事業がまずまず安定し、従業員の間でも報酬や労働環境の面で一定の満足度が得られている中小企業においては、新規の営業先を開拓するのを敬遠する傾向がみられる。足下の経営状況だけに焦点を当てて、順調な事業に満足しているだけでは、将来的な会社の成長や存続がリスクにさらされることもある。

そのような危機を回避すべく、新規の営業先の開拓に活路を見出すには、どのようにすればよいのか頭を抱える経営者も多いだろう。

目次

  1. 新規開拓営業ができないよくある理由4選 
    1. 1.既存顧客の対応に追われている
    2. 2.既存顧客だけで売り上げが上がっている
    3. 3.クレーム対応に時間を割いている
    4. 4.新規開拓営業の方法がよくわからない
  2. 新規開拓営業に向けた社内体制を整備する3つの方法
    1. 1.既存顧客対応はサポート部隊に任せる
    2. 2.事前準備、商談後のフォロー、クレームは別部隊に任せる
    3. 3.分担業務のルール化
  3. 新規開拓の手順5ステップ
    1. STEP1.ターゲットを設定する
    2. STEP2.アプローチ方法の検討
    3. STEP3.見込み客をデータベース化する
    4. STEP4.定期的な情報提供で信頼関係を構築する
    5. STEP5.契約~アフターフォロー
  4. 社内体制の整備と正しい手順を踏むことで新規開拓にチャレンジ

新規開拓営業ができないよくある理由4選 

新規営業
(画像=hikdaigaku86/stock.adobe.com)

新しい何かを始めようとする際には、常にある程度の余裕が求められる。張り詰めた緊張感から解放された時に、新しいアイデアや戦略が沸き上がってくるものだ。新規の営業先開拓の重要性を理解しながらも、その実践に一歩を踏み出せない理由には、そうした余裕が社内にない状態が考えられる。

1.既存顧客の対応に追われている

従業員の勤務態度を観察してみると、熱心な働きぶりに経営者としては満足するかもしれないが、実態は既存顧客だけの対応に追われているケースが目立つ。事業を立ち上げ、従業員を抱えられるだけの会社に成長する過程においては、創業以来の顧客へ真摯に対応することに重きを置きがちである。

もちろん、既存顧客を疎かにして取引を失ってしまえば、たとえ新規の営業先を獲得できたとしても、その効果が相殺されてしまう恐れもあるため、既存顧客を大切にする姿勢は堅持しなければならない。

ここで新規顧客の獲得に向けたハードルとして認識しなければならないことは、既存顧客に丁寧に対応するあまり、時間的な余裕が確保できないことである。

2.既存顧客だけで売り上げが上がっている

従業員が時間をかけて対応する背景として、既存顧客との取引だけで会社としての売り上げがある程度確保できるため、その取引を維持することだけに執着して、新規開拓に目が向かない事態に陥ってしまっていることが考えられる。経営者もそうした従業員の姿勢を黙認しているケースも散見される。

このような環境では、既存顧客への対応に時間が割かれても、それを効率化して時間に余剰をもたらして新規顧客の開拓に目を向けるというマインドは生まれにくくなってしまう。

3.クレーム対応に時間を割いている

既存顧客の対応に中にはクレーム対応も含まれる。クレーム対応のやっかいなところは、いつ問題が発生するか予測不可能な点と、解決に向けてどれだけの時間を要するのかが読めない点である。

従って、従業員の勤務時間の多くをクレーム対応が奪ってしまい、新規顧客の開拓に向けた営業時間の確保はままならなくなってしまう。

4.新規開拓営業の方法がよくわからない

既存顧客やクレーム対応などの時間的な制約から、新規顧客の開拓に向けた時間が確保できないという企業も多く存在する。しかし、時間的なゆとりが生まれれば、早速、取り組むことができるのかと問われれば、そうではない企業も多数ある。

自信を持って、新規の営業先を開拓する方法についてビジョンを示せる経営者は、必ずしも多くはないだろう。

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新規開拓営業に向けた社内体制を整備する3つの方法

では、新規開拓営業に向けては、従業員がそれに取り組めるような体制づくりを整えることが経営者には求められる。ポイントとなるのは、業務を切り分けて分担し、情報共有を密にすることである。

1.既存顧客対応はサポート部隊に任せる

多数の部署が存在し、従業員一人ひとりが役職に応じて裁量が明確化されている大企業とは異なり、中小企業ではそれぞれの従業員が部署を超えて「何でも屋」として活躍するケースが見られる。従業員が幅広く仕事をこなせるようになるというメリットはあるものの、こうした環境が時間的な制約を生み、新規開拓営業の足かせとなっているデメリットもある。

新規開拓営業に向けては、営業担当の従業員の存在は不可欠である。しかし、その営業担当が既存顧客の対応にだけ追われていれば、当然、新規開拓を担う人材が不足し、いつまでたっても新規開拓営業が実践できない。

従って、まずは既存顧客の対応をサポート部隊に一任することである。馴染みの営業担当でなくても、しっかりとフォローできる人材であれば既存顧客も満足して取引を継続してくれるであろう。

2.事前準備、商談後のフォロー、クレームは別部隊に任せる

既存顧客対応から営業担当の従業員を解放したところで、新規開拓営業に向けて体制づくりに取り掛かる。その工程は、事前準備、営業、新規商談後のフォローと複数のステップを踏んでいくことになる。このうち営業担当は、本来の営業のプロセスに専念させ、事前準備や新規商談後のフォローは別部署の従業員に担当させる。

