個人事業主や企業に対し発行される法人カードは、利用することで付帯サービスやポイント還元などさまざまな特典を得ることができる。本記事では、法人カードの基礎知識とこれから法人カードを作ろうと思っている方へカードの選び方についても解説する。
目次
法人カードとはどんなカード?

法人カードとは、個人事業主や企業に対して発行されるクレジットカードのことであり、以下のように分類される。
・ビジネスカード:企業規模が20名以下の中小企業や個人事業主 ・コーポレートカード:20名を超える大企業
カード会社によって呼び方が異なる場合もあるが、法人カードは企業規模によって種類が分かれている。ビジネスカードとコーポレートカードは、会社の規模で名称が変わっていることがほとんどあり、コーポレートカードは引き落とし口座を法人口座だけではなく、個人口座に設定することが可能だ。
法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人カードにはどのような違いがあるのだろうか。大きく分けると、以下の4つ違いが挙げられる。
・利用限度額 ・引き落とし口座 ・年会費 ・ビジネス向けサービスの付帯
利用限度額
法人カードは個人カードと比べて利用限度額が大きい傾向にある。個人カードの場合、毎月限度額を気にして精算する必要があるが、法人カードの場合はその心配がない。
ただし、契約直後だと数十万程度の限度額からスタートする法人カードも多い。返済履歴(クレジットヒストリー)を繰り返すことで信用度があがり、限度額が引き上げられるケースがほとんどだ。
引き落とし口座
法人カードの名義は法人に属する個人名が基本だが、引き落とし口座は法人名義の銀行口座になる。ただし、法人カードの種類によっては法人口座ではなく個人名義の銀行口座を引き落とし口座に設定することも可能だ。
企業の社長や役員はもちろん、社員が日々の経費に法人カードを利用することは多いだろう。引き落とし口座をまとめることができるのは、日々の経費精算などの業務を削減することにもつながり、法人カードのメリットの一つといえる。
年会費
「個人カードは年会費が無料で、法人カードは年会費がかかる」という印象を持っている方も多いだろう。実際、法人カードは年会費が有料のものが多いが無料で利用できるカードも存在する。単にクレジットカード機能だけを使うのであれば、年会費が無料のものを選ぶのも良いだろう。
しかしながら、無料と有料では付帯サービスやポイント還元などの特典の差が大きい。そのため、会社で経費の支払いなどを目的に利用することを考えると、年会費が有料の法人カードで決済する方がお得になるケースもある。
ビジネス向けサービスが付帯されている
多くの法人カードにはビジネス向けの付帯サービスがある。付帯サービスは、法人カードを持っていることで受けられるサービスのことであり、ポイント還元やマイレージサービスもこの付帯サービスに含まれる。
また、出張が多いビジネスマンを対象に、国内・海外の旅行傷害保険などの付帯サービスがついている場合もあり、個人カードと比較すると限度額が高い傾向がある。
【企業の規模別】法人カードを作るメリット
法人カードは個人事業主または、企業を対象に発行されるクレジットカードのことを指すが、企業の規模によって法人カードを作成するメリットはさまざまだ。ここでは、3つの企業規模を例にそれぞれのメリットについて解説する。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、法人カードのメリットは「公私の区別をつけることができる」点だ。プライベートでの買い物はもちろん、仕事で必要な買い物やちょっとした接待費までさまざまなケースでクレジットカードを利用することができる。
一方、個人カードの場合はクレジットカード利用の区別が難しく、経費の状況を把握しにくい。その点法人カードは、お金の流れが明確になりキャッシュフローの計算を簡素化できるメリットがある。
中小企業の場合
先に述べた従業員数20名以下の中小企業でも、法人カードを利用するメリットがある。
それは、経理業務の簡素化だ。企業となると複数人の従業員が在籍しており、出張費や宿泊費などを現金で仮払いして、領収書とともに事後精算するケースも多いだろう。この場合、領収書の発行ミスや紛失が生じることもある。また、誰がいついくら利用したのかを別途まとめる必要があるため、経理担当者への負担が大きくなる。
その点、法人カードでは明細に誰がいついくら利用したのか明確になるため、経費業務の手間を削減することができる。また、法人カードによっては会計ソフトと連携することができる法人カードも存在するため、効率的な経理業務を実現させたい場合は利用するのも一つの手だ。
大企業の場合
従業員数20名以上の大企業向けの法人カード(コーポレートカード)では、中小企業と同様に経理業務の簡素化ができるメリットがある。
