事業を運営していく上で資金調達は欠かせない。また、事業を拡大していく際には、自己資金だけでは難しい局面もあるだろう。資金調達の方法にはさまざまなものがあるが、具体的にはどういったものがあるのだろうか。

資金調達とは?

経営に欠かせない資金調達とは?ポイントを解説
(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)

事業を運営していく上で資金調達は欠かすことができない。資金調達が必要になる場面としてよくあるのは、新規事業の立ち上げだ。新規事業を立ち上げし、新しい製品を生産するためには、新規の土地や建物・生産設備あるいは人材などが必要となる。それらを確保するためには多額の資金調達は避けては通れない。

また、入金がない期間の支払いのために資金調達が必要となるケースもある。これは、建設業などで多く見られる。建設業では、工事を受注してから入金までの期間が長い。入金がない期間にも工事費や固定費などの支払いが必要となるため、資金の枯渇を防ぐという理由で資金調達を行うことがある。

資金調達せず現金を確保することは、ある程度は可能だ。支払いをできるだけ遅らせ、入金を可能な限り早めればよい。支払いを遅らせるためには約束手形が使われる。約束手形により支払いまでの期間を2~3ヵ月後まで遅らせることが可能だ。また、入金を早めるためには、売掛金を通常の支払日より早く支払った取引先に対して、割引を適用するなどの方法がとられることもある。

ただし、これらの方法は、あまり活用すると取引先に迷惑をかけかねない。そこで独自に運転資金を確保するために資金調達は必要不可欠なのである。

資金調達の主な方法4つ

資金調達の主な方法には次の4つがある。

  1. 負債を増やす
  2. 資本を増やす
  3. 今ある資産を現金化する
  4. 補助金や助成金を利用する

それぞれについて詳しく見ていこう。

方法1:負債を増やす

最もシンプルな資金調達の方法は「負債を増やす」ことだ。融資を受けることであり、「デットファイナンス」とも呼ばれている。融資を受けた資金は返済期限があり、その期限までに毎月、毎年、所定の利息を付けて返済していく。

融資を受けるメリットは、融資先の選択肢が多いこと、適切に利用すれば節税効果があること、また「レバレッジ効果」などが挙げられる。レバレッジ効果とは「テコの原理」のことで、小さな自己資本でより大きな利益を得ることを意味している。

たとえば、1,000万円の自己資本があったとして、その1,000万円で利回り8%の家賃収入が得られる不動産物件を購入すれば、年間80万円の利益が得られる。それに対して、1,000万円を頭金とし、2,000万円の融資を受けて計3,000万円で同じ利回り8%の物件購入をした場合には、年間240万円の利益が発生する。すなわち、自己資金は同じ1,000万円でも、融資を受ければ利益は3倍になるのだ。

ただし、負債を増やす資金調達の方法にはデメリットもある。その1つは返済義務があることだ。返済は経営状態に関係になく行わなければならないため、経営が悪化した場合には大きな負担となることがある。また、保証人や担保が必要になること、および将来のキャッシュフローが減少することも、融資のデメリットだといえるだろう。

【負債を増やす資金調達方法の具体例】

負債を増やす資金調達方法の具体例として、日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的融資、銀行などからのプロバー融資、金融業者からのビジネスローン、手形割引、社債、流動資産担保融資(ABL)、売掛債権担保融資などがある。

方法2:資本を増やす

「資本を増やす」資金調達の方法とは、株式を発行することである。「エクイティファイナンス」と呼ばれている。

この方法のメリットは、負債を増やすのとは異なり返済義務がないこと、保証人や担保も必要がないこと、資金の用途が限定されないことが挙げられる。また、発行した株式の価値が将来低下した場合でも、補償義務を負わない点が特徴的だ。

ただし、資本を増やす資金調達方法には買収や合併のリスクがある。通常の株式は持ち株数に応じて経営権が変わるため、投資家や投資会社に経営権を取得されてしまうことがあるためだ。また、株主に対しては配当金を支払う義務がある点もデメリットだといえるだろう。

【資本を増やす資金調達方法の具体例】

資本を増やす資金調達方法の具体例として、ベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、優秀な人材を獲得するために行う新株予約権(ストックオプション)、企業が自身でファンドを作って個人投資家から資金を集めるクラウドファンディングなどがある。

方法3:今ある資産を現金化する

今ある資産を現金化する資金調達方法は「アセットファイナンス」と呼ばれる。手持ちの資産が大きく変わらないことに加え、素早く資金調達できる点がメリットだ。また、現金化にあたって多少の手数料がかかることはあるものの、デットファイナンスやエクイティファイナンスと比較すればコストも低い。

ただし、そもそも現金化できる資産がないと利用できないこと、および現金化の際には資産本来の価値より低い価格になりやすい点がデメリットだといえる。

【今ある資産を現金化する資金調達方法の具体例】

今ある資産を現金化する資金調達方法の具体例として、使っていない不動産や自動車、有価証券、機械設備、特許権や商標権・営業権などを売却することが挙げられる。使っている不動産や自動車、機械設備などは、一度売却し、リース契約して使い続けるセール&リースバックも選択可能だ。

また、過剰な在庫や売掛債権を売ることもできる。売掛債権の売却は「ファクタリング」と呼ばれており、売掛債権は徹底的に回収することで現金化が可能だ。法人保険に加入していれば、解約して解約返戻金を受け取る、あるいは解約せずに契約貸付制度を利用することも資金調達方法の一つといえる。

