コロナの打撃から破綻・撤退、大量リストラが相次ぐ航空産業で、韓国の大手航空会社であるアシアナ航空と大韓航空が黒字を記録した。(2020年4~6月期)一方で巨額の赤字に苦戦するANAは、柔軟な雇用形態を取り込んだ長期的生き残り戦略を打ち出している。

目次

  1. 世界の航空産業  回復は2024年以降?
  2. アシアナ航空と大韓航空、黒字維持の決め手となった2つの理由
  3. アフターコロナを征するビジネスモデル 4つのキーワード
    1. 1.一歩先を予想する「超敏捷性」
    2. 2.新たな収入源を確保する「事業の多様化」
    3. 3.ストレスを緩和しチャンスをもたらす「柔軟な雇用形態」
    4. 4.長期的な視点からの「コスト削減」

ライバルとの明暗を分ける目から鱗の戦略から、コロナ時代を生き抜き、アフターコロナを制するためのキーワードを探ってみよう。

世界の航空産業  回復は2024年以降?

損失42兆円の衝撃!航空産業「アフターコロナを制するビジネスモデル」4つのキーワードとは?
(画像=Carlos Yudica/stock.adobe.com)

多数の国でロックダウンが解除されたにもかかわらず、今夏のホリデーシーズンの業績は低迷した。その後、欧州圏で第2波が猛威をふるい、2020年10月現在は再び規制が強化されている。

国際民間航空機関(ICAO)の最新の予想によると、2020年の乗客数は基準値から最大29億8,100万人減少した。乗客営業収入の損失は3,880億~4,000億ドル(約40兆8,752億~42兆1,394億円)に達し、その影響は少なくとも2021年上半期にまで持ち越される可能性が高い。

一方、国際航空運送協会(ITAT)は航空産業がパンデミック以前の水準に回復するのは、2024年以降になると予想している。

苦境が長引く中、すでに破産申請中の航空会社も見られる。英国内線の4割のシェアを占めていたフライビー航空、ユナイテッド航空と提携していた米トランス・ステイツ航空、英ヴァージン・アトランティック航空の米国事業などだ。このほか、各国の格安航空会社(LCC)は連鎖倒産が懸念されている。

幸いにも破綻をまぬがれた航空会社も、大量リストラを含む再編成は避けられない。豪ヴァージン・オーストラリア航空は、破綻後に再建計画とともに3,000人の大量リストラを発表した。

アシアナ航空と大韓航空、黒字維持の決め手となった2つの理由

このような中、アシアナ航空と大韓航空は2020年第2四半期(4~6月)報告で黒字を維持した。各社チケット収益が44%、45%減少したにもかかわらず、1億2,520万ドル、9,690万ドルの利益を出したのである。

両社が黒字を維持できた主な理由は2つ考えられる。1つ目は需要が急増していた貨物事業に素早く切り替えたこと、そして2つ目は政府の救済策に過度に依存せず、大量リストラや無給休暇に踏み切ったことだ。いずれも減便が長期化することを早期に見越しての決断が吉と出たのだろう。

またエチオピア航空は貨物便と帰国便を組み合わせて運営することで固定費を全て補い、7月末の会計年度にはわずかながらも利益を出した。

アフターコロナを征するビジネスモデル 4つのキーワード

アフターコロナでビジネスを成功させるには、これまでのビジネスモデルに多少の工夫を加える必要が出てくるだろう。成功するための4つのキーワードを以下に挙げる。

1.一歩先を予想する「超敏捷性」

アシアナ航空と大韓航空の成功例が示すように、航空産業の存続は時間との戦いだ。開店休業状態でも巨額の維持費は重くのしかかる。回復の兆しを気長に待っている余裕はない。

そのため、常に状況の一歩先を的確に予測し、一刻一刻を無駄にしない大胆な行動力が求められる。既存のビジネスモデルにとらわれず、新しい環境やアプローチを受け入れる柔軟性も必須だ。

2.新たな収入源を確保する「事業の多様化」

世界経済のV字回復が期待できない今、損失を補うための新たな収入源確保に向けた動きが見られる。前述した貨物輸送便のほか、一部の航空会社やメーカーはビジネスジェット分野に注力している。

例えばカナダの航空メーカーAirbusが発表した「ACJ220」は、同メーカーの短中距離用旅客機「A220-100」を ビジネスジェットにアレンジしたものだ。18つの客席と6つのリビングエリア設備というラグジュアリーさで、ワンランク上のビジネスジェットを狙っている。

「Silver Flight」は2人のオランダ人起業家が立ち上げた、新たなエコ・ビジネスジェット事業だ。「同等の航空機の半分の燃料で飛行する」という、環境への配慮をセールスポイントにしている。

コロナ時代は利便性だけではなく、安全・衛生の確保への意識が消費者間で高まっている。乗客同士の一定の距離感やプライバシーを配慮した ビジネスジェットの需要が拡大しても不思議ではない。

コロナ以前から増加していたチャーター便サービスとともに、今後急成長を遂げる可能性は高い。

3.ストレスを緩和しチャンスをもたらす「柔軟な雇用形態」

パンデミック以降、航空関連の雇用は凄まじい勢いで縮小している。スイスを拠点とする航空産業組織連合、航空輸送 アクショングループ(ATAG)は9月に発表した報告書の中で、最終的に4,600万人の航空関連雇用者が失業すると予想。給与カットなどで減収を余儀なくされる従業員も少なくない。

このような背景からANAが導入を予定している「副業制度」のように、柔軟な雇用形態を採用する企業が増える可能性がある。これは全従業員が勤務時間以外に、ほかの雇用主と契約できるというもので、2020年1月の開始が予定されている。

雇用のオプションを広げることで 従業員も雇用主も経済的・精神的ストレスを緩和でき、副業で得た新たな経験やスキルを自社の業務に活かすチャンスにもなるはずだ。

4.長期的な視点からの「コスト削減」

サービスや事業を縮小し、人件費を減らすだけでは有効なコスト削減とはいえない。効果的にコストを削減するためには、あらゆる角度から効率性を追究し、長期的な視点からコスト構造を分析・改善する必要がある。

幸いにも市場には、コスト削減に役立つ最新のテクノロジーが続々と登場している。例えばAI音声認識サービスやチャットボットを導入し、カスタマーサービスを自動化する、あるいは既存のリソースを見直し最適化するだけでも、コストと時間・労力の節約が期待できる。

ここでのリソースとはスタッフや設備を指す。フライトスケジュールが絶えず変化している現在、スタッフの役割や設備の割り当てなどを効果的に調節できていない場合、業務の延滞や損失を引き起こしかねない。

多くの国内線は徐々に回復基調にある。ワクチンが開発され世界中に普及すれば、国際線にも回復の兆しが見え始めるだろう。航空産業が史上最悪の氷河期を乗りこえたとき、新たな航空産業の歴史が始まるはずだ。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部