「ファイアウオール」といえば、パソコンのセキュリティ規制を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかしこの言葉は、銀行と証券会社の間でも使われる。この両者の情報共有を厳しく制限する「ファイアウオール規制」が存在するのだ。そして今、この規制に関する疑問が活発化していることをご存じだろうか。

目次

  1. そもそもファイアウオール規制とは?
  2. ファイアウオール規制、海外顧客を対象に緩和へ
  3. 「資本市場の健全な発展を考える会」の資料から
  4. 私達に全く無縁であるものではないファイアウオール規制

そもそもファイアウオール規制とは?

銀行と証券の業務を隔てる「銀証の壁」どうなるファイアウオール規制
(画像=oka/stock.adobe.com)

銀行と証券会社の間におけるファイアウオール規制(FW規制)とは、この両者の間で設けられている「情報の障壁」を意味する。1993年に施行された「金融制度改革法」の際に導入された規制で、「銀証の壁」などと呼ばれることもある。同じグループ内の銀行と証券会社であっても、顧客が同意していない状況で情報を共有することは許されていない。

この規制は、銀行と証券会社が相互に参入することが可能になったことで導入された。銀行は「貸し手」であり、証券会社よりも強い立場だ。そのため、証券会社の経営の健全性の確保や利益相反の防止などを目的に規制が存在している。

ちなみにこのファイアウオール規制は日本独自のもので、アメリカやドイツなどには同様の規制は存在していない。

ファイアウオール規制、海外顧客を対象に緩和へ

このファイアウオール規制については段階的に緩和され、さらなる緩和に関する議論もこれまで度々あった。そして今、具体的にもう一歩踏み込んだ緩和が行われようとしている。金融庁が2020年10月下旬に開いた「金融審議会市場制度ワーキング・グループ」では、さらなる緩和の方向で大筋の一致をみる結果となった。

具体的には、海外の顧客に対してファイアウオール規制を緩めるという内容だ。前述のとおり、アメリカやドイツなどでは日本のファイアウオール規制のようなルールが存在せず、このような状況下では日本の金融機関が海外の金融機関との競争で不利になっていることが理由の1つとして挙げられている。

ただ日本国内の顧客に関するファイアウオール規制の緩和は、まだ前進の兆しがない。報道などによれば、銀行側は緩和に賛成だが、証券会社側が緩和に反対の姿勢をとっているようだ。

ちなみにファイアウオール規制の緩和については、日本政府が2020年7月に発表した「成長戦略フォローアップ」でも触れられている。具体的には、以下のような文章が明記されている。

「外国法人顧客に関する情報の銀証ファイアーウォール規制の対象からの除外等について検討する。なお、国内顧客を含めたファイアーウォール規制の必要性についても公正な競争環境に留意しつつ検討する」

「資本市場の健全な発展を考える会」の資料から

このファイアウオール規制については、野村証券などで構成される「資本市場の健全な発展を考える会」が作成した資料が金融庁のウェブサイトで公開されており、規制についての考え方について知る上で参考になる。

▼ファイアーウオール規制について https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-system/siryou/20201026/06.pdf

まずこの資料では、ファイアウオール規制についての議論の主語を「顧客」にするべきだと指摘している。その上で、現在のように情報共有に関して「顧客の意思を確認するプロセスを確保すること」について、「極めて重要である」と述べている。

さらには、「『顧客』が望んでいない場合にまで情報共有を認めることは適当ではない」とも明言しており、特に個人については「知らないところで自分の情報が共有されることについて、特に抵抗感が強い」「個人情報保護強化の流れも進む中で、個人に係るファイアウオール規制を緩める環境にはない」と分析している。

またファイアウオール規制が日本独自のルールであることについては、「資本市場が発達したアメリカは日本とは環境が全く異なり、ファイアウオール規制だけをみて議論することが適当といえない」と指摘し、日本独自のルールだからといって安易にファイアウオール規制を撤廃するという考え方には警鐘を鳴らしている。

アメリカでは重い罰則や厳格な監督体制を敷いていることにより、利益相反や優越的地位の乱用を抑止しているという。

私達に全く無縁であるものではないファイアウオール規制

銀行と証券会社の情報共有に関するルールは、金融業界で働いていない人であればほとんどが知らないことかもしれない。ただ、大部分の人が預貯金や投資などで銀行や証券会社に口座があるだろう。そのため、ファイアウオール規制が私達に全く無縁であるものともいえない。

最近は人気ドラマ「半沢直樹」で銀行側と証券会社側の対立が描かれたこともあり、銀証の壁に対する注目度は、一般でもにわかに高まりつつある。ファイアウオール規制の緩和に関する議論はこれからも続いていくだろう。どのような方向性で話が進んでいくのか、今後も注目していきたいところだ。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部