方法4:補助金や助成金を利用する

国や地方公共団体が提供する補助金・助成金を利用するのも有力な資金調達方法だ。補助金・助成金による資金調達は返済の必要がない点が大きなメリットだろう。

ただし、補助金・助成金には受け取り条件がそれぞれ定められており、審査が行われる。そのため、必ずしも受け取れるとは限らない。また、一般に申請してから受け取るまでに数ヵ月かかることが一般的だ。タイムラグがあることもデメリットだといえるだろう。

【補助金や助成金による資金調達の具体例】

補助金は経済産業省が提供している。経済活動や技術開発を支援する内容が多く、金額も数百万円~1億円などと高額だ。その代わり、一般に受け取るための難易度が高い。

それに対して助成金は厚生労働省が提供しており、雇用の維持・増加や能力開発などを支援するものとなっている。金額も数十万円~100万円程度で、比較的受け取りやすい。

補助金・助成金は年間で3,000件以上の募集がある。情報をよく調べ、自社に適当なものがあれば応募してみるとよいだろう。

企業・個人それぞれに適した資金調達方法は?

企業と個人それぞれで、どのような資金調達方法が適しているかを見ていこう。

企業

企業、特にベンチャー企業の場合は、日本政策金融公庫の公的融資が適しているだろう。創業時専門の「新創業融資制度」が設けられており、事業実績がない企業でも融資を受けられる。保証人を用意しなくても信用保証協会による保証が受けられる点も心強いポイントだ。

参考:https://www.jfc.go.jp/

また、出資を受けるなら、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が適切だろう。両者とも、未上場のベンチャー企業に投資を行い、その企業の上場をもって資金回収をして利益を上げる。そのほかに近年では、ネットを通したクラウドファンディングも多く利用されるようになっている。

参考:日本ベンチャーキャピタル協会会員 https://jvca.jp/members/vc-members

日本国内の独立系ベンチャーキャピタルで投資額が多いのが以下のような企業だ。

・グロービスキャピタルパートナーズ

グロービスキャピタルパートナーズは投資だけでなく、グローバルな人脈や実績に裏付けられたノウハウを強みとしており、出資先の企業の経営に深く関与する、いわゆるハンズオン型のベンチャーキャピタルである。

投資領域はITサービスが多く、ワークスアプリケーションズやnanapi、面白法人カヤック、などに出資している。

参考:https://www.globiscapital.co.jp/ja/

・日本ベンチャーキャピタル(NVCC)

日本ベンチャーキャピタル(NVCC)は1996年に設立。各分野で成功をおさめている事業家や大手企業などが結集し、支援型の本格的なベンチャーキャピタルを目指し誕生した。

各分野で成功した起業家が多く参画しているため、経営経験に基づいた幅広いネットワークやノウハウを活かせるのが強みだ。

こちらも投資領域はITサービス系多く、投資ステージはアーリーステージの企業が中心となっている。また、産学連携事業にも積極的に投資しており、大学発ベンチャーへの支援も行っている。

主な投資先は、メタップス、メニコン、バックテックなどだ。

参考:https://www.nvcc.co.jp/

個人事業主

個人事業主は株式の発行ができないため、資産を増やすことによる資金調達は困難だ。日本政策金融公庫による融資、あるいは信用保証協会による保証付き融資を利用するのが適切だろう。これらは開業してまだ信用力が低いときにも利用が可能だ。

そのほかに、多少金利は高いもののビジネスローンの利用もできる。ビジネスローンは銀行や信用金庫・信用組合、ノンバンクやクレジットカード会社など多くの金融機関が取り扱っている。また、売掛債権があればファクタリングによる資金調達もできるだろう。

資金調達を滞りなく行うための3つのポイント

最後に、資金調達を滞りなく行うためのポイントを見ていこう。

1.事業計画書は具体的に書く

資金調達を行う際にまず必要なのが事業計画書である。事業計画書なしに融資も出資も受けることは難しい。事業計画書はできる限り具体的に書くことが重要だ。また、数値については根拠を添え、実現可能性をアピールすることも大切だ。

2.資金の用途を明確にする

資金は多くあればあるほどよい。しかし、融資や出資を求める際には、資金の用途を明確にすることが大切だ。「設備投資として」「従業員への給与として」あるいは「仕入れ代金として」などの理由を添え、それぞれにいくら必要なのかをはっきりとさせておこう。

3.資金調達までにかかる期間を確認する

資金調達には、一般に申し込みをしてから受け取りまでに時間がかかる。かかる時間をあらかじめ確認し、資金ショートしないように気をつけよう。融資の場合は受け取りまでに1~2ヵ月がかかるのが一般的だ。もし必要なときまでに間に合わない場合は、ビジネスローンなどでつなぎ融資を行うことも検討しよう。

資金調達は適切な方法で行おう

資金調達には、負債を増やす、資産を増やす、既存資産を売却する、および補助金・助成金を利用するといった方法がある。それぞれの方法で、具体的な選択肢も多くある。資金の用途や経営状況などによって適切なものを選んでいこう。

ただし、資金調達は「はじめに事業ありき」である。融資や出資は、他人の資金を当てにすることとなる。「事業をどのように行うか」「事業のためにどのくらいの資金が必要か」の視点がなく、ただ「どれくらい借りられるか」に目が向いてしまったときには、他人の協力を得るのは難しい。資金調達は、事業の今後をよく考えるところからスタートしよう。

文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)