上場を目指すような大きい会社では、取引増加に伴い経理の負担も非常に重くなってくる。場合によっては経理の人員を増やす必要が出てくるため、余分なコストがかかるケースも少なくない。そんな経理の業務を効率化するうえで役立つのがパーチェシングカードである。法人カードと比べると知名度は低いものの本格的に事業拡大を目指す企業にとってはメリットの大きいカードだ。

鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

目次

  1. パーチェシングカードとは?
    1. 特徴1:カードレス
    2. 特徴2:事前に利用先を登録して利用する
    3. 特徴3:法人や部署、経費の名称ごとに作成する
  2. パーチェシングカードを持つメリット
    1. 経理業務のコストと労力を削減できる
    2. 紛失や盗難のリスクがない
    3. 経費の無駄遣い防止にもつながる
    4. 担当者が変更しても引き続き利用できる
    5. 利用限度額が大きい
  3. パーチェシングカードのデメリット
    1. 支払いの用途や場所が限られている
    2. 突然の出費などには活用しにくい
    3. 法人カードのような特典がほとんどない
  4. オススメのパーチェシングカード
    1. UCパーチェシングカード
    2. 三井住友パーチェシングカード
    3. パーチェシングサービス(JCB)
  5. パーチェシングカードで労力もコストも削減

今回はそんなパーチェシングカードの特徴やメリット・デメリット、オススメのパーチェシングカードを紹介する。

パーチェシングカードとは?

パーチェシングカードとは?オススメ3社のカードを徹底比較!
(画像=fox17/atock.adobe.com)

パーチェシングカードとは、企業が仕入れなどの支払いで利用できるカードの一種である。 パーチェシングは、英語でPurchasingと書き和訳すると「購入する」という意味だ。つまり仕入れなどの購入に用いることから「パーチェシングカード」と呼ばれている。企業が事業用の支払いで使用するカードには「コーポレートカード(法人カード)」と呼ばれるものもある。

コーポレートカードと比較するとパーチェシングカードの主な特徴は、以下の3つだ。

特徴1:カードレス

コーポレートカードは、一般的なクレジットカードと同じようにプラスチック製のカードとなっている。一方でパーチェシングカードは「カード」という名称は付いているものの実際にプラスチック製のカードは発行されない。カード番号やセキュリティコード、有効期限などカードとして利用するうえで必要な最低限の情報のみがカード会社から伝えられる。

実際にカードを保有しない点は、パーチェシングカードの持つ最大の特徴と言えるだろう。

特徴2:事前に利用先を登録して利用する

コーポレートカードの場合、一般的なクレジットカードと同様にカード利用可の店舗や会社であれば自由に好きなところで利用可能だ。一方でパーチェシングカードを利用する際には、事前にカードを利用する店舗や会社を登録する必要がある。そのためパーチェシングカードを使えるのは事前に登録した利用先のみとなるわけだ。

特徴3:法人や部署、経費の名称ごとに作成する

コーポレートカードを発行する際には、法人名義での作成が原則である。一方でパーチェシングカードは、法人名義はもちろん部署や経費項目ごとに作成することが可能だ。例えば宣伝広告費と水道光熱費、通信費に関してそれぞれに別名義でパーチェシングカードを作成・利用することができる。経費ごとに異なるカードを利用しつつ支払いは会社に一本化できるため、「どの経費にどのくらいの費用がかかったか」を一目で理解することが可能だ。

この柔軟性の高さも法人カードにはないパーチェシングカードの特徴と言える。

パーチェシングカードとは?オススメ3社のカードを徹底比較!
(画像=※筆者作成)

パーチェシングカードを持つメリット

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パーチェシングカードを持つとどのようなメリットがあるのだろうか。この章では、パーチェシングカードを保有することで得られる5つのメリットを紹介していく。

経理業務のコストと労力を削減できる

パーチェシングカードを利用する最大のメリットは、経理が行う業務に関して大幅なコスト・労力削減につながる点である。別々の会社に対してサービス・商品の利用料金を支払う場合、経費の種類によって別々の日に支払いを行わなくてはならない。また最終的にどこの会社にどのくらいの費用を支払ったかをその都度集計する必要があるため、経理業務の負担がとても大きくなる。

一方でパーチェシングカードは、カード会社が別々の会社から送られる請求を集計したうえで利用企業に対してまとめて請求する仕組みだ。支払い日や回数が一本化されるため、大幅に経理業務の負担を削減することができる。また支払いが1回で済むため、振込手数料の削減効果も得られるだろう。

紛失や盗難のリスクがない

法人カードの場合、プラスチック製のカードを常に持っておくことが必要だ。そのため紛失や盗難のリスクを常に背負うことになる。一方でパーチェシングカードの場合、カードレスなので紛失や盗難のリスクが一切ない。カード再発行や利用停止などの手間がかからない点は大きなメリットとなるだろう。

経費の無駄遣い防止にもつながる

経費の無駄遣い防止につながる点もパーチェシングカードに特有のメリットだ。法人カードはクレジットカードと同様に好きなときに好きな場所で利用できる。そのため事業に必要のない資産を購入したり従業員が私的な用途で利用したりする事態が生じかねない。こうした事態が生じると余分な経費がかさんでしまい資金繰りが悪化するリスクが高まる。

