厚生労働省による雇用関係の助成金は、種類が非常に多く何かと複雑である。どれも重要な助成金であるが、一般的に使いやすいものだけ知りたいという経営者も多いだろう。今回は、雇用時の助成金やコロナ禍における雇用維持のための助成金について解説する。

中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

目次

  1. 雇用に使える助成金は「厚生労働省」
  2. 特定求職者雇用開発助成金
    1. 対象となる事業主
    2. 助成金の額
    3. 助成金の申請方法
  3. トライアル雇用助成金
    1. 対象となる事業主
    2. 助成金の額
    3. 助成金の申請方法
  4. 雇用調整助成金(新型コロナ特例)
    1. 対象となる事業主
    2. 助成金の額
    3. 助成金の申請方法
  5. 小学校休業等対応助成金
    1. 対象となる事業主
    2. 助成金の額
    3. 助成金の申請方法
  6. 助成金を活用しよう

雇用に使える助成金は「厚生労働省」

雇用したいとき・雇用を維持したいときに使える4つの助成金
(画像=taka/stock.adobe.com)

従業員の雇用に関して利用できる国の助成金は、厚生労働省が実施している。財源は雇用保険料で、助成金の種類は非常に多い。

<厚生労働省による主な助成金>

  • 雇用関係を維持するための雇用調整助成金
  • 再就職を支援するための労働移動支援助成金
  • 転職・再就職を応援するための中途採用等支援助成金
  • 特定の人を雇用するときの特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金
  • 雇用環境を整備するための人材確保等支援助成金
  • 仕事と家庭の両立を支援する両立支援等助成金
  • 人材開発のための人材開発支援助成金 など

このように、雇用に関係するものといってもさまざまな助成金がある。「助成金の対象だったのに、知らなくて申請しそこねた」とならないよう、どのようなシーンで使える助成金があるのかを事前に把握しておくことが大切である。

今回は数ある助成金のうち、どの企業でも利用しやすいものとして、新しい従業員を雇うときの「特定求職者雇用開発助成金」・「トライアル雇用助成金」を取り上げる。また、コロナ禍での雇用の維持に活用できる「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」、「小学校休業等対応助成金」を合わせた4つの助成金について解説する。

特定求職者雇用開発助成金

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特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や母子家庭の母、障害者など、一般に就職が難しいとされる人(特定求職者)を、ハローワーク等の紹介によって雇用した事業主に支給される助成金である。

対象となる事業主

以下の特定求職者を雇用した事業主が対象となる。

  • 高年齢者(60歳以上65歳未満)
  • 母子家庭の母等
  • 身体障害者・知的障害者

助成金の額

特定求職者雇用開発助成金は、支給対象期間(1期=6ヵ月)ごとに支給される。たとえば「30万円×2期」であれば、6ヵ月ごとに30万円の助成金が2回(計60万円)支給される仕組みだ。助成金の額や支給期間は、短時間労働者として雇用した場合とそれ以外で変わる。

【短時間労働者以外】

対象者 支給額 支給合計額
高年齢者(60歳以上65歳未満)
母子家庭の母等
30万円×2期
(25万円×2期)
60万円
(50万円)
身体・知的障害者 30万円×4期
(25万円×2期)
120万円
(50万円)
重度障害者等 40万円×6期
(33万円×3期※)
240万円
(100万円)
※第3期は34万円 ( )内の金額は中小企業以外の企業に対する助成金額となる。 【短時間労働者】
対象者 支給額 支給合計額
高年齢者(60歳以上65歳未満)
母子家庭の母等
20万円×2期
(15万円×2期)
40万円
(30万円)
重度障害者等を含む身体・知的障害者 20万円×4期
(15万円×2期)
80万円
(30万円)

【中小企業とは】

業種 資本金または出資金の総額 常時雇用する労働者
小売業・飲食店 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

助成金の申請方法

ハローワーク等から紹介があった特定求職者を雇い入れた後、助成金の支給対象期ごとに申請を行う。申請期限は、各支給対象期の末日の翌日から2ヵ月以内で、申請先は労働局かハローワークとなる。

なお助成金を受給するには、事業主や労働者が満たさなければならない要件がいくつかある。助成金を申請したい場合は、事前に申請要件を満たしているか厚生労働省のホームページやハローワーク等の相談窓口で十分に確認する必要がある。

※参照元: 厚生労働省HP「特定求職者雇用開発助成金」

トライアル雇用助成金

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トライアル雇用助成金とは、職業経験や技能等が十分でないため就職が難しい人をハローワーク等の紹介によって「トライアル雇用」した事業主に支給される助成金である。「トライアル雇用」とは原則3ヵ月の“有期雇用”のことで、開始から2週間以内にハローワークへの申請が必要となる。事業主が任意に定める「試用期間」とは別物である点に注意が必要だ。

トライアル雇用を行うことにより、事業主には労働者の適正を見極められるメリットがあり、労働者にとっては早期の就業が期待できる。

なお、トライアル雇用助成金には以下の3つのコースがある。

  • 一般トライアルコース
  • 障害者トライアルコース
  • 若年・女性建設労働者トライアルコース

今回は、一番上の「一般トライアルコース」について解説する。そのほかのコースでは、トライアル雇用期間などが異なるため、気になる方は厚生労働省のホームページ等で確認していただきたい。

