減価償却費の知識があれば法人税の節約になる可能性がある。減価償却費について、網羅的かつ具体例を交えながら詳細に解説していく。

減価償却費とは?

減価償却費とは、各事業年度に基づいて配分費用配分の原則に基づいて有形固定資産の取得原価をその耐用年数における各事業年度に配分したもののことだ。

法人税の節約につながる減価償却費の正しい知識とは?
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減価償却の意義

仮に減価償却を行わなければ、高額な固定資産を購入した際にその事業年度だけ大きな費用計上がされる。しかし固定資産は長年にわたり使えるもので、耐用年数に亘って売上貢献するので、売上と費用が対応しなくなってしまう。

そこで、費用収益を対応させる会計の原理原則から、減価償却が必要になってくる。減価償却を行うことにより、適正な費用配分がなされ、適切な財務諸表が作成されることとなる。

固定資産のうち減価償却しないものは?

固定資産は通常、時間が経過するに従ってその価値が減っていくのが通常である。例えば、建物、車、パソコンなどを思い浮かべると分かりやすいだろう。

一方で時間が経過しても価値が減らないものもある。例えば、土地や骨とう品などが当てはまる。減価償却費は時の経過とともに価値が減少する資産を対象としているので、土地や骨とう品は、減価償却を行わない。

土地や骨とう品は減価償却を行わないため、売却をしない限り永久に費用として計上されることはなく、貸借対照表に計上され続けることとなる。

耐用年数は税法で決められている

減価償却費は耐用年数に応じて、期間配分されるものであるが、個人で将来的にどの程度使えるのかといったことは判断することができない。

そこで法務省令の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」にて各資産の耐用年数が定められているのである。

法務省令の別表は条文ベースの文言で読みづらい面もあるので、国税庁が公開している「主な減価償却資産の耐用年数表」を一読すると理解が深まる。

例えば同じ木造建物の耐用年数でも、事務所用は24年、店舗・住宅は22年、飲食店用は20年、旅館・ホテル・車庫用は17年、公衆浴場用は12年、工場・倉庫用は17年など、かなり細かく分類されていることが分かる。

減価償却の方法

減価償却の方法には、「定額法」、「定率法」、「生産高比例法」の3種類が挙げられる。それぞれの計算方法や具体的な事例を解説していく。

固定資産のそれぞれに法定償却方法が定められている点は留意が必要である。例えば、建物、建物附属設備、構築物といった固定資産は定額法でしか償却することができない。また、機械装置、車両運搬具、器具備品の法定償却方法は定率法であるが、税務署への届出によって定額法へ変更することができる。

定額法とは?

定額法とは償却額が毎年同額となる計算方法である。計算式は、「取得価格×定額法の償却率」で計算することができる。

定額法の償却率は、例えば耐用年数が10年であれば下記のように計算される。

1÷10年=0.1

取得価格1,000万円、耐用年数が10年の定額法による減価償却費は下記のとおりである。

1,000万円×0.1 = 100万円

ただし、10年目の減価償却費は下記の計算式となる。

100万円―備忘価額1円=99万9,999円

10年経過し償却が完了した資産は、除却や売却などしない限り、1円の備忘価格で貸借対照表に残ることとなる。

定率法とは?

定率法とは償却費が毎年逓減していく計算方法である。計算式は、「未償却残高×定率法の償却率」によって計算する。ただし計算された償却費が「償却保証額」に満たなかった場合は「改定取得価格×改定償却率」により計算される。

例えば、耐用年数10年の定率法償却率は0.200、改定償却率は0.250、保証率は0.06522と定められている。

取得価格1,000万円、耐用年数が10年の定率法による減価償却費は下記のとおりである。

1年目:1,000万円×0.2 = 200万円
2年目:(1,000万円―200万円)×0.2 = 160万円
3年目:(1,000万円―200万円―160万円)×0.2 = 128万円
以降、同様に計算

ただし、償却費が償却保証額(1,000万円×0.06522 = 655,200円)未満となった場合は、償却率0.250で計算することとなる。

定額法と定率法の1年目の償却率を比較すると、定額法は100万円、定率法は200万円となっており、定率法の償却費が大きいことが分かる。

減価償却費は損金として計上されるため、減価償却の金額が大きければ大きいほど、節税メリットが生じる。手元資金を積み上げたいときは、採用できる場合は積極的に定率法を採用することで法人税を抑えられる可能性がある。

生産高比例法とは?

