もともと富裕層向けに発行されたアメックスのクレジットカードは、他のカードと比べて抜群のステータスと信用を誇る。海外などでビジネスを考えている経営者にとって、年会費以上の価値があるだろう。今回は、アメックス法人カードについて詳しく解説する。
目次
一般カードと法人カードの違い

最初に、個人として利用する一般カードと法人カードの違いについて確認しよう。
法人カードには、「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の2種類がある。
- ビジネスカード …個人事業主または従業員20名未満の中小規模企業向け
- コーポレートカード …従業員20人以上の大規模な企業向け
法人カードは個人カードと比較して、ビジネス用途での使い勝手が良い。最大の特徴としては、利用限度額が高い点が挙げられるだろう。ビジネス目的での出費は、一般に個人での出費と比べて桁違いに金額が大きくなる。法人カードならビジネス目的での出費にも安心して利用できる。また、支払口座を会社名義にできること、従業員用の追加カードが発行可能な点も法人カードの特徴だ。
そのほかの付帯サービスについても、ビジネスカードは経費管理や出張に役立つサービスが、個人カードは個人でのエンターテインメントや旅行などに役立つサービスが備えられている。
アメックスは、法人カードと個人カードの2枚持ちも可能だ。ビジネス用途には法人カードを、個人用途には個人カードを活用するなど使い分けることができれば、シーンに応じたサービスを存分に利用できる。また、会社と個人の支出をしっかり区別することもできるようになるだろう。
アメックスが発行する法人カードは3種類
アメックスが発行する法人カードは、以下の3種類である。
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カード
また、アメックス以外のカード会社から提携カードも発行されている。ここでは、それらの基本情報について詳しく見ていこう。
アメックス法人カードの年会費・限度額
3種類のアメックス法人カードの、年会費その他の基本情報は以下のとおりだ。
内容 | ビジネス | ゴールド | プラチナ |
年会費 | 1万3,200円(税込) | 3万4,100円(税込) | 14万3,000円(税込) |
追加カード年会費 | 1枚6,600円(税込) | 1枚1万3,200円(税込) | 4枚まで無料、5枚目以降は1枚1万3,200円(税込) |
利用可能枠 | 一律の制限なし | 一律の制限なし | 一律の制限なし |
ポイント付与レート | 100円で1ポイント | 100円で1ポイント | 100円で1ポイント |
ETCカード年会費 | 550円 | 550円 | 550円 |
旅行保険(自動付帯) | |||
海外死亡 | - | 5,000万円 | 5,000万円 |
海外傷害 | - | 200万円 | 1,000万円 |
海外損害 | - | 100万円 | 100万円 |
海外賠償責任 | - | 4,000万円 | 5,000万円 |
国内死亡 | - | - | 5,000万円 |
国内入院日額 | - | - | 5,000円 |
国内通院日額 | - | - | 3,000円 |
旅行保険(利用付帯) | |||
海外死亡 | 5,000万円 | 1億円 | 1億円 |
海外傷害 | 300万円 | 300万円 | 1,000万円 |
海外損害 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
海外賠償責任 | 4,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 |
国内死亡 | 5,000万円 | 5,000万円 | 5,000万円 |
国内入院日額 | - | - | 5,000円 |
国内通院日額 | - | - | 3,000円 |
ショッピング保険 | |||
海外 | 500万円 | 500万円 | 500万円 |
国内 | 500万円 | 500万円 | 500万円 |
利用可能額に関しては、アメックス法人カードではいずれも一律の制限が設けられていない。審査の際の申告内容や支払状況など、法人の信用に応じて個別に利用可能枠が設定される。
アメックス以外が発行する法人カードも
アメックスの法人カードには、アメックス以外が発行する提携カードもある。アメックスの提携カードは、クレディセゾンや三菱UFJニコスなどが発行している。
クレディセゾンは、2種類のカードを発行している。
- セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
- セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
それぞれの基本情報を見てみよう。
内容 | コバルト | プラチナ |
年会費 | 1,100(税込) | 2万2,000円(税込)(ただし年200万円以上利用で次年度1万1,000円(税込)) |
追加カード年会費 | 無料 | 3,300円(税込) |
利用可能枠 | 一律の制限なし | 一律の制限なし |
永久不滅ポイント(1,000円=1ポイント/無期限、1ポイント=5円相当) | 海外2倍 | 海外2倍 |
SAISONMILE CLUB | - | ○(年会費無料) |
海外旅行保険 | - | 最高1億円 |
国内旅行保険 | - | 最高5,000万円 |
上の表を見ると分かるように、同じアメックスの法人プラチナカードでも、クレディセゾン発行の提携カードは、アメックス発行のプロパーカードと比較して年会費が大幅に安くなっている。また、ポイントやマイレージなどはクレディセゾン独自のものもある。
しかも、アメックスが提供しているサービスは提携カードでも利用可能だ。プロパーカードと提携カードの選択は、費用とサービス内容をよく比較して検討する必要があるだろう。
アメックス法人カードの4つのメリット
アメックス法人カードの4つのメリットを見ていこう。
1.ポイントを貯めやすい
