法人にはいくつもの税金が課されるが、中でも特異なものとして「消費税」がある。消費税は実際に税負担する消費者ではなく、それを預かる法人が納付する仕組みとなっている。消費税の納税には、知っておくべき仕組みがいくつかあるため、うまく活用すれば消費税の負担を軽減することが可能だ。ここでは、消費税の内容とその仕組みを解説し、企業が税制と上手に付き合うために情報を提供する。

目次

  1. 法人にとっての消費税の仕組み
    1. 消費税の存在意義と所得税との関係
    2. 法人にとっての消費税の仕組み
  2. 変化する法人税と消費税の関係
    1. 1989年から2019年まで変化し続けてきた消費税と法人税の関係
    2. バーターの関係にある法人税と消費税
  3. 消費税を考えるポイント
    1. 消費税が免除になる条件
    2. 基準期間とは
    3. 免除期間
    4. 計算方法
  4. 制度をうまく利用しよう

法人にとっての消費税の仕組み

ミーティング
(画像=Freedomz/Shutterstock.com)

法人が消費税をどのように捉えるべきかを考える上での基礎知識として、消費税の仕組みを説明する。

消費税の存在意義と所得税との関係

国は財源としてさまざまな税金を課している。その中で、消費税にはどのような存在意義があるのだろうか。

国民にとって身近な税金は、所得税と消費税である。2019年10月に消費税率が8%から10%に変わったことで、人々の暮らしや経済全体への影響を多くの人が注目することになった。そこで所得税とどのような違いがあるのかに着目して、消費税について説明する。

まず所得税だが、これは原則として所得を得たすべての者が支払う税金である。特徴は、所得金額が大きくなるほど税率が高くなること。つまり、収入の多い人から、より多くの所得税を徴収しようという仕組みになっている。

余裕のある人に多く負担してもらうという意味で、国民全体としての視点で言えば公平であるという見方がある。一方で、所得が多いほど税率が高くなれば、所得の高い人からみれば不公平感が生まれる。結果として、一生懸命に働いて多くの所得を得ようという意欲を阻害する可能性がある。それにより、国の財源確保が難しくなってしまうというのでは元も子もない。

また、少ないながらも収入を得ている人は所得税を払うが、生活保護を受けている人は所得税を払わない。ここにも不公平感が生まれる要素がある。

そこで、買い物やサービスを利用するすべての人から税金を徴収しようと制定されたのが消費税である。税率は一律であるため、誰にとっても負担額が同じという意味で、所得税のような不平等感はない。生活保護を受けている人も、何か購入すれば消費税を納めることになる。

このように消費税は、所得税に対する不満や課題を分散させる役割を持つ税金であることがわかる。

法人にとっての消費税の仕組み

消費税とは、あらゆるモノやサービスの消費において課せられる税金である。つまり消費税を負担するのは消費者であり、モノやサービスを購入したり利用したりする顧客となる。しかし、実際には課税される消費者は消費税を納めない。代わりに消費税を預かる法人が納付する仕組みとなっている。

つまり、消費する者が直接納めずに、消費材を提供する事業者が代わりに支払う間接税であることが消費税の特徴である。

ただし、すべての取引に対して消費税が課せられるわけではなく、土地や有価証券などの譲渡、預貯金や貸付金の利子など非課税取引となるものがある。

また、法人がモノを販売する場合、その原料などを仕入れる際には仕入れ先に対して消費税を支払う。つまり法人は、顧客から受け取った消費税から、仕入れ先などに支払った消費税を差し引いた残りを納付する仕組みとなっている。

消費税は正確には、国税と地方税に分かれる。2020年4月時点での消費税率は10%で、国税分が7.8%、地方税分が2.2%となっている。また消費税率は標準税率が10%であるのに対して、軽減税率が8%である。この軽減税率の対象となるのは、飲食料品(酒類や外食を除く)と週に2回以上発行される定期購読される新聞だ。そして軽減税率の内訳は、国税分が6.24%で地方税分が1.76%となっている。

ポイントとして覚えておきたいのは、消費税はすべての事業者が課税対象となるわけではないということだ。

原則的に資本金が1,000万円以上の会社は消費税の課税対象となる。資本金1,000万円未満の会社あるいは個人事業主でも、売上高が1,000万円を超えたら翌々年度から課税対象となる。

消費税の課税対象となったら、納税地所轄の税務署へ「消費税の課税事業届出書」を提出することになる。もし消費税の納税が遅れると延滞税が発生する。納付期限の翌日から2月を経過すると、年に14.6%あるいは「特例基準割合+7.3%」の低いほうが適用されて、延滞税が課せられるので注意が必要だ。

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変化する法人税と消費税の関係

1989年に日本で初めて消費税が導入された。そこから法人税との関係がどのように変化したのかをみていこう。

1989年から2019年まで変化し続けてきた消費税と法人税の関係

1989年に税率3%で導入された消費税だが、これは高所得者における重税感や不公平感を緩和し、国民すべてに公平に税負担をしてもらうことが目的だった。さらに、消費税を医療や福祉の財源とすることで、国民負担の不満を軽減する効果も期待されている。

