中小企業にとって、法人税や消費税などの税負担は非常に大きい。ただでさえ事業で利益を得るのが難しくなっているにも関わらず、税金による多額の支出が発生してしまう。

そこで国では、中小企業政策の一環として中小企業の税負担を軽減する制度をいくつか用意している。今回の記事では、税金面にフォーカスして企業経営に役立つ中小企業政策を解説するので参考にしていただければと思う。

目次

  1. 国の中小企業政策の概要
  2. 中小企業の定義
    1. 中小企業基本法における中小企業の定義
    2. 税法上の中小企業の定義
  3. 中小法人に対する税制
    1. 法人税率の軽減
    2. 交際費課税の特例
    3. 中小企業経営強化税制
    4. 中小企業投資促進税制
    5. 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
    6. 少額減価償却資産の特例
    7. 事業承継税制
    8. 中小企業技術基盤強化税制
  4. 中小企業政策を把握し効率的な企業経営を

国の中小企業政策の概要

法人税の特例も!企業経営に必須となる中小企業政策を解説
(画像=Monet/stock.adobe.com)

中小企業政策とは、中小企業の多様で活力ある成長・発展を支援する目的で、国が行っている施策の総称である。

具体的には、能力がある中小企業の廃業を防ぐための融資や、M&Aなども含めた事業再生支援、新事業展開の支援などを行っている。その中でも、中小企業の経営に大きく関わるのが「税制面での支援」だ。

中小企業政策には、中小企業の事業運営を円滑にするための税制が多く用意されている。少しでも企業経営の負担を軽減するためには、中小企業政策の一環として行われている税制を有効活用する必要がある。

中小企業の定義

ところで、中小企業政策の支援対象となる「中小企業」とは、具体的にどのような企業を指すのだろうか? 中小企業の定義は、中小企業基本法と税法で異なる。どの法律に基づいた税制かによって、適用対象となる中小企業は異なるため、違いを明確にしておこう。

中小企業基本法における中小企業の定義

中小企業政策の理念や方向性を定めた中小企業基本法では、中小企業の定義を下記表のように定めている。

業種 下記いずれかの条件を満たすと中小企業に該当
資本金または出資の総額 常時使用する従業員の数
下記業種以外(製造、建設等) 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下

例えば、建設業で、資本金が5億円、常時使用の従業員が100人の場合は、従業員数の条件に該当するため、中小企業に該当する。一方で小売業で資本金が1億円、常時使用の従業員が70人の場合はいずれの条件にも該当しないため、中小企業に該当しない。

このように中小企業基本法では、「業種」と「資本金(出資)」、「従業員数」の3つの項目で中小企業かどうかを判断する。

税法上の中小企業の定義

中小企業基本法の定義が複雑である一方で、法人税法の定義は非常に簡潔だ。

法人税法では、資本金が1億円以下であれば中小企業と定義している。中小企業基本法とは違い、常時雇用の従業員数や業種は関係ない。

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中小法人に対する税制

この章では、中小企業政策の一環として行われている代表的な税制を8種類紹介する。それぞれ利用条件や得られるメリットが異なるため、ご自身の企業に最適な税制を見つけていただきたい。

法人税率の軽減

はじめに紹介するのは法人税率の軽減である。こちらの中小企業施策は、法人税法上の定義に該当するすべての「中小企業」に適用される。

本来法人税率は、所得金額のうち23.2%に設定されている。だが、法人税法における中小企業の場合は、年間800万円以下の所得金額に対する税率が19%となっている。つまり年間800万円までの所得について、中小企業は軽減税率が適用できるわけだ。

例えば年間所得が1,000万円だとしよう。中小企業でない場合は、1,000万円×23.2=232万円が法人税として課税される。一方で中小企業の場合は、800万円までの所得については19%、残りの200万円については23.2%の法人税率が適用される。法人税率は以下の計算で求まる。

800万円×19% + 200万円 ×23.2% = 198.4万円

つまり軽減税率が適用されることで、33.6万円も法人税を節税できるわけだ。

特に現在は、平成31年度の税制改正により、軽減部分の税率が19%から15%とさらに低くなっている。2021年3月末までの特例となっているが、今後さらに延長される可能性もある。

交際費課税の特例

法人税法による中小企業の定義に該当していれば、交際費の課税面でもメリットを得られる。

交際費とは、得意先や仕入先などに対する接待や贈答のために支出する費用である。大企業の場合は、交際費のうち接待飲食費の50%までしか損金に算入できない。一方で中小企業の場合は、「年間で800万円までの交際費」または「接待飲食費の50%分」のいずれかを損金に算入することが認められる。

つまり制度をうまく活用すれば、経費として計上できる金額を大企業よりも増やすことができ、法人税の節税につながるわけだ。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制とは、税法で定義された中小企業について、経営力の向上に資する特定の設備を取得、活用した場合に、特別償却または税額控除を認める制度である。

