中国経済,ユニコーン
(画像=Webサイトより)

目次

  1. はじめに
  2. 盛り上がる中国ユニコーン業界
  3. 中国ユニコーン、企業価値100億ドル超え多数 断トツはアント・フィナンシャル
    1. 6位 京東数字科技 金融全般(北京)
    2. 5位 快手 ショート動画アプリ(北京)
    3. 4位 菜鳥網絡 物流サービス(深セン)
    4. 3位 ディディチューシン(滴滴出行) ライドシェア(北京)
    5. 2位 バイトダンス(Bytedance) 動画アプリ(北京)
    6. 1位 アント・フィナンシャル(螞蟻金服) ネット金融(杭州)
  4. 「野蛮な成長」を黙認

はじめに

ユニコーンと呼ばれる企業があることをご存知だろうか。企業としての評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業のことをそう呼ぶ。

ユニコーンは額に1本の角を持つ伝説上の生き物。ユニコーンのように出合うことがまれで、巨額の利益という幸運をもたらす可能性があることから、その名があるという。

もともとは、米国で使われ始めた言葉だが、中国でも有力ベンチャー企業が次々と誕生する中、こうした企業を「独角獣企業」と呼ぶようになった。中国にはどのようなユニコーン企業があり、どのような戦略で成長を果たしたのか、中国のベンチャー企業事情を紹介しよう。

盛り上がる中国ユニコーン業界

中国のコンサルティング会社「長城戦略コンサルティング」は2020年7月末、「2019年中国ユニコーン企業リポート」を発表した。この指数では、2019年末の段階で企業価値10億ドル以上のユニコーン企業と見積もられる企業を取り上げている。いずれも今後の新規上場などが予想され、市場で最も注目を集める企業群である。

中国のユニコーン企業はいまや28都市に分布している。北京、上海、深セン、杭州といった大都市やスタートアップの立ち上げが活発な地域で全体の71.6%の156社が集中しているが、その他にも広州に11社、南京にも10社程度あり、新たに済南、張家口、嘉興にもユニコーン企業が登場するなど、その流れは着実に中国全土に広がっているようだ。

また、ユニコーン企業が進出している分野も幅広い。物流、医療・ヘルスケア、人工知能(AI)、オンライン教育の企業数が上位を占め、自動車サービス、産業用インターネット、ビッグデータ、クラウドサービスなどの分野も多い。

中国ユニコーン、企業価値100億ドル超え多数 断トツはアント・フィナンシャル

今回は「2019年中国ユニコーン企業リポート」から、企業価値ランキング上位6社を見ていくことにしよう。

6位 京東数字科技 金融全般(北京)

中国ネット通販大手の京東(JD)グループの企業。13年10月から独立運営を開始。もともとは京東金融という社名でサプライチェーンファイナンス、消費者金融、クラウドファンディング、資産管理、モバイル決済、保険、証券、農村金融、金融テクノロジー、の9大業務を担当。アリババグループにおける、アント・フィナンシャルと同じ役割を担っていた。

2017年にグループからスピンアウトしたが、現在は京東グループに再度舞い戻っている。

15年4月 ネット金融「京東銭包」モバイル決済「京東支付」 6月、米国ビッグデータのZest Financeへ出資。
16年7月 クラウドファンディング「京東衆創」開始。12月、プライベートバンク業務「東家財富」開始。
17年2月 創業者・劉強東が「京東金融は、証券業、信用調査業、銀行業の申請を行う」と戦略を発表。
18年11月 京東金融から京東数字科技(JD Digits)に改称。 20年6月 京東グループ傘下へ戻る。

2020年9月12日には、京東数科が上海証券取引所のハイテク市場「科創板」に上場する計画があると報道されており、203億6,700万元(約3,100億円)の調達を見込むという。

5位 快手 ショート動画アプリ(北京)

日本ではあまり馴染みがない企業かもしれないが、調査会社CBNデータによると、中国国内のデイリーのユーザーは4億人を超えるというショートビデオアプリ。それが「快手(kuaishou)」だ。

快手は最長57秒の動画を投稿・シェアでき、ライブ放送を行うこともできるアプリだ。日本ではより有名な「ティックトック(TikTok)」のライバル企業といえる。ただ、歴史はティックトックよりも快手のほうが5年ほど長い。リリース当初はGIF画像の共有サービスであったが、2013年からショートムービーアプリに変わり、現在の形態に至る。

アリババグループがユニコーン企業を席巻する中、快手はテンセント・ホールディングス(騰訊)からの出資を受けている。快手も2021年1月に香港市場への上場を見据えていると言われており、今後も目が離せない企業だ。

4位 菜鳥網絡 物流サービス(深セン)

13年5月、アリババグループ、銀泰集団(小売り)が中心となり、復星集団(投資)、富春集団(通信技術)、申通集団(物流)、園通集団(物流)、中通集団(物流)、韵達集団(物流)らが共同して設立したイノベーション型のネット技術開発企業。

