複数の事業を展開しながら多角経営によって経営の安定化を図るために、新規事業に乗り出そうと意気込む経営者は多い。しかし思うようにアイデアが浮かばずに苦労する声がよく聞かれる。新しい事業を始めるには斬新な発想が求められると思い込むあまり、そのハードルを上げて自らを苦しめてはいないだろうか。ちょっとした工夫を凝らせば、斬新な創造性が無くても、新規事業のアイデアを生み出すことは、実はそれほど難しくはない。

目次

  1. 社内からよい新規事業アイデアを集めるには
  2. 新規事業のヒントは「課題の設定」から!4つの着眼点
    1. 1.既存事業のサービスや製品
    2. 2.既存事業の製造・物流過程
    3. 業界全体
    4. 社会全体
  3. 新規事業を展開する方法は?
    1. コアビジネスから発展
    2. 同業他社を観察
    3. テクノロジーを駆使
    4. 異業種・産学連携
  4. 創造力への依存から現実的な課題解決へ

社内からよい新規事業アイデアを集めるには

新規事業のアイデアを出す方法とは?着眼点のポイントや展開の方法について解説
(画像=metamorworks/ stock .adobe.com)

新規事業の斬新なアイデアを経営者がスタッフに求めることは、ベンチャー企業などではよくあることだろう。社内からの提案がスタートのきっかけだったという成功事例としては、AmazonのAWSやGoogleのGmailなどが有名だ。

従業員の中には、通常の業務以外の分野にも広くアンテナを張り、新規事業へと発展するアイデアを持っている人もいるだろう。また、会社が大きくなってくると経営陣は現場から遠ざかり、新しいアイデアが生まれにくい傾向もあるため、現場の社員に意見を求めることは有効だろう。同時に、若手にチャンスを与えて有能な人材を抜擢する機会としてもよい。

しかし、アイデアを出す側の従業員が、通常の業務に追われる中で公募締め切りを迫られるとなると取り組みに意欲は湧かないだろう。忙しい時期に他のことをやっている暇はない、と思われてしまうのが普通だ。そこで、いいアイデアが出た場合には、賞金が出る、予算が出て事業リーダーになれるといった何らかのメリットが必要となってくる。従業員にとってメリットが大きければ、よりアイデア出しが活発化して、クオリティの高い新規事業案が生まれることも考えられる。

社内でアイデアを公募する場合は、経営者自らがアイデアの実現性を見極めることが大切だ。革新的なアイデアであったとしても、事業として成功するかどうかは未知数であり、経営者としてそのアイデアにGOサインを出すのは決して容易くはない。募集要件が自由すぎて曖昧だと、自社にとって有益なアイデアが出てくる確率は低いだろう。「自由に何でも提案してよい」となると、出てくるアイデアも漠然としたものになるのは当たり前だ。そこで、公募の段階で募集要件を細かく設定することで具体的な事業アイデアが出やすくなるように公募方法を工夫することが大切だ。

また、全ての応募に対して丁寧なフィードバックをすることも忘れずに。応募する社員の多くは、自分のアイデアが採用され製品やサービスとなり社会のためになることを願っているはず。社員のモチベーションを高める目的もあるので、あくまでもフェアで透明性の高い制度としたい。

新規事業のヒントは「課題の設定」から!4つの着眼点

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下地が全くないところから画期的なアイデアを生み出し、新規事業に繋げていくことは、実現可能性も低く収益性の面においてもリスクが存在するといえる。新しく何かを生み出そうとするのではなく、ビジネスの現実を直視することで浮かび上がる課題をベースにして、新規事業でその解決に取り組む方法が、実現性も高くリスクも抑えられるだろう。

課題をどこに探し求めるのかという疑問にぶつかるかもしれないが、そのヒントはさまざまなところに隠されている。

1.既存事業のサービスや製品

コアビジネスが軌道に乗っている企業においても、そのサービス内容や製品について改善の余地は残されているはずである。顧客からのフィードバックや事業担当者の意見をもとに、既存事業の中で改善に取り組む、あるいは抜本的な解決には新規事業を立ち上げることでその課題の解決に取り組むという経営戦略も考えられる。既存のサービスや製品の最強の商品価値はどこにあるのか、定期的に自分たちで客観視しながら考えていく必要がある。今一度自社のサービスや製品を初心に帰って見直してみることが、新規事業への第一歩となる可能性を秘めている。

2.既存事業の製造・物流過程

サービスや製品の最終段階にたどり着くまでの製造や物流過程に焦点を当てると、様々な課題が浮かび上がってくることもある。こうしたプロセスは自社の顧客には開示されていないため、顧客の声というよりは、担当の従業員から課題をヒアリングすることで、その解決に向けた新しいアイデアが浮かぶ契機に繋がることが期待される。