一方でパーチェシングカードは、あらかじめ登録した先でしか利用できない。そのため無駄な資産の購入や私的利用を防止できる。資金繰りが悪化しにくくなり健全な財務状況を維持できるだろう。

担当者が変更しても引き続き利用できる

パーチェシングカードは、経費や部署などの単位で登録できるカードである。そのため利用している担当者が変更した場合でも特段の手続きを経ずに引き続き利用し続けることが可能だ。

利用限度額が大きい

経費の種類やカード会社によって違いはあるものの一般的なコーポレートカードと比べて利用限度額が大きい点もパーチェシングカードの持つメリットの一つだ。例えば「UCパーチェシングカード」は、公式ホームページで「高額経費の支払いに対応」していることを明記している。今後事業規模を拡大したい企業にとっては、この点は魅力的なメリットに感じるだろう。

パーチェシングカードのデメリット

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パーチェシングカードに万能な印象を持つ人もいるだろうが、いくつかデメリットもあるため注意が必要だ。具体的には、以下の3つのデメリットに注意しておこう。

支払いの用途や場所が限られている

パーチェシングカードを利用する際には、支払いの用途や場所が限られている点に注意が必要だ。事前に登録した利用先でしか利用できないのは、無駄な経費を支払わずに済むメリットを生む。しかし裏を返せば未登録の場所では利用できない点がデメリットになる。また各カード会社では使用できる経費を限定しているため、明示されていない経費の支払いには利用できない可能性がある点にも注意しなくてはならない。

突然の出費などには活用しにくい

パーチェシングカードの持つデメリットとして無視できないのが「突然の出費などには活用しにくい点」である。ここまで何度も繰り返し解説してきたがパーチェシングカードはあらかじめ登録した利用先でしか使えないカードだ。そのためサーバー代やオフィスの賃料など毎月必ず発生する固定費の支払いには最適なカードと言える。

一方で急な受注に対応するための仕入れや新規プロジェクトなどでは、従来の取引では使ってこなかった店舗やサービスを利用する事態となりかねない。パーチェシングカードは、事前登録した利用先でしか使えないため、こうした急な出費には活用しにくいだろう。

法人カードのような特典がほとんどない

法人カード(コーポレートカード)には、空港ラウンジの無料利用やホテル優待などビジネスに役立つあらゆる特典が付与されているのが一般的だ。一方でパーチェシングカードは支払いの効率化に主眼をおいたカードであるため、上記のような特典は付与されていないケースが多い。空港ラウンジやホテルなどの施設をお得に使いたい場合は、コーポレートカードの利用が良いだろう。

オススメのパーチェシングカード

パーチェシングカードと呼ばれるものは、世の中にたくさんある。今回は、数あるパーチェシングカードの中からオススメできる3つのカードを紹介していく。

UCパーチェシングカード

UCパーチェシングカードは、クレジットカード大手のクレディセゾンが発行するパーチェシングカードだ。カードのブランドは、VISAまたはMastercardのいずれかから選択できる。利用可能枠は、話し合いのうえで同社が決定するのがルールだ。また年会費に関しても個別設定が適用される。そんなUCパーチェシングカードのおすすめポイントは、経費名ごとにカードを作成できる点だ。

費用の種類に応じて作成することで「どの経費にどのくらいのコストがかかったか」を管理しやすくなるだろう。

三井住友パーチェシングカード

三井住友パーチェシングカードは、三井住友が主に大企業・中堅企業向けに提供しているパーチェシングカードだ。UCパーチェシングカードとは異なり利用可能なブランドはVISAのみとなっている。利用限度枠は、会社全体で設定するのとは別にカードの使用者ごとに設定することも可能だ。こちらのカードのおすすめポイントは、請求書やご利用明細に関して「会社全体」「部事業所別」「カード別」の3種類が同社から送付されてくる点である。

3種類の明細や請求書を分析すれば経費の把握や予算管理をより精密に行うことが可能だ。なお年会費に関しては、1会員目は1,375円、2会員目以降は440円(ただし上限は3万3,000円)となっている。

パーチェシングサービス(JCB)

最後に紹介するのは、旅行大手JCBが提供しているパーチェシングサービスだ。JCBのパーチェシングサービスは、JCBとの加盟店契約を締結している店舗で使用した経費が対象となる。使用可能な店舗が限られているのはデメリットだがUCと同様に「経費の種類」ごとに会員番号を発行できる点は魅力的だ。年会費や限度額を知りたい場合には、個別でJCBにお問い合わせしなくてはならない。

JCBのパーチェシングサービスに興味がある人は、お問い合わせしてみると良いだろう。

パーチェシングカードで労力もコストも削減

パーチェシングカードは、経理業務にかかる労力やコストを削減するうえで最適なソリューションだ。またカードを会社や部署、経費などの項目別に作成できるため、より経理業務を効率化する効果も期待できる。突然の出費に対応しにくいなどのデメリットはあるもののカードレスで紛失する心配もないため、一般的な法人カードと比べて利便性は高いだろう。

今回紹介したパーチェシングカードの中からぜひ自分好みや要望に合ったものを見つけて活用してはいかがだろうか。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)