董事長(会長)には、アリババ創業者の馬雲が就いていたが、現在はアリババグループの張勇(Daniel Zhang)が董事長、元アマゾンで物流業務に取り組んだ萬霖(Lin Wan)がCEOという経営体制だ。

同時に「菜鳥物流」という倉庫物流会社を設立し、こちらが実務を担っている。これまでに3,000億元(5兆1,900億円)もの巨額投資が行われ、全国10カ所以上にスマート物流を目指す基地を建設している。菜鳥の誕生は実質的にはアリババの物流大計画に沿ったものだ。今は中国のGDPに占める18%の物流費を先進国並みの12%に下げる先兵になろうとしている。

評価額は約300億ドルで、その額もここ数年の間に上昇し続けている。

3位 ディディチューシン(滴滴出行) ライドシェア(北京)

評価額は580億ドルを超えており、中国国内のライドシェア業界にはライバルはいない「ディディチューシン(滴滴出行)」。17年12月、40億ドルの融資を発表。アブダビ政府100%出資の投資会社ムバダラとソフトバンクを含むと伝えられた。

18年以降は日本にも進出し、中国と同様のタクシー配車サービスなどを展開している。

12年6月 会社設立、9月 配車アプリの運用を開始。
13年4月 テンセントが1500万ドルを融資。
14年1月 1億ドルの融資、そのうちテンセントは3000万ドル。
16年1月 15年の利用数14億3000万回、顧客数2億5000万人に。
16年5月 アップルより10億ドルの融資。
16年7月 ウーバー中国を合併。
18年6月 DiDIモビリティジャパンを設立し日本進出。

ただ、ディディチューシン(滴滴出行)の今後の上場については、新型コロナウイルスをはじめとした多くの不確定要素が待ち受けている。2019年にアメリカで上場したUberとLyftはどちらも上場直後に株価が急落。投資家からも同様のビジネスモデルに関しては不安視されている面もある。

中国ユニコーンにとってすでに国内市場は飽和状態になりつつあり、ディディチューシン(滴滴出行)も海外展開を加速させている。今後さらなる事業展開をどのように行うのかが注目される。

2位 バイトダンス(Bytedance) 動画アプリ(北京)

アメリカ国内でのダウンロード禁止、事業売却問題で話題になった「ティックトック(TikTok)」の運営企業が「バイトダンス(Bytedance)」だ。評価額は750億ドルで、日本円では8兆円に迫る勢いである。ちなみに中国国内向けのアプリは「ティックトック(TikTok)」ではなく「抖音」というアプリである。

「ティックトック(TikTok)」も5位の「快手(kuaishou)」と同じくショート動画アプリだ。中国国内では1日のユーザー数が6億人を超えでおり、中国のネットユーザーのほぼ半数が抖音を毎日利用しているという。また、モバイル関連の調査企業アップアニーによればダウンロードが禁止になったアメリカでは直前に駆け込み需要も発生。アメリカだけで約5,000万人がティックトック(TikTok)ユーザーだという。

バイトダンス(Bytedance)は、ティックトック(TikTok)以外にも動画アプリの「BuzzVideo」、カメラアプリの「Ulike」を展開しており、150以上のグローバル市場、75の言語でアプリ製品を提供している。

1位 アント・フィナンシャル(螞蟻金服) ネット金融(杭州)

評価額は約1,500億ドル。日本円にして15兆円以上と、2位のバイトダンス(Bytedance)の約2倍の企業価値で、中国では圧倒的トップのユニコーン企業だ。

アリババのネット通販の決済用資金プール「アリペイ(支付宝)」が登場したのは03年だった。14年、アント・フィナンシャルを設立し、アリペイを移管した。アリペイは、モバイル決済プラットフォームとして発展するとともに、余額宝(MMF)花唄(小口金融)、芝麻信用(信用調査、格付け)などさまざまな派生商品を生んでおり、ネットバンク「網商銀行」の設立にも関わっている。アリババグループの行う投融資の司令塔でもあり、その注目度、影響度は極めて高い。

「野蛮な成長」を黙認

これらの6社に共通することは、みな驚くほど社歴が若いことだ。10年前には影も形もなかった企業ばかりである。アント・フィナンシャルは社歴が長いが、20年前には存在していない。

ほとんどの企業がITや技術の進化に乗って、新しいビジネスの地平を切り開いていった印象が強い。そして今やこれほどの企業価値を持ち、大きな付加価値を生産しているのである。これは認めなければならない。

歴史のある大企業の不祥事ばかり伝えられ、新しい企業の登場しない日本とは、大きな違いを感じる。中国人は、成長のためには法や規則など気にしないし、当局もそんな「野蛮な成長期」を黙認している。業界が成長し、一定の形になってから規制に乗り出すスタンスだ。

日本も、この中国人のバイタリティを見習うべきではないか。

文・高野悠介(中国貿易コンサルタント)