給与前払いサービスをご存じだろうか。具体的な仕組みについては後述するが、従業員に対する福利厚生の一環として、同サービスを導入する企業が増えている。

目次

  1. そもそも給与前払いサービスとはどんなもの?主要サービス7選
    1. 1. クレディセゾンの「Advanced Pay SAISON」
    2. 2. enigmaの「enigma pay」
    3. 3. 楽天カードの「楽天早トク給与」
    4. 4. 三菱UFJ銀行の「フレックスチャージ」
    5. 5. イデアホールディングスの「プリペイ」
    6. 6. ペイミーの「Payme」
    7. 7. プラネットサービスの「まえばらいどっとこむ」
  2. 給与前払いサービスを導入するメリットとは?
  3. 給与前払いサービスにかかるコストはどれくらい?
  4. 給与前払いサービス、従業員側・企業側からみた注意点
    1. 手数料の分だけ手取り給与が減る
    2. 勤怠データとの接続がうまくいかなかった場合のリスクや法解釈
  5. 導入の際には綿密に比較検討を!

普及が進みつつあるのは、導入のハードルが低いためだ。この記事では、給与前払いサービスの仕組み、従業員と企業の各々が得られるメリット、導入に当たっての注意点などについて詳しく説明する。

そもそも給与前払いサービスとはどんなもの?主要サービス7選

給与前払いサービスの導入企業が急増中!そのメリットと注意点は?
(画像=takasu/stock.adobe.com)

その名の通り、支払い予定日よりも前に給与を先払いしてもらえるのが給与前払いサービスだ。勤務先が同サービスを導入していれば、その従業員は給与のうちの一定額を前払い申請できる。

ただし、導入企業は自ら単独で従業員からの前払いに対応しているわけではない。第三者が提供している給与前払いサービスを利用し、申請の受け付けや支払いの手続きなどはすべてアウトソーシングしている。

給与の前払いに応じるためには、個々の従業員の勤怠状況を確認した上で支給可能な金額を計算する必要があり、経理担当者に余計な負荷がかかることになる。給与前払いサービスを提供している会社は、そういった作業を代行しているわけだ。

しかも、企業側は前払いに充てる資金を用意する必要がない。給与前払いサービスを提供している会社が立て替える仕組みになっているからだ。

導入先の従業員は事前登録を済ませた上で、PCやスマートフォンなどを通じてサービス提供会社のシステムにログインし、給与の前払いを申請する。すると、その内容に沿って処理が進められ、その従業員の指定口座などへ前払い金が送金される。

後日、こうして立て替えた前払い金はサービス提供会社からの請求に基づいて、導入企業が支払うことになる。もともと給与日になれば従業員に支払うお金であり、システム利用料などの負担が発生しないケースが主流なので、企業側にとって導入のハードルは非常に低いといえる。

家賃補助や社員食堂の運営、保養所の設置など、従来の福利厚生施策の多くは企業にとって負担の重いものが目立っていた。その点、給与前払いは非常に負荷が軽く、ニーズが急拡大していることから、サービスを提供している会社も増えている。

ではここで、主な給与前払いサービスを紹介しよう。

1. クレディセゾンの「Advanced Pay SAISON」

新たに専用口座を開設したり、前払い資金をあらかじめプールしたりといった手間は無用で、従業員の勤怠データを連携させるだけで導入できる。そのため初期導入コストが不要で、月額料金の負担もない。従業員も専用のウェブサイトで簡単に申請可能で、最短なら申請当日に入金される。

2. enigmaの「enigma pay」

中小零細から大企業まで幅広く対応しており、従業員からの申請に基づき、企業名義の口座から前払い金が振り込まれるようになっている。PCやスマートフォンなどからいつでも申請可能で、最短で申請即日に引き出せる。

3. 楽天カードの「楽天早トク給与」

勤怠データをアップロードするだけでシステムに即時反映される。従業員はいつでも前払いを申請でき、不明点は電話でも質問できるサポート体制が充実している。ただし、前払い金は楽天銀行口座で受け取ることが前提となっている。

4. 三菱UFJ銀行の「フレックスチャージ」

インターネットを通じて、PCや携帯電話から限度額の範囲内で前払い金を受け取ることができる。企業側もシステム面の投資が不要でコストも低く、ネット完結だから事務作業で煩わされることもない。

5. イデアホールディングスの「プリペイ」

銀行振込とともにプリペイド型のクレジットカードでも前払い金を受け取ることができることが、他の類似サービスとの大きな違いとなっている。勤怠管理ソフトと連携して事務処理が行われ、企業側の管理の負荷も軽い。

6. ペイミーの「Payme」

スマートフォンを通じて申請を行えば、最短で当日中に前払い金を受け取ることが可能だ。企業側の導入費用や運用費用も無料で、勤怠データの読み込み処理も自動化でき、管理も容易である。

7. プラネットサービスの「まえばらいどっとこむ」

給与前払いサービスのみならず、勤怠データの管理や給与計算なども一括して請け負うサービスを展開しており、すべてを委託することが可能となっている。出・退勤情報と前払いシステムとが連携し、従業員はいつでも申請できる。

給与前払いサービスを導入するメリットとは?

