地域おこし協力隊,地方創生,地域活性化,総務省
美馬市の地域おこし隊のページ(画像=Webサイトより)

総務省は、地域おこし協力隊の隊員やOB、OGを対象に優れた起業プランに助成金を支出する「地域おこし協力隊ビジネスアワード」の採択事業に、初年度は徳島県美馬市の「食と農と手仕事の海外交流・発信プロジェクト」など6件を選んだ。

地域おこし協力隊は地方に一定期間移り住み、地域の活性化に取り組んでいるが、任期終了後はその地方への定住が期待されている。しかし、2019年3月末現在の定住率は約6割にとどまった。総務省は起業支援で定住率を高め、地方創生の旗振り役として活躍してもらうことを期待している。

目次

  1. オーガニックカフェをフランスにオープン
  2. 子育て支援や農家育成など新プロジェクトが続々
  3. 隊員数は急増しているが、定住率は6割足らず

オーガニックカフェをフランスにオープン

ビジネスアワードは、地域おこし協力隊の定住促進を目指して総務省が2016年度からスタートさせた。全国の地域おこし協力隊員やOB、OGから起業に向けたビジネスプランを公募し、飯盛義徳(慶応義塾大総合政策学部教授)、岩崎正敏(移住・交流推進機構理事)ら7人が審査、初年度採択事業を選んだ。

採択事業は300万円を上限として財政支援するほか、専門家からのアドバイスや研修の機会を提供し、事業実現に向けて継続支援する。

美馬市のプロジェクトは、地域おこし協力隊員の岩田るみさん(45)が提案した。岩田さんは2019年をめどに日本の伝統的な食材や献立、食文化などを伝えるオーガニックカフェをフランスにオープンさせる計画を持つ。カフェには、日本のオーガニック食材や食器類、手仕事文化を発信するセレクトショップを併設する。

これに備え、現地との交流事業を進めるとともに、市の伝統工芸品である藍染や和傘の魅力をフランスに発信するため、調査研究と試験的交流を実施するのが事業内容だ。

岩田さんは東京都出身。東京大学法学部を卒業後、フランスに渡り、舞台制作や企画を経験した。帰国後、家族の闘病生活をきっかけに、日本アンチエイジングフード協会認定のリーダーマイスターとなり、2015年に地域おこし協力隊員として市へ赴任した。現在は市内でカフェ経営と畑づくりを両立させ、食を通じた地域おこし活動に取り組んでいる。

岩田さんは「命をつなぐ食は文字通り『ライフライン』といえる。日本の食材や伝統的手工芸作品をフランスに発信し、相互交流を図ることは、美馬市の住民にとっても価値の再確認につながる。国内や海外の持続可能な発展を模索する人たちと連携し、課題解決のスピードを上げたい」と夢を膨らませている。

令和2年2月1日現在、美馬市内では新たに3名の地域おこし協力隊員が活動を行っている。徳島県鳴門市出身の根本ちとせさんは、美馬市脇町のうだつの町並み内にある藍染工房で働いていて、岡山県倉敷市出身の小林修さんは和傘制作を行う「工房 和傘」を設立し、岡山後楽園 鶴鳴館にて和傘ミュージアムを開催するなどの経験をもとに和傘作りの技と心と先人の知恵を、後世に伝える活動をしている。また、東京都出身の江本恵さんは脇町うだつの町並みにある伝統工芸体験館で和傘の技術継承を受けながら宣伝普及活動・商品開発を行っている。

神奈川県でジュエリーデザイナーをしていた方が、小学校交流促進簡易宿泊施設「山人の里」のPRやイベント企画を含めた運営業務を行なっているというケースも。

日本全国から美馬市に移住して、地域おこし協力隊員として活躍しているようだ。

子育て支援や農家育成など新プロジェクトが続々

山形県長井市の事業は「子育て応援×産業振興『Baby Box』プロジェクト」。隊員が新規ビジネスとして法人を設立し、地域で出産から子育てまでを支援する一方、子育てしやすい街としてPRを推進する。

京都府南丹市の事業は「山と道で未来を創る地域連携森林アカデミー」。山全体に路網を展開するための敷設技術を学ぶアカデミーを開講。地域住民が受講し、山の利活用技術を習得するとともに、路網敷設中に出る廃材を活用して特産品を開発する。

長崎県島原市の事業は「食べるほどおいしくなる農家育成型ネット販売」。各農家を取締役とした株式会社を設立し、地元の野菜を全国にネット販売する。市内への農業体験ツアーも企画し、生産者と消費者のコミュニケーションを深める計画だ。

大分県竹田市の事業は「竹ノhaco子どもたちのプロジェクト」。共働き家庭のサポートや放課後の有意義に活用する事業を実施、子育て世代の移住促進につなげる。

鹿児島県瀬戸内町の事業は「奄美大好き 島地ビール開発事業」。地元の材料を使った地ビールを製造し、島人が集って観光客が訪れる飲食店を運営、地ビール体験観光も進める。

隊員数は急増しているが、定住率は6割足らず

地域おこし協力隊は国が2009年に導入した。都市部の住民を過疎地域など地方へ誘致し、特産品のブランド化や地域おこしの支援、住民の生活支援などの活動をしてもらいながら、その地域への定住、定着を図る取り組みだ。

総務省が財政面で支援し、自治体が委嘱する。任期は1年で、最長3年まで延長が可能。隊員数はここ数年、右肩上がりで急増しており、2019年度は全国1,071自治体で5,349人が活動した。

隊員が任期終了後も地元にとどまり、定住してもらうのが目的だが、隊員の定住は思惑通りに進んでいない。総務省が2019年3月末現在で全隊員の動向を追跡調査したところ、隊員を務めた自治体に定住したのは全体の50%だった。

この数字は、前回調査48%を2ポイント上回る。政府の施策も少しずつ効果を見せているようだ。近隣の自治体に定住した12%を加えると、定住率は62%。就業先が乏しいこともあり、大幅には上昇しづらいとみられているものの数年前に比較するとその割合はわずかながら増えている。

総務省地域自立応援課は「地域おこし協力隊の隊員には、任期満了後も継続して地元に残ってほしい。そのため、1人でも多くの人が活躍の場を持てるよう起業支援に力を入れていきたい」と狙いを語っている。

文・高田泰(政治ジャーナリスト)
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。