その後、消費税は5%、8%、10%と税率が上がり続けたが、これとは対照的に法人税率は次のように減少している(カッコ内が法人税率)。

1989年 3%(40.0%)
1997年 5%(37.5%)
2014年 8%(25.5%)
2019年 10%(23.2%)

バーターの関係にある法人税と消費税

このように消費税が増税される一方で、法人税が減税されている現状をみると、法人税減税分を消費税増税で穴埋めしていると解釈することもできるだろう。

1989年から3%でスタートした消費税の税収はおよそ年間5兆円、対して法人税は1988年時点で年間19兆円だった。そして2019年における消費税率引き上げによる税収は20兆円ほどと見込まれ、法人税は10兆円ほどで推移している。

この数値だけをみると確かに、減少した法人税を増加した消費税でカバーしていると言えそうだ。

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消費税を考えるポイント

法人が消費税と付き合う上で、押さえておくべきポイントを紹介する。

消費税が免除になる条件

消費税を含め、税金には減免などの措置はない。つまり発生した税金は必ず納めなければならない仕組みとなっている。

とはいえ法人にその財源がなければ、消費税の納税は難しい。売り上げとともに消費税は懐に入るので、何かしらの支払いに使ってしまうと納税すべき現金がなくなってしまう。

消費税が発生してしまったら納税を回避することは不可能なので、まずは税金が発生しない条件を押さえておこう。

会社の資本金が1,000万円以上であれば無条件に消費税が課せられるので、まずは資本金を1,000万円未満にする必要がある。そして売上高が1,000万円を超えない限りは、消費税納税の義務は発生しない。この2つの条件を満たすようにすれば、消費税納税は免除される。

基準期間とは

会社の売上高が1,000万円を超えたらすぐに納税義務が発生するかというと、そうではない。消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円超である場合に課税されるとしている。そしてこの基準期間とは、会社の2期前の期間を表す。

つまり売上高が1,000万円を超えたら、課税されるのは2年後というわけだ。そしてこの基準期間に注目することで、うまく消費税納税を免れることが可能となる。

免除期間

ここで消費税の基準期間について、もう少し踏み込んで考えてみよう。

会社を設立した2期前というのは、当然ながら会社は存在していないので、売り上げも発生しない。つまり、法人を設立してから2期目までは基準期間が存在しないので売上高がいくらあっても課税売り上げ高はゼロとみなされる。そのため法人として会社を設立してから、2年間は無条件で消費税が免除されることになる。

しかし、法人を設立してすぐに売上高1,000万円を達成するのは難しいだろう。また消費税は仕入れと売上高とで発生した差額を納めるので、設備投資などで支払う消費税が大きいのであれば、売り上げによって生じる消費税よりも大きくなる可能性がある。

つまり法人として会社を設立してから2期を過ぎても、設備投資にお金がかかるのであれば、消費税還付の仕組みを使うことにより、当面は消費税が課税されないというケースもある。

そこで利用できるのが、すでにある程度の売り上げがある個人事業主が法人成りをするという方法だ。売上高が1,000万円を超えた個人事業主は、法人成りをすればその実績はリセットされる。

例えば、2019年の課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主ならば、2021年には課税事業者となり消費税納税義務が発生する。しかし、2020年中に法人成りして会社を設立すれば、2021年は過去2期年は法人としての基準期間がないので消費税は免除される。そのままであれば支払うはずだった消費税を、支払う必要がなくなるというわけだ。

計算方法

消費税は法人が支払う税金なので、売り上げによって預かる消費税と仕入れなどで支払った消費税の差額を計算して課税されるか否かが決まる。

消費税の納付税額=売り上げにかかる消費税額-仕入れなどにかかる消費税額

課税期間は法人の場合、事業年度で計算する。納税は国税分の消費税と地方税分の地方消費税をまとめて行う。

「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している事業者は、前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下であれば、仕入れなどにかかわる消費税額を「みなし仕入れ率」で計算できる。これを簡易課税制度という。

みなし仕入れ率は事業区分により定められている。例えば卸売業の第一種事業は90%、小売業の第二種事業は80%などとなるわけだ。

場合によれば、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算する「原則課税」よりも、この簡易課税制度を利用した方が節税できる場合がある。この制度は申告制であり、取り下げの申告をしなければ売上高が5,000万円を超えない限り継続される。実際の仕入れによる消費税額とみなし仕入れによる消費税額のどちらが多くなるのかを計算して、有利なほうを選ぶといいだろう。

制度をうまく利用しよう

法人が支払う消費税の仕組みを理解しておけば、負担を減らせることがわかる。個人事業主からの法人成りや簡易課税制度など、うまく利用できるものは利用して、税金の負担を軽減してみてはいかがだろうか。

文・スワローメディア合同会社