役員報酬は、税法上で様々な制限がかけられている。一定の条件をクリアしなければ損金として算入できないため、納税額が大きくなり、経営に悪影響を及ぼすこともある。今回は、役員報酬を取り上げ、それにかかわる税金と具体的な節税方法について解説する。

役員と従業員とは?

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役員報酬は節税できる?具体的な方法について詳しく解説!
(画像=MIND AND I/stock.adobe.com)

そもそも、税法上における「役員」と「従業員」の違いとは一体何であろうか。具体的に解説する。

税法上での役員

税法上における役員とは、主に以下の役職者のことを指す。

・法人の取締役 会社の意思決定や業務執行を行う役割をもつ人々。会社では必ず一人以上の取締役を選任することが必須。取締役会を設置している場合は、最低三名の取締役が必要となる。

経営に関する重要事項を決定する立場とされ、株主総会の決議がなければ選任できない。任期も会社法により原則2年間と定められている。しかし、場合によっては定款によって10年以下の任期にすることも可能。

・執行役 取締役に似ているが、取締役会で決定された業務を執行する人物を指す。会社の意思決定の権限は持たない。取締役に「意思決定および監督」を、「業務執行」を執行役に任せることで、取締役が経営に専念できるようにすることを目的として設置された役職ともいえる。執行役員は会社法や商業登記法で定められているものではないため、会社内の役職となる。

・会計参与 会計の専門家が選任される役職であり、税理士(税理士法人)や公認会計士(監査法人)が就任し、会計書類の作成などを行う。

・監査役 取締役の業務執行や会計を監査する役割をもつ。

・理事 理事会に出席して業務執行の意思決定に参加し、他の理事の職務執行の監査をする。

・監事及び清算人 法人の財産や理事の業務執行の状況を監査する機関。庶務を司る役割。

それ以外に、法人の使用人以外で法人の経営に従事している者や、同族会社の使用人のうち一定の条件を満たした法人の経営に従事している者が該当する。

税法上の役員は、「経営に従事している」という点がポイントだ。注意してほしいのは、使用人としての職務を有する職員、すなわち「使用人としての職制上の地位を有しており、常時使用人としての職務に従事している」場合には、税法上の役員に該当しない。この場合は従業員として扱われる。

税法上での従業員

一方で、税法上における従業員とは、上記で説明した役員以外の者をいい、会社との間に雇用関係がある者を指す。すなわち、税法上での従業員は、「会社との間の雇用関係がある」という点が特徴といえる。

役員と従業員の違い

役員と従業員の違いは、上記でそれぞれのポイントとして挙げたが、「会社の経営者」ないし「経営の立場」として業務を遂行する者と、「会社との雇用関係の下」で業務を遂行する者という点にある。

報酬と給与はどう違う?

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報酬とは、役員報酬のことを指し、役員に対して支給される給与のことである。これは、金銭だけでなく経済的利益の供与も含まれる。また、給与とは、従業員の労働に対して支払われる対価の総称である。

役員報酬と従業員給与では、各種税法によって取り扱いが異なる。ここではその中でも一般的な所得税と法人税に着目して、それぞれにおける相違点について解説していく。

両者における税務上の違い

まずは、所得税法上における取り扱いについて見ていこう。役員報酬は、所得税法上給与所得に該当し、これは従業員給与と同じ取り扱いとなる。そのため、給与所得に該当する両者は所得税法上の計算の下で源泉徴収の対象となる。

これに対して、法人税法上における取り扱いは上記とは異なる。法人税法上、従業員給与は損金に算入される。つまり、法人税法上における費用として、条件なしに処理することが可能なのだ。その一方で、役員報酬については法人税法上において一定の条件を満たさないと損金に算入されない。

法人税法上において、損金算入することができる役員報酬には、以下の3種類がある。

・定期同額給与 ・事前確定届出給与 ・業績連動給与

定期同額給与とは、株主総会で決定された役員報酬について毎月一定額で役員に支給する方法である。2つ目の事前確定届出給与とは、事前に支払いの時期と支払い金額について税務署に届け出を行い、届け出た金額を届け出た時期に役員に支給する方法を指す。3つ目の業績連動給与とは、国内の法人(同族会社を除く)が事業年度の利益に関する指標(例えば売上5億円達成、営業利益30%増加など)といった基準をもとに支給する方法だ。これには一定の条件を満たしている必要がある。

具体的には有価証券報告書に記載されるもので、利益の状況を示す指標及び利益の確定後1ヵ月以内に支払われたこと、または支払われる見込みであることが求められる。これらの3つのうちいずれかに該当する場合の役員報酬は、法人税法上において損金算入処理することが認められている。

役員報酬の相場はいくら?