まず挙げられるメリットは、ポイントを貯めやすい点である。アメックスのポイントは支払額100円ごとに1ポイントが付与される。VISAやJCBなど他の法人カードは、1,000円で1ポイントとなるのが一般的だ。
100円ごとにポイントが貯まるため、端数まで効率的にポイントが獲得できる。また、公共料金の支払いにも対応しているため、他の法人カードと比べてポイントが貯まりやすい。
貯まったポイントは、アメックスのポイントプログラム「メンバーシップ・リワード・プラス」に登録することにより、以下のように利用できる。
- マイルや他の提携ポイント、楽天ポイントやTポイントなどへ移行する
- カードの支払いやオンライン・ショッピングでの支払いに利用する
- アイテムや商品券、クーポンに交換する
2.仕事に役立つ特典が多い
仕事に役立つ特典が多いのもアメックス法人カードのメリットとして挙げられる。アメックス法人カードによるビジネスのサポートプログラムには以下のようなものがある。
・クラウド会計ソフトfreeeとのデータ連携
アメックス法人カードはクラウド会計ソフトfreeeとデータ連携し、利用情報をすべてfreeeに取り込むことができる。freeeは個人事業主や中小企業経営者に人気の会計ソフトだ。freeeに利用情報を取り込むことで、入出金情報の手入力が不要となり、会計処理が大幅に効率化される。
・「あとリボ」の利用が可能
アメックス法人カードは「あとリボ」が利用可能だ。突然のビジネスチャンスで、緊急に資金調達が必要となることもあるだろう。その場合には、カードで資金を調達したあとに、オンラインからリボ払いに変更できる。手持ち資金に余裕ができたときには、増額返済や一括返済への変更ももちろん可能だ。
・カードローンが利用できる
資金調達のために、カードローンを利用することも可能だ。カードローンの利用には、最大3ヵ月間の利息キャッシュバックや3,000ポイントボーナスの特典もある。
・ビジネス・セービングの利用が可能
アメックス法人カードでの支払いにより、宅配便やレンタカー、電話代行サービス、DHLエクスプレスなどが割引となる優待プログラムを利用できる。
・調査・コンサルティングが利用できる
企業情報のオンライン取得サービスやマーケティングリサーチサービス、ビジネスコンサルティングなどのサービスを特典付きで利用できる。
・福利厚生サービスが利用できる
全国の福利厚生施設やシェアオフィス、コワーキングスペースなどを、登録料無料といった特典付きで利用できる。
旅行保険が充実している
アメックス法人カードは、旅行保険が充実している。前述のとおりゴールドまたはプラチナなら、カードを所持するだけで加入できる「自動付帯」で最大5,000万円、旅行費用をカードで支払う「利用付帯」なら最大1億円の保険をかけることが可能だ。
出張で使えるサービスが充実している
出張の際にはさまざまな手配が必要になるものだ。アメックス法人カードは、出張に便利なサービスも充実している。利用できるサービスには以下のようなものがある。
・オンライン旅行サイト
HIS アメリカン・エキスプレス・トラベル・デスクやアメリカン・エキスプレス・トラベル オンライン、アメリカン・エキスプレス JALオンラインなどにより、国際線・国内線の航空券やホテル、レンタカーなどの予約を優待料金で利用できる。
・自宅から空港まで
国内外29ヵ所の空港ラウンジを、カード所有者と同伴者1名が無料で利用できる。また、手荷物宅配サービスや空港パーキング、ポーターサービス、クロークサービスなども優待料金または無料で利用可能だ。
・出張先で
JR新幹線予約サービスや海外出張先での日本語サポート、レンタカー、海外用レンタル携帯電話などが利用できる。
アメックス法人カードの3つのデメリット
以上のように多くのメリットがあるアメックス法人カードだが、デメリットもある。デメリットは以下のとおりだ。
1.年会費が高い
アメックスの法人カードは、他の法人カードと比べて年会費が高めに設定されている。ゴールドカード同士の比較では、だいたい「倍程度」かかると思って良い。ただし、年会費についてはクレディセゾンなどの提携カードの利用で抑えることも可能だ。
2.審査に時間がかかることが多い
審査に時間がかかることが多いのも、アメックス法人カードのデメリットといえる。審査期間は「1~3週間」とされている。緊急の資金需要に間に合わなくなるケースもあるため、カードの申し込みは先を読み、早めに行う必要があるだろう。
3.ETCカードを増やしにくい
アメックス法人カードのデメリットとして、ETCカードが増やしにくい点も挙げられる。他の法人カードではETCカードは年会費無料で発行されることが多いのに対し、アメックス法人カードの場合は年会費550円(税込)がかかる。また、ETCカードの発行枚数にも制限が設けられている点にも注意が必要だ。
アメックスの法人カードは年会費以上の価値がある?
アメックス法人カードは、メリットは多くあるものの、年会費が高いなどのデメリットもある。しかし、年会費以上の価値があるといえるだろう。なぜなら、アメックスのクレジットカードはステータスがあるからだ。
海外のホテルのフロントやレンタカーの受付など、自分を誰も知らない場で自分のステータスを証明するのはクレジットカードである。アメックスはもともと富裕層向けに発行しているクレジットカードであり、Microsoft元社長のビル・ゲイツや、世界的投資家のウォーレン・バフェットなどもアメックスを愛用しているといわれている。
「他のクレジットカードとは別物」といわれることすらあるアメックスの法人カードを所持していれば、自分の信用を見ず知らずの人たちに示すことが可能になるだろう。アメックス法人カードを所持するのは、その「ステータス」や「信用」を手に入れるためでもある。それを思えば、年会費が多少高額であっても十分価値があるといえる。
アメックス法人カードでビジネスを切り開こう
多くのメリットがあり、さらに抜群のステータスと信用を有するアメックスの法人カードは、経営者が所持するべきクレジットカードだといえるだろう。ビジネスを切り拓く上で、ステータスと信用を重要視する場合は、アメックスの法人カードを選択肢に加えるのもよいだろう。
※本文は2020年9月時点での情報です。
文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)