実際に商談が成立し、取引がスタートすると、クレームが寄せられることもあるが、そうした顧客からのクレーム対応もサービスおよび品質を管理する部署の従業員に担当させる。

3.分担業務のルール化

それぞれのプロセスや仕事内容を分担化するにあたって大切なポイントは、各部署がどこまで担当するのかを明確にし、各部署で認識を一致させておくことである。また、各部署が担当する業務で得られる情報は、新規顧客の開拓のヒントが秘められていることも多いため、その情報を部署の垣根を越えて共有することも重要である。

こうして体制づくりを整備すれば、中小企業においても役割が細分化され、営業担当が本来の業務に専念することで、新規顧客の開拓に向けた営業に時間を振り向けることが可能になるだろう。

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新規開拓の手順5ステップ

新規顧客への獲得への社内体制が整ったところで、実際に新規開拓の手順をどのように進めていけばよいのか。まずは事前準備としてターゲットの設定とアプローチ方法を検討していくことになる。

STEP1.ターゲットを設定する

まずターゲットとなる新規開拓先をリストアップしていく。リスク管理の面からも、既存顧客と属性があまり重複していない取引先を開拓することも効果的であろう。また、現在は取引先が国内にだけ留まる場合は、新規顧客開拓を期に、今後も安定した成長が望めるアジアを中心とした海外に目を向けることも一手である。

STEP2.アプローチ方法の検討

ターゲットがある程度絞れてきたならば、次の段階としてどのようにアプローチを仕掛けるかという戦略を練ることになる。いくら自社サービスが優れていたとしても、飛び込み営業や架電による勧誘では、相手先にも不信感を与えることにもなりかねないので、慎重に取り組む必要がある。

・展示会
効果的なアプローチとして考えられる方法はいくつか挙げられるが、まずは展示会を利用する手である。新たな取引先と見込む企業が展示会に出展している場合は、商談を持ちかけるまたとないチャンスとなり得る。

当然ながら、その企業も新たな顧客の獲得を目指して展示会にブースを構えている状態であるため、話がスムーズに進むことが期待できる上、実際に面と向き合うことで相手にも自社の製品やサービスを印象付けることが可能となる。もちろん自社で展示会に出展するということも想定される。

・Web広告やDM
業態によっては、新規開拓として取引先の企業ではなく、直接顧客にアプローチするケースも想定される。そのような場合には、あらかじめ絞り込んだターゲット層がよく利用する媒体に向けて、web広告やDMなどを効果的に展開していくことで新規顧客へのPRに繋がることが期待できる。

・紹介によるアプローチ
新たな企業と取引するにあたって重視されるのは、製品やサービスの質や価格だけではない。むしろ、その会社が信用できるのかどうかが実際に取引を開始するにあたっての決め手となることも多い。

信用を与えることで新規開拓をスムーズに進める戦略も検討に値する。そのためには、これまでの取引先や顧客とのネットワーク、あるいは経営者の人脈をフル活用して、新規顧客となりそうな相手を紹介してもらう。信頼のおける相手からの紹介であれば、疑念を抱かれることもなく、製品やサービスが取引に値するか吟味してもらえる確率がぐっと上昇する。

STEP3.見込み客をデータベース化する

新規開拓のプロセスが進み始めたら、効率よく営業を進めるためにはデータベース化も忘れてはならない作業である。どのような情報をデータベース化するのかは、企業や営業担当者などによって異なるが、例えば名刺交換、資料送付、電話問い合わせといった情報をデータベース化することで営業活動を効果的に管理することができる。

STEP4.定期的な情報提供で信頼関係を構築する

新規顧客を開拓することは朝飯前というわけにはいかないが、取引をする相手にとっても、新しい契約を締結するのには勇気と決断が求められる。当然ながら、そのプロセスには相応の時間が必要となる。商談にまでこぎつけることができ、自社製品・サービスを説明しただけで満足していてはいけない。

定期的に情報を提供するフォローアップが重要になるのだ。そうすれば、商談時には、契約にまで至らなくても、時期が経過したり環境が変わったりしたときに、契約が必要となることもあり、こうしたタイミングを逃さないためにも定期的なコンタクトが鍵となる。また、マメに連絡を取ることで相手との信頼関係の構築にもつなげることができる。

STEP5.契約~アフターフォロー

晴れて新規顧客との契約が成立したら、営業担当としては一息つきたいところだが、まだまだ気は抜けない。契約締結も去ることながら、その契約を継続してもらうため、サービスや製品をリピートしてもらうためにはどのような工夫が必要かという思考に移行しなければならない。

また、取引先と信頼関係が構築できたのであれば、アップセルやクロスセルといった、最初の契約よりも高い製品やサービスも利用してもらったり、関連する商品やサービスも同時に契約したりしてもらえるように積極的にアプローチを仕掛けたいところだ。

営業担当が契約までしっかりとこぎつけることができれば、アフターフォローをどのようにするのかを社内で、体制も含め検討する段階に移行し、既存顧客との対応と同等のレベルにまで引き上げていく。

社内体制の整備と正しい手順を踏むことで新規開拓にチャレンジ

新規顧客の開拓は、会社の成長には不可欠な手段でもあり、自社で積極的に取り組むことが求められる。一見ハードルは高そうにみえるが、社内の体制を整備し、手順をしっかりと踏めば新規顧客の開拓は、十分に実現可能なタスクとなり得る。

文・志方拓雄(フリーライター)