また、法人カードで従業員の福利厚生を充実させることも可能だ。国内外の空港ラウンジの利用はもちろん、カードによってはコンシェルジュサービスやレストランでの優待などが特典として用意しているものもある。こういった付帯サービスは、従業員のモチベーションを上げるという点でも有用だ。
法人カードの選び方
ここからは、法人カードを申し込もうと考えている個人事業主や企業代表に向けて、どんなポイントを押さえておくべきか、そのポイントについて解説する。
利用限度額を考慮する
法人カードを選ぶ際は、まず利用限度額を確認しよう。法人カードは会社のさまざまな経費の支払いを行うため、個人カードと比較して利用額も桁違いになる可能性が高い。
利用限度額を気にせず法人カードを申し込んでしまうと、後々利用限度額が大きい法人カードを申し込めばよかったと後悔する可能性があるため注意が必要だ。
また、申し込み前に毎月の利用金額のシミュレーションを行い、どの程度の利用限度額が必要なのかを把握しておこう。
会社の経費精算システムと連携可能かどうか
法人カードを利用するメリットの一つに、経理業務の簡素化がある。これは経費申請時のミスや不正を減らすことにつながる。ただし、そのためには企業や個人事業主が日々利用している経費精算システムが法人カードと連携していることが条件だ。
経費精算システムによっては提携しているカード数が少なく、持っている法人カードと連携できないといったことが起きる可能性もある。法人カードを持つメリットを最大限受ける場合はこのポイントを押さえておく必要があるだろう。
付帯サービスが自社の事業に合っているか
法人カードの多くは独自の付帯サービスを用意していることが多い。しかしながら、自分の会社で利用することが少ないと感じるサービスがついていることもあるだろう。これでは、高い年会費を支払って作った法人カードのメリットを最大限受けることは難しい。
たとえば、出張もほとんどなく空港を利用しない企業にとって、空港ラウンジを利用する機会は少ないだろう。付帯サービスは魅力的なものが多いが、利用するシーンが自社にあるのかどうかを見極めることも重要なポイントだ。
年会費
法人カードの多くは年会費が発生する。もちろん無料の法人カードもあるが、付帯サービスや限度額、後述する追加カードの有無などによってサービスに大きな違いがあることは否めない。
法人カードの中には年会費が10万円を超えるカードもあるため、負担になるのかどうか見極める必要がある。年会費は経費として計上できるものの、本当に高い年会費を支払って法人カードを作るべきかじっくり検討することをおすすめする。
追加カードの発行枚数
法人カードの多くは、追加カードの発行が可能だ。追加カードは社員に持たせることができ、付帯するサービスを利用することができる。
法人カードを選ぶ際は、追加カードの発行ができるか・発行枚数は何枚か・追加でお金はかかるのか・追加カードで利用できる付帯サービスの制限などについても検討する必要がある。
審査基準について
法人カードの審査基準は明かされていない。ただし、個人カードに比べて決済額が大きくなる法人カードは、個人カードと比べて審査基準が高いと想定される。これはあくまでも想定であるが、法人としての審査と個人としての審査の2つがあるケースも多いため、まずは自身の信用を高めることや経営状況の見直しなどをしっかり行うことが大切だ。
法人カードのよくある疑問
ここからは法人カードの利用で疑問に思うポイントについて解説する。
年会費は経費になるか、また法人カードで支払った場合領収書は不要か?
法人カードの年会費は経費計上ができる。計上する勘定科目は、諸会費もしくは支払手数料となる。どちらで経費計上しても良いが、一度決めた勘定科目で翌年以降も処理しなければならない決まりがあるため、注意が必要だ。
また、法人カードにおいて、カード決済は「信用取引」と見なされる。そのため、法人カードでの支払いには領収書は不要である。
法人カードの名義は会社名か個人名か、サインはどうすれば良いか?
法人カードは企業に対して発行されるものではなく、あくまでも企業に属する個人に対して発行される。そのため、名義には個人名を使用する。ただし、支払い口座の名義は法人名義になるため、注意しよう。
また、使用する際の署名は名義と同様に個人名でサインする。
法人カードは用途に合わせて検討を
法人カードにはさまざまなメリットがある。個人カードとは異なり、取り扱う金額も大きくなる傾向があるため、「気がついたらポイントがたまっていて得をした」ということもあるだろう。
また、経営の面でも経理の業務負荷を減らす可能性を秘めている。自社で利用しているシステムとつなげることで、人材採用を最小限にし、法人カードが経理スタッフとなるケースもあるかもしれない。
法人カードを選ぶ際は、付帯サービスや年会費などを確認した上で、用途に合った法人カードを選ぶことが大切だ。
文・鴨志田 大輔(ファイナンシャルプランナー)