※参照元: 厚生労働省HP「事業主の方のための雇用関係助成金」

対象となる事業主

次のいずれかに該当する者をトライアル雇用した事業者が対象となる。

  • 紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職を繰り返している
  • 離職している期間が1年を超えている
  • 妊娠、出産・育児を理由に離職した者であって、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
  • ニートやフリーター等で55歳未満
  • 母子家庭の母、父子家庭の父、生活困窮者等 など

助成金の額

支給対象者1人あたり、月額4万円(最長3ヵ月)だ。ただし、母子家庭の母、父子家庭の父については月額5万円になる場合もある。ただし、トライアル雇用の途中で常用雇用に移行した場合やトライアル雇用期間中に1ヵ月に満たない月がある場合は、金額が減少する。

なお、トライアル雇用を活用した者を継続して雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金の一部を受給できる場合がある。(母子家庭の母等)

助成金の申請方法

まずトライアル雇用の開始日から2週間以内に、「トライアル雇用実施計画書」を提出する必要がある。トライアル雇用が終了した後は、終了日の翌日から2ヵ月以内に「トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書」を提出し、助成金の支給申請を行う。

なお助成金を受給するには、事業主や労働者が満たさなければならない要件がほかにもあるため、厚生労働省のホームページやハローワーク等の相談窓口で十分に確認する必要がある。

雇用調整助成金(新型コロナ特例)

雇用調整助成金とは、経済上の理由によって事業活動の縮小をせざるを得ない事業主が、従業員に休業手当等を支払いながら一時的に休業させたり、教育訓練を受けさせたりするなどして雇用を維持した場合、その従業員に支払う休業手当等の一部を助成金として支給するというものである。

現在は新型コロナ特例によって、通常よりも支給対象・助成率・支給上限が拡充された雇用調整助成金が支給されている。(2020年12月末まで延長)

対象となる事業主

以下のすべての要件を満たす事業主が対象となる。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
  • 最近1ヵ月間の売上高などが前年同月比で5%以上減少している
  • 労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている

助成金の額

助成金の支給額については、以下の式を使用して算出する。

(平均賃金額×休業手当等の支払率)×助成率

<上限額>
1人1日あたり1万5,000円

<平均賃金額とは>
過去3ヵ月の間にその労働者に支払われた賃金の総額から計算した1日あたりの賃金額を指す。

<休業手当等の支払率とは>
休業手当等の額が平均賃金の何%かを示すもの。
60%以上が法定割合であり、これを下回ると雇用調整助成金が支給されない。

<助成率とは>
新型コロナによる緊急対応期間中は、下記の助成率となる。(通常時は中小企業3分の2、大企業2分の1)

中小企業 大企業
5分の4 3分の2

さらに事業主が会社都合の解雇や雇い止めなどを行わず、2020年1月24日から一定の水準で雇用者数を維持した場合は下記の助成率が適用できる。

中小企業 大企業
10分の10 4分の3

中小企業の定義は、「特定求職者雇用開発助成金」と同じである。

<助成金の上限額>

・休業手当
1人1日あたり1万5,000円(通常時は8,370円)
・教育訓練費の加算額
中小企業:1人1日あたり2,400円
大企業:1人1日あたり1,800円
(通常時はいずれも1,200円)

助成金の申請方法

通常は休業の計画届を提出し、休業の実施後に支給申請をする流れであるが、緊急対応期間中は計画届の提出を不要としている。なお小規模の事業所(概ね従業員が20人以下の会社や個人事業主)については申請様式が別になり、申請が簡略化されている。

小学校休業等対応助成金

小学校等が新型コロナウイルス感染症により、臨時休業したなどの理由で従業員が子どものために休業する場合、その従業員に有給休暇を取得させた事業主に支給される助成金である。保護者の所得の減少を防ぐためのもので、雇用調整助成金と同様に2020年12月末まで延長された。

なお保護者に取得させる有給休暇は、法律で従業員に付与されている年次有給休暇とは別扱いとする必要がある。

対象となる事業主

下記の小学校等が臨時休業したり、施設側から利用を控えるよう依頼されたりしたことによって休業した保護者(従業員)に対し、有給休暇を取得させた事業主が対象となる。

<小学校等>

  • 小学校、義務教育学校の前期課程、各種学校(幼稚園または小学校の課程に類する課程を置くものに限る)、特別支援学校(全ての部)
  • 放課後児童クラブ、放課後等デイサービス
  • 幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子どもの一時的な預かりなどを行う事業、障害児の通所支援を行う施設 など

助成金の額

助成金の支給額については、以下の式を使用して算出する。

有給休暇を取得した従業員に支払った賃金相当額×10/10

<上限額>
1人1日あたり15,000円(通常時は8,370円)

助成金の申請方法

「学校等休業助成金・支援金受付センター」に必要書類を簡易書留等で送付する。申請期間は、2020年3月18日~同年12月28日で、この間に必要書類が到達しなければならない。なお、申請は事業主単位で、なるべく全員分をひとまとめに申請することを呼びかけている。

※3 厚生労働省HP「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設」

助成金を活用しよう

ここまで、雇用するときに覚えておきたい助成金や、コロナ禍における雇用維持のための助成金について解説した。特に、「特定求職者雇用開発助成金」、「トライアル雇用助成金」、「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」、「小学校休業等対応助成金」の4つは、最低限押さえておきたいところだ。

申請のタイミングを考えて、上手に活用していただければ幸いである。

*本文は2020年9月末時点の情報です。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)