Peatix.comの共同創業者として知られる竹村詠美さんは「事業を立ち上げるのはそう難しいことではない」と話す。それは情報収集や人脈形成などの環境が整ってきたことも影響しており、結果として「機運が良かった、というだけで事業を成功させる人も少なくない」(竹村さん)そうだ。

これから先、「ファウンダー(Founder、創設者)」が増えていくとしたら――。そこにはどんな未来があるのだろうか。会社員でもファウンダーであるべきなのだろうか。

竹村詠美さん
一般社団法人Future Edu代表理事、Peatix.com共同創設者。McKinseyを卒業後、Amazon、Disneyなどの日本経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げ、マーケティングなど幅広い業務に携わる。2011年に立ち上げた「Peatix.com」は現在27カ国、400万人以上のユーザーをもつ。現在はSTEAMや21世紀教育をテーマに執筆、講演、研修など幅広く活動中。Most Likely to Succeed日本アンバサダー、総務省情報通信審議会委員なども務める。

女性が活躍する=男性が活躍する

女性創業者#4
(写真=森口新太郎、ZUU online編集部)

――男性社会についてこれまでいくつか触れてきました。そこには女性が活躍しにくいという問題も見え隠れしていますが、竹村さんが考えるこれからの図式はどのような感じなのでしょうか。

いろいろありますが、総括すると「男性活躍社会」になればいいなと。そうすれば、もっともっと女性が仕事をしやすい環境になると思います。

――女性活躍社会ではなくて、男性活躍社会ですか……?

「女性が活躍」「女性が中心」みたいな表現をしているうちは、結局のところ、女性が活躍できていない世の中だということ。発想の転換みたいなものです。

そもそも「社会」という言葉が指すのは、仕事に関することだけではないはずですよね。オフの時間はもちろん、育児とか介護だって社会の一部じゃないですか。どうしてそこに男性が絡んでこないのか、私は不思議で仕方がありません。女性が女性のことを考えるのであれば、当然男性の立ち位置についても考えるべきです。

仕事以外の場でも男性が活躍するためには、どのようなステージが必要だと思いますか?そこを突き詰めていくとたどり着くのは、男性が仕事だけに終始しない仕組みを作ることでしょう。

とある一般社団法人では、男性の育休取得率が100%になるように人事ポリシーを掲げているそうです。また別の団体さんでは、昔導入していたノー残業デーを「早く帰れる日」ではなく「社会貢献する日」に改めたという話もあります。

そうやって男性が仕事以外の人生も楽しめるような仕組みができれば、世の中は全然変わると思いますよ。いわゆる1つの大きな価値転換ですね。

――それができると何が変わるのでしょうか。

肩書が増えますよ。皆さん名刺を持っていると思いますが、それが2枚、3枚と増えていくイメージです。

ひと昔前までは、男性にとっての会社は「会社=人生」という部分があったと思います。しかし今どきの働き方はもっと多様で、パラレルワークなんて言葉もよく耳にするようになりました。そのような背景もあって、ごく一般的な会社員男性でも「会社=人生」なんて考えはほとんど持っていないはず。

そこで自分の人生をもっと彩るために、たくさんの肩書を身に付けていくわけです。会社では部長、副業では社長、家に帰ればお父さん。スポーツをしていれば選手なんて肩書もあるかもしれませんね。

ポートフォリオ的な人生が普通になれば、「自分のすべてを会社に委ねない」のが当たり前になるでしょう。時間的な余裕が生まれますし、「新しいことをやってみたい」という気持ちも芽生えます。

家事が好きな男性もいるでしょう。育児が好きな男性だっているはずです。そうやって自分のやりたいところに手を広げることができれば、女性も負担が減りますよね。結果的に男性も女性も、好きな分野で活躍することができるわけです。もちろん、ファウンダーも増えるでしょう。

女性創業者#4
(写真=森口新太郎)

ファウンダーには準備期間も必要

――これからの時代、誰しもがファウンダーになることは必要だと思いますか?

必要だと思います。例えば、長い間工場で働いてきたとします。ずっと冷蔵庫しか作ったことがない、そんな人が急に「モバイルビジネスをやれ、それができないのであれば、仕事はない」と言われたらどうしますか?このように会社の意向で急に担当範囲がガラッと変わることはあり得るんです。そして会社に属している以上は従うしかない。これは大きなリスクですよね。

人間はどうしても不安を感じる生き物。安定している道が準備されているなら、大抵の人はそちらを選んでしまいます。でも、自分で事業ができるような準備をしておけば、選択肢を広く持つことができます。

――ファウンダーになる準備をしておくということですか?

そうです。ファウンダーになるためにはさまざまな要素が絡みますので、すぐになれるとは限りません。でもその準備をしておくことはできるはずです。

最初は副業的なことでもいいでしょう。ボランティアワークから始めて、2枚目や3枚目の名刺を作っておく。会社外の活動をしながら、ネットワークを持つ、視野を広げるなど、自分がやりたい時に寄り道できる道筋を作りましょう。趣味でWebサイトを作るのもアリです。ビジョンやミッションが見えてきたら、ファウンダーになることを考えるチャンスです。

若いうちに助走をつけておく、余白を作っておくのはとても大切なこと。何かあったときに替えがきかないのは困りますよね。そこでポキッと折れてしまわないためにも、準備をしておくことをおすすめします。

***

創業する。それはつまり究極の自立であり、環境の変化にもっとも強い人間になるということなのだ。変化の激しい時代だからこそ、実際創業するかどうかは別にして、少なくともマインドだけでもインストールしておいたほうがよいかもしれない。「一億総活躍社会」ならぬ「一億総ファウンダー社会」の到来も、そう遠くはないだろう。

取材、構成・くすいともこ(ZUU online編集部、DAILY ANDS編集長) 写真・森口新太郎

(竹村詠美さんインタビュー、おわり)