親の収入と子どもの進学率が比例関係にあるのは、さまざまな統計でも確認できる。学費の高い有名私立校に入れるのも海外留学やボーディングスクールに入れるのも、当然それなりのお金が必要だ。富裕層が優位なのは言うまでもないだろう。

これは、「富裕層は子どもの教育に熱心な人が多い」というイメージに直結するのかもしれない。しかし「教育の熱心さ」は、決してお金をかけるだけではない。お金があるから「旅=留学」をさせるのではなく、熱心であるがゆえに「旅=苦労」をさせているケースもある。ここでは、富裕層の子どもに対する教育の実態を見てみよう。

目次

  1. 子ども1人に2,000万円以上も問題なし?!
  2. 有名私立校や海外留学、富裕層の親にとっては当たり前?
  3. 「学費は出すが、生活費は自分で稼げ!」という親も
  4. お金をかけるだけが教育ではない

子ども1人に2,000万円以上も問題なし?!

学習費2,000万円以上も問題なし?富裕層が自分の子どもに与える教育の実態とは
(画像= metamorworks/stock.adobe.com)

子どもの教育費は、進路によって大きな差が出るのが一般的だ。例えば「私立は国公立よりかなり高い」ということは、一般常識として認識している人も多いだろう。

文部科学省の「子供の学習費調査(2018年度)」や「大学初年度学生納付金の調査結果」によると、幼稚園~大学まで全て国公立に通う場合で約783万円、全て私立に進学すれば約2,289万円かかる。

もちろん文系・理系などといった専攻によっても費用は大きく異なってくる。例えば2020年10月に日本政策金融公庫が公表した「令和2年度『教育費負担の実態調査結果』」によると、私立文系と私立理系では、入学費用と在学費用を合わせた費用平均の差が約160万円もあった(高校1年~大学4年の7年間)。

また家庭の経済力と大学進学の間には、明確な相関関係があることも知られている。収入階級別の高等教育進学率を見てもその事実が確認できる。一例として文部科学省の調査結果の一部を紹介しよう。

・年収階級別、高等教育への進学率(三大都市圏)

出典:文部科学省「「家庭の経済状況・社会状況に関する実態把握・分析及び学生等への経済的支援の在り方に関する調査研究報告書(第2章)」
年収 国公立・自宅 国公立・自宅外 私立・自宅 私立・自宅外
662万~812万円 8.9% 15.5% 11.3% 16.0%
825万~1,037万円 11.5% 14.2% 14.8% 20.8%
1,062万円以上 5.6% 15.6% 18.8% 25.6%

年収が上がるにつれて私立への進学率が上がり、年収1,062万円以上の家庭の私立進学率は44.4%。約半数の家庭は私立に行かせていることが分かる。

なお私立は学費も高いが、自宅外から通うとなると家賃や生活費なども別途必要だ。年収が高くなるにつれて私立・自宅外の進学率が増加していることも、進学と経済的なゆとりが密接な関係にあることを示している。

有名私立校や海外留学、富裕層の親にとっては当たり前?

経営者や会社役員などのビジネスパーソンにとって、子どもの教育は「お金がかかるもの」というより「お金をかけるべきもの」と考え、お金を惜しまない人も多いようだ。

親自身がビジネスをしていく上で、語学やグローバルな視点の大切さを実感している場合、子どもを早くから海外に送り出すこともある。特に最近は、自己規律が身につく、相互文化理解や人脈が深められるといったメリットから、寄宿学校(全寮制)の海外ボーディングスクールの人気が高まっている。

ここで海外留学でかかる費用の一例を紹介しよう。世界屈指のボーディングスクールが集まるといわれているスイスでは、学校にもよるが年間費用(食費・寮費含む)は約8万9,000~10万2,600スイスフランとされる。

仮に1スイスフラン=115円として日本円に換算してみると、年間約1,023万~1,180万円という莫大な金額となる。

「学費は出すが、生活費は自分で稼げ!」という親も

中には、子どもの将来を思い可愛いわが子にあえて試練を与えて試す「獅子の子落し」をする親もいる。親の務めとして学費は負担するが、学生生活にかかる生活費は出さない(出せない)親もいるのだ。

低~中所得層の家庭では、子どもは学業に従事しながらアルバイトをして生計を立てることも少なくない。しかし文部科学省の資料を見ると、高所得者の親でも進学後の生活費を子ども自身のアルバイト収入や教育ローンで賄わせている人もいることが分かる。

親の年収1,062万円以上の家庭における自宅外学生のうち、約14.5%は自身のアルバイトや奨学金、教育ローンなどで生計を立てているのだ。

生活費の負担方法(自宅外・1,062万円以上) 負担割合
毎月の収入から 85.5%
日本学生支援機構の奨学金 6.1%
子のアルバイト 5.6%
その他の奨学金、ローン 1.8%
給付奨学金 1.0%

「可愛い子には旅をさせよ」と子どもを海外に送り出し、言葉や文化の違う海外で苦労させるのも子どもの成長にはいいだろう。一方で日本で大学生活を送り、自分で稼いでやりくりする力を身につけさせるのもいい方法だ。

お金をかけるだけが教育ではない

子ども自身に稼がせるのは「将来の経営者教育」の一つでもある。富裕層の中には、子どもに定期的なおこづかいを与えない人も多いという。幼いときから家庭への貢献があったときに、おこづかいを与えている人もいるようだ。

ビジネス感覚は、家庭の中でも親の采配次第で養わせることができる。例えば親が忙しくしている様子を見た子どもが自主的に掃除するなど、家庭の困りごとを見つけて解決策を生み出せるようにする。そうしたときにおこづかいを与えれば、「稼ぐとはどういうことか」を実感できるのではないか。

何でも買い与えずに、欲しいものがあれば「なぜそれが欲しいのか」「それを手に入れることで自分や家族にどんなプラスの効果を期待できるのか」を親に対してプレゼンさせるのもいいだろう。交渉力や相手を納得させる技術を伸ばすことも期待できる。

幼い頃から教養を身につけるために高い教育費を払って習い事をさせることも、決して悪いことではない。しかしお金をかけることだけが教育ではないはずだ。親自身が「いかに仕事し、いかにお金を稼いでいるか」という実態を見せたり身近に最高のお手本がいたりすることを理解させることもよい教育になるのではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部