製造や物流過程では様々な取引先との兼ね合いもあるため、取引先との関係も保ちつつ、新たな事業への糸口を見つけていくのがカギとなるだろう。

業界全体

業績が好調に推移している企業では、課題が見つかりにくいこともある。商品やサービスの課題を探るよりも、売上アップのための戦略を練ることが優勢となるためである。

その場合には、同業他社も含め、業界全体を見渡すことで課題が浮かび上がる可能性がある。業界に潜在する課題を見つけ出し、その解決策にいち早く乗り出せば、新規事業の展開とともに、ライバル社に差をつけるチャンスも生まれるだろう。

社会全体

自社や業界内で課題を見つけられないケースでは、さらに視野を広げて社会全体を見渡すのも一手である。日本国内に目を向ければ、少子高齢化、労働力不足などに直面しており、さらにグローバルな視点に立つと、気候変動、感染症リスクなど様々な課題が存在する。社会全体の課題であれば、その解決ともなる新規事業には、ニーズや需要が潜在しているため、事業を展開する上で収益性のリスクをコントロールできる。

新規事業を展開する方法は?

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既存事業のサービスや製品、既存事業の製造・物流過程、業界全体、社会全体から課題を見つけることができれば、その解決に向けて新規事業として取り組むことになるが、その取組み方法もいくつかのパターンに分類される。

コアビジネスから発展

経営が軌道に乗っている企業であれば、事業を通して技術やノウハウが蓄積されている。この経営資源を最大限に活用して新規事業に繋げるというのがオーソドックスなパターンだ。自社が保有する技術やノウハウを活用すれば、新たに大規模な投資は不要であり、新規事業の初期コストが抑えられる。

また、既存事業で培った認知度や知名度も活用しやすいため、新規事業における顧客の獲得もスムーズに進む可能性が期待できる。コアビジネスから新規事業を展開するには、既存事業のサービスや製品、既存事業の製造・物流過程における課題を中心に分析することが必要だ。

同業他社を観察

普段はしのぎを削る同業他社のライバルも、新規事業を検討する上では絶好のお手本となる。特に、コアビジネスとは類似しないような事業を手掛けているライバル社が存在する場合、参考に値するだろう。

ライバル企業がなぜコアビジネスとは一見すると関連性のない事業を展開しているのか、その事業によってコアビジネスにどのようなシナジー効果がもたらされているのかを分析すると、新規事業のアイデアが生まれてくるだろう。新規事業のリスクを抑える目的として、ライバル社の多角経営モデルをコピーして新規事業に取り組むのも戦略の1つとなり得る。

テクノロジーを駆使

新規事業として解決に取り組む課題のハードルが高そうな場合は、自社の既存のノウハウに加え、テクノジーを導入することで新規事業への道が開ける可能性がある。業務の効率化やコスト削減を検討する際、まずテクノロジーを活用しない手はない。

特に、IoTやAI、ドローンなどの最新テクノロジーのビジネス界における存在感は日を追うごとに増加している。新規事業で解決を目指す課題に対し、テクノロジーをどのように活用できるかという視点を持つことで、ビジネスアイデアに繋がることが期待できる。

異業種・産学連携

新規事業で解決したい課題が明確になり、ニーズや需要も確保できるにも関わらず、自社にノウハウや技術がないために、新規展開を断念せざるを得ないという経営者も多い。また、貴重な技術やノウハウを持っており、外部から注目されていたとしても、経営者が自社の外に目が向いておらず、その機会を損失していることもある。このような場合、オープンイノベーションで外部の技術やノウハウを活用する戦略を展開することもできる。

オープンイノベーションとは、内部と外部の技術やアイデアを循環させ、創出されたイノベーションを組織外で展開することである。外部のパートナーともなる相手は、異業種の企業や大学、研究所など幅広い。特に人材や資源が限られる中小企業であれば、外部の技術やノウハウを積極的に活用することで、事業展開までの時間の節約も可能となる。

創造力への依存から現実的な課題解決へ

経営を安定させるための鍵ともなる多角経営には、事業の柱を複数にまたいで展開しなければならない。コアビジネスのみで成長を遂げた企業であれば、新規事業で別の柱を成長させていくことになるだろう。「新規」という言葉につられて、何か新しいことをするために創造力を掻き立てようとアイデアを練っても、現実的には事業として展開できる見込みはそれほど高くない。たとえ事業にこぎつけたとしても、成功する保証はどこにもないのがビジネスの世界の厳しさでもある。

こうした創造力に頼る新規事業の展開ではなく、現実を直視して課題をピックアップすることが新規事業に向けた最初のステップとなる。これまでの自社の技術やノウハウを活用するパターンと、同業他社のモデルを参考にするパターンもある。

新規事業のアイデアが浮かばずに苦労している経営者は、奇抜なアイデアを創造しようと肩肘を張るのではなく、まずは課題の分析からスタートすれば、自ずとその先の道が開けてくるだろう。

文・志方拓雄(ビジネスライター)