それでは、役員報酬は具体的にいくら程度が相場なのだろうか。これは、あくまで参考値ではあるが、「平成30年度分民間給与の実態調査結果」によると資本金別で企業規模を分けた際、男女別役員の平均給与は下記のようになっている。

役員の企業規模別の平均給与額

(※国税庁長官官房企画課「平成30年度民間給与実態統計調査結果」より筆者作成)
2,000万円未満 2,000万円以上 5,000万円以上 1億円以上 10億円以上
男性 694万2,000円 954万8,000円 1,215万円 1,466万6,000円 1,583万4,000円
女性 393万7,000円 481万3,000円 518万円 724万4,000円 1,039万7,000円

本データを見ても明らかだが、役員でも男性と女性の給与の差がかなりあることがわかる。本調査における日本全体の平均給与は441万円。男性で545万円、女性で293万円となっているため、資本金2,000万円未満の企業であっても役員であれば、給与はやや高額になることが伺える。

自身の会社における役員への給与と比較し、高額になりすぎていないかは確認したい。

役員報酬は節税できる?5つの具体例を紹介

ここでは、所得税法上の観点から役員報酬に関する節税について具体例を挙げて説明していく。役員報酬は上記でも説明したが、所得税法上給与所得に区分されることを理解していただきたい。

1.寄付金控除

節税対策をする上で、一番身近で恩恵を受けるものはこの寄付金控除であろう。特にここで挙げるのは「ふるさと納税」である。ふるさと納税とは、各都道府県の市町村に寄付をすることで返礼品を受け取ることができる制度である。ふるさと納税を行うことで寄付金控除を受け、所得税が減額されると同時に返礼品ももらえるということで、積極的に利用している人も少なくない。

ただし、ふるさと納税を行う上で注意しなければならない点が2つある。1つ目は、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」だ。寄付金控除を受ける際には、確定申告を行い、寄付金証明を添付して税務署に申告しなければならない。しかし、この制度を適用すればこういった確定申告を省略することができる。その一方で、この制度を利用するためには、ふるさと納税先の自治体が5団体以内であること、またふるさと納税先の自治体にこの制度を適用するための申請書を提出する必要がある。

申請書については、一般的に寄付金証明書と同封して送付されるものであることから、それほど手間ではない。しかしながら、複数のふるさと納税先を決め、返礼品を収受したい場合には注意が必要である。5団体を超えてしまうと、この制度が適用できなくなるためだ。

2つ目は、寄付金控除の対象金額は年収をもとに算出されているという点だ。寄付金控除の対象を超えてふるさと納税を行うと損してしまうため、注意しよう。

2.保険料控除

保険料控除も節税の方法として一般的だ。生命保険料や介護保険料、個人年金保険料がその対象となる。生命保険料控除については全額が控除されるわけでなく、計算式に基づいて一定額を限度として控除される。

3.住宅ローン控除

住宅ローン控除も節税対策となる。これは一定の条件を満たした場合において適用が受けることができるものだ。住宅ローン控除の適用を受ける際、初年度は確定申告を行って必要書類を確定申告書に合わせて提出しなければならない。2年目以降は税務署より、住宅ローン控除の適用を受ける申請書が送付されるため、勤務先の年末調整時に提出してもらえれば特段追加的な対応は不要だ。

この住宅ローン控除は、控除金額も大きいため住宅購入を検討している場合は、適用できるかどうかについても検討材料に含めておくとよいだろう。

4.個人型確定拠出年金

個人型確定拠出年金(別名iDeCo)は、自身で組成する年金制度である。加入者は毎月一定額を積み立て、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品に運用を回す。そして、60歳以降に運用額を年金または一時金として受け取ることができる。

この制度には、3つのメリットがある。1つ目は、積み立てた金額はすべて所得控除の対象として、所得税の減税が可能であることだ。2つ目は、運用したことによって得た利益や利息については非課税となるため税金が課せられない点である。3つ目は、年金または一時金として受け取った際には、公的年金等控除または退職所得控除の対象となることが挙げられる。

この制度における月々の積立金額については、職業によって上限金額が定められていることに留意してほしい。またiDeCoの運用先は金融機関によって様々であり、口座管理手数料や運用できる金融商品の種類が異なるため、実際に行う際には各金融機関を比較して自分に合うものを検討することをおすすめする。

役員報酬も節税できる!

ここまで、役員報酬とはどういうものかを理解した上で、税法上の取り扱いについて解説してきた。役員報酬と従業員給与とでは法人税法上の取り扱いは異なるのに対して所得税法の取り扱いは同じであることは重要なポイントだ。

また、節税方法については、寄付金控除に該当するふるさと納税と個人型確定拠出年金がおすすめである。留意点を踏まえつつ利用を検討するとよいだろう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部