生産高比例法とは、資産の使用度合いに応じて減価償却費を計上する方法である。適用できる固定資産は航空機、車両、鉱業用設備など限定的になっている。生産高比例法による減価償却費の計算式は下記のとおりである。

(取得価格÷耐用年数内に生産可能だと予想できる生産高)×その事業年度における実際の生産高

例えば鉱業用設備の取得価格1,000万円、耐用年数10年、10年予想生産高10,000kg、今年の生産高3,000kgとした時の減価償却費は、以下のように計算される。

(1,000万円÷10,000kg)×3,000kg = 300万円

生産高比例法によると収益と減価償却費が完全に一致するので、適切な費用配分の観点からは望ましい方法と言える。一方で、適用できる固定資産の数が少なく、また計算が煩雑である点も多いため、実務上見かけるケースはあまりない。

減価償却費の仕訳について

減価償却費の仕訳は直接法と間接法の2通りに分類される。

直接法とは?

直説法とは固定資産から減価償却費の金額を直接減額していく方法である。取得原価1,000万円、耐用年数5年、定額法の時の仕訳は下記のとおりである。

減価償却費 固定資産
200万円 200万円

貸借対照表には800万円の固定資産が表示されることとなる。

間接法とは?

間接法とは固定資産から減価償却費の金額を控除せず、代わりに減価償却累計額という勘定科目を使用する方法である。取得原価1,000万円、耐用年数5年、定額法の時の仕訳は下記のとおりである。

減価償却費 減価償却累計額
200万円 200万円

貸借対照表には1,000万円の固定資産と200万円の減価償却累計額が表示されることとなる。

固定資産における除却・売却と減価償却費の仕訳

固定資産を除却した場合、「固定資産除却損」という勘定科目を使って仕訳を切る。除却とは、現在保有している固定資産を廃棄することであるので基本的には除却益が発生することはない。帳簿価格1,000万円の固定資産を除却した場合の直説法による仕訳は下記のとおりである。

固定資産除却損 固定資産
1,000万円 1,000万円

間接法で仕訳を行っている場合は減価償却累計額も減額させる処理が必要である。取得価格1,200万円、減価償却累計額200万円の固定資産を除却する場合、間接法による仕訳は下記のとおりである。

固定資産除却損 固定資産
1,000万円 1,000万円
減価償却累計額
200万円

なお、処分費用がかかった場合はその金額分、固定資産除却損を増やす処理を行う。上記事例で処分費用が100万円必要で、現金で支払った場合の仕訳は以下のようになる。

固定資産除却損 固定資産
1,100万円 1,200万円
減価償却累計額 現預金
200万円 100万円

固定資産を売却した場合は、「固定資産売却益」、「固定資産売却損」という勘定科目を使って仕訳を切る。基本的な仕訳の考え方は除却の場合と同様である。

取得価格1,200万円、減価償却累計額200万円の固定資産を300万円で現金売却できた場合の仕訳は以下のとおりである。

固定資産売却損 固定資産
700万円 1,200万円
現預金
300万円
減価償却累計額
200万円

なお、固定資産除却損、固定資産売却益、固定資産売却損は、経常的に発生する収益・費用ではないため、損益計算書上、特別損益に計上される。

中小企業であれば少額減価償却資産の特例も

青色申告法人である中小企業者等で従業員数が1,000名以下の場合、少額減価償却資産の特例を受けることができる。ただし、中小企業者であっても過去3年間の平均所得金額が15億円を超える法人は適用することができない点は留意が必要である。

少額減価償却資産の特例を受けることで、取得価格が30万円未満の固定資産を、一括で損金算入することできる。ただし、合計額は300万円までしか適用することができないので使いすぎには注意しなければならない。例えば、25万円のパソコンであれば12台までは一括償却することができる(25万円×12台 = 300万円)。

対象となる固定資産は器具および備品、機械・装置、ソフトウェア、特許権、商標権、リース資産などが該当する。

少額減価償却資産の仕訳は以下のとおりである。なお、取得価格を300万円とする。

固定資産 現預金
300万円 300万円
減価償却費 固定資産
300万円 300万円

結果として、貸借対照表上には固定資産は計上されず、取得価格全額が減価償却費として計上されていることが分かる。

少額減価償却資産の特例を使うことで、300万円までは取得価格全額が損金処理できるため、300万円×法人税実効率(仮に30%)= 90万円分の節税につながる可能性がある。

なお、この特例を受けるためには、以下の手続が必要であるため、忘れずに行うようにしたい。

・少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき損金経理する ・確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付して申告する

法人税の節約につながる減価償却費の正しい知識とは?
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まずは簡単な手続きで受けられる特例を

今回は減価償却費に関する基礎知識をおさらいするとともに、固定資産の減価償却の仕訳や除却、売却の会計処理、節税につながる特例処理などを解説した。減価償却の方法には、定額法、定率法、生産高比例法があるが、短期間の資金繰りを改善させるためには、定率法など初年度の減価償却費が大きくなるものを選択するべきである。

中小企業であれば、30万円未満の固定資産であれば総額300万円まで、取得価格全額を損金計上できる特例がある。パソコンなどが特例の対象となっているので、使用できる機会は多いと思われる。もし、適用していない場合は簡単な手続のみで特例を受けることができるので、今事業年度からでも適用してみることをお勧めする。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部