上場しているJR4社の決算が軒並み厳しい状況だ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で通勤や通学、観光、ビジネスでの利用が減っていることなどが要因となっている。リモートワークやオンライン授業がコロナ収束後も一定程度定着する可能性もあり、鉄道業界は採算が厳しくなる一方なのだろうか。

目次

  1. 新型コロナでJR上場4社の業績に大ダメージ
  2. 「生活行動と交通に関するアンケート」の結果
    1. コロナ収束後の外出頻度は?
    2. コロナ収束後の在宅勤務の状況は?
  3. コロナ禍の収入減で運賃の値上げを検討も

新型コロナでJR上場4社の業績に大ダメージ

鉄道業界はお先真っ暗?コロナがきっかけで需要に変化の兆し
(画像=funny face/stock.adobe.com)

JRの上場4社の2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4〜9月)が出揃った。いずれも大赤字を計上している。第1四半期の連結業績(2020年4〜6月)も4社揃って赤字という結果となっており、こうした苦境から抜け出せていない状況が浮き彫りになった。

具体的には、JR東日本は最終損益が2,643億7,900万円の赤字、JR東海が1,135億6,600万円の赤字、JR西日本が1,281億1,500万円の赤字、JR九州が102億4,800万円の赤字となっている。

4社とも前年同期は黒字を計上しており、今回の赤字計上は売上高の大幅な減少が要因となっている。JR東日本の売上高は前年同期比48.2%減の7,872億9,700万円、JR東海は同64.6%減の3,378億8,800万円、JR西日本は同48.8%減の3,899億7,100万円、JR九州は同41.5%減の1,245億5,200万円までそれぞれ下がった。

ちなみにJR各社はホテル業なども展開しているが、上場していないJR北海道とJR四国を含め、宿泊需要の低下からホテル業のセグメント業績も悪化傾向にあるようだ。

「生活行動と交通に関するアンケート」の結果

売上高の低下は、新型コロナウイルス感染症の影響で移動需要が低下したことが主な要因だ。通学・通勤に加え、観光での利用が減り、ビジネス出張も抑制されている。こうしたことがJR各社の業績に大ダメージを与えているといえるだろう。

需要回復に向けて新たな企画切符の販売やMaaS(Mobility as a Service)アプリなどを展開しているが、低下した需要を前年水準まで戻すことはできていない状況だ。それだけコロナ禍のインパクトは大きい。

では新型コロナウイルス感染症が収束すれば、JR各社の売上高はビフォーコロナの水準まで戻るのだろうか。東急電鉄が2020年9月に公表した「生活行動と交通に関するアンケート」の結果から、そのヒントを探ってみる。この調査結果からはコロナ収束後の人々の行動を予測できる。

コロナ収束後の外出頻度は?

このアンケートでは東急線アプリの利用者から得た回答を分析しており、まず、「コロナ禍以前」「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」と比べ、「コロナ収束後(見通し)」(ワクチン・治療薬等開発後)では外出頻度がどう変化するかを予想している。

コロナ禍以前:週5.0回 緊急事態宣言下:週2.1回 コロナ収束後(見通し):週4.2回

この結果から、コロナが収束しても外出頻度は完全には戻らないと予想できる。もちろん時間が経つにつれてビフォーコロナの水準まで徐々に戻っていくことも考えられるが、少なくともしばらくは完全にはコロナ禍以前の水準までは戻らなそうだ。

コロナ収束後の在宅勤務の状況は?

アンケートでは、在宅勤務の実施頻度の変化についても分析している。回答を分析した結果、「週0日、していない」という人と「週2日程度」という人の割合は、「2019年中の平均」「緊急事態宣言下」「コロナ収束後(見通し)」でそれぞれ以下のようになっている。

<「週0日、していない」という人の割合> 2019年中の平均:81% 緊急事態宣言下:31% コロナ収束後(見通し):50%

<「週2日程度」という人の割合> 2019年中の平均:2% 緊急事態宣言下:8% コロナ収束後(見通し):10%

つまり、在宅勤務の実施頻度はコロナ禍が収束してもビフォーコロナよりは増えるという予想だ。このことが現実に起きると、鉄道各社にとっては痛手となる。通勤で鉄道が利用される機会が減るからだ。

コロナ禍の収入減で運賃の値上げを検討も

鉄道の利用者が減った場合、JR各社はどのように採算性を高めていけば良いのだろうか。運賃の値上げや不採算路線の廃止、事業の多角化などで鉄道部門とは別セグメントでの利益を高めていく手法などが考えられる。

実際、JR四国などはコロナ禍の収入減で運賃の値上げを検討している。ただ運賃の値上げは「諸刃の剣」だ。現在のJR利用者からは反感を持たれる可能性があり、鉄道離れにつながることも想定される。経営陣は難しい舵取りを迫られるだろう。

ただいずれにしても、一刻も早くコロナ禍が収束することがJR各社の業績回復につながることは確かだ。最近では米ファイザーのワクチン開発に関する明るいニュースなどもあり、収束時期の早期化に対する期待感も高まっている。

まずは次のJR上場4社の第3四半期決算の発表に注目したい。発表は2021年1月下旬の予定だ。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部