特別償却とは、減価償却費とは別に追加で経費を計上できる制度である。具体的には、取得価額の全額を、設備を取得した事業年度の経費として計上可能だ。一方で税額控除とは、法人税について、その一部を控除できる制度である。具体的には、取得価額の7%(資本金が3千万円以下ならば10%)を税金から控除できる。

つまり生産性の向上や利益率の向上に役立つ資産を購入した際に、中小企業経営強化税制を活用すれば、法人税の納税額を減らすことができるわけだ。

ただし制度を活用するには、「中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けること」や、「生産性または収益性を一定以上向上させる設備を取得すること」などの条件を満たす必要がある。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制とは、税法の定義よる中小企業が一定の設備投資を実施した場合に、取得価額の30%を特別償却、または7%の税額を控除(資本金3,000万円以下の中小企業のみ)できる制度である。

中小企業経営強化税制と同様に、税制を活用することで法人税の納税額を減らすことができる。ただし制度を適用するには、取得する設備について下記いずれかの条件を満たす必要がある。

機械および装置(1台160万円以上)
測定工具および検査工具(1台120万円以上)
貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
内航船舶(取得価額の75%のみが対象)
ソフトウェア(1個70万円以上)
(参考:中小企業投資促進税制 中小企業庁

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

こちらの中小企業政策は、商業やサービス業、農林水産業を営む中小企業(税法の定義に基づく)について、経営改善に資する建物附属設備や器具・備品を取得した際に、取得価額の30%を特別償却、または7%の税額を控除(資本金3,000万円以下の中小企業のみ)可能な制度である。

経営強化税制や投資促進税制と同様に、特別償却や税額控除により法人税をカットできる効果が得られる。ただし制度を活用するには、商工会議所などの経営改善指導を行う機関から、経営改善に効果がある資産であると書類に記載してもらう必要がある。

また、取得する資産に関しては、建物附属設備ならば60万円以上のもの、器具および備品ならば30万円以上のものである必要がある。加えて、経営改善設備への投資を含む経営改善により、売上高もしくは営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みである旨を、アドバイス機関から確認を受けることも条件となっている。 (参考:商業・サービス業・農林水産業活性化税制 中小企業庁

少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、法人税法の定義に基づく中小企業が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、取得時に全額を損金算入できる制度である。

本来は10万円以上の減価償却資産を購入した場合は、その購入額を数年に分けて費用計上する必要がある。一方で、この制度を活用すれば一年で全額を損金算入できるため、大きな節税効果を見込める。

ただし、年間で総額300万円までしか当制度を活用できない点や、確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付する必要がある点など、いくつか満たすべき条件もあるので注意だ。

事業承継税制

事業承継税制とは、会社の経営権を後継者に承継する際に、相続税や贈与税の納税猶予や免除の措置を受けることができる制度だ。事業承継では、事業用資産や株式などの引き継ぎにより、後継者が相続税や贈与税の負担を被る。事業承継税制を活用すれば、納税を猶予・免除してもらえるため、負担を大幅に軽くした上で事業承継を果たせる。

事業承継税制で猶予を受けるには、主に「会社の条件」、「人の条件」などの条件をクリアしなくてはいけない。会社の条件では、中小企業(基本法の定義)に該当すること等が条件となる。人の条件では、50%超の議決権株式を先代経営者および後継者が持っていること等が条件となる。

なお事業承継税制を活用した後継者が死亡した場合などは、猶予されていた相続税や贈与税が免除となる。

参考:法人版事業承継税制 国税庁

中小企業技術基盤強化税制

最後に紹介する中小企業政策は、技術開発に取り組む中小企業に役立つ「中小企業技術基盤強化税制」である。

こちらの中小企業政策は、損金の額に算入される試験研究費を持つ中小企業(法人税法が基準) が、その試験研究費に一定割合を乗じて計算した金額を、その事業年度の法人税額から控除できる制度だ。

控除可能な金額は、事業年度の損金に算入される試験研究費の12%である。ただし、その事業年度の法人税額の25%を超える場合は、25%までの金額が限度となる。

こちらも企業経営に役立つ中小企業政策だが、活用するには控除対象となる試験研究費の額と控除を受ける金額を確定申告書等に記載した上で、金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要がある。

参考:中小企業技術基盤強化税制 国税庁

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中小企業政策を把握し効率的な企業経営を

今回見てきたように、国では中小企業の発展に役立つ中小企業政策を複数実施している。中には大きな節税効果を見込める制度もあり、中小企業の経営において、検討は不可欠である。

今回紹介した中小企業政策以外にも、経済産業省や中小企業庁などが、多くの施策を実施している。国が発行している文書やパンフレット(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/2018/180906zeisei.pdf )などを参照し、自社に合ったものを見つけてみてはいかがだろう。

文・スワローメディア合同会社