東京商工リサーチ(TSR)が2020年10月30日に発表した調査から、上場企業の早期・希望退職者募集が過去10ヵ月間で72社と、2019年の2倍に増えていることが明らかになった。募集社数の水準は、世界経済危機直後の2010年と大差がなく、募集者数はそれを上回っている。

早期・希望退職者募集が最多の5社の業績とともに、新型コロナによるリストラの影響について探ってみよう。

目次

  1. 早期・希望退職者の募集が多い企業ランキングトップ5
    1. 5位:シチズン時計(750人)
    2. 4位:ファミリーマート(800人)
    3. 3位:コカ・コーラ ボトラーズジャパン(900人)
    4. 2位:レオパレス21(1,000人)
    5. 1位:日立金属(1,030人)
  2. 上場企業 4割が「コロナがリストラの要因」、本格化するのは2021年?
  3. 非正規労働者の雇用調整も加速

早期・希望退職者の募集が多い企業ランキングトップ5

加速する上場企業のコロナリストラ!希望退職者の募集が多い企業ランキングトップ5
(画像=taka/stock.adobe.com)

以下のランキングは、東京商工リサーチが「会社情報に関する適時開示資料」で公開している10月29日までのデータに基づき、上場企業を対象に作成したものである。

5位:シチズン時計(750人)

2020年3月期の連結決算は、最終損益166億円と7年ぶりの赤字となった。スマートウォッチなど人気上昇に伴い、主力のクオーツ時計や駆動部品の売り上げが低迷していたところに、コロナが追い打ちをかけた。

今後は、生産体制の見直しや、電子商取引の強化に注力する構えだ。

4位:ファミリーマート(800人)

コンビニ大手3社(セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート)の中で、最も苦戦が見られるのがファミリーマートだ。2020年上期の国内営業利益は46%減、2020年3月から8月までの決算は107億円の最終赤字を記録した。事業利益の半減に加え、不採算店を中心に減損損失を422億円計上したことが原因だ。

3位:コカ・コーラ ボトラーズジャパン(900人)

スポーツイベントの中止や自動販売機の利用の減少により、スポーツ飲料やコーヒー、炭酸飲料の売り上げが減少。10月5日に開示した2020年12月期の業績予想によると、連結最終損益は70億円の赤字だが、前期の579億円に比べると縮小する見通しだ。

2位:レオパレス21(1,000人)

2018年に発覚したアパートなどの施工不良問題の影響から、入居者が減少。改修費用がかさみ、6月末の債務超過は118億円、4~6月にわたるグループ全体の最終損益は142億円の赤字となる見込みだ。

9月に入り、米投資ファンド、フォートレス・インベストメントが総額570億円規模の融資・出資を発表したことから、財政の立て直しへの期待が高まっている。

1位:日立金属(1,030人)

コロナの影響で磁石事業、航空機エネルギー事業、自動車部品事業などで減損し、2021年3月期の連結最終損益で、460億円という過去最高の赤字を記録。2020年3月期末までに全従業員のおよそ1割(約3,200人)を削減する意向を示している。

上場企業 4割が「コロナがリストラの要因」、本格化するのは2021年?

対象となった72社のうち、4割に相当する29社が「新型コロナの影響」をリストラの要因に挙げた。9月のデータと比較すると、早期・希望退職者募集は60社、そのうちの3割がコロナを要因に挙げていたことから、その影響が日本のビジネスにも徐々に拡大し始めている様子がうかがえる。

業績不振でリストラが加速している企業は、アパレル・繊維と外食が各6社、電気機器とサービスが各5社、輸送用機器が3社、小売が2社など、外出自粛や消費の落ち込みが業績に深刻な影響を与えた産業が多い。

全体の募集者数は1万4,095人だが、東京商工リサーチのデータは判明しているものだけが対象であるため、実際にはそれを大きく上回っている可能性が考えられる。世界経済危機直後の2010年の募集社数は85社、募集者数1万2,223人だった。

リストラには、好業績でありながら将来のリスクを見据えて人員削減を実施する「黒字リストラ」と、業績悪化に歯止めをかける目的で実施する「不況型リストラ」がある。2019年までの「黒字リストラ」から一転、現在は72社中54社が赤字決算を理由にリストラに踏み切るなど「不況型リストラ」が増加している。

2008年のリーマンショックによるリストララッシュは、その翌年の2009年にピークを迎えた。コロナにも同じ流れが該当する場合、本格的なリストラは2021年以降に始まると予想される。

非正規労働者の雇用調整も加速

総務省が発表した9月の労働力調査によると、就業者数は6ヵ月連続で減少し、前年同月比79万人減の6,689万人。完全失業者は8ヵ月連続で増加し、前年同月比42万人増の210万人だった。「勤め先や事業の都合による離職」を理由に挙げる完全失業者が19万人増えた。

気にかかるのは、正規の職員・従業員数が増加しているのとは対照的に、非正規雇用者数が減少している点だ。正規の職員・従業員数は4ヵ月連続で増加し、前年同月比48万人増の3,529万人に達している。しかし、非正規の職員・従業員数は7ヵ月連続で減少し、前年同月比123万人減の2,079万人となっている。

前年と比較すると、特に製造業や宿泊業・飲食サービス業、農業・林業において非正規の職員・従業員数の減少が目立つ。

全体的な失業率は前月と同率の3%にとどまっているが、雇用調整助成金が年末以降延長されない場合、失業率が急上昇しても不思議ではない状況だ。すでに欧米では、上場企業の大量リストラが始まっている。コロナ禍の行方が不透明な中、経済回復に時間がかかるほど、雇用が冷え込む可能性は否めない。

果たして日本は、「超就職氷河期」の再到来を回避できるのだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部