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給与前払いサービスの導入が増えているのは、企業側と従業員側の双方にメリットがあるからである。ここでは、それぞれのメリットについてクローズアップしてみよう。

まず、先に述べたように給与前払いサービスは企業側が重い負担を負うことなく福利厚生を拡充することが可能だ。その上、給与前払いに対応していることは、人材採用活動において大きなアピールポイントとなる。

企業によっては、導入後に採用応募数が飛躍的に増加したケースも見られる。特に派遣社員やパート、アルバイトの募集においては、給与前払いサービスを導入していることが強い訴求ポイントとなってくるようだ。

また、人材採用後も給与前払いサービスが退職の抑止力となる効果も期待できそうだ。誰しもお金が必要だから仕事に就いているわけで、賃金の支払いに関して融通が利くということは働く側にとって心強い材料となるため、前払い制度が離職率の低下を促す。

勤怠管理や給与計算の業務と自動連携できることから、給与前払いサービスを導入しても企業側の負荷が重くならないことは先述の通りである。しかも、導入前よりも人事や経理の連携が円滑になり、社内における生産性が向上するケースも見られるようだ。

採用活動にも効果を発揮しているように、従業員側にとっても金銭的な不安を軽減してくれる給与前払いサービスは、非常に魅力的な存在だといえる。

冠婚葬祭をはじめ、日常生活では不意の出費がつきもので、そういった場面で即座に前払いに対応してもらえることは大きな安心材料となってくるだろう。

給与前払いサービスにかかるコストはどれくらい?

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給与前払いサービスは、利用料や送金手数料といったコストを企業側が負担するパターンと、従業員側が負担するパターンに大別できる。まずは、企業側が負担するパターンのコストから見ていこう。

企業側が負担する場合、導入に当たって初期投資は特に必要としないケースが多い。しかしながら、数十万円の費用がかかるところもあるので、検討時にチェックしておくことが重要だ。月額費用についても無料のところが多いものの、数千円が徴収されるケースがある。

従業員側が負担するパターンでは、前払い金を受け取る際の手数料として送金額の3~6 %が徴収される。前払いサービスを頻繁に利用する場合、そのコスト負担は軽視できないものとなりそうだ。

いずれにしても、サービス提供会社によってかかってくるコストの設定に違いが見られるため、導入を検討する際には複数の資料を見比べ、しっかりと費用対効果を確認することが欠かせないだろう。

給与前払いサービス、従業員側・企業側からみた注意点

メリットの多い給与前払いサービスだが、いくつかの注意点もある。従業員側と企業側、それぞれの注意点を解説する。

手数料の分だけ手取り給与が減る

従業員にとってはいざという場合に助かるサービスとなる一方で、手数料負担の分だけ手取りの給与が減ってしまう結果となる点には留意したい。

無計画に前払いを繰り返していると、家計を圧迫することにもなりかねない。クレジットカードのキャッシングに適用される金利と比べれば低いとはいえ、高いケースでは6%もの負担となることには注意を払ったほうがいいだろう。

前払い金を勤務先に代わって完全に立て替える方式としている会社は、手数料が高めに設定されている傾向がうかがえる。きちんと手数料負担を把握した上で、計画的な利用を心掛けたいところだ。

勤怠データとの接続がうまくいかなかった場合のリスクや法解釈

給与前払いサービスは勤怠データとの連携が大前提となってくるので、うまく接続できなかった場合のリスクを想定しておく必要がある。また状況に応じて、勤怠システムに手を加える手間と費用が発生する可能性が生じる。

さらに導入に当たり、企業側は法的な解釈についても念頭に置いたほうがよさそうだ。

給与の支払いについて定めた労働基準法の「賃金支払い5原則」のうち、「直接払いの原則(会社が本人に直接支払う。ただし、本人の同意があれば本人名義の口座への振り込みや代理人への支払いも可)」と、「全額払いの原則(税金・保険料などを除き、天引きは不可)」に抵触する可能性が考えられるためだ。

現状、金融庁はファクタリングという仕組みを利用した給料前払いサービスについて「資金の貸し借りではなく、債権の売買」とするサービス提供会社側の主張を退け、貸金業法の対象となる(資金の貸し借りである)との見解を示している。

しかしながら、他の給与前払いサービスについては、「貸金業にあたらない」と金融庁は判断しているようだ。前払いしているのは賃金で利用者が返還義務を負わないことや、個々の従業員の与信(信用力調査)に基づいて支払っているものではないことなどがその理由だ。

導入の際には綿密に比較検討を!

比較的手軽に導入でき、福利厚生の充実で人材採用や定着率の面で有利に働きやすい給与前払いサービスは、働く側にとっても安心して仕事に取り組める環境を提供するものだといえる。

ただし、企業側の導入・運用コストが抑えられている一方で、従業員側の手数料負担が軽視できないケースも見受けられる。

また、自社の勤怠システムと円滑に連携できるか否かも重要なチェックポイントだ。導入を検討する際には、サービス提供会社の手数料体系とともにシステム連携に関しても入念に確認しておいたほうがいいだろう。

文・大西洋平(ジャーナリスト)