2021年、マツダに課せられる排ガス基準超過の罰金は、約8.8億ユーロ(約1,090億円)に達する予定だ。新型コロナウイルス感染症とBrexit(英国EU離脱)にも懸念の声があがる中、「5年後にはマツダが新しいBMWになる」とのポジティブな見方もある。

目次

  1. 主要自動車メーカー13社の罰金は約1.8兆円?
  2. 欧州CO2排出量ランキング ワースト2のマツダ
  3. 5~7月の回復失速 低迷する欧州市場
  4. マツダの新生MX-30 クリーンカー人気が追い風に?
  5. 5年後には「新しいBMW」になる?
  6. 「合意なき離脱」の打撃も 厳しい時代をチャンスに転換できるか?

主要自動車メーカー13社の罰金は約1.8兆円?

EU排ガス規制強化 の罰金1,090億円?それでもマツダが5年後「新BMW」になると言われている理由とは
(画像=Björn Wylezich/stock.adobe.com)

EU自動車排出ガス規制とは、欧州圏内の自動車が排出するCO2の上限を定めることで、大気汚染物質を減らすというものだ。

2012年から段階を追って実施されており、2021年には走行1Km当たりのCO2排出量の目標値が130gから95gに引き下げられる。基準を上回った場合、自動車1台1g当たり95ユーロの罰金が課される。対象となるのはEU圏内で新たに登録される車だ。

各自動車メーカーは規制適合に向け取り組んできたものの、現時点において目標を達成できる見込みは薄い。英PAコンサルティングは主要自動車メーカー13社の罰金総額を、約146億ユーロ(約1兆8,000億円)と予想している。

欧州CO2排出量ランキング ワースト2のマツダ

2021年におけるマツダの予想CO2排出量は123.6gと目標値を大幅に上回っており、13社中、ジャガー・ランドローバーに次ぐワースト2だ。罰金は約8.8億ユーロ(約1,090億円)にのぼる。

同社はSUV「CX-5」などCO2排出量が多い車種の価格を引き上げ、EVの市場投入を進めるなどの対応策を講じているが、新型コロナウイルス感染症の影響で業績が低迷している今、大胆な「調節」はリスクになりかねない。

2020年8月の販売台数は前年同月比12%減と、8ヵ月連続でマイナスを記録している。2021年3月期の連結業績予想は純損失900億円、営業損失は過去最大の400億円と、9年ぶりの赤字となりそうだ。

5~7月の回復失速 低迷する欧州市場

特に気がかりなのは、欧州での販売台数の回復が遅く、欧州向けの輸出台数が減っている点だ。

マツダは海外で非常に評価の高い日本メーカーの一つで、とりわけ欧州では数々の賞を受賞している。CX-5やロードスター、CX-3などが人気だ。2019年にはフランス、オランダ、スペイン、ポーランドのほか、欧州最大の自動車大国であるドイツでも、市場シェアを大幅に拡大した。

ところが順風満帆に見えた未来は、パンデミックで一転する。自動車産業リサーチ企業JATOのデータによると、欧州の新車販売台数は5~7月にわたり一時的に回復の兆しが見られたものの、8月にはリトアニアを除いて再び低迷し、前年比18%減にとどまった。

さらに9月に入り第二波が猛威を振う中、欧州自動車工業会(ACEA)が発表したデータによると、ドイツやイタリアでは新車販売台数が伸びたのに対し、英国やフランス、スペインでは大幅に落ち込む結果となった。このことから、地域によって回復に落差があることが分かる。今後広範囲な地域で失業率の悪化が予想されるだけに、一触即発の状況だ。

マツダの新生MX-30 クリーンカー人気が追い風に?

とはいうものの、マツダの未来に期待が持てるポジティブな材料も多々ある。

まずは、2020年秋に発売されるMX-30だ(日本では2021年1月予定)。コロナ禍にもかかわらず、発売キャンペーンは大きな反響を呼んでいる。折しも欧州ではクリーンカーへの移行が加速しており、売上が低迷した8月ですら、EVの販売台数は前年比121%と飛躍的な成長を記録し、新車販売台数の約2割を占めた。

また、欧州自動車市場の約5%を占めるトヨタとのパートナーシップも心強い。トヨタとマツダは資本提携やEVの共同技術開発の協力体制を築いていることから、今後の動向にも注目が集まっている。

5年後には「新しいBMW」になる?

「5年後にはマツダが新しいBMWになるかもしれない」という、興味深い専門家の意見もある。

近年BMWは車両に搭載した通信モジュールを通し、ドライバーが様々な情報やサービスにアクセスできるテクノロジー、「コネクテッド・ドライブ」を提供しているほか、自動運転車の開発・研究にも積極的だ。これらの例が示すように、BMWは従来のドライバーが運転するプレミアム車から、「テクノロジーが運転するプレミアム車」への移行を目指している。

しかしすべてのBMW愛好家がハイテク車を望んでいるわけではなく、クラシックなプレミアム車を好む愛好家も多い。

マレーシアの著名オートモーティブ・ライター、ハンス・チョン氏は、「ドライバー中心の車を作り続けたい」マツダが、伝統的なBMWを意識したプレミアム車の生産に重点を置くことで、「昔ながらのBMW愛好家を誘致するチャンスになる」と述べている。

日本のバブル崩壊以前、マツダはV12を搭載した「アマティ(Amati)」というプレミアムブランドの立ち上げ、BMWの7シリーズやメルセデス・ベンツのSクラスの対抗馬にする野望に燃えていた。バブルの崩壊によって結果は惨敗に終わったが、これはつまり「まったく未知の分野」ではないということだ。

現時点では突拍子もない発想のように思えるかもしれないが、自動車産業がかつてないスケールの変革期に突入している事実を考慮すると、「現代版アマティ」が登場しても決して不思議ではない。

「合意なき離脱」の打撃も 厳しい時代をチャンスに転換できるか?

苦戦しているのはマツダだけではない。ライバルメーカーも新型コロナウイルス感染症やBrexitの対応に追われながら、クリーンカーの開発・販売などに取り組んでいる。

Brexitに関して、英国・EU間のFTA(自由貿易協定)は依然として難航している(2020年10月16日現在)。「No Deal Brexit(合意なき離脱)」の壁を超えることなく、年内に移行期間が終了する可能性は高いだろう。

FTAなき離脱が現実となった場合、関税などの貿易条件が一変するため、自動車産業を含むビジネスにとってコストの上昇は避けられない。欧州自動車産業の関税負担だけでも、57億ユーロ(約7038億円)にのぼるという。

世界の自動車メーカーが困難に直面している現在、「自動車産業史上最大の試練が訪れている」といっても過言ではない。そしてこのような厳しい時代を大変革のチャンスとして活かすことができるメーカーだけが、長く生き残るのだろう。

マツダがその一つとなれるかどうかは、今後どのような突破口を見つけ、チャンスとして活かせるか次第ではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部