は9年間(7~15歳)。高校進学は義務教育期間の成績、大学進学は高校の成績を基準とするため、いわゆる入学試験がない。数年働いて社会生活を経験してから、大学に進学するケースも多い。

フランス:義務教育6位、幸福度7位

義務教育は10年間。子どもの成長に合わせて「飛び級」と「落第」の制度がある。5年制の小学校卒業後は、4年制の中等教育の前期課程(Collège)に進学。その後、希望者は中等教育後期課程を継続して受けることができるが、進学目的のものと職業的専門知識やスキルを取得する目的のものに分かれる。

日本の子どもの「精神的な幸福度」はワースト2

教育制度ランキングで1位と2位のイギリス・アメリカは、幸福度ランキングではそれぞれ27位、36位と最下位に近い。

またOECD加盟国の子どもの学力を測定する「学習到達度調査(PISA)」では、日本やシンガポールなどアジアの国が上位を占めているが、イギリス・アメリカ同様、幸福度ランキングの順位は低い。つまりランキングを見る限り、教育水準と子どもの幸福度は比例しないということになる。

日本の教育制度ランキングの順位は11位と、トップ10入りにもう少しで手が届くほどの高評価を受けているが、幸福度ランキングは20位と平均をわずかに上回る順位だ。

最も気にかかるのは、身体的健康は世界1位であるにも関わらず、精神的な幸福度は37位とワースト2である点である。15歳の時点で生活への満足度が高い子どもの割合が低く、15~19歳の若者の自殺率は平均より高い。

またスキルも27位と平均以下だ。「基礎学力は高いが、友達がなかなかできない」といったコミュニケーションスキルの低さが、評価を下げる原因となっている。

「独立心や充実感の育成」がカギ?

前述の通り、さまざまな教育関連のランキングや評価項目が存在するため、以上の比較はあくまで参考の一つであることを念頭に置いていただきたい。

日本の教育には、学力の高さはもちろん、協調性・集団生活を大切にする、勉強する姿勢を早くから身につけるといった世界に誇れる点も多数ある。そうした利点を大切にする一方で、子どもの生活への満足度を高め、社会スキルやチャレンジ精神旺盛など、健全な成長を促す上で必須の要素を育むためには、「独立心や充実感の育成」を重視した教育観への移行が求められるのかもしれない。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE