高レベル放射性廃棄物最終処分場を巡り、議論が白熱している。北海道の寿都町と神恵内村が第1段階となる文献調査に応募した背景とともに、世界で初めて高レベル放射性廃棄物の処分地を決定したフィンランドの例から、日本が参考にできる点を探ってみよう。

目次

  1. 高レベル放射性廃棄物とは?
  2. なぜ「地層処分」が必要なのか?
  3. 応募の背景には「過疎化」と「財政難」 
  4. フィンランドの処分施設の仕組み
  5. フィンランドが掲げる「40年間の揺るぎないビジョン」
  6. 信頼性を得るために必要な要素とは?

高レベル放射性廃棄物とは?

高レベル放射性廃棄物先進国フィンランドから学ぶ 日本の「核のごみ」問題
(画像=Mongkolchon/stock.adobe.com)

一般家庭やビジネスから毎日ゴミが出るように、原発施設からもゴミ(放射性廃棄物)が出る。しかし、放射性廃棄物は原発から排出される使用済みの核燃料であるため、一般の可燃・不燃ゴミと同じように処分するわけにはいかない。可能な限り人間や自然への悪影響を最小限に抑え、放射能レベルに適した廃棄処分が必須となる。

国によって基準は異なるが、これらの廃棄物は放射能レベルによって区分される。日本では原子力発電所の廃棄物やウラン廃棄物を低レベル放射性廃棄物、「核燃料サイクル」の際に生じる高放射能レベルの廃液をガラスと混ぜて固めたものを、高レベル放射性廃棄物と定義している。「核燃料サイクル」とは使用済みの燃料を再処理後、そこから抽出したウランやプルトニウムを再利用するというシステムのことだ。

なぜ「地層処分」が必要なのか?

日本では1960年代から商業用の原子力発電を行っている。そこで発生する使用済燃料の95%を再利用し、残りの5%は高レベル放射性廃棄物として、貯蔵管理センターに保管している。

貯蔵管理センターがあるのに、なぜ最終処分場が必要なのか。その理由は、高レベル放射性廃棄物が安全な放射能レベルに低下するには、人間の寿命よりはるかに長い月日を要する点に関係がある。いずれ何らかの理由で、人間が世代を超えて管理できない状況が起こる可能性は否定できない。

そこで「地層処分」という発想が生まれた。地下深くの安定した岩盤に高レベル放射性廃棄物を封印することで、人間の生活環境から遠ざけるというものだ。日本は地下300m以深の地層に処分する方針を固めている。

応募の背景には「過疎化」と「財政難」 

この最終処分場として、現在立候補しているのが北海道の寿都町と神恵内村だ。 寿都町は古くから漁業や水産加工業を主産業としているが、年々過疎化が進んでいる。寿都町が公開している統計資料によると、2020年の人口は2,893人と1980年の半分以下に落ち込んでいることが分かる。 また、「後志総合振興局管内 市町村の行財政概要(令和元年度版)」では、2018年の実質公債費比率(公債費に準ずる経費の比率)は13.6%であることが示されている。近年は「ふるさと納税」など復興策を講じているものの、全国町村平均の7.7%の2倍以上という現状だ。 一方、神恵内村の実質公債費比率は4.6%と財政は極めて健全だが、1985年に1,797人だった人口が2018年には893人に減少している。寿都町同様、過疎化を食いとめる手段を模索している。
文献調査で交付される20億円、第2段階の概要調査で交付される70億円が、財政や産業の立て直しや強化に大いに役立つことは間違いない。 しかしながら、先行きは若干不透明である。寿都町と神恵内村の文献調査を巡り、安全性を懸念する住民や漁業組合長会の間で反対運動が起こっている。また、概要調査の実施には北海道知事の同意が必要となるが、鈴木直道知事は応募撤回を求めて神恵内村の高橋昌幸村長と会談するなど、反対の意向を示している。 さらに「両町村の地理が処分場に適していない」との指摘があるなど、実現に向けてクリアすべき問題が横たわっている。

フィンランドの処分施設の仕組み

フィンランドは世界で初めて、処分地を決定した国だ。処分場の選定から議会承認まで20年近くの歳月を費やし、現在もプロジェクトは進行中である。

同国では1983年に開始された候補地の特性調査の結果に基づき、処分実施主体であるポシヴァ社が建設予定地を選定した。西スオミ州のオルキルオト島を最終候補地として、原則決定の申請を行った。その後、政府による原則決定、議会による承認というプロセスを経て、ようやく2001年に最終処分場が決定した。

オルキルオト島にはテオリスーデン・ヴォイマ(TVO)社が所有するオルキルオト原子力発電所があり、最終処分場はそこからおよそ1kmの場所にある。2016年に建設が開始された地下の処分施設は、深さ400〜450m、トンネルの長さは70kmにも及ぶ。2020年初頭から100年間にわたり、約6,500トンのウランを含む3,250個のキャニスターがここに堆積される。

2019年にはキャニスターを封入するための施設の建設を開始した。オルキルオト原子力発電所と、フォルツム・パワー・アンド・ヒート(FPH)社が所有するロヴィーサ原子力発電所から回収された使用済燃料を、この施設で輸送キャスクから銅と鋳鉄製のキャニスターに移し替え、接合部周辺を完全に密封する。完成後は地下の処分施設と接続される。

2020年代の操業開始を予定しており、最終的には最大9,000トンの高レベル放射性廃棄物の処分が認められている。

フィンランドが掲げる「40年間の揺るぎないビジョン」

フィンランドの取り組みは高レベル放射性廃棄物処理の模範として、取り上げられることが多い。ポシヴァ社の開発担当シニア・ヴァイス・プレジデントであるティーナ・ジャロネン氏は、その理由について以下のように述べている。

「地層処分の決定が下されて以来、すべての利害関係者はそれを支持してきた。政府や関係者が変わっても、40年間、決定と将来のビジョンが揺らぐことはなかった」

また、意思決定者は核エネルギーの導入と並行して法律を策定し、フィンランド放射線原子力安全局(STUK)は当社の文書とアプリケーションを見直し・検査するための、安全ガイドや規制などの策定を担当するなど、利害関係者の役割を明確化したことも成功の要因となった。

信頼性を得るために必要な要素とは?

そしてなによりも、プロジェクトの成功には住民を含む一般人の受け入れが不可欠である。同国が実施したプロジェクトに関する多数の世論調査では、「原子力発電所近辺の住民は他の地域の住民に比べて、核プロジェクトへの信頼感が高い傾向がある」ことが明らかになったという。

「信頼を築くには地元の人々や当局、意思決定者との、広範囲にわたるオープンなコミュニケーションが必要だ」というジャロネン氏の言葉が示すように、原発関連施設における信頼性は、安全性の確立とそれに対する理解や協力なくして生まれない。

フィンランドのアプローチは、「核のごみ」問題が単独的なプランや短期的なビジョンで解決するものではなく、長い年月をかけて国家全体で確固たるビジョンを形にする必要があることを世界に示しているといえるだろう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部